『社長復活』
作者・大魔女グランディーヌ
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富士・青木ヶ原樹海***
富士の麓にある青木ヶ原の樹海は、
溶岩流の上にツガ、ヒノキを主に、モミ、カエデ類、シダ類などの
高木が生育すし、樹齢200年~300年ともいわれる高木の根元には
ソヨゴ、アセビ、ミヤマンキミの常緑広葉樹林が多く、
昼なお暗く、まさに密林である。
零児「一気に叩き伏せる、いくぞ!」
小牟「ほっとばしっとるのぉ~。若い若い!」
その密林の奥地で、金属音と銃弾が飛び交う。
真っ黒い霧の様な塊――いや、時空の穴。
音もなく宙に漂うそれからは、あやしげな燐光に包まれた
異形なる未知の魔物たちが次々に飛び出してくる。
ベレス「キヤヤヤヤ!」
ブリザードマン「ゲヒッ、ゲヒッ、ゲヒッ!」
バアラック「グウォルルルオーン!」
巨大な大鎌を手にしたベレス、
凍りつく息を吐くブリザードマン、
蝙蝠の翼と額に一本角を生やしたバアラック。
それら魔物と戦う(無論彼らがこれら魔物たちの名や
素性など知る由もないが…)二人の男女。
一人は白の混じった黒髪と左額に古傷、
赤と黒の服をしていた男性。もう一人は九尾のような金髪のポニーテールと
赤と黒のチャイナドレスをした女性である。
零児「中央に踏み込めれば…!
銃の型でいくっ!」
小牟「フォローはしようかの」
零児「仕掛ける!」
上空へと華麗に舞いながらジャンプする二人。
小牟「とっておきじゃ!」
零児「ひとつ! ふたつ! みっつ! よっつ! いつつ! むっつ!」
小牟「ほいほいっと~♪ あ、チョイな~♪ あ、もうひとつ~♪」
零児「フゥー…これで、終わりだ!」
小牟「ほとんど大道芸じゃのう」
小牟のフォローの下、零児の愛用の銃から発射された
『大霊体処理』の施されている弾丸は次々と地上の魔物たちに命中。
魔物の飛び散った肉片が無残に溶けていく。
小牟「興奮醒めやらぬ感じじゃなぁ!」
零児「調子に乗りすぎるなよ」
日本政府直属の特務機関『森羅』のメンバーである有栖零児と小牟。
この二人は組織の上層部から指令を受けて、
最近世界各地、そして日本でも発生している時空間の歪みらしき
幾つかの事例を調査して回っているのだった。
遭遇した魔物を全て片付け、改めて周囲を見回す二人。
さっきまで宙に浮いて動かなかった時空の穴はもう消えていた。
小牟「近頃は"ゆらぎ"から出てくる見たこともない魔物も増えおったな。
おかげでわしらは大忙しじゃ」
零児「報告による"ゆらぎ"と思われる時空間の歪みは、
過去例にないパターンの派生らしい。
今までのゆらぎは逢魔の陰謀により生まれたもの、
または無差別に起こる自然現象だった。
それにもあてはまらないものとすればもしや。」
小牟「ところで零児、ぬしは"黄泉がえり"の噂は聞いとるか?」
零児「…どうした急に? 例の死人が生き返ったとかいう
話だろう。まだ公式には確認されていないが、近々厚生労働省の方で
調査に乗り出すとかいう……それがどうかしたのか?」
小牟「これはわし仙狐としての勘なんじゃがのう。
もしかすると今回の"ゆらぎ"の現象とその騒ぎは
何か関連があるような気がするぞ。ぬしはどう思う?」
零児「さあて、どうだろうな…。どちらにせよ
今の俺たちの任務には関係ない。
とりあえず一度撤収するぞ」
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一方、その頃……。
山本アナウンサー「ニュースの時間です。死者が当時のままの姿で蘇るという事例が
世界各地で報告されている問題について、厚生労働省が非公式に実態調査に乗り出しました。
次のニュースです。世界各地で時空間の歪みが度々目撃されている件について、
地球連邦政府の国際科学技術庁は声明を発表し、一般人は不用意に
近づかないように注意を呼びかけています。
……たった今、新しいニュースが入ってきました。木場勇治前社長就任に基づく
社内クーデター以来、行方不明になっていて死亡説も流れていた、
スマートブレイン社・元社長、村上峡児氏が数ヶ月ぶりに元気な姿を現しました。
現場にいる山田リポーター、聞こえますか?」
テレビの画面が切り換わり、記者会見場の建物の様子が映る……。
都内の中心繁華街にある某高級シティホテルでは、
ロビー前で多くの報道陣がごった返していた。
山田そら「はい、こちら会場の山田です。
それでは村上氏の緊急記者会見の様子をご覧ください」
(テレビの画面が切り換わり、記者会見場である大ホールの
檀上に設けられた会見席に堂々と着席する村上の様子が映る……)
村上「……全国の皆様、ご心配をおかけし誠に申し訳ありません。
私、村上峡児は健在であります。此の度、こうして私が
再びスマートブレインの社長職に復帰した上は、花形前会長、
木場前社長の意思を引き継ぎ、社会に貢献していく所存でございます。
既にある極秘プロジェクトを進めており、まもなく皆様にもお知らせできるかと思います。
どうか、これまで以上のご支援とご援助をお寄せくださいますよう、
心からお願い申し上げます。思えば花形前会長、
並びに木場前社長も公私共に我が社に偉大な業績を遺され――」
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スマートブレイン本社ビル・54階・社長室***
村上の社長復帰会見の録画放送の途中で、
リモコンからテレビのスイッチを切るスマートレディ。
そして村上に会話を振る。
レディ「本当はそんなこと露ほども思ってないんでしょ?」
村上「――当たり前だ! 私はこの国の全ての人間から、
花形や木場勇治の記憶など消し去ってやりたい!
