本編43~48

『甦れ超人機』

 作者・凱聖クールギン

43

結城丈二と三枝かおるによるメタルダーの手術開始から2時間が経過していた。
アジトの1階にあるリビングルームで、風見志郎とスプリンガーは果報を待ちながら寛ぐ。

スプリンガー「いや~、TVアニメなんて久し振りに観たぜ。
 やっぱゲキガンガー3は何回観ても面白えなぁ~」

人気ロボットアニメの再放送を観終えて御満悦のスプリンガー。
一方の風見はソファーに腰掛け、コーヒーをすすりながら黙想に浸っている。
その表情が険しいのは、コーヒーの味が苦かったからだけではない。

風見(正義と悪の戦いか…。これがTVの中だけじゃないから大変なんだ。
 Gショッカーの規模は未だ計り知れない。
 ネロス帝国の他にも、俺達の知らない悪の軍団がGショッカーに加わっているとなれば――。
 厄介だな)

 ◇  ◇  ◇

あの中にメタルダーが――。
岩山の上から結城のアジトを見下ろしつつ、クールギンは感慨深げに嘆息した。

一度はこの剣で難なく屠った相手。

だが敗れてもなお立ち上がり、恐るべき勢いで日に日に強さを増して行き、
最後には自分のこの銀仮面を必殺の手刀で叩き割るに至った好敵手…。
片方が斃れるまで、徹底的には勝負する事のないまま終わったのが未練ではあった。
だが自分はこうして戦場に黄泉還った。
そしてメタルダーよ、お前もまた、再び我々との戦いに身を投じるべく復活するというのか――。

クールギン「デストロンの大幹部ともあろう者がハイエナの真似事とは…。
 ヨロイ族の手勢のみならず機械合成怪人まで引き連れている様子を見るに、
 アリゾナでの失敗でドクトルGも焦ったようだな」

眼下に蠢く闇の気を感じ取り、クールギンが呟く。
獲物のおこぼれを狙う連中はジャースにとっては邪魔かも知れないが、
敵はメタルダーだけではないのだ。味方が多くて困る事はあるまい――。
ゆっくりと、クールギンは無言のまま姿を消した。

 ◇  ◇  ◇

結城「よし、これで完了だ」
三枝「後は、エネルギーが全身に行き渡るのを待つだけですね」

長い手術の末、メタルダーの新回路の接続作業は成功した。
電気・神経系統と繋がった超重力エネルギー装置がゆっくりと作動し、
動力エネルギーを発生させてメタルダーの全身に送り出す。
もう数十分もすれば、新たな生命力で満たされたメタルダーが息を吹き返すだろう。
結城と三枝はひとまず休憩を取ろうと、地下室を出て風見らの待つ1階へ上がった。

風見「おっ、終わったか。どうだった?」
結城「ひとまず成功だ。後はエネルギーの充填を待てば――」

結城が言いかけたその時、外で何かが光った。
次の瞬間、窓ガラスを貫いて部屋へ飛び込んだレーザーが床に炸裂し、
リビングルーム全体を真っ赤な爆炎が包み込んだ。

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ジャース「フハハハハ! これだけ撃てばメタルダーも仮面ライダーも生きてはいまい」

窓から黒煙を漏らしながら炎上する建物を見下ろして、丘の上でジャースが高笑いする。
自慢のビーム砲は標的を一気に壊滅させた。
後はV3とライダーマンの死体とメタルダーの残骸を確認し回収するだけだ。
ジャースが丘を下ろうとしたその時、背後から声が響いた。

V3「俺達を探しに行くのか? その必要はないだろう」
ライダーマン「こんな不意打ちで倒される仮面ライダーではないぞ!」

既に変身を終えた姿で、丘の上に颯爽と構え立つV3とライダーマン。
三枝とスプリンガーも無事に救出され、二人の背に隠れるようにして立っている。

ジャース「おのれ、生きていたか…。
 だがメタルダーはいない。どうやら奴の復活には失敗したようだな」

燃え盛るアジトを手で指しながらジャースが勝ち誇る。
地下室でエネルギーの充填作業中だったメタルダーは咄嗟に運び出す訳にも行かず、
ジャースの言葉通り、火災に包まれたアジトの中に置き去りにされたままだ。

スプリンガー「畜生、あれじゃメタルダーは黒焦げだ」
V3「いや、まだ間に合う。
 俺が奴を引き付ける。結城、その間に地下室に戻ってメタルダーを運び出してくれ」
ライダーマン「分かった。気を付けろよ風見」
V3「スプリンガー、三枝さんを頼むぞ」
スプリンガー「任せときな。さ、安全なトコまで逃げようぜ」
三枝「ええ。頑張って下さいね結城さん、風見さん」
V3「言われるまでもないさ…。トォッ!!」

