本編32~38

『復活へのレース』

 作者・凱聖クールギン

32

V3とゲルドリングの交戦から数時間後――。

風見志郎が運転する赤いジープは、
助手席に結城丈二、後部座席にメタルダーとスプリンガーを乗せ山道を進んでいた。
舗装されていない砂利道は路面状態が悪く、車体がガタガタと揺れている。

スプリンガー「仮面ライダー、って言ったか…。
 あんた達はメタルダーを知ってるのかい?」
風見「いや、前から知っていた訳じゃないんだがね。
 色々と調べている内に、君達の情報に行き着いたのさ」
結城「アメリカにいる本郷さん――仮面ライダー1号から連絡があったんだ。
 俺達仮面ライダーが過去に倒して来た悪の組織……いや、彼らだけじゃない。
 これまでこの世界に現れたあらゆる闇の軍団が蘇って結集し、再び動き出している、と」
メタルダー「それが、タグスキーの言っていた…」
結城「そう、ガイスト・ショッカー――新たなる人類の脅威だ」

RXが日本で、1号と2号がアメリカでGショッカーと交わした戦闘について、
風見と結城は自分達が知らされた情報を語った。
それはこれから全世界――いや、全宇宙を包もうとしている空前の動乱の序曲なのだ。

結城「俺達は本郷さんから連絡を受けて、日本でGショッカーの行動を調査していた。
 そして行き当たったのが、あのネロス帝国の存在という訳だ。
 奴らは君を回収して改造し、悪の戦闘兵器に生まれ変わらせる事を企んでいた」
スプリンガー「だからあんた達は先手を打ってメタルダーを匿い、
 メタルダーがネロスの手に落ちるのを防ごうとしたのか」
結城「そう。そして流星君、もし君が望むなら、
 俺達は君を修理し、正義の超人機としての君の力を取り戻す手助けをしたい」
メタルダー「僕の超重力エネルギー装置を、直してくれるのか!?」
結城「ああ。Gショッカーは計り知れない程の巨大な帝国…。
 俺達は、このかつてない戦いに君にも力を貸してほしいんだ。
 そのために俺達が力になれるなら喜んで協力する。
 もう一度、超人機となって俺達と共に戦ってくれるか、メタルダー」
メタルダー「勿論だ。ありがとう」

結城が差し出した右手を、メタルダーは強く握る。

スプリンガー「でもあんた達、腕は確かなんだろうな?
 言っとくが、古賀博士の作ったメタルダーの回路は只物じゃないぜ」
結城「実は俺はデストロンの科学班出身でね。
 古賀博士の超人機計画については、デストロン時代に資料を入手している。
 それをロボット工学者の知人に見せたら、
 確かに凄い回路だが、まあ何とかしてみせるって答えをもらったよ」
風見「結城には科学者繋がりで人脈があるからな。
 今回はその人の力を大いに借りる事になりそうだ。
 また新しい仲間にも会えるだろうから、楽しみにしとくといいぜ」
スプリンガー「へぇ、でも何でそのデストロンってのが古賀博士の資料を持ってたんだ?」
風見「デストロンの源流はショッカー。ショッカーの母体の一つはナチスの残党だ。
 超人機計画が戦時中の日本で進められていたものなら、
 ナチスの連中がそれを知っていてもおかしくはないだろ?」

第二次世界大戦中、ドイツでは改造人間、日本では超人機が時を同じくして開発されていた。
当時のドイツと日本が同盟国だった事を考えれば、
両国の軍部科学班の間でそれらに関する情報や技術の交換があっても不思議ではない。

