ふうまの御館&キャスター ◆devil5UFgA
紅い満月の裏に、夥しい都市伝説が魔都に跋扈している。
それは、満月を隠す雲か。
それとも、満月が呼び寄せた妖しい星々か。
恐らく、両方だろう。
妖気は妖気を呼び、憎悪は憎悪を呼ぶ。
やがて、数多もの『不穏』が一つの渦となり、『災厄』が創りあげられる。
そうだ、災厄とは巨大な何かではない。
多くの闇が集まり、光を覆い隠すことで生まれるのだ。
◆
右目を不自然に瞑った隻眼の男が、夜明けを迎えた歌舞伎町の裏通りを歩いていた。
ゆったりとした暗色の服に隠しているが、見るものが見れば、隆々とした肉体の盛り上がりを感じ取れる。
左目から放たれる眼光は周囲の酔っぱらいの酔いを醒ますほどに鋭い。
過敏なまでの警戒心。
「キャスター」
眼光と同じく、短くも鋭い声が響く。
夜明けを迎えようとする朝日から隠れるように。
しかし、空に聳える紅い満月に照らされるように。
裏路地に、一人の男が現れた。
背の高い、痩せぎすの男だった。
褪せた茶色の外套に全身を隠し、その下に旧日本陸軍の軍服をまとっている。
軍帽の下には、骨にそのまま薄い皮膚を載せたような、そんな、精気のない顔が置かれていた。
人よりも亡霊に近い雰囲気を持った男。
だが、その男からは確かに妖気のような、得体のしれない邪気を放っていた。
「なんだ、『ふうま』の小倅」
目の前の痩せぎすの怪人こそが、聖杯戦争を成立させる幾多の英霊の一騎。
キャスターのサーヴァント。
そして、奇妙な隻眼の男こそがキャスターのマスター。
その名を……ここでは、『
ふうまの御館』としておこう。
かつて隆盛を誇り、しかし、時勢に従って没落した『ふうまの一族』の現当主である。
閉じられた右目は、ふうまが『邪視』の一族と呼ばれる要因である邪眼を制御できないため。
ふうまの御館の右目は、あまりにも不自然に金色に輝いているのだ。
勘の鋭いものならば、それが邪視の力であることを察するだろう。
「マスターと呼べ、俺の邪眼を悟られれば『コト』だ」
その意味も込めて、キャスターに釘を打つ。
「ハ、ハ、ハッ……怯えているのか?」
キャスターのサーヴァントは五芒星<ドーマンセーマン>の刺繍が縫い付けられた白い手袋を見せつけながら、薄い頬を引きずって笑みを魅せる。
目の前のサーヴァントは魔人だった。
ただ、東京を破壊するという意思だけに統一された、歪つながらも純正たる魔人であった。
聖杯は何を思って自らの元にこの魔人を遣わせたのだろうか。
現状、魔都とまで呼ばれる東京は自らの欲しているものだ。
東京を手中に収めるということは、即ち、闇の世界に置いて中枢を担うということなのだから。
「貴様のような男を呼べば、俺でなければ、誰もが怯むだろうな。
しかし、俺には東京が必要だ。あそこは、裏社会に置いてはもはや楽園だ。
その楽園を手中に納めれば、即ち、俺はこの世の主となれる」
ふうまは魔人を左目で見据える。
魔人はふうまの視線を受けて、薄い頬を緩ませた。
それが笑みだということに、ふうまが理解するのに僅かに時間が必要とした。
「お前に東京は必要なかろう。
上海でも、紐育でも、巴里でも、倫敦でも、好きなところに居を構えればいい。
しかし、お前がそうであるように、俺の怨念と憎悪は東京を求めているのだ」
「お前と同じにするな。俺には憎悪以外の信念がある」
苛立ちを覚えながら、突き放すようにキャスターへと言葉を投げ捨てた。
キャスターは頬をさらに釣り上げた。
相も変わらず、『それが笑みだ』と思わなければ笑みだとわからないような笑い方だった。
「いいや、お前もまた同じだ」
「クドい男だ」