大ジャンプで一気にジャースとの距離を詰め、格闘戦を挑むV3。
少し遅れてライダーマンも跳び、炎上するアジトへ駆け寄る。

V3「V3パンチ!」
ジャース「グ……ウオオオオッ!」

重装甲のジャースは馬力も強く、V3のパンチを受け止めパワーで押し返す。
拳の一振りで弾き飛ばされたV3に、ジャースの腕の小型ビーム砲が射撃を浴びせた。

ライダーマン「風見! くっ、メタルダーの救出を急がねば…!」

苦戦のV3を横目に、ライダーマンはアジトの火災の中へ乗り込もうとするが、
横から不意に撃ちかけられた銃弾に倒れる。
反射的に振り向いた先には、醜悪な爬虫類の姿をした二匹の怪人が立っていた。

ライダーマン「くっ、お前達は…!」
マシンガンスネーク「シャシャァッ! 貴様がライダーマンだな」
吸血カメレオン「イヒヒヒヒ…!
久し振りだな結城丈二、憎きデストロンの反逆者よ!」

デストロンの機械合成怪人・マシンガンスネークと、ヨロイ族怪人・吸血カメレオン。
片方はライダーマンにも対戦経験のある相手だが、もう一方は初見の敵である。

ライダーマン「吸血カメレオン、貴様が黄泉還ったという事は、やはりヨロイ元帥も…。
 奴もドクトルGのように黄泉還っているのか」
???「――そういう事だ」

ライダーマンの背後に突如として邪悪な殺気が出現する。
紅色の鎧に身を固めたデストロン大幹部にして、忘れもしないライダーマンの仇敵――。
ヨロイ元帥がそこに立っていた。

ライダーマン「ヨロイ元帥…! 貴様!」
ヨロイ元帥「ククク…。驚いたか結城丈二。
 偉大なるGショッカーはあらゆる闇を地上に集めた悪の帝国。
 この私も例外ではなく、再び地獄から黄泉還ったのだ。
 貴様ら仮面ライダーどもを、そしてデストロンの裏切り者である貴様を葬るためにな!」
ライダーマン「…フッ、何度復活しようと同じ事だ。
 いかに巨大な闇の力を集めようとも、悪は必ず滅ぶ!
 ヨロイ元帥、今や仮面ライダー4号となったライダーマンが相手になるぞ!」
ヨロイ元帥「あの時の復讐を果たすか…。フフフ…いいのかな結城? 
 そんな事をしている間にも、貴様らが復活させようとしたメタルダーとやらは炎の中だぞ」
ライダーマン「くっ、相変わらず卑劣な奴め…」

仇敵を前にしてはやる闘志と、メタルダー救出を急がねばという焦燥。
判断を迷ったライダーマンに生じた隙を、怪人は見逃さなかった。

吸血カメレオン「イヒヒ…。死ねぇ!」

吸血カメレオンの舌が伸びてライダーマンの首に巻き付く。
動きを封じられたライダーマンに、マシンガンスネークが腕の銃口を向けながらにじり寄る。
それを眺めて満足そうに哂いながら、ヨロイ元帥は腕組みをする。
ライダーマン危うし――。

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メタルダーは生きていた。
火災による煙が地下室に濛々と立ち込め、炎も回り始める中、
それでも結城と三枝が接続した超重力エネルギー装置は回転を続け、
手術台に横たわるメタルダーの全身へ新たな生命力を送り続けていた。
常人ならば焼け死んでしまう灼熱の火の中で、超人機は静かに復活の力が満ちるのを待っていた。
そして今、光を失っていたメタルダーの両眼に黄色い電光――超人機の“生気”が灯る。

 ◇  ◇  ◇

V3「うわぁっ!」

ジャースのビームで吹き飛ばされたV3が、

吸血カメレオンの舌に首を絞められたライダーマンの足下に転がる。
至近距離からマシンガンスネークが、やや離れた位置からジャースがそれぞれ武器の照準を定める。
勝ち誇ったように高笑いし天を仰ぐヨロイ元帥。
二人のライダーは、今や絶体絶命の窮地に陥っていた。

ライダーマン「うっ…くっ…!」
吸血カメレオン「イヒヒヒヒ…! 苦しいか結城丈二」

吸血カメレオンの舌がライダーマンを締め上げる。
まるで銃殺刑を執行するかのように、マシンガンスネークはゆっくりと歩み寄り、
ライダーマンの額に腕のマシンガンを押し当てた。

