本編99~102

『眠れる王』

 作者・大魔女グランディーヌ

99

スマートブレイン本社ビル地下・流星塾施設***


ロブスターオルフェノク「貴方は死なない……。きっと蘇る……。きっと……」
アークオルフェノク「…………」

戦いで傷ついたオルフェノクの王=アークオルフェノク。
影山冴子=ロブスターオルフェノクはアークオルフェノクの回復を信じ、
側に寄り添って静かに見守っていた。

ロブスターオルフェノク「……村上君?」
村上「お久しぶりです、冴子さん。その後、王の様子はいかがですか?」
ロブスターオルフェノク「王はまだ滅んではいない。近い日に必ず復活を果たされるわ。
 私達オルフェノクに不死を授けてくださる唯一の希望ですもの……」
村上「冴子さん……王のことは貴女にお任せします。
 くれぐれも頼みましたよ」

村上は眠りについている王を確認し、それだけ言い残して立ち去ろうとするが、
ロブスターオルフェノクに呼び止められた。

ロブスターオルフェノク「……あら? 随分と素っ気ない態度なのね。
 王の出現を誰よりも待ち望んでいたはずの貴方が……」
村上「私にもいろいろと成さねばならない仕事が増えましてね。
 ただ単にそれだけですよ。ああ、そうそう。北崎さんが王と貴女への復讐を狙っています」
ロブスターオルフェノク「北崎君が?」
村上「くれぐれも気をつけてください。王は我々オルフェノクにとって
 この上なく大事な存在ですからね……」
ロブスターオルフェノク「…………」


同本社ビル・54階・社長室***


北崎「ねぇ、知ってるんでしょ? 王様と冴子さんの居場所を。
 隠してないで教えてよ。ねぇってば……」
村上「ハハハ……残念ながら王はファイズによって倒されたのです。
 それに姿を消した冴子さんの居場所なんて、この私が知るわけがないじゃありませんか」

社長室を訪れて王と影山冴子の行方を問い詰める北崎を、
のらりくらりとかわす村上。

北崎「とぼけるのも上手だなぁ……」
村上「そんなことよりも北崎さん。是非とも貴方にお願いがあります。
 我が社の地下金庫に厳重に保管されていた二本の“帝王のベルト”のうちの一つ、
 オーガのベルトが何者かの手により盗み出されました。まあ、犯人の大体の見当は
 ついているのですが……。貴方にはなんとしてもそれを取り返して来て頂きたいのです」
北崎「へぇ、帝王のベルトって強そうだね、ちょっとは面白くなるかな?」

そこへ社員が入ってくる。

社員「社長、警視庁の南さんがお見えです」
村上「わかりました。すぐ行きます」

100

同本社ビル内・応接間***


村上「南さん、お待ちしていましたよ」
南「どうもご無沙汰しております、村上さん」

南雅彦―――オルフェノクの存在に気付いた警視庁が、
極秘裏にオルフェノク研究を行なっていた秘密の地下研究所の
責任者だった男である。
南はオルフェノクたちの命をゴミのように考え、
利用できるものはとことん利用する卑劣な男であり、
警察内部に軍隊まがいの重武装警官隊まで組織していた。
復讐に燃える木場勇治=ホースオルフェノクによって
警視庁の対オルフェノク組織は壊滅させられたはずであったが……

村上「さっ、どうぞこちらにお掛けください」

村上に応接間中央のソファに座るよう促され、着席する南。

村上「聞きましたよ。警視庁に再びオルフェノク対策本部が
 設置される事になったそうで?」
南「フフ…それだけではありません。ご存知の通り、我々ナチュラルの脅威は、
 もはやオルフェノクのみには留まりません。オルフェノクとはまた違った
 もう一つの人類の進化系である“アギト”、そして人工的な遺伝子操作によって生まれた
 新たな種“コーディネイター”、さらには我々の母なる地球に我が物顔で
 侵入してきている異星人ども……」
村上「…………」
南「それら全てを統括して対処する組織が
 新設される事になったのです」
村上「しかし現総監の加賀美さんがよくそこまで認められましたね。
 察するにそれは、白河尚純代議士の後ろ盾があってのことですか?」
南「……ほほう、さすがは村上さん、お耳が早い。よくそこまでご存知だ」
村上「…ええ、まあ。情報というものは
 全てを制する重要なファクターですからね。ですが引き続き、
 我が社が貴方方への資金援助をさせて頂くつもりに変わりはありません。
 我々“ナチュラル”を“オルフェノク”の脅威から守るためなら、安いものだ……」
南「助かります。スマートブレインがついていてくれれば、我々もこれまで以上に
 よりよい研究が続けられる。人類の脅威を全て一掃した暁には、
 最大の貢献者として貴方の名前は歴史に刻まれることでしょう」
村上「フハハ…期待しないで待っていましょう。白河先生にもよろしくお伝えください」
南「…………」