スプリンガー「じゃあメタルダーとあんた達仮面ライダーも、
 言ってみりゃちょっとした親戚みたいなモンって訳か。
 いろんな縁があるもんだな…」

ジープが大きく揺れて砂利道からアスファルトの舗装道路へ入る。
街が近い。風見がアクセルを踏み込むと、ジープは硬い路面を蹴るように一気に加速した。

33

ネロス帝国基地・ゴーストバンク。
そこは正に、百鬼魔界と呼ぶべき悪の牙城。
ヨロイ軍団、戦闘ロボット軍団、モンスター軍団、機甲軍団――。
4軍団、総勢30名を超える精鋭の軍団員達が帝王ゴッドネロスの玉座の前を埋めている。
「――ネロス! ネロス! ネロス! ネロス!」
帝王とその帝国を賛美する軍団員達の声がひとしきり収まると、
ヨロイ軍団凱聖・クールギンは一歩進み出てゴッドネロスに報告を行った。

クールギン「帝王に申し上げます。
 我が部下、タグスキーとタグスロンによるメタルダーへの降伏勧告は失敗に終わり、
 メタルダーは帝王への臣従を拒否。
 タグ兄弟はモンスター軍団及び機甲軍団の助力を借りてメタルダー抹殺を図りましたが、
 仮面ライダーV3に妨害され、これも失敗したとの事に御座います」

モンスター軍団及び機甲軍団の助力を借りて――。
さりげなく抜け駆けを強調して報告を行ったクールギン。
彼の隣に並び立つゲルドリングとドランガーは平静を装いながらもややたじろぐ。

ゴッドネロス「メタルダーめ…。
 あくまでも余に楯突くつもりならば、生かしてはおけん。
 直ちに行方を追い、仮面ライダーともども抹殺せよ!」
 「オーッ! ゴッド・ネロス! ゴッド・ネロス!」

ゴッドネロスの命令に、全軍団員が拳を突き上げて応えた。

ドランガー「では直ちにバーベリィとストローブを飛ばし、
 メタルダーの行方を突き止めます!」
ゲルドリング「どうやらワシらモンスター軍団に復讐のチャンスが来たようじゃけんのう。
 今度こそメタルダーと、あの憎たらしいV3の首を引っこ抜いてやるんじゃ!」

威勢良く言ったゲルドリングだが、ゴッドネロスは沈黙し答えない。
そこへ戦闘ロボット軍団凱聖・バルスキーが口を挟んだ。

バルスキー「抜け駆けが失敗しておきながら未練がましいぞゲルドリング。
 帝王、ここは我ら戦闘ロボット軍団にお任せを」
ゲルドリング「何やてぇ!?」
バルスキー「我ら戦闘ロボット軍団は帝王の御命令に従い戦力を温存した。
 モンスター軍団が仮面ライダーV3に敗れた今こそ、我々の出番であるはずだ」
ゲルドリング「おうおう、言いよるなぁバルスキー。
 だったら勝負じゃ! ガマドーン!!」

ゲルドリングに呼ばれて、群衆の中から大柄なフグのような怪物が進み出る。
その名はモンスター軍団雄闘・ガマドーン。

バルスキー「いいだろう。ジャース!」

バルスキーに指名され、2門のビーム砲を肩に掛けた白い装甲の機械兵が推参する。
戦闘ロボット軍団雄闘・ジャースである。

クールギン「よし、勝負を始めよ!」

クールギンの一声で軍団員達が素早く下がって人の輪を作り、
その中でガマドーンとジャースが対峙する。
ネロス帝国独自の風習、刺客の人選を決めるための御前試合が開始された。

ジャース「悪いが、一撃で終わらせてもらうぞ」
ガマドーン「おっと、そうは行かねえ!」

両肩のビーム砲にエネルギーをチャージしたジャースに向けて、
ガマドーンは口から粘性のスライムを吐き出し、左右の砲塔に浴びせかける。
ビーム砲に蓋をされてたじろぐジャースに、ガマドーンは左手の鞭を巻きつかせた。

ジャース「くっ…!」
ガマドーン「ギャハハハハ! これでお前さんの武器は撃てねえだろう。
 さあて、今度は俺様の番だなあ!」

右手を巨大な鋏に変え、動きを封じられたジャースにじわじわと迫るガマドーン。
鞭から流れる電撃がジャースの回路を痛めつける。
だが至近距離まで迫った所で、ジャースは突如、口から隠し武器の火炎を噴射。
ガマドーンにダメージを与えると同時に、絡まっていた左手の鞭を焼き切った。