ジャース「どけ! そこに立っていればまとめて射殺してしまうぞ」
マシンガンスネーク「喧しい! こいつらは我がデストロンの宿敵、デストロンの獲物だ」
ジャース「最初にV3達を追っていたのは我らネロス帝国だ。
 アメリカで1号・2号を始末し損ねたデストロンの汚名返上という所だろうが、
 勝手な横槍はこちらとしては傍迷惑。
 どかなければ本当にお前達もこのビーム砲の餌食になるが、良いか!?」
ヨロイ元帥「ええい、愚かな争いはやめんか!」

勝利を目前にして仲間割れを起こしかけたGショッカーの怪人達。
その時、猛然と疾走するバイクの轟音が彼らの注意を引いた。

スカイライダー「ライダーブレイク!!」

弾丸のように突っ込んで来たバイクは、長く伸びていた吸血カメレオンの舌を、
まるでレースの勝者がゴールの横断幕を通過するかのように走り抜け切り落とす。

吸血カメレオン「ギェェェェッ!!」
ライダーマン「――スカイライダー!」
スカイライダー「結城先輩、風見先輩、大丈夫ですか!?」

スカイターボを急停止させ、颯爽と降り立つスカイライダー。
思わぬ乱入者の登場に、怪人達は騒然となる。

ヨロイ元帥「貴様が仮面ライダー第8号か。
 のこのこと現れおって、墓標が一つ増えるだけだわ。殺れぃ!」

ヨロイ元帥の号令で怪人達が身構える。再び戦闘が始まろうとしたその瞬間、
彼らの背後のアジトで稲妻のような眩い閃光が輝き、同時に爆発が起こった。
ほどばしる猛烈なエネルギーが、嵐となって炎の中で渦を巻く――。

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炎の中から、ゆっくりと歩み出て来る影。
エネルギーが溢れているのだろう。赤と青の光がスパークし、強烈な風となって火炎を薙ぐ。
火の海から姿を現したロボットは、黄色く発光する両眼で敵の群れを正面に捉えた。

ジャース「お、お前は…!」
ライダーマン「良かった…。成功だ」

色めき立つジャースと、安心したように嘆息するライダーマン。
新エネルギー装置の装填が無事成功し、超人機メタルダーが遂に復活を遂げたのだ。

マシンガンスネーク「貴様、何者だ!?」
メタルダー「メタルダーだ」

あくまでもクールに。抑揚の少ない声で名乗ると、メタルダーは地面を蹴って跳躍。
咆え猛るデストロン怪人達の輪の中へ飛び込んだ。

ジャース「おのれ、最も恐れていた事が…。
 こうなれば問答無用。全員まとめて死ね!」

戦慄したジャースが敵味方を区別せず全身のビーム砲を乱射する。
だが、溢れ出すメタルダーの新たな超重力エネルギーは空中に結晶して光の壁を作り、
半月型のバリヤーとなってジャースのビームを反射した。

ジャース「グォォッ!?」

ビームを足下に撃ち返されて怯むジャース。
溢れていた大量のエネルギーを排出した回路がクールダウンし、
心身ともに落ち着いたメタルダーは戦闘の構えを改めて取り直す。

スカイライダー「風見先輩、あれが」
V3「ああ、俺達の新しい仲間さ。――行くぞ!」

混乱した敵の隙を突いて、V3とスカイライダーは空高く跳躍。
立ち尽くす二匹のデストロン怪人に、必殺のキックを見舞った。

V3「V3・回転フルキック!!」
スカイライダー「スカイ・キック!!」

V3のキックでマシンガンスネークが、スカイライダーのキックで吸血カメレオンが爆死する。
すかさずヨロイ元帥に挑みかかるライダーマン。
苛立ちを隠さず応戦しようとしたヨロイ元帥だが、さすがに状況の不利を悟り、
マントを翻して魔法の如く姿を消し撤退した。

