生命活動として極めて正常 八潮久道

レジュメ作成 米村

作者紹介

 川崎在住のふつうの会社員・作家(38)。Twitter(https://twitter.com/OjohmbonX)やカクヨム(https://kakuyomu.jp/users/OjohmbonX)は「オジョンボンX」名義、はてなブログ(https://yashio.hatenablog.com/)は「やしお」名義で活動している。

バズーカ・セルミラ・ジャクショ

あらすじ

 電子決済が当たり前となり、「バズーカ」により人々が店から評価されるようになったイージードゥダンス二年、一般的な会社員の三浦は突然バズーカのレートが0に、つまりいかなる電子決済も不可能となった。四年前に変貌したパパピッピの助けによってかつての臓器売買ネットワーク「セルミラ」を介して現金決済コミュニティに属することになった。そこでのワンピ女との出会いと陰謀論を吹き込まれたりする同居生活の中で自分にとって自然な在り方、「ピッピ」に気づく。そして「社会の真実」に気づいた三浦は父と一緒に来たスタバでバズーカのレートが(陰謀論の内容とは無関係に)元に戻っていることに気づく。決済が可能になったためワンピ女に恩返しをして(ついでにその時に以前吹き込まれた陰謀論は嘘だったことも知った。)休職していた会社に復帰を果たす。

登場人物

  • 三浦
 25歳の会社員。物心ついたころからバズーカありの生活をしてきた。訳もわからずほぼスラムの現金決済コミュニティに属することになり、困窮することになる。ワンピ女との生活の中で父と同じようにピッピとなった。結局バズーカのレートは元号が変わったことによるバグであり(そうアナウンスされた)、覚悟していた臓器売買などをすることもなく、元通りに決済できるようになったためピッピとして社会復帰を果たすこととなる。

  • ワンピ女
 別にワンピースを毎日着ているわけではない。現金決済コミュニティに属する一人で、三浦を拾って同居することになる。働こうとしない三浦にあることないこと吹き込んだ。

  • パパピッピ
 本編開始の4年前から奇抜なファッションと変な話し方をするようになった、三浦の父。ムキムキ。キャッシュレス決済ができなくなった三浦に現金を渡して助けた。再開後は「ぽよ~」とかしか言葉を発さなくなった。

  • セルミラおじさん
 おそらく元総理の女装趣味をもつ老爺。臓器売買とかはしていない。

おまけ

  • カクヨムでの題名は「愛子、メルカリ、バズーカ」
  • 元号が変過ぎる。
  • 陰謀論に意味があんまりないのが好きなポイント。
  • 防犯チワワ?
  • きゃるーん

生命活動として極めて正常

あらすじ

 いつもと変わらぬ業務の中で、特別なことは何もなく、磯崎は部下を射殺した。死人の処理やその葬式、遺族への対応(不正)、昇進のための情報収集などをこなす日々の中、磯崎は同期の工務課処置係の男に射殺されるのだった。

登場人物

  • 磯崎
 生産管理課長。部下の吉崎を射殺し、課内プロトコルに則って処理する。それが昇進とどう絡むのかを知るために同期会を画策する。しかし、非喫煙者であることが災いしたか、吉崎の遺族が会社を訴えていることを知ったのは遅かった。データを消す不正はしっかり行っていたため今後の進退は法務課の描くストーリー次第となった。そんなある日、国際展示場に向かう途中の駅のホームで同期の工務課処置係に呼び止められ、射殺される。

おまけ

  • 本書では珍しいシリアス。
  • ずっと異様な雰囲気が好き。

踊れシンデレラ

あらすじ

 基本はシンデレラのストーリー。体育会系なことを除いて。

登場人物

  • シンデレラ
 筋骨隆々で、寒かったりすると変な毛が生えてくる生き物。家では義姉に馬鹿にされ、継母からも外周ランニングなどきつめのトレーニングをさせられてきた。ダンスの才能にあふれる。生活リズムが変。