スマートブレインの社長の地位に最も相応しいのはこの私だ。
下らない社交辞令という奴ですよ……」
スマートレディの問いかけに村上は
社長の椅子に踏ん反り返りながら、激高してこう言い放った。
再びスマートブレインの社長の座へと返り咲いた村上は、
邪魔な旧花形派の役員達の粛清を密かに完了させ、
社内の権力基盤を以前より完璧に近い形に固めていたのである。
レディ「では社長さん、早速報告しておきますわ。
地球連邦軍の極東支部で大規模な人事異動があったみたいです♪」
村上「…新しい極東基地の司令官は、あの三輪防人長官ですか。
背後では十中八九ティターンズが糸を引いていますね」
レディ「ティターンズが?」
村上「現世に黄泉還ったのは我々だけではないという事ですよ。
これをご覧なさい」
村上は何日か前の写真週刊誌を机の引き出しから取り出し、
ある1ページを指差して、スマートレディにそこを読むように促す。
レディ「――え~と、なになに?
地球連邦軍の極東方面軍高官に相次ぐ汚職・不祥事の発覚…。
ふ~ん…」
村上「日本駐留の地球防衛戦力を手に入れるために、
邪魔者を更迭するべくでっち上げられたスキャンダルでしょうね。
今後世界は否応なしに再び混沌の時代を迎える事でしょう。
連邦軍自体も泥沼の内部抗争でこれからはどうなることやら……」
そう言って静かに席から立ち上がった村上は、
後ろへと振り返り、社長室の全面ガラス窓から階下を見下ろす。
村上「そういえば未確認生命体の騒ぎについて
今のニュースでは何も触れられていませんでしたね」
レディ「本部からの報告ではグロンギの皆さんも
かなり派手に動いているはずなのにん♪」
村上「これももしかすると"彼ら"の圧力か…? 極東基地に三輪防人が着任した以上、
GUYS JAPANも"彼ら"――地球至上主義者たちによって掌握されるのは時間の問題…。
メテオールが向こうの手に渡ると、少々厄介な事になるかもしれませんね。
さて、どうしたものか。影の王子が復活した以上、我々オルフェノクも
うかうかしてはいられません。フフフ…」
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○有栖零児、小牟→日本各地での時空の歪み現象を調査すると同時に、
時折、時空の穴から這い出して来る危険な生物を退治して回っている。
●村上峡児→復活し、スマートブレインの社長に復権。
【今回の新規登場】
○有栖零児(NAMCO×CAPCOM)
超常現象を対処する日本の政府機関『森羅』所属のエージェント。
10年前に死んだ、同じ組織の構成員であった父の形見、
”護業(ごぎょう)”と呼ばれる武器を駆使して戦う。
頭の大きな傷も、10年前に受けたものである。
○小牟(NAMCO×CAPCOM)
超常現象を対処する日本の政府機関『森羅』所属のエージェント。
零児の先輩で、彼に任務のイロハを教えたのは彼女である。
剣技、銃撃から妖術、符術、占術などに精通し、
パートナーである零児をバックアップする。
●ベレス(ドラゴンクエストⅣ 導かれし者たち)
大きなカマと翼を持つ悪魔のモンスター。
呪文が得意で、ベギラマとマホカンタの呪文を唱えてくる。
●ブリザードマン(ドラゴンクエストⅣ 導かれし者たち/ドラゴンクエストⅤ 天空の花嫁)
炎の戦士より上位種族である冷気使い。Ⅳではザキ、ザラキの呪文を唱え
凍りつく息を吐く。Ⅴではヒャダルコの呪文と凍える吹雪で冷気攻撃をしてくる。
●バアラック(ドラゴンクエストⅣ 導かれし者たち)
ピクシー系最強の種族。見た目以上に攻撃力が高い。
同種のバアラックの他、ベホマスライムも仲間に呼んでくる。
○山本アナウンサー(仮面ライダー)
『仮面ライダー』53話、55話等に登場するテレビニュースのアナウンサー。
○山田そら(超者ライディーン)
女性芸能リポーター。
●村上峡児=ローズオルフェノク(仮面ライダー555)
スマートブレイン社の代表取締役社長兼CEO。
その実体は世界制覇と人類絶滅を目論むオルフェノクの総司令官。
●スマートレディ(仮面ライダー555)
スマートブレイン社の社長秘書兼スポークスウーマン。その正体は不明。
幼児に対するような独特の口調で喋る。
最終更新:2020年10月29日 10:07