東北大SF研 変則部会
SCP
オブジェクト
Safe
特別収容プロトコル
SCP-0500-TUはサイトG-15内の標準的紙資料保管ロッカーに保管されています。部員は必要に応じてSCP-0500-TUを参照し、複写を得ることが出来ます。よろしくおねがいします。
説明
SCPとは、創作サイト「SCP財団」(The SCP Foundation)内の架空の存在である。「SCP財団」の創作では、世界には既知の科学技術による説明を越えた「超常的な現象を引き起こすもの」や「超常的な現象そのもの」が存在する。これらSCPと呼ばれる物体・人物・事象(まとめてSCPオブジェクトと言う)を世間から隔離し、「確保・収容・保護」(Secure, Contain, Protect)する超国家的団体がSCP財団、通称「財団」と呼ばれる団体である。
厳密に言うと、収容されるべきオブジェクトは創作内ではSCiPと呼称される。SCPはSCiPを収容するための「特別収容プロトコル」(Special Contain Protocol)を意味するが、簡単のため、これ以降オブジェクトのことをSCPと表記する。
オブジェクトクラス
SCPはその危険性と自我の有無によって、危険度分類がなされている。これを「オブジェクトクラス」と言い、主なものとしてSafe(セーフ)、Euclid(ユークリッド、エウクリッド)、Keter(ケテル、ケター)の三段階に分けられている。
Safeは安定した収容方法が確立されており、人為的に活性化させない限り危険が生じないものが分類される。Safeだからといって安全と言うわけではなく、あくまで特別収容プロトコルに従って収容すれば安全に保管できるというだけである。現実世界での例を挙げると、核爆弾がSafeにあたるだろう。核爆弾は安全な保管方法が存在し、何重にも安全装置がかけられており、人為的に起爆しなければ安全である。したがって、オブジェクトとして収容するならばSafeに分類されるだろう。(なお、「SCP財団」では「Safeのふりをしたとんでもないもの」が人気で、近年のSafeクラスオブジェクトの大半をそういうものが占めているため、初心者には難しい記事が多くなってきてしまっている。)
Euclidは今のところ収容出来てはいるものの、オブジェクト自身の異常現象やオブジェクトが自由意志をもっていることによって、収容に不確定性が存在するものが分類される。簡単に言えば、鍵付きロッカーにオブジェクトを収容して放置したとき、オブジェクトがロッカーから脱出してくるようなものはEuclidに分類される。また、研究の進んでいない収容されたばかりのオブジェクトはいったんEuclidに分類され、研究が進んだのちに分類し直されるということになっている。
Keterは収容すらままならず、かつ明確な敵意を有し、放置すれば何らかの形で地球滅亡・人類滅亡に終着するようなものが分類される。有名どころだとSCP-682「不死身の爬虫類」がこれに当たる。
他にも今回取り上げたExplained(科学的に解明された、もしくは収容の必要がなくなったもの)やNeutralized(異常現象が無力化されたもの)など例外もあるが、基本的には上記の三段階に分類されている。
各SCP解説
世界で初めて創作された記念すべきSCP。元々は4chanで妙に怖い風体をした彫刻作品『無題』に対して、二次創作的に背景情報を付け足したのがはじまり。そこから面白がって話が拡大していき、現在の複数言語にまたがる大きなムーヴメントとなった。
このSCPは最初の作品だけあって初心者向けで、「SCPとは何か」「オブジェクトクラスとは何か」「財団とは何か」というのが分かりやすく示されている。
みんな大好きクソトカゲ。殺すに殺しきれないうえ、非常に凶暴で何度も収容違反を起こしている超問題児。SCP財団公式のチート能力をもち「これ以上に強い存在を出したら削除される」という目安としても知られている。
このSCPも最初期の作品にあたり、「Keterとは何か」「収容違反とは何か」というのが分かりやすく示されている初心者向けSCP。
報告書スタイルの創作物にもかかわらず、一切文字を使っていないアイデア勝負の傑作。もともと英語版の本家財団サイトで「500語以内の短篇SCPコンテスト」が開催された際に、ルールを逆手にとって一文字も使わないことでぶっちぎりの優勝をかました作品であり、唯一無二の存在感を誇っている。
最近のSCPは小手先の表現にこだわったり、無駄にミームや認識災害、メタ構造、現実改変と手が込んだ複雑怪奇なものが多いので、これぐらいシンプルだとすがすがしい。個人的なお気に入りでもある。
