本編127~131

『再会は烈風の彼方で』-1

 作者・凱聖クールギン

127

コロンビア・マグダレーナ川流域***


南米・コロンビアの熱帯雨林地帯。
鬱蒼と茂るジャングルを切り開いた平地に、
アメリカ合衆国のオイルメジャーが所有する巨大な油田が横たわっている。

地球連邦政府・安全保障理事会の筆頭常任理事国でもあるアメリカは、
貧困にあえぐ中南米の国々をカナダとの共同主権下に次々と併合し、
今では「大西洋連邦(Atlantic Ocean federation)」や
「ニューコンチネント合衆国(United States of the New Continent)」との
名称でも呼ばれる一大覇権国家となっていた。
アメリカの大企業は石油やレアメタル等、中南米の未開発資源を手にしようと競って進出し、
そこから莫大な利益を収めているが、
それを経済的侵略と受け止める現地の不満が、テロリストやマフィア、
そして更に大きな闇の組織らの活動を支える土壌ともなっていたのである。

デデモス「第4ポイント、設置完了!」
ゴブリット「第5ポイント、設置完了。…ようし、退避するぞ」

油田の各所に小型爆弾を取り付けて、二体の人型ロボットが素早くその場を去る。
長いライフル銃を持った銀と黒の体躯の一つ目――ゴブリットと、
拳銃を手にした青鬼か悪魔のような顔の二本角――デデモス。
ネロス帝国・戦闘ロボット軍団の軽闘士達である。
彼らはゴッドネロスの命令で現地の反政府組織らと結託し、
アメリカ系の企業や組織を標的とした破壊工作をこのコロンビアで遂行していた。

ゴブリット「この油田を爆破すれば、アメリカのオイルメジャーにも大打撃だ」
デデモス「ヘッヘッヘ、南米の石油が足りなくなれば、
 桐原コンツェルンの持つ株価も天井知らずだぜ」

南米にテロによる石油危機が起きれば国際社会は混乱し、
中近東に油田を所有している桐原コンツェルン=ネロス帝国にとっても
石油価格の暴騰が大きな利益を生み出す。
桐原剛造=ゴッドネロスはこのようにして、世界の経済を闇の中から意のままに操る男なのだ。

ゴブリット「ようし、爆破しろ」
デデモス「了解っ…。ムンッ!!」

???「ケケィーーッ!!」

デデモスが手元の爆破スイッチを押そうとした瞬間、
森の茂みの中から何者かが飛び出し、甲高い奇声を上げながらその起爆装置を掠め取った。
人か、獣か――。デデモスとゴブリットは驚愕しつつ、
その影が着地した大岩の方を振り向く。

ゴブリット「何者だ!?」
アマゾン「ケィーーッ! 仮面ライダー・アマゾン!!」

大トカゲのような形状の頭に、同じく爬虫類を連想させる手足や背のヒレ。
両腕に古代インカの秘宝・ギギとガガの腕輪を付けた
大自然の戦士・アマゾンライダーが、
まるで四足獣が立ち上がったかのような前屈みの姿勢で敢然とこちらを見据えていた。

128
デデモス「か、仮面ライダーだとぉ!?」
アマゾン「この国のテロリストを影で操っていたのはお前達か。
 Gショッカー、絶対に逃がさんぞ!」
ゴブリット「ええーい小癪な! 撃ち殺してやる」
アマゾン「行くぞ! ケケーィッ!」

デデモスとゴブリットはアマゾンに向けて銃を乱射するが、
敏捷性に優れるアマゾンは森林の中を激しく飛び回り、弾丸の雨をかわして行く。
強力な熱エネルギーを帯びた光弾が木に当たり、煙を噴き上げながら次々と倒れさせる。
やがて両足で大木を力強く蹴ったアマゾンが、
目にも止まらぬスピードで二体のロボットの眼前に飛び込んだ。

アマゾン「キェェェッ!!」
デデモス「ぐわぁッ!?」

勢い良くデデモスに飛びかかり、そのまま組み伏せてチョップの連打を見舞うアマゾン。
そこへ背後から銃を撃ち込もうとしたゴブリットだったが、
察知したアマゾンは驚異的に高いバック転で発射前に回避、
そのままゴブリットの背後へ着地して首を締め付けた。

アマゾン「言え! Gショッカーのアジトはどこにある!?
 地元のマフィアが隠している麻薬の在り処も、お前達は知っているはずだ」
ゴブリット「く、苦しい…。腕を緩めてくれぇ」

ライフル銃を取り落とし、戦意を失ったように喘ぐゴブリットに対し、
アマゾンは少しだけ首締めの力を弱める。
散々殴り付けられたデデモスの方も伸びていて、もはや仲間を助ける気力もなさそうだ。

