【奥やんばる路線バスの旅】
第3話)漁船に同乗:定置網漁見学ツアー

《沖縄旅行記|やんばる|国頭村|大宜味村|辺土名|安田|名護|》

旅立つ前にネットで情報を調べていたら、やんばるの漁港で定置網漁見学ツアーがあることを見つけた。国頭村(くにがみそん)の東海岸にある安田(あだ)漁港から朝出港する漁船に同乗するツアーで、値段も一人当たり2500円とリーズナブルである。

やんばる旅行記|安田(あだ)漁港
安田(あだ)漁港

興味深い体験ではあるものの最小敢行人数が2名からとなっており、一人旅のオイラとしてはネックであった。だがめったに体験できないアクティビィティなので「割増料金でも構わないから一人参加できないか」と打診メールを送ってみた。

どうせダメだろうと思っていたら数日後「今回特別にお受けします」との返事が届いた。しかも通常料金でよいというから、まったくありがたい話だ

このツアーは漁師の仕事に同乗させてもらうものであり、実施されるのは魚のセリが行われる平日のみ。年末年始やゴールデンウィークなど旅行者が旅しやすい時期はやっていない。今回は飛び石連休をうまく活用して、祝日の間にある平日でブッキングできたのもラッキーであった。

わざわざ安田(あだ)に宿をとったのはこのツアーに参加するためだった。

 「明日は予定通り実施されます」

開催日前日、担当者から連絡が入った。自然が相手なので天候次第でキャンセルとなってしまう。予約が入ったからといっても体験できるか確約されないのだ。ちなみに後から聞いた話では先月・10月は天候不順などが続いて実際にツアーが実施されたのは僅か一回だけだったとのこと。実行されること自体非常にラッキーなのだ。

朝7時45分に受付を済ませ、漁船に乗り込む。

ちなみにこのツアーをアレンジしているのは、水族館に魚を卸す仕事を請け負っている会社で、あの美ら海水族館の魚も扱っているとのこと。鑑賞魚を仕入れる関係で各地の漁港とコネがあり、このようなツアーも始めたそうだ。 

やんばる旅行記|定置網漁の漁場に向かう漁船
定置網漁の漁場に向かう漁船

少しうねりがあるが20分ほどで定置網漁の漁場に着く。定置網には目印のブイが付いており、目視でもここに網があるということはわかる。だが、

 「漁船用のカーナビみたいなものがあって、どこに定置網が仕掛けてあるかモニターに表示されるんですよ。」

へえ、そんなものがあるとは知らなかった。

定置網は魚を網の奥に誘導する網と、集まった魚をすくいあげる網とに別れている。魚は網に沿って泳いでいく習性があるので、潮の流れなどを漁師の長年の経験と勘で読んで網を張り、魚を誘い込む。

やんばる旅行記|定置網
定置網

突然、漁師の一人が海の中に飛び込んだ!!

 「海の中に入っちゃうんですね」

 「今日は潮の流れが早くて船上から網を引っ掛けられないので、人が潜って網を引っ掛けます」

船の漁でも人が海に入ることがあるなんて全く知らなかったので、驚きだ。

やんばる旅行記|人が潜って網を引っ掛ける
人が潜って網を引っ掛ける

 「だんだんを網を絞り込んでいきますよ」

ウィンチを使って網が少しずつ絞り込まれていく。だが絞り込まれても魚影は一向に見えない。果たしてこんなんで魚は取れるのだろうか?

 「今日はちょっと魚が少ない感じですね」

少ないと言っても、まだ一匹も見えないじゃないか!! 大丈夫かな?

しかし網の絞り込みが進んでいくと、そこには魚影が踊っていた。体長1.5m近いツムブリやシイラ、そして最も多いのがダツである。ダツは鋭いクチバシを持つ細長い魚で、それがもうウジャウジャと超ダツ祭りである。

やんばる旅行記|網が少しずつ絞り込まれていく
網が少しずつ絞り込まれていき、やがてそこには魚影が踊りだす
やんばる旅行記|魚影が踊りだす

それらを船上から巨大なタモ網ですくい上げる。漁師が海に飛び込み、魚を掴んでタモ網に入れサポートする。船上に上がった魚は痛まないうちにすぐその場で活〆にする。巨大なマットレスの上に魚を並べ、金槌で脳天を一撃、そしてすぐに切り込みを入れ流水をかけ血抜きをする。

 「さあ、もう港に戻りましょうか」 

巻き上げた定置網を海に元に戻し、船は港に引き返す。だが漁師の仕事は終わらない。船上でひたすら取れた魚の処理をする。ダツなどは頭を切り落としその場でハラワタを抜き、流水で洗って何匹もまとめて巨大なビニール袋に詰め、冷凍にする。これらの作業が手際よく一気に行われる。

やんばる旅行記|取れた魚の処理をする漁師たち
取れた魚の処理をする漁師たち

港に戻る頃には魚の処理は終わっていた。取れた獲物を製氷車に詰め、セリの行われる漁港に運ぶのだと言う。

出港から港に戻るまで約2時間。短い時間ではあったが、定置網漁見学ツアーはめったに見ることのできないことを体験できる貴重なツアーであった。

(続く)


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最終更新:2021年01月10日 22:24