『その闇の名は木星』
作者・大魔女グランディーヌ
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サイド1・ロンデニオンコロニー中央宇宙港***
停泊している白い宇宙艦……地球連邦宇宙軍の独立部隊・通称
「ロンド・ベル隊」の旗艦「ラー・カイラム」である。
ブライト「……そうか、まだジュドーの行方はつかめないのか」
クリス「ええ、木星は完全にシロッコ一派の
勢力範囲に入っていて、現地のプリベンターも身動きが取れない様子です」
コウ「シーブックとセシリー、それにセイラさんは今のところ安全
です。カミーユにもおととい会って来ましたが──まだ迷いがあるようですね」
クリス「ウッソくんやオデロたちを──呼び戻しますか?」
ブライト「いや、彼らはカサレリアで平和に暮らしているし、いつまでも
リガ・ミリティアの助力を当てにするわけにもいかんよ」
報告を終え、司令室からデッキに戻るクリスとコウ。
コウ「……艦長は何も言わないが、心配だろうな、息子さんのこと」
クリス「ハサウェイ? ……そうね、第二次ネオジオン紛争の後、すぐ
行方不明ですもんね。ミライさんも八方手を尽くしてはいるみたいだけど」
コウ「チェーン准尉も黄泉還って、彼のことを赦す気でいるのに……
無事でいてくれればいいが……ん?」
格納庫の方で何か騒ぎが起こっているようだ。
コウ「……これは……!!」
首がもげ、片腕片足の状態でロンデニオンに流れ着き、ラー・カイラムに
収容されたのは濃紺にリペイントされ、流星のエンブレムをあしらわれた
Zガンダムの残骸……。
整備員A「おい、まだパイロットは生きてるぞ!」
整備員B「早く救護班を!!」
クリス「(開放されたコクピットを覗き込む)……!! ルー、ルー・ルカ
じゃない!!」
コウ「こんなひどい傷を負って……一体何があったんだ……!」
コウたちの呼びかけに、うっすらと意識を取り戻すルー。
ルー「マッケンジー中尉、ウラキ中尉……ジュドーが、ジュドーが……」
それだけ言うと、再び眼を閉じ、意識を失うルー。
クリス「ルー、しっかりして、ルーッ!!」
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衛星イオ***
木星の衛星イオにある木星軍秘密基地である。
ここではシロッコがMSの運用テストを行っていた。
シロッコ「ふむ、流石はガンダム。その名は伊達ではないようだな。」
シロッコの機にメッサーラが近づく。
サラ「パプティマス様!」
シロッコ「サラか。とてもよい乗り心地だ。宇宙海賊め…
このようなガンダムを持っているとは…なるほど苦戦を強いられるわけだ。」
サラ「ガンダムF97…宇宙海賊の使っているガンダムの前身でしたね。」
シロッコ「サナリィもよくこんなMSを作ったものだ。
データを開発部へ送ってくれ。私は用がある」
サラ「機体はどうしますか?」
シロッコ「好きにしろ。私はもう乗らんよ」
そう言い残してシロッコは司令室の方角へと戻る。
シロッコ「……(そろそろジャミトフもこちらの思惑に気づき始めたな…。
だが、我々が手を下さずとも地球圏の混乱は今まで通り維持されることになる…。
そして、その事実はやがてGショッカーとティターンズが全面衝突する原因となる…)」
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同基地内・個室***
シロッコ「拘束しないのはせめてもの情けだ、…ジュドー・アーシタ。」
ジュドー「………」
シロッコの正面に座っている少年――ジュドーは話を聞こうとはしなかった。
シロッコ「我々は人類の革新を望んでいる。人類全てが地球を離れ、
地球の美しさをわかれば今の戦いは終わる。我々はそのために戦っているのだよ。」
ジュドー「シャアもハマーンも…同じ事を言って同じくみんな失敗した。」
シロッコ「彼らは所詮重力に魂を縛られていたのだよ。我々は違う。」
ジュドー「じゃああんたはなんなんだ? なんなんだよぉ!!
