【二輪で行こう! 五島列島の旅】
第3話)体力or財力? 五輪教会への道
《五島列島|下五島|奈留島|久賀島|福江島》
五島列島3日目。拠点としている福江島から今日は日帰りで隣の久賀島(ひさかじま)に向かう。久賀島には世界遺産に指定された旧五輪教会がある。
久賀島の玄関である田ノ浦港から旧五輪教会までは15kmほど離れており、公共の交通機関はない。教会を訪れるのに楽なのはツアーやタクシーを利用することであるが、結構なお金がかかる。カーストの低い旅行者に残された道は、福江島でバイクか自転車を借りてそのまま船に乗り、久賀島内の交通手段にしてしまうという方法だ。
五島列島の島々は起伏が激しい。なので久賀島にもスクーターを借りて行こうと思っていたのだが、あいにくゴールデンウィークで久賀島に行く日のスクーターはどこも予約でいっぱいだった。
さあどうする?
最後の手段は自転車だ。福江港ターミナルにある観光協会の事務所で電動アシスト自転車のレンタルを行っていた。あまり台数は多くないとのことで、事務所のオープンは9時ではあるが8時15分頃に行ってみるともうすでに人が並んでいた。8時半から受付が開始。レンタル自転車は8台しかなかったが、オイラはギリギリの7番目であった。危ない危ない。
久賀島(ひさかじま)へ行く船の中で、同じように自転車を載せた女性2人組と出会った。彼女達は体力に自信がないとのことで、田ノ浦港から五輪教会までの片道は自転車を使い、帰りは海沿いに面した五輪教会の近くの漁港から船上タクシー(!!)をチャーターして戻ると言う。
久賀島の起伏は激しそうだ。電動アシスト付とはいえ往復とも自転車はしんどいなぁと思っていたので、帰りの船上タクシーをシェアできたら楽かもしれないと思い値段を聞いてみた。
「船上タクシーは¥15,000です。」
あわわ!! ¥15,000!! 仮にこれを3人でシェアするとなるとオイラの負担は¥5,000!! 払えません。 オイラは行き帰りとも自転車で行くことを覚悟した。
田ノ浦港は久賀島の玄関なのに、桟橋と小さな待合室を除いて何にもないところであった。そしてそこからの道のりを見てオイラは呆然とした。すっげー 山道じゃん!!
だがそれでも電動アシストがあるのと無いのでは大違いだった。
アシストのスイッチを入れると今にも止まりそうではあるが、なんとか前に進もうとする。その動きをフォローするように漕いでやると、本当にゆっくりではあるがさほど体力を使わず坂道を登れる事が分かった。
ただ怖いのは電池切れである。観光局の人から「電動スイッチを入れたままだと午前中にバッテリーが無くなってしまうから気をつけて」と忠告されていた。なので下り坂はもちろん、多少緩やかな上り坂でも電動スイッチを切って走った。
一つ目の峠を越えると、隠れキリシタンが迫害にあった牢屋跡の史跡が見えてきたので立ち寄る。
隠れキリシタンが迫害にあった牢屋跡の史跡「牢屋の窄殉教記念教会」
その後ものどかな田舎道をゆっくり進むと蕨という集落にたどり着く。その後は細い山道を登っていく。野鳥がさえずる自然林の中を進み駐車場にたどり着くと、後は徒歩で海岸沿いまで降りていく。細い山道を下って海辺に達すると、小さな入り江の奥にひっそりと世界遺産・旧五輪教会が佇んでいた。
たが、ここまでたどり着くともう脚はガクガク。ヘトヘトに疲れ切って、もうまるで気分はアスリートだ。
ん? 待てよ。 アスリート?
そうか、合点がいった!!
だってここは五輪教会。五輪にたどり着けるのはアスリートだけなのは当然じゃん!!
生半可な気持ちでは訪れることのできない五輪教会は、静かにそして厳かに、僻地の離島のさらに僻地の海辺で、訪れる者を体力or財力で厳しく選別していたのであった。
五輪教会脇の漁港にツアー客は船上タクシーでやって来る
教会脇の漁港には財力のあるツアー客が船上タクシーから降りてきた。嗚呼、あのボートで戻れたらさぞかし楽だろうなあ。
無論財力のないオイラは体力を使って、復路15kmの山道を自転車で戻らねばならないのであった。
最終更新:2022年05月18日 22:54