「父もない、母もない。怨霊を父とし、憎悪を母として、この末世に生まれでた魔童子。
それが貴様だ、末法の世の何が貴様を縛り付けているのかは知らんがな。
貴様の本質は怨みと憎しみよ」
チッ、と短く、キャスターにも伝わるようにあからさまに舌打ちを行う。
その瞬間、ふうまの脳裏に過ったのは、一人の女。
自らの腹違いの姉であり、ふうまを人たらしめる唯一の要因。
あるいは、その『姉』が居なければ。
ふうまは、『ふうまの一族の再興』という目的すらも失うかもしれない。
己を己たらしめる、自分自身以上に『己』とも呼べる女だ。
「俺は違う。俺には女が居る」
「俺にも居た、思えば、始めから決まっていた女だった。正しく『俺の女』だった」
そう言うと、魔人はすっと遠くを眺めるように目を細めた。
感慨だろうか。
いや、違う。
そこに、穏やかなものはない。
憎悪と怨念、それを満たす一因。
愛した女すら恨んでいる、愛した女すら憎んでいる。
そして、己を高めている。
やはり、目の前のキャスターは究極の『怨霊』だ。
「聞け!ふうまの小倅!」
突如、キャスターが声をはりあげた。
空気を震わせる、怒声。
大地すらも震えた、しかし、それは声の物理的な振動によるものではない、当然ない。
それは共振。
空気を震わせた、『憎悪』の性質が、大地に眠リ続ける多くの『憎悪』を震わせたのだ。
「わが聖なる血を犯したる者達よ。
無数の邪を迎え入れ、我が呪いすらも貶めた者達よ。
我はこれより神の御子が想像した聖杯の力をもって、三千世界の帝都を灰燼に帰すであろう。
呪われよ、帝都……
二千年の永きに亘る、伏ろわぬ民の呪詛を聞け!」
影が蠢いた。
それは、宝具の発動の瞬間だった。
キャスターの宝具、『帝都物語』。
帝都物語の能力は、自らの存在する空間を『東京』へと塗り替える能力。
この瞬間、聖杯が創りあげた『東京のイミテーション』は『東京』へと姿を変えた。
『真なる東京』は、すなわち聖杯を極一部に置いて上回る神秘。
宇宙の介入は行われず、むしろ、バックアップを受け。
東京の大地霊と心を共にする。
キャスター――――
加藤保憲/平将門の『固有結界』は展開される。
数多の呪いが跋扈し、魑魅魍魎が蠢く魔都・東京。
大いなる大地すらも揺るがす、天・地・海、三匹の龍が破滅へと導く魔都・東京。
瞬きほどの時間も必要とせず、東京の紛い物は真なる魔都へと姿を変えた。
伏ろわぬ民が姿を表す。
水虎や土蜘蛛を代表とする、大和に『敗北』した者達。
彼らは決してキャスターの式神ではない。
彼らには彼らの思惑が有り、ただ、キャスターがより上位の伏ろわぬ民であるが故に従っているだけ。
しかし、同時に彼らの行動に対してキャスターは魔力の消費を必要としない。
「十分だ、キャスター」
闇の奥から光る赤い瞳を左目で捉える。
その異様な光に、つぅ、と僅かに汗を流しながら、ふうまはキャスターへと語りかける。
恐怖が流させた汗だった。
その恐怖が肉体を止めることを制御は出来たが、それでも完璧には消せない。
その消せなかった怯えが汗を流させたのだ。
「ここからは血肉震わせる地獄……何、いつもの東京だ」
「そうだ、ここは俺の知る、そして、おまえの知る東京となった。
神の御子に連なる、紛い物の東京ではない」
加藤が笑みを深める。
ふうまもまた、釣られるように笑みを深める。
なるほど、確かに加藤の憎悪にふうまも『共振』していた。
「力を手に入れる、実にシンプルだ。分かりやすいのが俺の人生だ」
「全てを滅ぼせ、その後は、好きにすればいい」
「勝つぞ、キャスター」
ふうまは踵を返し、歌舞伎町の表通りへと戻っていく。
加藤は霊体化し、不可視の存在へと戻った。