  • 義姉
 中学の先輩。

  • 継母
 中学の監督。

  • 老婆
 シンデレラにガラスの靴と素敵なドレス(制限時間付き)を与える。その後、ひき逃げアタックをする形でスカウトマンに会い、シンデレラの家を教える。

王子
 強豪高校の監督。シンデレラと踊ってその素質を見抜く。

ベテランスカウトマン
 強豪城のスカウトマン。肋骨が折れながらも踊れる。

おまけ

  • カクヨムでの題名は「シン・デレラ」
  • 野球部過ぎる。

老ホの姫

あらすじ

 老人ホーム「サテーンカーリ埼宿 参番館」に新しく入居してきた旭(72)を他の入居者のように陥落させようとする老ホの姫、優希(78)。しかし、これまでの事例とは異なりどうやっても落ちない。興味は持っているはずなのに!それは旭がかつては男子校の姫であり、優希を模範として老ホの姫となろうとしていたからであった。老人ホームに姫は一人だけ、最年長の殺季(118)の提案に従い、柔道で姫を決めることに。準備期間ののち、センター長Qの掛け声とともに始まったのは、試合などではなく”決闘”であった。見入るほかの入居者たち、実力者で体格でも勝る旭をいともたやすく蹂躙する優希、当然呼ばれる救急車と警察。優希と殺季は逮捕され、優希はその後まもなく死んだ。旭は老ホの姫となったのだ。

登場人物

  • 旭(72)
 サテーンカーリの新しい入居者。男子校の出身でかつては小柄、姫のような存在だったが身長は伸び、柔道をやっていたこともありがっちりとした体格になった。大学でも柔道を続けていく中でその姿に合わせ、無骨なイメージの人間となっていった。そして商社への就職、家業を継承・事業の拡大を行い、次の代(他人)へと会社を託して老人ホームに入った。そこで見た老ホの姫、優希の姿に憧れ、老ホの姫を志したのだった。可愛さの演出は下手だったが。決闘に敗れたものの、優希は死に、次の老ホの姫となった。継承したのである。

  • 優希(78)
 サテーンカーリの姫。かわいくて、しなやかな肉体を持つ。冬児を用いた「導入」、「焦らし」、「篭絡」、「維持」の4フェーズを全ての入居者に対して行い、バランスをとって老ホの姫としての立場を確固たるものとしている。なかなか陥落しない旭を落そうとムキになるも、姫を目指していると知ると姫の座をかけて戦うことを決意。とんでもなく強かったため勝ったが決闘罪で逮捕され、その後死んだ。

  • 冬児(82)
 陽キャ。いつでも明るく、ほぼすべての入居者とすぐ仲良くなる。それゆえ優希の「導入」フェーズに使われている。旭が老ホの姫を目指している旨も知っていた。決闘の際は見守る選択をした。

  • 洋平(70)
 トレーニー。体格の良い旭を値踏みするような目で見てきた。また、自分のもとで優希がトレーニングするのを好意的に思っている。決闘の際は、趣味からくる肉体への造詣の深さからか、技の極まり方が異常であることに気づいた。

  • 聖波(80)
 素直になれない爺。口が悪く、家族仲も良くなかった。自分が理解されない感覚が強くあったのだ。ゲームをやりに優希のもとに毎日通い、そこで得たアドバイスのおかげで子との仲も改善し、施設内で軋轢を生むことも減った。決闘の際は、旭を口は悪くとも応援してみせた。

  • 歌彦(77)
 優等生タイプの爺。プライドを優希に慰められていた。決闘の際は、何もできないことに苦しんでいた。また、警察に通報したのはこいつ。

  • 蘭太郎(72)と菊次郎(71)
 ケンカの多い兄弟。周りに迷惑をかけない程度に優希に宥められたり火種を提供されたりしていた。決闘の際は、何で柔道なのかを疑問に思っていた。

  • 恭也(71)
 オタクであり続けることが難しくなったがオタクであることはやめられない男。優希に知識マウントをとることで平静を保っている。決闘の際には、やたら多い知識を生かして優希の強さを解説した。