ガマドーン「グハァッ!!」
ジャース「油断したな。こんな物は子供騙しだ!」

ジャースの砲塔に紫電がほどばしり、付着したスライムを瞬時に蒸発させる。
2門のビーム砲が、怯んだガマドーンに照準を合わせた。

クールギン「それまで! ジャースの勝ちだ」

ジャースの光線が発射される直前、クールギンがストップをかけ勝敗を裁いた。
囲みの戦闘ロボット軍団員達が歓声を上げ、モンスター軍団員達は悔しそうに嘆息する。

ゲルドリング「ええ~い、おんどれぇ!」
バルスキー「ようし、よくやったジャース!」

囲みが集束して再び全軍団員が整列する。
ゴッドネロスの玉座の前に、勝者のジャースは恭しく進み出て跪いた。

ゴッドネロス「雄闘ジャース…。必ず、メタルダーを討ち取るのだ!」
ジャース「ははっ!」

34

東京・代々木***


それは言うなれば、六本の足を宙に浮かせながら残る二本の足で直立する蛸の怪物。
突如、東京都内に出現したGショッカーの殺戮者――。
グロンギ族のタコ種怪人ズ・ダーコ・ギは、
通行人を次々と襲い、口から吐く焼けるように熱い墨で跡形もなく溶かし殺害していた。

バルバ「バギング ゲギド ジバンゼ 
 バギング バギング ゲヅン ビンザ(72時間で567人だ)」
ダーコ「パバデデ ギス(分かっている)」

バラのタトゥーの女――ラ・バルバ・デが今回のゲゲルの条件を復唱し、
そのまま遠くへ飛び退って死亡者のカウントを続ける。
彼らグロンギ族にとって、殺戮の数を競うゲゲルは遊戯であり、
また階級の昇進を決めるための儀式でもある。
72時間で567人。昼間の公園は存外に人気がなく、まだ1時間で37人しか殺していない――。
己に課せられたノルマを消化すべく、次の獲物を求めて彷徨い歩くズ・ダーコ・ギ。
触手のように揺れ動いていた足の一本に、飛来した一枚のカードが手裏剣の如く突き刺さった。

ダーコ「――ザセザ!?(誰だ!?)」

ズ・ダーコ・ギが振り向いた先に立っていた人影。
紫色の硬質なボディが陽光を眩しく反射し、ゴーグルに隠れた黄色の目が明るいライトのように点灯する。
人間ではない――。予期せぬ乱入者の出現にたじろぐズ・ダーコ・ギに向かって、
正義の威光を湛えた紫色のロボットは名乗った。

ジャンパーソン「JANPERSON, For Justice!」

腰のホルスターからジャンデジックを取り出し、
ズ・ダーコ・ギに向けて弾丸を連射する特捜ロボ・ジャンパーソン。
999連発のビーム弾が数秒の内に撃ち込まれ、激しい火花を散らす。
だが、ズ・ダーコ・ギはそれでも怯まず体当たりを仕掛けて来る。

ジャンパーソン「ジャスティック!」

素早く特殊警棒・ジャスティックに武器を持ち替え、接近戦に移るジャンパーソン。
電流を帯びたジャスティックとズ・ダーコ・ギの六本の足が何度も斬り結ぶ。
手数の多さで斬撃戦を圧倒するズ・ダーコ・ギだったが、
ジャスティックを何度も受け止めた足は次第に電撃に耐えられなくなり白煙を上げ始めた。

ダーコ「ボギヅゾ ブサゲ(こいつを喰らえ)!」

不利を悟り、後退して間合いを取り直したズ・ダーコ・ギは口から溶解墨を噴射。
咄嗟にかわそうとしたジャンパーソンだが、避け切れず右腕に墨を浴びてしまう。

ジャンパーソン「くっ…、腕が溶かされる!」

まるで熱湯をかけられたかのように右腕が熱い。
ジャンパーソンの右肘から下は表面が溶けて内部のメカニックもショートし、
指に力が入らなくなってジャスティックを地面に取り落とした。