アマゾン「さあ言うんだ。お前達のアジトは――うわァッ!?」

突如、茂みから放たれた二発の赤い光弾がアマゾンの背中に炸裂。
爆発と共に凄まじいダメージを受けて、アマゾンは弾け飛んだ。

クロスランダー「フハハハハ! 油断したな仮面ライダーアマゾン。
 貴様が妨害に来る事など俺は最初からお見通しだ。
 囮の二人に引っかかって、まんまと罠に嵌まるとはな」

スマートな真紅のボディに、顔と胸を覆う銀色のプロテクター。
正義のヒーローとも見紛うスタイリッシュな外見に反して、
赤い電光眼にだけは暗殺者の卑劣で陰湿な魂が宿っている。
二丁拳銃の名手、ネロス帝国一のガンマンロボット――。
戦闘ロボット軍団暴魂・クロスランダーが、
高笑いと共に茂みの奥からゆっくりと歩み出て来た。

ゴブリット「――クロスランダー様!」
クロスランダー「フン、お前達、囮の役目ご苦労だったな」
デデモス「ははっ!(ま、また囮… ○| ̄|_)」

クロスランダーの元にデデモスとゴブリットが駆け寄り、
合流した三体のガンマンロボットがそれぞれの銃をアマゾンへ向ける。

アマゾン「くっ…、不意打ちとは卑怯だぞ!」
クロスランダー「うるさい! ガンマンはどんな手を使おうが、勝てばいいのだ!」

二丁拳銃の片方、帝王ゴッドネロスから授けられた右手の必殺銃を構え、
倒れているアマゾンの顔面に狙いを定めるクロスランダー。
デデモスとゴブリットもその一歩後ろから、銃の照準をアマゾンに合わせる。
背中の銃創から白煙を上げながら、アマゾンは立ち上がろうとするが傷が痛い。

クロスランダー「仮面ライダーを討ち取れば俺の名はネロス帝国で永遠の物となる。
 今度こそ豪将を飛び越えて凱聖の座も夢じゃない。
 そして世紀王候補としてのバトルファイトへの参戦もな…。――死ね!!」

クロスランダーの指がトリガーを引こうとしたその瞬間、
どこからか飛来した一本のロープが彼の手を鞭のように叩き、
拳銃を手元から滑り落とさせた。

クロスランダー「くっ、誰だ!?」

129
森の木の葉の隙間から射し込む陽光が、銀色のマスクを眩しく輝かせる。
胸にはX字をした赤いプロテクター。手には長く伸びたライドロープ。
その姿を見て、アマゾンは思わず傷の激痛も忘れて立ち上がった。

アマゾン「X…!」
X「ライドルホイップ! ――Xライダー!!」

ライドルのロープを縮めてホイップ状に変形させ、X字に交差させて空を斬りながら、
深海開発用改造人間 “カイゾーグ”・仮面ライダーXは颯爽と名乗った。

クロスランダー「おのれ邪魔者…。殺れ!」
X「行くぞGショッカー。トゥッ!」

クロスランダーの命令で、デデモスとゴブリットがXに向けて発砲。
大ジャンプでそれをかわし、敵中へ舞い降りたXは、
ゴブリットの銃撃を至近距離から避けるとライドルホイップを振り下ろす。
咄嗟に受け止めたゴブリットのライフル銃と切り結び、そのまま押し合うと、
横から襲いかかるデデモスにも回し蹴りを浴びせて吹っ飛ばした。

アマゾン「ケェーイ!」
クロスランダー「くっ、貴様も死ね!」

Xに落とされた拳銃を拾い直してクロスランダーが激昂する。
咆哮と共に立ち上がったアマゾンの全身に、
ギギとガガの腕輪の力――古代インカの魔力が漲った。
クロスランダーの二丁拳銃の連射を側転でかわし、
大きく上へ跳躍したアマゾンは大木の頂で身構えると、そこから獲物を狩る豹のように降下。
絶叫と共に、こちらへ銃を向けるクロスランダーに渾身の手刀を叩き込んだ。

アマゾン「キェェェッ!!」
クロスランダー「グォァァッ!」

大切断!
アマゾンの必殺技が炸裂し、鋭利な腕のヒレが刃となってクロスランダーの右腕を斬断する。
握っていた拳銃ごと、クロスランダーの右腕が胴体を離れて宙を舞った。

クロスランダー「ウ……ォォォォッ!
 き、貴様…、俺の、俺様の自慢の右腕を…ッ!」

肘から下を失った右腕のメカから激しく火花を散らしつつ、クロスランダーが呻く。
Xとの格闘で叩きのめされたデデモスとゴブリットも、
ショートしたボディの数ヶ所から煙を噴き上げながらよろよろと走り寄って来た。

