2007.12.14

SF研読書会 『戦略拠点32098楽園』(長谷敏司)  by 0109


1 著者&作品について


著者:長谷敏司

1974年3月18日、大阪府に生まれ、関西大学卒業。2001年、『アルカディア』(出版時に改題)で第6回スニーカー大賞金賞を受賞。  
著作
『円環少女①~⑥』 スニーカー文庫
『戦略拠点32098楽園』 デビュー作 スニーカー文庫
『天になき星々の群れ―フリーダの世界』 第2作 スニーカー文庫
『楽園行き』 角川ホラー文庫『ウルトラQ dark fantasy』に所
『Toy Soldier』 『ザ・スニーカー』2001年12月号に掲
『地には豊穣』 『SFマガジン』2003年7月号に掲載
『AN UNDERDOG AND THE “STAR”』 ワニブックス『女神候補生』3巻(2005年8月)SPノベル
『Vile’s Incident』 『リマスタートラック ロックマン ゼロ・ピュシス』の別冊ブックレット

2 登場人物


マリア

永遠の幼女。戦略拠点32098の住人で『楽園』の管理人。クラウスによって作られた『永久に生きる人間』。日々の生活に必要な知識を除いて、その記憶は流動し揮発する。

ヴァロワ

汎銀河同盟降下兵。人間含有率20%の機械化兵。戦略拠点32098の秘密を探るべく降下したが部隊は彼を除いて全滅。何故かマリア、ガダルバと共に生活する羽目になる。

ガダルバ

人類連合の高級士官。機械含有率99%。要塞艦パンタグリュエルの制御官。撃墜されたパンタグリュエルの唯一の生き残り。マリアと共に『楽園』で生きることを選んだ。

マクルーファン

人類連合の兵士。ガダルバの『友』。亡骸からは白いバラが咲いた。

クラウス

人類連合の枢軸国の一つ、アマツの科学者。『楽園』の管理人としてマリアを作った。

3 あらすじ



Ⅰ―楽園

プロローグ 『楽園』の日常、ガダルバの回想

0014

『楽園』降下作戦開始。
ヴァロワの部隊、彼を残して全滅。ガダルバ、マリアと邂逅。

0105

ヴァロワ、ガダルバ、マリアと同居。『楽園』の生活に戸惑うヴァロワ。

0309

ヴァロワの回想。下級階層から軍へ、寄り道せず、迷いもせずにまっしぐら。

0421

『柱』の降下。死体を運び出して埋葬。人類連合と汎銀河同盟の死体の扱いの違い。
巡航爆撃機発見、ヴァロワの脱出用に運び出す。ガダルバと共に修理開始。

1929

『楽園』に馴染んでいくヴァロワ、その存在に戸惑うガダルバ。

2130

ヴァロワとマリアの交流、それに混じれないガダルバ。

2727

ガダルバの真意を測りかねるヴァロワ、次第に自分の心境の変化に気付く。

2829

風呂。

3170

ヴァロワの悩み、マリアに歌を教える。

3245

ガダルバの過去。『楽園』の目的はアマツの戦意高揚。ガダルバの同僚のメッセージ。
マリアの異変。

Ⅱ―合金

3671

機体修理進行中、ヴァロワのモラトリアム。

3683

マリア高熱を出して昏倒。施設に運び込む。
退屈していたヴァロワ、『楽園』とマリアの真実を知る。マリアは基本的な記憶以外を忘れながら、『まやかしの楽園』に『永久に生きる』。

3690

ヴァロワ、クラウスのりんごを破壊。ガダルバは『楽園』とマリアに思いをはせる。

3709

ヴァロワの戸惑い、自嘲、決意。

3774

人類連合と汎銀河同盟の戦闘、戦う意義への疑問。ヴァロワの望み。

4329

夏の終わり、修理も順調。ヴァロワが残そうとした地図は落書き帳に。

4936

ガダルバの心境。ヴァロワ、部隊の碑を刻む。

4958

ヴァロワの回想。アマツと汎銀河同盟との暗黙の了解。殴り合いと和解。ガダルバの意思。
ヴァロワはそれでも帰る。

5130

ガダルバの決意。爆撃機の修理終了。

5189

ヴァロワ出発。「ヴァロワのこと、絶対に忘れないから
『楽園』との別れ。マリアの約束。

5189.4

ヴァロワの帰還と郷愁

エピローグ

マリア、ヴァロワとの約束を一つ、忘れる
「私、ガダルバのことは絶対に忘れないから」。ガダルバの歓喜と希望。
戦火の収束を思わせる一文で締め

4 感想

 スニーカーらしくない、というよりもライトノベルらしくない作品でした。カバーのあらすじにもしっかりとSFと書いているので、ハヤカワ文庫あたりで出版されていたとしてもおかしくは無いと思う。残酷な『楽園』で永遠を生きる少女に与えられた忘却という救い、体の機械化の割合と反比例するような汎銀河同盟と人類連合(名前にもその点が現れているように思える)の死体の扱いかたといったようなライトノベルには珍しい一筋縄ではいかないテーマを秘めた作品と言え、ネットの書評を見ても褒めているものが多い。これが絶版になったのは残念なこととしか言いようが無い。
(※移行者注:2019年現在、電子版配信中であり入手は容易になった)



部会メモ





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なお、内容は執筆当時を反映し古い情報・元執筆者の偏見に基づいていることがあります by ちゃあしう
最終更新:2019年03月24日 14:50
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