しかし、戻らなかったものがある。
今ココは魑魅魍魎が跋扈する地獄変。
地獄であることを思い出した、正しく『魔都』なのだ。
【クラス】
キャスター
【真名】
加藤保憲@帝都物語
【パラメーター】
筋力D 耐久C 敏捷E 魔力A 幸運C 宝具EX(B)
【属性】
混沌・悪
【クラススキル】
陣地作成:B
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
"工房"の形成が可能。
道具作成:D
魔術的な道具を作成する技能。
【保有スキル】
神性:A+
加藤は守護神である平将門の荒ぶる神としての一面を切り取られた存在である。
すなわち、神霊である平将門の分霊であるため、加藤は高い神性を持つ。
仙人:E
加藤保憲は秘術によって仙人の入り口とも言える尸解仙に達した存在である。
彼は超越者である仙人であり、より上位の神秘を持ってしなければ彼を殺すことが出来ない。
(ランク:Eの神秘に相当する攻撃では加藤を傷つけることも出来ない)
呪術:A
陰陽道、奇門遁甲、蟲術、あらゆる術を呪いのために用いることができる。
【宝具】
『帝都物語』
ランク:EX(B) 種別:対国宝具 レンジ:0~99 最大捕捉:1000人
加藤保憲の固有結界であり、同時に東京の守護神である平将門の固有結界。
常に同じ世界が展開される通常の固有結界とは異なり、『その時間軸における平将門が守護する東京』が展開される。
そのため、平将門を奉っていない時間軸、また『東京』がそもそも存在しない時間軸においては展開することが出来ない。
加藤は結界内において大和朝廷に貶められたまつろわぬ民と、天・地・海の『龍』の召喚を可能とする。
オカルトと科学が入り混じり、まつろわぬ民が跋扈する魔都・東京を塗り替えることにおいては特上の宝具である。
東京で展開されることで、世界にとっての『異物』であるが、同時に魑魅魍魎の跋扈する魔都・東京の紛れも無い『現実』でもあるために、神秘としての測定を不可能としている。
【weapon】
名刀・関孫六。
かつて三島由紀夫との魂をかけた勝負によって得た戦利品である。
【人物背景】
紀州・龍神村の生まれとされるが、詳しい出生などについては一切が不明である。
明治の初頭から昭和73年(1998年)にかけて存在した、大日本帝国陸軍の将校(少尉、後に中尉、戦後は自衛官)。
だが、正体は帝都・東京の滅亡を画策し暗躍した魔人である。
長身痩躯で、こけた頬にとがった顎、さっぱりとした刈上げといった容姿で、いかなる時代においても老いの感じられない外見をしている。
眼光は鋭く、体の大きさに似合わないほど軽い身のこなしが特徴的である。
黒い五芒星(ドーマンセーマン)の紋様がある白手袋を着用している。剣の達人で関孫六を愛用する。
その正体は東京の大地霊、平将門公の『東京への怨念』が形となって生まれい出た分霊。
【マスター】
ふうまの御館@対魔忍アサギ 決戦アリーナ
【マスターとしての願い】
己を主とした上での、『ふうまの一族』の再興。
【weapon】
忍者刀、及び、鍛えぬかれた肉体。
【能力・技能】
『邪眼・魔門』
自らの手で対象に触れることによって、対象が最も得意とする忍法/特性/能力を奪う事ができる。
【人物背景】
没落した忍者の血筋である『ふうまの一族』の末裔。
ふうまの一族を再興することを生涯の目的とし、隆盛を極めつつも退廃した魔都で暗躍する日々を過ごしている。
強い上昇志向を持ち、また、そのためには手段を選ばない非情な性格。
【方針】
聖杯を自らの手中に治める。
最終更新:2015年02月05日 02:50