デデモス「ち、畜生ッ! クロスランダー様、これは形勢不利です!」
ゴブリット「ここは一旦、撤退を!」
クロスランダー「ええい、馬鹿を言うな貴様ら!」

怒りに燃えるクロスランダーは尚も左腕一本で銃を構え戦おうとするが、
二人の部下に制止されて悔しそうに地団太を踏む。

X「ネロスの戦闘ロボット軍団、お前達はこれで終わりだ!」
クロスランダー「黙れ仮面ライダーども…!
 これで終わりなのは貴様らの方だ。
 間もなく日本でネロス帝国は、いやGショッカーは大攻勢を開始する。
 その時こそが貴様らの最期よ。――喰らえっ!」

Xに向けていた銃口を突如、油田の方へ逸らして発砲するクロスランダー。
片腕を破損したとは言え、ネロス帝国が誇る高性能のガンマンロボットである。
その弾丸は恐るべき長距離を飛んでデデモス達が仕掛けていた爆弾の一つに正確に命中し、
爆発させて油田の一部を炎に包んだ。

アマゾン「しまった…!」
クロスランダー「フハハハハ! 次に会う時は貴様らがこうなるのだ! 覚悟していろ」

高笑いを森に響かせながら、クロスランダー達は密林の奥へと退散する。
アマゾンは追おうとしたが、Xに肩を掴まれ制止された。

X「待てアマゾン。あの傷じゃ奴らはしばらく動けはしない。
 それより……あの赤い戦闘ロボット、気になる事を言っていたな」
アマゾン「ああ…。Gショッカーは間もなく日本で大攻勢を開始する…!」
X「日本ではV3やライダーマン、スカイライダーが既にネロスと戦っている。
 RXからの報告ではクライシス帝国の奴らも動き出しているそうだ。
 ここは一旦、俺達も日本へ戻る必要がありそうだな」
アマゾン「そうかも知れない。
 一体、日本で何が起きようとしているんだ…」

130

新宿・桐原コンツェルン本社***


『コロンビア 油田で爆破テロ発生』

油田の爆破炎上事件を報じる新聞を手に取って眺めながら、
桐原コンツェルン総帥・桐原剛造は冷たい薄ら笑いを浮かべていた。
火災の原因は何者かが仕掛けた爆弾によるもので、
他にも複数の爆弾が未作動のまま発見されたため警察はテロと断定したと言う。

美人秘書K「南米のテロ危機が顕在化した影響で、石油価格が上昇しています。
 動乱の煽りを受けて物価が高騰、アメリカの金融市場にも混乱が現れ始めました」
美人秘書S「ニューヨーク市場の混乱は世界中に波及しています。
 ダウ平均株価が再び4000ドルに迫りました。如何なさいますか?」
桐原「…買い占めろ。今回も、強気一本で行く」

スーツを纏った二人の女性秘書に、桐原は手にした煙草を燻らせながら言う。

秘書K「剣桃太郎首相は麻薬・覚醒剤の規制に引き続き、
 兵器の密輸取り締まりも強化しようとしています。
 民自党は明日にも、関連法案を国会に提出し審議に移る方針のようです」
桐原「剣……か。
 あの内閣総理大臣、我々の活動も陰で睨んでいるのかも知れん。
 …引き続き、南米のテロ組織とは友好的なコネクションを維持しろ。
 いかに男塾出身の傑物と言えども、我が帝国の動きを封じる事など出来はせん」

不敵に笑う桐原は新聞をデスクに置き、二人の秘書に命じた。

桐原「――私を夜の闇に包め」

秘書KとSが無言のまま頷き、社長室を暗転させる。
闇の中、若い桐原の顔は徐々に不気味な白髪の老人へと変貌し、
どこからか稲妻が走ると、その姿は帝王ゴッドネロスとなっていた。


ネロス帝国基地・ゴーストバンク***


ゴッドネロス「余は神……全宇宙の神…。その名をゴッドネロス。
 余の帝国と軍団に、永遠の栄えあれ…!」

ゴーストバンクに集結したネロス帝国の軍団員達に、
ゴッドネロスは狂気を帯びた言葉で語りかける。
軍団員達は右手を突き上げ、ネロスの名を連呼して自らの帝王を賛美した。

ゴッドネロス「クールギンよ…。やはり、メタルダーは復活したのか」
クールギン「はっ。あのジャースを大破させたレーザーアームの力…。
 この目でしかと見ましたが、奴は間違いなく以前の、いやそれ以上の力を手にした模様」
ゴッドネロス「奴は今、どこにおる」
クールギン「元国連勤務のロボット工学者・三枝かおるという女の施設に身を寄せています。
 他にも数体の戦闘ロボットが共にいるらしく、容易に手が出せませぬ」
バルスキー「帝王、メタルダー復活の阻止に失敗した我が部下の不始末、
 真に面目御座いません。
 願わくば、どうか回収されたジャースには、
 帝王の寛大なる御慈悲をもって何とぞ再生修理のお許しを」
ゲルドリング「フン、大口叩いといてあのザマじゃ世話も焼けるっちゅうもんやなぁ」