メタルダー「雄闘ジャース、行くぞ!」
ジャース「おのれ、メタルダーめ!」

ジャースが放つビームの雨。爆発の中を走り抜け、メタルダーは突進する。
やがて振り上げられたメタルダーの右手に、青白い雷光――眩しい光の刃が煌いた。

メタルダー「レーザーアーム!!」
ジャース「グァッ……オォォォッ!!」

必殺のレーザーアームで胸を一閃され、火花を噴きながらジャースは倒れる。
やがて内部の回路がショートし、大爆発を起こして胴体部分を無残に吹き飛ばした。

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メタルダー「やった…」

取り戻した力の感触を確かめるように、拳を握り締めるメタルダー。
ライダーマンはメタルダーの元に駆け寄り、後ろから彼の肩に手を乗せた。

ライダーマン「新回路の調子は良好のようだな。良かった」
メタルダー「ありがとうライダーマン。貴方達のお陰で、僕は力を取り戻せた」

どちらからともなく、右手と右手が引き合うようにして握手が結ばれる。
V3とスカイライダーもその上に右手を乗せ、四人の正義の戦士がここに結束を誓い合った。

その時――。

カシャン…ッ カシャン…ッ


規則的な金属音がゆっくりと近付いて来るのを感じて、一同は振り返った。
銀色の甲冑に上半身を包んだ闇の騎士――クールギンが、悠然とこちらへ歩を進め、
四人の視線が向けられたのを機に立ち止まる。
そして不意に抜剣し、恐ろしく素早い跳躍でメタルダーに斬りかかった!

メタルダー「うわっ!?」

間一髪で剣撃をかわすメタルダー。
四人が咄嗟に散開してクールギンを囲み、それぞれ戦闘の構えを取る。

メタルダーを正面に見据えて剣を向けながら、横から仕掛けられたライダーマンの跳び蹴りを難なくかわすクールギン。
更に横から突っ込んだスカイライダーのパンチも、姿勢を変えぬまま片手一本で受け止め押し返す。
間髪入れずV3が正面に回って飛びかかると、数発のパンチを応酬させてから一気に剣で薙ぎ払った。

メタルダー「クールギン…!」
クールギン「メタルダーよ、とうとう力を取り戻したようだな…。
 だが、我らネロス帝国もガイスト・ショッカーの一つとなって現世に復活を果たした。
 ガイスト・ショッカーはその大いなる闇をもって必ず地球を征服するだろう。
 再び我らに楯突く事を選ぶなら、お前の進路は茨の道だ。
 そして仮面ライダーの諸君、君達もな…。――トォッ!!」

不敵に笑いながら剣を収め、丘の上まで一跳びで移動したクールギン。
再びメタルダーに一瞥を送るとマントを翻し、そのまま姿を消してしまった。

メタルダー「クールギン…」
V3「あれが君の宿敵か。
 お互い本気じゃなかったが、さっきの組み手で強さの見立ては大体付いた。
 …恐ろしい奴だ」
ライダーマン「デストロンが黄泉還った上、あんな奴らまでがGショッカーに組しているとは…。
 あのクールギンという男が言う通り、油断ならない戦いになりそうだな」
スカイライダー「しかし、負ける訳には行かない…!
 俺達にも、共に戦ってくれる新しい仲間がまだまだいるはずです」
V3「ああ、きっとその通りだ」

スカイライダーの言葉に全員が頷く。
こうしてメタルダーは復活し、仮面ライダー達と共に再び正義のために立ち上がった。
だが、Gショッカーとの戦いはまだ始まったばかりである。
アメリカの本郷さん達ともう一度連絡を取らなければ――と、
ライダーマンは破壊されてしまったアジトの炎を眺めながら思うのだった。

48

○メタルダー→遂に復活。取り戻した超人機の力でジャースを倒す。
○V3&ライダーマン→アジトを襲撃したジャースとデストロン怪人を迎撃し勝利。
○スカイライダー→V3&ライダーマンと合流しデストロン怪人達と交戦。吸血カメレオンを倒す。
●ジャース→V3とライダーマンのアジトを襲うが、復活したメタルダーに倒され大破。
●ヨロイ元帥→V3とライダーマンのアジトを襲うが、反撃を受け撤退。
●マシンガンスネーク&吸血カメレオン→ライダーマンを襲撃するが、V3とスカイライダーに倒される。
●クールギン→復活したメタルダーと接触。宣戦と警告の言葉を残して去る。

【今回の新規登場】
●ヨロイ元帥(仮面ライダーV3)
 デストロン結託部族・ヨロイ一族を率いる大幹部。
 モンゴルの英雄チンギス・ハンの子孫で、全身を赤い鎧で覆っており、左腕の鉄球を武器とする。
 性格は狡猾かつ残忍。その正体は怪人ザリガーナである。


●マシンガンスネーク(仮面ライダーV3)
 デストロン機械合成怪人。右腕にマシンガンを装備した蛇の改造人間。
 隠密行動などの際には小型の蛇に変身する。


●吸血カメレオン(仮面ライダーV3)
 デストロン結託部族・ヨロイ一族怪人。
 V3に倒された怪人カメレオンが吸血能力を付与されて復活した姿。
 保護色で姿を消し、長い舌を敵に絡めて攻撃する。

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最終更新:2020年10月29日 10:01