東方萃夢想 八雲紫編
――博麗神社。幻想郷の辺境に存在している神社である。
予定通り行われた宴会はいつもより盛大な物となった。
何故なら、いつもは居なかった紫と萃香、それと……
不思議な瓢箪が加わったからである。
最初は酒を取り上げられた事で一触即発な雰囲気を醸し出していたが、
紫と萃香が乱入すると、紫に持っていかれたお酒も無事だと判り、すぐにそ
の場は収まったのである。現金なものだ。
紫はみんなにお酒を奪った理由を、萃香が持っている鬼宝「伊吹瓢」を、
奪う為のおとりに使った、と説明したものだった。
霊夢 「凄い……。この瓢箪、幾らでもお酒が出てくるわ」
魔理沙 「瓢箪の中を見てみたいぜ」
咲夜 「アルコールランプにも使えるかもしれないですわ」
みんな、無限にお酒が湧いて出てくる不思議な瓢箪に夢中だった。
レミィ 「あれ? もう出て来なくなったけど……」
魔理沙 「うわ!何やってるんだよ。中身を捨てるな、勿体無いなぁ」
霊夢 「大丈夫。そこの砂利は水捌けが良いの」
魔理沙 「幾ら無限に湧くったってなぁ」
萃香 「あ~ひっくり返しちゃ駄目~。
TILTが働いたのね。
転倒防止で一度に瓢箪以上の量は出て来ない様になってるの。
そういう時は栓をして振ると……」
レミィ 「あ、チャプチャプ音がしてきた!」
萃香 「ね、すぐに満たされるの。心のスキマ」
咲夜 「って、また捨ててはいけません。お行儀が悪いですわ」
レミィ 「だって……面白いじゃないの」
幽々子 「ところで、紫がさっき言ってたいた理由……。
本当は違うんでしょ?」
紫 「このお漬物は美味しいわね」
妖夢 「神社の漬物だそうですよ。それよりもあの瓢箪、凄いですね!」
紫 「そうでしょう?
だから何とかして引っ張りだそうとしたの」
幽々子 「いつから妖怪はこんなに嘘吐きばかりになったのかしら?」
「伊吹瓢」と呼ばれたこの瓢箪は、見た目は普通、もしくは普通以下の瓢箪
だったが、その不思議さでは群を抜いていた。
それもその筈、この道具は鬼の品だったのだ。
パチェ 「それにしても、何で瓢箪なのかしら?」
アリス 「そんなの簡単じゃない。
くびれている部分にビー玉が入っているのよ」
妖夢 「って、ラムネじゃないんだから」
パチェ 「そういう意味じゃなくて……
何で剣じゃ無いんだろうと思ったの」
アリス 「剣?何言ってるの?剣からお酒?」
妖夢 「って、何で剣から何かが出る必要があるのよ。剣は斬る物!」
パチェ 「お酒好きの化け物を、お酒で釣って退治して出てくるものって……
剣でしょ?」
紫 「あら、私はスサノオね」
暫くの間ずっと連続していた宴会も、この宴会を境に減っていくだろう。
最も盛り上がったこの宴会を最後に。
紫以外には宴会の回数が減った理由も、そもそも多かった理由も判らなか
った……
萃香も伊吹瓢も、今の幻想郷には居ないはずの代物だった。
別の世界のものは、既に調和の取れた幻想郷に取って、異物でしかない。
外来品と同じで、余り流れ込み過ぎては、閉ざされた幻想郷には良くないの
である。
だから、転倒防止機能が働いてお酒も一気には流れ出ないのだ。
力も同じだった。
萃香の力も誰も止めないまま、あのまま流れ続けていたら……。
転倒防止機能が働いてしまって居たのかも知れない。
Ending No.2 (Yukari Ending) ―― Congratulation!
最終更新:2011年02月11日 23:38