決闘に負けて部下の出撃を阻止される形になっていたゲルドリングは悪態を吐くが、
ゴッドネロスはゆるりと首を縦に振った。

ゴッドネロス「本来ならば廃棄処分、だが…。あれもこれからの戦いには欠かせぬ奴よ。
 より強力なパワーを与え、二度と不覚を取る事のなきようにせよ」
バルスキー「ははっ、ありがたきお言葉…!」
ゴッドネロス「戦闘ロボット軍団には南米の油田を爆破せしめた功もある…。
 不埒者の妨害のために完全な破壊には至らなかったが、
 コロンビアの事件は世界の石油資本に大きな混乱を与え成功を収めた」

ゴッドネロスが指先からの光線で空間に立体映像を現出させる。
そこに映るのは火災に包まれる油田、そして騒然を極めるニューヨークの株式市場…。

クールギン「その妨害に現れた仮面ライダーXとアマゾンですが、
 仲間のライダーどもと合流するため、既に日本へ向かいつつある模様」
ゲルドリング「鬱陶しい虫ケラどもが仰山集まりよるのう。
 全員揃ってまう前に、一匹ずつ順番に潰して行ったらどないや」
ゴッドネロス「良かろう…。
 ではモンスター軍団に、来日するXとアマゾンの抹殺を命ずる。
 仲間の仮面ライダーどもと合流する前に討ち果たせ」
ゲルドリング「ハハァーッ!
 帝王、クロスランダーの腰抜けどもとは違うワシらモンスター軍団の実力、
 しっかとお見せ致しますでぇ」
バルスキー「……くっ! 我が部下への侮辱は許さんぞ!」
ゴッドネロス「バルスキー…。
 クロスランダーも修理が終わり次第、
 すぐに帰国させジャースと共に戦列に加えよ。
 機甲軍団も引き続き、メタルダーから監視の目を離すな」
ドランガー「ははっ! 承知致しました」

131
○仮面ライダーX&アマゾン→南米コロンビアでクロスランダーらと交戦し撃退。日本へ向かう。
●クロスランダー&デデモス&ゴブリット
 →南米コロンビアで仮面ライダーX・アマゾンと交戦し敗退。
  クロスランダーは大切断で右腕を破壊される。
●ゴッドネロス→モンスター軍団に仮面ライダーX・アマゾンの抹殺を指令。


【今回の新規登場】
○神敬介=仮面ライダーX(仮面ライダーX)
 父・神啓太郎博士の手で深海開発用改造人間・カイゾーグとなった5人目の仮面ライダー。
 元は沖縄の水産大学に通う学生で、空手や剣道の有段者でもある。
 後にV3によってマーキュリー回路を内蔵され更なるパワーアップを果たした。
○山本大介=仮面ライダーアマゾン(仮面ライダーアマゾン)
 長老バゴーの手でインカ帝国の秘術を用い改造された6人目の仮面ライダー。
 幼少時に飛行機事故で遭難し、南米アマゾンの密林で育った野生児でその動きは俊敏。
 両腕に嵌めたギギとガガの腕輪から超古代文明のパワーを得て戦う。
●暴魂クロスランダー(超人機メタルダー)
 ネロス帝国・戦闘ロボット軍団暴魂。
 元は爆闘士だったが南米での戦功が認められ暴魂に昇格を果たした。
 二丁拳銃を使う射撃の名手で、勝利のためにはどんな卑劣な手段も厭わない。
●軽闘士ゴブリット(超人機メタルダー)
 ネロス帝国・戦闘ロボット軍団軽闘士。
 元は強闘士だったが南米での任務失敗のため軽闘士に降格させられた。
 クロスランダーの部下で、ライフル銃を持つ単眼のガンマンロボット。
●軽闘士デデモス(超人機メタルダー)
 ネロス帝国・戦闘ロボット軍団軽闘士。
 元は強闘士だったが南米での任務失敗のため軽闘士に降格させられた。
 クロスランダーの部下で、右手に拳銃を持ち左手にアタッチメントを装備。
●美人秘書K(超人機メタルダー)
 帝王ゴッドネロスに仕える女性秘書。
 桐原コンツェルンの事務の他、ネロス帝国でも諜報活動や軍団員の懲罰を行う。
●美人秘書S(超人機メタルダー)
 帝王ゴッドネロスに仕える女性秘書。
 桐原コンツェルンの事務の他、ネロス帝国でも諜報活動や軍団員の懲罰を行う。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2020年10月29日 10:30