よく晴れた、夏の朝。
「くあ~ぁ・・・」
ギルドの寮の自室で、ソマリは間の抜けたあくびをしていた。
こんな晴れた日はあくびが出ても仕方ない。日が差した側からどんどん暖かくなる。いや暑くなる。
冷房がなかったらとても過ごせなかっただろう。かといって、あったらあったでなかなか外に出れなくなってしまうのだが。
「とりあえず、お手製フラッシュバンの続き続き・・・」
と、作業道具を出そうとしたところで、外が騒がしくなったのに気が付いた。
「むむ?」
どうも、廊下が騒がしいようだ。玄関まで近づいて耳を澄ませてみると、何人かが動き回っているようだ。
「いったい、何かしら?」
廊下に出てみると、作業着を着た者たちが、隣の部屋にせっせと家具を運び入れているところだった。タンス、冷蔵庫、ベッド・・・
「ねーねー、そこのお兄さん。」
「うん? どうした? ・・・じゃなかった、どうなさいました?」
「皆でなにやってるの?」
「えと、この部屋に新しいギルドメンバーが入ったんで、オプションの家具を運び入れているところですが。引越しを知らないの・・・ですか?」
中途半端な敬語の作業員から聞いて、ソマリはようやく作業の正体を知った。というのも、ソマリは引越し屋を見たことがなかったのだ。
一人納得したソマリは、
「ありがとね、お兄さん」
そう言って、ほんの少しのチップを渡した。チップを受け取った作業員の顔は少しだけ緩んでいた。
気が付けばお昼という頃合。
ソマリは自室での作業を止め、行きつけの食堂へ向かう支度をし始めた。
外は相変わらず暑そうだが、冷やし中華には変えられない。
ぐう、と腹の虫が鳴った時だった。
「ぴんぽーん♪」
玄関のチャイムが鳴った。
「はいはーい」
ソマリがいそいそと玄関のドアを開けると、
「あだっ」
「ほえ?」
何か悲鳴が聞こえた。
「え、えーっと・・・どちら様?」
一応たずねてみた。すると、ドアの影から、
「はじめまして」
そう言って、自分とそう変わらない背丈の少女が出てきて、ぺこりと頭を下げた。
「は、はじめまして・・・」
「私は、隣に引っ越してきました、霧島ユミネと申します。」
「あぁ、あなたが、あたしのお隣さんになる人ね。あたしはソマリ。」
「ソマリさん、ですね。ふつつかものですが、よろしくおねが「ちょっちょっと、何かそれ違うんじゃない?」
自分もよく分からないが、大きく間違えている気がするので慌てて介入。
「あれ? 初めての人と話す時はこう言うんじゃないですか?」
「場面が大分違うと思うわよ。」
「うーん・・・どうでしたっけ?」
「普通によろしくでいいんじゃない?」
「なるほど。そうします。」
落ち着いた声音だが、ユミネというこの少女は危なっかしい子だと思った。
と、
「「ぐぅ~・・・」」
盛大な腹の虫デュエット。
「・・・」
ユミネは照れのあまり、帽子で顔を隠していた。
その様子にソマリは火が付いた。
無論、いつもの悪いクセが出ようとしていたのである。
「お腹空いてるのね。ねぇねぇ、あたしこれからお昼を食べに行こうと思ってたんだけど一緒に行かない? もっと一緒に、お話しようよ(ニヤッ」
「え・・・良いのですか?」
「イイヨイイヨーゼンゼンイイヨードントコイダヨー」
「じゃあ、ご一緒します。支度するので少し待ってて下さいね。」
ユミネはそう告げて、自分の部屋へと入っていった。
「計 画 通 り」
ソマリは笑っていた。妙にリアルに。
そのことをユミネは知る由もなく。
「お待たせしました。」
「よーしっ、行こうっ!」
二人は寮を出て、炎天下の街へと繰り出した。
最終更新:2011年07月31日 19:11