  • 殺季(118)
 決闘を提案したヤバい最年長の婆。名前が物騒。決闘罪で逮捕され、世界最高齢の逮捕者となり、ピースサインをカメラに向けてみせた。

 フィジカルギフテッドのサテーンカーリ管理者の女性。ロボットを素手で壊せる。決闘の場所を貸した罪に問われたれたが、凄い速さで走って逃げた。

おまけ

  • それぞれの爺の心情をよく描いた作品。
  • 継承の物語。

手のかかるロボほど可愛い

あらすじ

 娘夫婦に連れられてきたビーチリゾート、旅行から半ば逃げるようにしておじいさんは一人戦争博物館を訪れた。そこをガイドをしていたオンボロAIロボットはかつて自分がかばった戦友のロボットだった。おじいさんは互いの戦争のときから変わり果てた姿をはっきり認識したのち、ロボットを殴っている職員に柔道の技をかけて博物館を去った。戦友と出会えたこの日はおじいさんにとってとてもいい日になったようだ。

登場人物

  • おじいさん
 かつて戦争でMZK005409というロボットをかばって片足を失った退役軍人。戦争中は周りに「ブジン」というあだ名で自分を呼ばせていた。旅行に疲れ、空いていそうな戦争博物館に行った。そこのポンコツガイドロボットに昔語りをしながら時にその動きに振り回されながら館内を見ていくと、そのロボットこそがかつての戦友だということが判明する。またもや起こった誤作動を止めるためにロボットを殴りに来た職員に憤慨、柔道技をかけ、伸びている職員に戦友を託して博物館を去った。

  • MZK005409
 その従軍経験から博物館ガイドとして再利用されているロボット。ガタが来ており、誤作動が多い。長きにわたっておじいさんの恥ずかしい過去を来場者に教えてきた。

  • おじいさんの家族
 キレる妻、心配する娘、何を考えているかはよくわからないが旅行の提案者の娘婿。いい家族じゃないか。

おまけ

  • 舞台は近未来のアメリカだろうか。
  • 「ブジン」呼びを強いるみみっちさが良い。

追放されるつもりでパーティに入ったのに班長が全然追放してくれない

あらすじ

 サスマターの蛇殺しバルサミーナは無能としてパーティを追放されることに情熱を燃やす男。今まで何度も追放され、その事実を告げられることに快感を覚えている。だが今度のパーティは一味違った。班長であるヒーラーのもそもそは何をやっても追放してこないのだ。わざと、あるいは普通に無能で起きたミスもうまくカバーしてちょっとできない人の範疇に収めてしまうのだ。なんだかんだで三年が経ち、蛇殺しバルサミーナはOJTの教官を任されてしまう。無能さの新たなステージを見せて、追放されようと意気込むが新人の贅の饗宴は思った以上の無能。20歳の妻子持ちで一見よさげ。しかし、ふたを開ければ大失態を平気で犯す。カバーに回るせいで無能さが発揮できない。適正スキルも低いのに自主練しない。おかげで教え方を勉強しなければならない。性格も良くない。できないのにプライドが高い、嫉妬が支障をきたす、サボる、一生懸命だが抜け漏れが多い、失礼、妻への不満も多い、不要なことをすぐいう、蛇殺しバルサミーナの完全上位互換である。結局、贅の饗宴は追放されることに。追放を伝えるためのタイマンカラオケ六時間パックは贅の饗宴の家庭を考慮して早めに切り上げることに。退店直前に贅の饗宴が気持ち悪いということでトイレで介抱していると街に勒耐性ズフォンが出たという警報がスマホに届く。同時に贅の饗宴が吐き出したのは極上神獣エンべデッド。ズフォンの攻撃で街が吹き飛び、数多くのカラスやドブネズミが死んだことに怒った(人はどうでも良いっぽい)贅の饗宴は真のボンによってズフォンを討伐する。その力はまさに魔王ゆみまほりむを倒せる力だった。