ダーコ「ログ ヅギザ ビギセラギ(もう武器は握れまい)
 ドゾレゾ ガギデジャス(止めを刺してやる)!」

ダメージを受け苦しむジャンパーソンに、ズ・ダーコ・ギはじわじわとにじり寄る。

ダーコ「ギベ(死ね)!」

再び溶解墨を噴射しようとするズ・ダーコ・ギ。
だが次の瞬間、横から飛んで来た2発の弾丸がズ・ダーコ・ギの口元を撃った。

35

黒と銀のメタリックボディが逆光に霞む。
二丁拳銃の射撃の名手、ガンマンロボ・ガンギブソンが、
自慢の愛銃・ガンボルバーとブローソンを両手に構えこちらを見据えていた。

ジャンパーソン「――ガンギブソン!」
ガンギブソン「Hey! 大丈夫かジャンパーソン!」

ジャンパーソン「よし、ニーキックミサイル!」

ズ・ダーコ・ギの一瞬の隙を突き、ジャンパーソンは折り曲げた右足の膝からミサイルを発射。
至近距離から炸裂したミサイルの爆発が、ズ・ダーコ・ギを吹き飛ばした。

ガンギブソン「罪のない人達を大勢殺しやがって…。
 覚悟しろよ、蛸の怪物野郎!」

倒れたズ・ダーコ・ギに向けて、ガンギブソンはガンボルバーを発砲。
ガンボルバーのホーミングブリットは発射後、銃にある十字キーで遠隔操作が可能なのだ。

ダーコ「グァァァァッ!!」

ガンギブソンに操られ魔球のような軌道を描いた弾丸は、
ズ・ダーコ・ギの口から体内へ飛び込んで着弾。
ズ・ダーコ・ギの墨袋を中から破裂させ、溶解墨を体内に漏れ出させた。

ダーコ「ギ…グォォ……ガァッ…!」

口からどす黒い墨をどくどくと流し、それに自らの身を焼かれて溶けて行くズ・ダーコ・ギ。

ゲゲル失敗――。
ムセギジャジャ(ゲゲルプレイヤー)の死を見届けたラ・バルバ・デは、
無言のまま素早くその場を立ち去った。

ガンギブソン「待てっ!」

不審なバラのタトゥーの女を追おうとするガンギブソンだが、敢えなく見失い、
負傷しているジャンパーソンの元へ駆け戻る。

ガンギブソン「酷くやられたな。大丈夫かジャンパーソン」
ジャンパーソン「ああ…。腕を溶かされた。
 帰ってかおるに修理してもらおう」
ガンギブソン「ああ、かおるだったら今は留守だぜ?
 何でも、ロボットを修理してくれって依頼が誰かさんから来たそうでな。
 新しい仲間になるから後で紹介するとか言いながら、朝からどっか行っちまったよ」
ジャンパーソン「新しい仲間…」
ガンギブソン「詳しい事は俺も知らねえけどな。
 しかし、さっきの奴らは一体何者だったんだ?」
ジャンパーソン「分からない。だが今までの敵とは明らかに違う相手だった…」

新たな仲間、新たな敵。
ジャンパーソンとガンギブソンにとっても、かつてない戦いの火蓋が切られつつあったのである。

36

風見志郎が運転するジープは、郊外にある秘密のアジトに到着した。
ここは結城丈二の研究所も兼ねていて、
地下室には改造人間やロボットを修理するための機械類が一通り揃っている。
結城が地下室のドアを開けると、そこには白衣を纏った一人の女性の姿があった。

