SF研究会 読書会レジュメ「モロー博士の島」

作者

ハーバート・ジョージ・ウェルズ 1866年9月21日‐1946年8月13日
 言わずと知れたイギリスの大作家。フランスのジュール・ベルヌと並んでSF小説の祖と称される。中産階級の出身で、文筆業を選んだ理由はその境遇から逃れるためだったらしい。1895年に小説『タイム・マシン』を発表するまでは病気や妻との不仲に苦しんだ苦労の人である。卓越した想像力の持ち主で、戦車、飛行機、原爆などの登場を小説内で予言している。ちなみに「宇宙戦争」は機甲兵器を描いた世界初の小説だという意見もある。
 当時の社会問題に関心を持ち、その手の運動にも熱心に参加した。現代にも活動家の顔を持つ作家はいるが、ウェルズは実際にソ連のヨシフ・スターリンやアメリカのフランクリン・ローズヴェルトと会談しているのだから、そんじょそこらの運動家とは格が違う。小説「解放された世界」は日本国憲法の理念に影響を与えたとも言われる。一国の憲法に影響を及ぼす小説家なんて、そうそういないだろう。

登場人物

エドワード・プレンディック

 主人公。働かなくても生活できるという羨ましい身の上の人。

モロー博士

 マッドサイエンティスト。偏向報道の所為でイギリスを追い出された可哀想な人。

モンゴメリー

 モロー博士の助手。アル中。

従者ム・リン

 召使いをしている動物人間。モンゴメリーのお気に入りだそうな。

動物人間たち

 モロー博士が好奇心の赴くままに造った改造人間たち。
 牛人間、豚人間など60人以上いるらしい。

あらすじ

 海難事故に遭遇しながらも九死に一生を得た主人公エドワード・プレンディック。漂流する彼を助けた船は様々な動物を載せてとある島にむかう途中だった。しかし、助かったと思ったのも束の間、プレンディックは船長の不興を買い目的地の島に取り残されてしまう。しかも、その島に住んでいたのは悪名高い生理学者モロー博士だった。イギリスから追放されたモロー博士は、助手モンゴメリーと共に動物の人間化という狂気の実験をこの島で行っていたのだ。
動物人間たちはモロー博士を神のように崇め、彼らなりの〈掟〉を守って生活していた。しかし、破局はやってくる。マッドサイエンティストの多分に漏れず、モロー博士は自らの創造した動物人間に殺されるという悲惨な末路を迎える。博士の死後、日に日に獣に戻っていく動物人間たち。モンゴメリーも死に、プレンディックは命からがら島から脱出しイギリスへの帰国を果たす。けれども、彼の心は、モロー博士の島で起こった惨劇――動物への退化――が英国本土でも繰り返されるのではないかという不安に苛まれるのだった。

背景など

ダーウィニズム

 適者生存、自然淘汰によって生物の進化を説明しようとする主義主張。曲解すると優生学になる。19世紀末、障害者や病人を社会から排除することで人為的に人類の進化を促すべきかが大いに議論されていた。ちなみに、「劣等人種を粛清して云々」という考えは生物の多様性を損なうので、進化論的には誤りらしいです。

ジョン・ハンター

 作中、モロー博士はこの人の実験を基にして動物人間を造りだした。
 モロー博士のモデルとも言われ、優秀な人だったが、珍奇な実験も多数行った。解剖実験に使う死体を墓から盗み出すなど、現実世界のマッドサイエンティストとも言える人物。

感想

典型的マッドサイエンティストのモロー博士が素敵。動物の改造に対する自分なりの理屈を主人公に滔々と語る場面は、これぞ狂科学者といった感じで大好きです。後、動物人間の描写で自分に当てはまる部分があってギクリとしたり。意味の分からない単語を有難がったり、新語を作って悦に入ったりする猿男にならないように自戒したいものです。


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最終更新:2010年02月25日 15:46