登場人物

  • 蛇殺しバルサミーナ
 追放されたい系男子(36)。無能とみられるためなら人にサスマタを甘刺しするような男。とはいえ自分より無能なのがいると必死で頑張るやつ。

  • 贅の饗宴
 追放され能力なら蛇殺しバルサミーナ以上の逸材。性根も能力も終わっているが、蛇殺しバルサミーナの献身的な教育のおかげで多少マシになって追放された。追放された途端に才能が開花、人類の救世主になりかねない男となった。妻子持ち。

  • もそもそ
 カバーリングの匠。蛇殺しバルサミーナを見捨てず運用できるほどだからかなりすごい。最終盤でズフォンの攻撃によって片腕を失う。

おまけ

  • 本書書下ろし
  • ソシャゲにありがちな謎カタカナを大量に摂取できてうれしい
  • 追放モノを思いっきり馬鹿にしていていっそすがすがしい
  • 世界レベルでヤバい世界観っぽい

命はダイヤより重い

あらすじ

 鉄道会社、永楽急行の運転士である佐田美知は人身事故によく遭う。この会社の規則で人身事故を起こすたびに返玉堂という建物に来てみたまがえしの儀を行うことになっているため何度も返玉堂を訪れることになる。運転を指導してくれた現在は助役の海老、受付の短歌ギャルの遠藤沙織、安全管理課のオタクの野並健二郎との関わりや電車で人を轢く直前の確信めいた感覚、人を轢くたびに光る「ダイヤは命より重い」の文字、轢いてしまった人の姿、佐田はこうしたものに日々接していくことになる。超能力じみた人身事故発生率は社内でも問題となっていく。そんな中でも人は死ぬ。佐田はそんな日常に何を見るのか、そもそも返玉堂とは何なのか、淡々と描かれていく。

登場人物

  • 佐田美知
 運転士。29歳。人身事故に遭う直前に轢くであろう人を見つけてしまう能力を持つ。人身事故を起こす割合は最後の段階でにギリギリ偶然であるラインを越えるか超えないかという異常さ。轢くたびに返玉堂に行くことを考えるとスケジュールの管理は困難となっている。やがて運転する際には助役が添乗することが増えるも人身事故が起こるのは佐田運転時のみであった。海老が添乗していたある日、自分の能力が見た人を引き込んで自殺させる能力であることに気づき、運転は海老に預け、電車からホームへ飛び降りて会社を辞めた。

  • 海老
 助役の中年男性。佐田に運転を指導した人で、佐田のみたまがえしの儀のやりかたは海老のそれ。佐田を責めることはせず、佐田がホームへと飛び降りた日も任された運転をやり遂げた。佐田をかばったせいで左遷されたようだがそれに対してどう思っているのかは見せない。いいおっさん。柿を大量に送ってくる兄がいる。佐田を支えた三人のうちの一人。

  • 遠藤沙織
 佐田の同期のギャル、ギャル道を貫くタイプの。短歌をたしなみ、佐田が返玉堂に行くたびに新作を佐田に渡している。人が死ぬたびにギャル短歌がでてくるという異様な雰囲気づくりに貢献している。野並と付き合っている。佐田を支えた三人のうちの一人。

  • 野並健二郎
 佐田と同期のオタク君。安全管理課に所属している。佐田の人身事故率が異常であることを度々伝えてきた。佐田が自分の能力をはっきり自覚したのはこいつの無神経な行動のおかげかも。佐田退職後のタコスパ―ティー時に遠藤と付き合っていることが判明する。佐田を支えた三人のうちの一人。(ちょっと毛色が違う気もする)

おまけ

  • 書下ろし
  • 死亡の描写が唯一無二
  • オタクに優しいというかオタクなところもあるギャルが出てくるのがいいね!
  • 貴重なシリアス
  • この並びだからおもしろいって感じかも
  • 人身事故に馴染みがない地域で生まれ育った米村的には人が死んでいるんだから重大だろ!って感じだけどそれが日常を乱すファクターでしかないってなっちゃうとダイヤは命よりも重いなんて冒涜的なことが言えるようになっちゃうのかしら、なーんて思ったり。
最終更新:2024年06月19日 21:49