三枝「お待ちしていました、結城さん。
 無事にメタルダーの身柄が確保出来たんですね」
結城「三枝さん、しばらく。
 …紹介しよう。元国連所属のロボット工学者・三枝かおる博士だ。
 彼女は以前、あのジャンパーソンの開発にも携わっていてね」
メタルダー「ジャンパーソン?」
風見「知らないか? 君と同じ正義のロボット戦士さ。
 まあ、俺もまだ実際に会った事はないんだが、今度の戦いではきっと手を組む機会もあるだろう」
三枝「あなたがメタルダーね。話は結城さんから聞いているわ。
 ジャンパーソン達もあなたに会えたらきっと喜ぶはずよ。
 それにしても、第二次大戦中に古賀博士が作った超人機…。興味あるわ~」
メタルダー「…よろしくお願いします」

ロボット工学者としての好奇心を隠さずボディに手を触れてくる三枝にやや戸惑いながら、
メタルダーは小さく頭を下げた。

三枝「そうそう、それで、
 結城さんに依頼されていた超重力エネルギー装置とその制御装置ですけど」

そう言って足下の大きなアタッシュケースを開け、中の装置を見せる三枝。
メタルダーの体内に埋め込まれている、今は傷付いた装置と全く同じ物がそこにあった。

風見「おお、完成したんだ」
三枝「苦労したんですけどね…。
 戦時中の開発とは思えないほど、複雑で高度な回路でしたから」
結城「ありがとう。さすがジャンパーソンを造った三枝さんだ。
 これでメタルダーの力を再生する事が出来る」
メタルダー「これは……僕の超重力エネルギー装置」
結城「俺が三枝さんに頼んで作ってもらった、君のエネルギーを司る新しい装置だ。
 破壊された君の古いエネルギー装置を取り外し、こいつを代わりにセットする」
三枝「私も手伝わせて頂くわ…。よろしくねメタルダー」
メタルダー「はい、こちらこそ、お願いします!」
スプリンガー「おいおい、こりゃ本気でメタルダーが完全復活かよ…。
 凄い……こいつは凄いぜ!」

こうしてメタルダー復活のための手術が開始された。
手術台の上に横たわり、麻酔をかけられたかのように機能を一時停止するメタルダー。
結城と三枝はその胸板を取り外し、内蔵された超重力エネルギー装置の切除にかかる。
それが完了すると、今度は新しい装置を代わりに入れ、周囲の電線と装置を接続する作業。
加えて、タグスキーの剣で傷付いたボディの修理も…。
手術は数時間に及んだ。


その頃、外では――。

バーベリィ「間違いない。メタルダーはここだ」

駐車していた赤いジープを見止め、ネロス帝国の機甲軍団雄闘・バーベリィが拳を握る。
軍団長ドランガーの指令でメタルダーの行方を空から追っていた彼は、
背中のプロペラを回転させて旋回しつつ、刺客として待機中のジャースに連絡を入れた。

バーベリィ「こちらバーベリィ。メタルダーの居場所はポイント14だ」
ジャース「了解。直ちに急行する!」

連絡を受け、ダークガンキャリーに乗り込むジャース。
純白の砲兵を乗せ、漆黒の戦闘用ワゴン車はポイント14にある結城の研究所へ向かった。

37

同時刻――。
数年振りに日本へ帰国した筑波洋=スカイライダーはV3達と合流すべく、
山林を貫く国道をバイクで急いでいた。
Gショッカーというかつてない巨大な悪の鼓動を察知して、
世界各地に散っていた仮面ライダー達も徐々に集結し臨戦態勢を固めつつあったのだ。

筑波「ん、あれは…?」

普通の人間なら聞き逃すであろう小さな風切り音を上空から耳にキャッチし、バイクを止める筑波。
視線を上げると、白い雲の隙間を抜けて行く謎の黒い飛行物体が見える。
まるでヘリコプターを擬人化したような姿のそれに、筑波は直感的に悪の気を感じた。