難解だが、今回のSCPの中では一番センス・オブ・ワンダーに富み、一番SFっぽい作品。クオリア問題と白黒写真を上手く結び付け、ノスタルジックな雰囲気の作品に仕上がっている。解釈の分かれる作品ではあるが、原作者の解釈では「元々世界は白黒だったが色彩の概念自体は存在し、SCP-8900-EXの影響で今の色彩になった」ということらしい。私も個人的にはこの解釈を支持したいが、これに関しては部会参加者のSF的想像力を生かして議論したいところ。
番号が異常に大きいことに違和感を抱いた人もいるだろう。これは特に理由付けはされていないのだが、「SCP財団」では「過去はもっと多くのSCPが存在したが、世界が終焉を迎え再構築されたため、他のSCPの情報が伝わっていない」と解釈されている。これに関しては
SCP-2000を参照されたい。
最後に個人的なことだが、この作品が英語から日本語に翻訳される際の、原題“Sky Blue Sky”の訳案のひとつ「空色の空」が狂おしいほど好き。「青い、青い空」も詩的でいいと思うのだが、原題の雰囲気や皮肉さも含めて「空色の空」を評価したい。ブライト博士? いえ、知らない子ですね。
ものすごく円城塔。おそらく、もっとも円城塔的なSCPではないかと思う。解説を読むよりも実際に読んでみた方がいいタイプのSCPでもある。
一時期のSCPには、SCPというメディアの可能性を探るような、ある意味で文学的な試行錯誤が試みられていた時期があったのだが、それがすべてサーキック・カルトに飲み込まれてしまったのが残念でならない。
アイデア的に円城塔っぽいSCP。通称“丸くないやつ”。
みずからを記述することを許さず、みずからを観察した者の記憶を改竄する強力な反ミームをもつ。その性質を記述するには「〜ではない」という否定を積み重ねなければならないというのが非常に円城塔的。
ミーム災害&認識災害のなかでは断トツに有名であろう作品。井戸の中を覗くとミームに感染し、猫に対する認識が歪み、またその事実を他人に積極的に伝えるようになってしまうSCP。非常にミームの感染力が強く、たちの悪いSCPとしても有名で、ネットのみならず現実でもいたるところで収容違反を引き起こしている。色々と分かりづらいと思うが、よろしくおねがいします。これでも一応ミームもの・認識災害もののなかでは分かりやすいものになる。
これは一転して分かりやすく、SFっぽい作品。屋根裏部屋に宇宙が広がっていて、うっかり天体を壊すとリンクした現実の天体も壊れてしまう。一見安全、実は危険といったお約束の展開も教えてくれる作品。
SF的な元ネタを指摘するとすれば、ハミルトン「フェッセンデンの宇宙」や大長篇ドラえもん『宇宙創世記』などが挙げられるか。
この作品は間違いなくSCPの中で一番手の込んだ作品。SCP財団wikiに掲載されている通常版もいいが、演出過剰版も一読の価値あり。自分が何の気なしにやってしまった操作が過去改変を起こしてしまうという、なんとも言えない罪悪感に心惹かれる。
SCP財団日本支部の誇る、最強最悪の認識災害オブジェクト。このSCPの存在を知るだけでこのSCPの影響下に入ってしまう。影響を受けた人間が多いほど「緋色の鳥」の影響力は増大し、一旦影響下に入ってしまったら最後、自我を失って周囲に危害を加えた挙句、死んでもその血液や死体そのものが認識災害のベクターになってしまう。
財団はなんとか封じ込めることに成功し、最後の収容担当のエージェントのひとりが書いたレポートと、緊急対処プロトコル“焚書”という、意識をもたないものだけがこのオブジェクトを封じることになった。これで安心、一件落着......。
というのもつかの間、私たちがこのレポートを読んでいるのも問題ではあるのだが、財団側にも収容プロトコルに違反してレポートを確認した者がいる。最後のエージェントの名前が不自然に削除されているのだ。恐らく、レポートを確認した何者かが最後のエージェントの名前を削除したのだろう。この違反者は、誰にも知られることなく「緋色の鳥」の影響下に入り、収容違反が発生してしまった。
所感
色々と難解なものがあったと思うが、これをきっかけにSCPを楽しんでいただけたら幸いである。特に、SFファンならば全SCPの中でも特に難解とされる
SCP-1000-JP「特別回収任務」と付属するTale「オルメイヤー計画の記憶」も楽しめるだろう。
よろしくおねがいします。ねこでした。
下村
最終更新:2020年02月10日 14:35