それを応接間にあるカメラを通して、
モニタールームで見ていたスマートレディは笑う。

レディ「きゃはっ、まるで狐さんと狸さんの化かし合いね♪」

ビルの正面玄関では、オルフェノクに対して異常なまでの復讐心を抱いていた、
あの草加雅人が、南の帰りを待っていた。

草加「どういうつもりだ? 村上の正体は以前にも話したはずだ。
 奴はオルフェノクの親玉なんだぞ!」
南「お前などに言われなくても、スマートブレインの真の目的は
 とっくの昔から知っている」
草加「……なにっ?」
南「君は余計な事など考えずに、ただ私に言われた通りの事をして
 くれていればいい」
草加「…………」
南「私はこれから三輪長官に用があるので、伊豆基地の方へ向かう。
 留守の方は頼んだぞ。ナチュラルとオルフェノクの戦いはまだ再開されたばかりだからな……」
草加「フッ…そっちも武運を祈るぜ」
南「フフフ…“武運を祈る”か。言いえて妙だな。何せ相手はあの三輪防人だからな……」

101

地球連邦軍極東支部・伊豆基地***


今やティターンズ派の三輪防人准将とその一派によって牛耳られている、
地球連邦軍極東方面軍の伊豆基地である。

南「三輪長官、ご挨拶が遅れましたが
 まずは極東支部長官のご就任、おめでとうございます
三輪「世辞はいい。それよりも貴様、日本の警察機構の掌握に
 一体いつまで時間をかけるつもりなのだ?」
南「……何かと思えばそのことでしたか。ご心配はご無用です。
 いずれ愚かな偽善者たちは、わが国の警察からは
 永久に葬り去られる事になる」
三輪「もし手間取るようなら、ワシが極東支部の連邦軍を動員して
 力を貸してやらんこともないぞ?」

その瞬間、それまで不気味な作り笑いの表情を浮かべていた南の様子が一変し、
まるで「余計な手出しをするな」と言わんばかりに凄みを増す。

南「三輪長官、私が日本の警察機構で動いているのは全て、
 我々地球至上主義者――ロゴスが奉る盟主、
 地球教総大主教猊下のご意志によるものです。
 よもやそのことをお忘れではないでしょうね?」
三輪「うっ……! わ、わかっておるわい!」
一条「しかし南、貴様に質問してもムダなことだろうが、
 一体どうやって日本の警察組織全てを支配下に置くつもりだ?
 あの冴島十三が警視庁を去ったとはいえ、現総監の加賀美陸は
 ZECTを束ねていた男。なかなかの難敵だと聞いているぞ」
南「フフフ…一条総司令、貴方の言う通り、それはムダ~な質問です」
三輪「き、貴様っ…! たかが警官の分際で、地球防衛の要たる我々軍人に向かって!!」
一条「…………」

廊下では南の秘書が、心配そうな顔で
南と三輪長官の会談が終わるのを待っていたが……

秘書「お疲れ様でした。三輪長官、相変わらずでしたね……。
 怒鳴り声が廊下まで聞こえてきましたよ」
南「あの男は軍人がこの世で一番偉いと思い込んでいる……いわば旧世代の化石だ。
 ティターンズの後ろ盾をいい事に調子に乗っているのだろう。
 だが私にとってはそんなことはどうでもいい。
 利用できるものはなんでも利用する。それが私のやり方だ……」

102
●アークオルフェノク→ロブスターオルフェノクに見守られながら、
 今もスマートブレイン本社の地下で眠りについている。
●ロブスターオルフェノク→オルフェノクの王の力で人間の部分が消滅しているため、
 影山冴子の姿に戻る事はできない。
●北崎→村上峡児の依頼で、オーガのベルト奪還に乗り出す。
●南雅彦→村上峡児の正体にはすでに気づいている模様。
△草加雅人→南雅彦の用心棒をしている。

【今回の新規登場】
△草加雅人=仮面ライダーカイザ(仮面ライダー555)
 元流星塾生の青年。多数の特技を併せ持ち、身体能力に秀でる。
 爽やかな好青年を装っているが、その実は陰険かつ嫉妬深く、狡猾で残忍。
 普段は冷静だが、抑えられない激情を垣間見せる。
●鈴木照夫=アークオルフェノク(仮面ライダー555)
 オルフェノクの王。死滅するといわれるオルフェノクに
 不死の体を授ける能力を持つ。
●影山冴子=ロブスターオルフェノク(仮面ライダー555)
 オルフェノクのエリート集団であるラッキー・クローバーの紅一点。
 普段はバー・クローバーを経営。
●北崎=ドラゴンオルフェノク(仮面ライダー555)
 オルフェノクのエリート集団であるラッキー・クローバーのリーダー格。
 触れたものはどんなものでも砂に変えてしまう。子供のような幼稚性と
 残忍性を併せ持つ。

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最終更新:2020年10月29日 10:22