筑波「さてはGショッカーか…。よし、追ってみよう」

豪快にエンジンを吹かし、筑波のバイクは再び勢い良く走り出した。

 ◇  ◇  ◇

昼間の山道は車一つ通らず、閑散としている。
だからこそ、そこを疾走する一台のバイクの音にバーベリィは敏感に反応した。

バーベリィ「さっきから俺を追っているな…? 何者だ」

体内のセンサーをバイクの運転手に定め、分析する。
通常の人間からは感知されないメカニック反応――相手は改造人間である。

バーベリィ「ふむ、さては仮面ライダーの仲間だな?
 ようし、血祭りに上げてやる!」

ゴーストバンクへ帰還するのに丁度良い手土産が転がって来たようだ。
素早く旋回して方向転換し、バーベリィはそのバイクに正面からミサイルを発射。
標的へ向け正確な軌道を描いたミサイルは、着弾と同時に大爆発を起こした。

バーベリィ「やった! 仮面ライダーを一匹討ち取ったぞ!」

だが、濛々と立ち込める爆煙の中から、バイクのエンジン音が更に唸りを上げて響く。
バーベリィが異変を感じた瞬間、煙の中で一筋の閃光がスパークした。

筑波「――スカイ・変身!!」

飛蝗を模した明るい緑色のマスク、赤く大きな複眼。
スカイターボで爆煙の中を突破して、仮面ライダー8号・スカイライダーが姿を現した。

バーベリィ「喰らえ!」

腕からミサイルを連射するバーベリィ。
疾走するスカイターボの前後左右で爆発が連続する。

スカイライダー「トォッ!!」

咄嗟にスカイターボからジャンプして爆撃を逃れるスカイライダー。
空中で両手を広げ飛行姿勢に入ると、そのまま高度をどんどん上げて行く。
セイリングジャンプ――。
ベルトに備わった重力低減装置の力で、スカイライダーはその名の通り空を飛ぶ。

バーベリィ「よし、来い!」
スカイライダー「行くぞ!」

ヘリコプター型ロボットのバーベリィにとっても空中戦は本領である。
両者は交錯しながら壮絶なシザーズを展開した。
やがて、振り切ろうと加速したスカイライダーの背後をバーベリィが取る形となり、
高度を下げて山陰に隠れようとするスカイライダーを発射されたミサイルが追尾。
谷間に起こった大爆発が、瞬く間にスカイライダーを呑み込んだ。

バーベリィ「どうだ!」

勝利を確信するバーベリィ。
だが、爆発を潜り抜けたスカイライダーは山を大きく一周して側面に回り、
斜め下からバーベリィを奇襲の体当たりで吹っ飛ばした!

バーベリィ「おおっ…!」

敵を突き抜けるようにして、更に上空高く飛び上がるスカイライダー。
怯んで飛行が不安定になっているバーベリィに向けて、今度は一気に急降下する。

スカイライダー「スカイ・バックドロップ!」
バーベリィ「ぐわぁぁぁぁっ!!」

強烈なバックドロップの一撃がバーベリィの背中を打つ。
背中のプロペラを叩き折られて、バーベリィは黒煙を上げながら墜落して行った。

スカイライダー「Gショッカーは動き出している…。
 急いで風見先輩達と合流した方が良さそうだな」

自動操縦で走り続けていたスカイターボに空から飛び乗って、
スカイライダーはV3達が待つアジトへ向かった。

38

○仮面ライダーV3&ライダーマン→メタルダーをアジトへ迎え、三枝かおると合流。
 メタルダーの新エネルギー回路の接続手術を行う。
○スカイライダー→バーベリィを発見して撃墜し、V3達の元へ急ぐ。
○ジャンパーソン&ガンギブソン→代々木でゲゲルを行っていたズ・ダーコ・ギを倒す。
●ネロス帝国→メタルダー抹殺の刺客に雄闘ジャースを選出し向かわせる。
 バーベリィがメタルダーの居場所を突き止めるがスカイライダーに遭遇し撃墜される。
●グロンギ族→ズ・ダーコ・ギが代々木でゲゲルを行うが、
 ジャンパーソンとガンギブソンに倒される。

