【奥やんばる路線バスの旅】
第6話)【奥やんばる路線バスの旅】農業体験に遅刻した!!
《沖縄旅行記|やんばる|国頭村|大宜味村|辺土名|安田|名護|》
「すいません!! 約束の2時までにそちらにたどり着けそうにありません」
オイラは大汗をかいて携帯電話をかけていた。
午前中、名護のお散歩ツアーに参加した後、午後からは名護市郊外にある農場での農業体験に申し込んでいた。農場はグーグルマップで見ると市内から3.8km。歩いても1時間以内、じゃ自転車なら楽勝だろう。そう踏んでチャリを借りて向かったのだが、ところがどっこいグーグルマップの示す通りに進んで行っても、実際は細い道の中に入り込んでしまい、思った通りの方向に進まない。
農場への道のり:マップの示す通りに進んでも、思った通りの方向に進まない
仕方なく遠回りではあるが迂回して分かりやすい大通りに沿って農場に向かったら、その大通りの途中は自動車専用道路になっていて自転車が入れない。ヤバイ!! あと15分しかない。だが2時までには絶対たどり着けない。
「あとどのぐらいで到着しそうですか? オリオンビール工場の道を道なり添って進んでってください」
「何時に着くかわかりませんが、とにかくもう一度街に戻って、ビール工場からそちらに向かってみます」
そう応えて、一旦街に戻って再度ビール工場近くの道を進む。だがこの道は登り坂がずっ~と続いている。車で行くなら楽勝だが自転車にはきつ過ぎる。
最初は自転車をこいでいたがもうダメだ。途中からトボトボと押して歩いていく。もちろん約束の2時に間に合うはずもない。この手の体験ツアーというものは農家の仕事の邪魔にならないよう見学させていただくものだ。こちらの到着が遅れれば農家さんに迷惑をかけてしまう。マズいなあ。
なんとか山道を押し歩き、道路脇に目指す農場の標識が見えてきた。地図上では街中からたった3.8kmだが、農場は小高い丘の上にあったのである。やんばるの自然をなめてはいけない。
「すいませ~ん、遅くなりました」
農場の小屋の中にいた農家さんに頭を下げると、テレビを見ながらお茶を飲んでいた。あれれ、そんなに忙しそうではないな。さては農閑期だったか。
「ここまで自転車で来たんですか!! 大変でしたね。まずはお茶でも飲んでって」
農業体験に来たのに、なんだか知り合いの農家の家に遊びに行ったような感覚である。
「じゃ、ちょっと行ってみる」
とカマを持ってサトウキビ畑に向かった。サトウキビを刈るカマは先端が二股に分かれていた。その二股の間にカットしたサトウキビを通して余分な葉を落とす仕組みだ。
何本か収穫しただけであっという間に疲れてしまった。もちろん今は機械で収穫するのだが、機械のない時代はこの広大な畑のすべてを手作業でやっていたかと思うと気が遠くなる。
モオ~
近くで牛の声が聞こえた。サトウキビの余った葉は牛の飼料になる。牛小屋に葉っぱを持っていくと、巨大な牛が起き上がり、バクバクとサトウキビを食べ出す。アワワ、凄い迫力だ。
「この辺はイノシシが出て、サトウキビを食べちゃうんですよ。だからワナを仕掛けて捕まえるんですよ」
農場には捕まえたイノシシも飼われていた。市街からわずか3.8km離れたところに、ものすごく濃い自然が息づいていることを知る農業体験であった。
最終更新:2021年01月16日 18:21