「…なら、こっちのエーテル水にしておくんだな。あんたのいう新物質の実験にも使えるだろ。」
「ああ、恩に着るよ。…よっ、と。これがお代だ。」
「まいどあり。また来なよ、『先生』。」
「ハハ、俺はあんたの先生じゃないぜ?」
「いつも娘たちが世話になってるからね。まぁ、またな。」
「ああ、また。」
おおむねいつも通りのやりとりを終え、俺は店を後にした。
途端に潮の匂いが鼻を突いたので、さっさとこの場を離れることにする。
「妖獣」にとって強い匂いとは天敵なのである。
「…あー、そろそろ昼飯食わねぇと。」
いい加減腹が減った。
少し歩いたところのベンチで、持参したサンドイッチを食べることにする。
ハムとレタスを挟んだだけの簡単なものだが、多めに作って食べるのには都合が良かった。
「いただきます。」
早速一切れを手に取って、勢いのままに食べきる。
うーん、マヨネーズぐらいかけてもいいかもな、と思いながら二切れ目に手を伸ばした時、
「…あ」
「…!」
猫が今まさにサンドイッチを盗ろうとしていた。
「ほいっ」
「!?」
そしてあっさり捕まる猫。首根っこ掴んでひざに乗せてやった。
「相手を間違えたな♪」
「にゃーっ! にゃあ!(さっさと離せ! 離せったら!)」
「誰が離すかよ、観念し、ろ…あれ?」
「にゃー! ふーっ…(離せ! 引っかくわよ…!)」
こいつ、しゃべってる。
普通の猫は、中途半端に言葉を覚えるもんだから、かなりカタコトだったり、文法が変だったりするのだが…。
こいつはかなり流暢にしゃべる。
「おまえ、普通の猫じゃないな。」
「なー…!?(えっ…!?)」
おもしろい。いい者を見つけた!
この猫、持ち帰って調べてみよう。俺の食糧に手を出そうとしたあたり、泥棒癖があるかもしれないが、
もし何か新しいことが解れば、そのための出費と割り切れるはずだ。
今から思えば、この好奇心がいけなかった。
この拾い物が、俺の弟子になるなどと。
だれが想像出来ただろうか。
でも、悪い気はしてないがね。
最終更新:2011年07月25日 16:40