【今回の新規登場】
○ジャンパーソン(特捜ロボ ジャンパーソン)
 警視庁がロボット犯罪の鎮圧のため開発した戦闘ロボット・MX-A1を、
 三枝かおるが密かに改修して生まれ変わらせた正義のロボットヒーロー。
 ギルド、ネオギルド、帯刀コンツェルン、スーパーサイエンスネットワークという 四つの悪の組織と戦った。必殺武器はジックキャノン。


○ガンギブソン(特捜ロボ ジャンパーソン)
 ネオギルドに開発された暗殺用のガンマンロボット。
 恋人ロボットのキャロルを破壊された復讐心からネオギルドに反旗を翻し、
 ジャンパーソンと厚い友情に結ばれて共闘するようになった。
 ガンボルバーとブローソンの二丁拳銃を愛用する射撃の名手。


○三枝かおる(特捜ロボ ジャンパーソン)
 天才的な頭脳を持つ若きロボット工学者。
 MX-A1の開発に参加し、暴走し廃棄されたMX-A1をジャンパーソンとして生まれ変わらせた。
 ジャンパーソンの母親的存在として整備や修理を担当する。


○筑波洋=スカイライダー(新・仮面ライダー)
 ネオショッカーに改造され誕生した仮面ライダー8号。
 元は城北大学の学生で、ハンググライダー部に所属していた。
 その名の通り、重力低減装置によるセイリングジャンプで大空を飛行する事が可能。
 後に7人の先輩ライダーによる特訓を経て更なるパワーアップを遂げる。


●桐原剛造=帝王ゴッドネロス(超人機メタルダー)
 ネロス帝国を率いる悪の帝王。

 表の顔は桐原コンツェルンの若き総帥で、慈善事業家として知られているが、その正体は極東軍事裁判で処刑されたはずの旧日本軍技術少尉・村木國夫が整形と改造手術により悪の魔王として生まれ変わった姿である。自らの科学技術を用いてネロス帝国の軍団員達を創造し、世界支配を目論む。


●凱聖クールギン(超人機メタルダー)
 ネロス帝国・ヨロイ軍団凱聖。
 帝国一の剣士で、実質的な最高幹部として帝王ゴッドネロスの信頼も厚い。
 ゴッドネロスの影武者として、仮面の下の素顔は桐原剛造と同じに整形されている。


●凱聖バルスキー(超人機メタルダー)
 ネロス帝国・戦闘ロボット軍団凱聖。
 格闘能力に優れ、ビームや指先のミサイルなど多彩な武器を装備。
 ロボットながら部下思いで情に厚く、敵であるメタルダーに共感している面もある。


●凱聖ドランガー(超人機メタルダー)
 ネロス帝国・機甲軍団凱聖。
 強力な重火器を全身に搭載した武器の塊のようなロボットで、大剣も振るう。
 質実剛健とした武人肌で、ネロス帝国の番人として控える。


●雄闘ジャース(超人機メタルダー)
 ネロス帝国・戦闘ロボット軍団雄闘。
 肩に装備した2門のビーム砲を武器とし、機甲軍団にも匹敵する火力を誇る。


●雄闘ガマドーン(超人機メタルダー)
 ネロス帝国・モンスター軍団雄闘。
 腕の触手からの高圧電流が主な武器。腕を鋏に変形させる事も出来る。
 口達者で、騙し討ちなどの卑劣な手段を得意とする。


●雄闘バーベリィ(超人機メタルダー)
 ネロス帝国・機甲軍団雄闘。
 プロペラ機の能力を持った自律型航空兵器で、偵察や空爆を主な任務とする。
 武器は腕に装備したミサイル。


●ズ・ダーコ・ギ(仮面ライダークウガ)
 グロンギ族・ズ階級ギ集団のタコ種型怪人。未確認生命体11号。
 口から吐く溶解墨を武器とする。劇中未登場。


●バラのタトゥーの女=ラ・バルバ・デ(仮面ライダークウガ)
 グロンギ族・ラ階級デ集団。未確認生命体B1号。
 優雅な人間の女性の姿で暗躍し、ゲゲルの監督と審判を務める。

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最終更新:2020年10月29日 09:57