あんたたちは地球の優しさを忘れて、冷たい木星の引力に惹かれている、
それがハマーン達とどう違うんだよ!! 結局みんな同じだ!
俺は、あんた達の仲間にはならない!」
シロッコ「そうか。なら今の連邦の体制でGショッカーをつぶせるのか?
彼らを根絶やしにしない限り地球の平穏は無いんだぞ!」
ジュドー「じゃあなんで平穏を望んでるあんたがグレミーと――
――ザビ家とつるんでいるんだ!?」
シロッコ「アレはただ利用しているだけだ。本意ではない!」
平行線をたどるジュドーとシロッコ。話がまとまらないようだ。
シロッコ「・・・ならば誰がやるのだ? 誰が人類の革新を導くのだ?
シャアか? それともハマーンか?」
ジュドー「そんなことわからない。ただ…あんたちのやり方じゃあ
この世の中は変わらない。」
シロッコ「そうか。ではどうしろと? この世界は所詮
金と欲望を欲しいままにする政治屋と戦うことしかできない
お前のような戦士と、シャアのような独裁者でできている。
とてもじゃないが革新なんて望めない。シャアは危機感を持たせるために
地球潰しをやった。だがそれでも無理だった。あとは我々が
宇宙から地球を支配するしかないのだよ。」
ジュドー「あんたのような…あんたのような考え方の人間がいるから…
人はいつまでも分かり合えないんだ。あんたの存在そのものがうっとおしいんだ!!
何が人類の革新だ! そんなこと、あんたがやっちゃあいけないんだ!
闇の世界へ帰れ!! シロッコ!」
シロッコ「――!!?」
シロッコの背筋がゾクッとした。
シロッコ「……(なんだ…この感覚は…カミーユ?
…私がおびえている…えぇい!!)」
シロッコは係官を呼んだ。
シロッコ「この少年を強化しろ。タイタニアのテストパイロットになってもらう。」
ジュドー「なんだと…シロッコ!キサマァ!」 !!」
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地球 Gショッカー・海底基地内地下牢***
ムサシ「くそう、奴らいつまで俺たちをこんな所に閉じ込めて
おくつもりだ」
ハヤト「死ぬまで、かもな……」
剣鉄也とゲッターチームの面々は、Gショッカーに捕らえられて
以降ずっと、虜囚状態が続いていた。改造手術の素体としてか、あるいは
重要な捕虜としてか、待遇は思ったほど悪くはなかったが……。
突然、石壁の一角が開き、三画面のモニターが出現する。
???「フハハハハ、久しぶりだなロンド・ベルの諸君」
???「お休みのところ失礼するよ」
リョウ「……!! 貴様たちは……!!
プリンス・シャーキン、ガルマ・ザビ、オルドナ・ポセイダル!!」
鉄也「黄泉還って邪神に魂を売ったのか……!」
ガルマ「フフ、君たちロンド・ベル隊……そしてシャアに
復讐を果たすまでは死ねんよ」
シャーキン「我らはミケーネ闇の帝王の元、結成されたGショッカー
地下帝国軍の
新生7大将軍……改めてお見知りおき願おう」
鉄也「闇の帝王……すると貴様たちのバックにはあいつが……!」
ガルマ「今日は面白い映像をグレミーが木星圏から送ってきてくれたものでね」
ポセイダル「君たちも退屈しているだろうから、お見せするとしよう」
画面が切り替わり、映し出されたのは……!
リョウ「ジュドー!?」
そこには、無数のコードにつながれ、度重なるショックを与えられて悶え苦しむ
ジュドー・アーシタの姿が!
ガルマ「ジュドー・アーシタの強化が済んだら、次は君たちだ」
ベンケイ「……そうなる前に、俺たち全員自殺してやるさっ!!」
シャーキン「それでも構わんよ、出来たての死体を改造人間にするだけだからね」
「フフフフフ」「ハハハハ」「ハッハハハ……」
リョウ「くそう……っ!! ジュドー、耐えてくれ……!!」
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○ルー・ルカ→重傷を負っていたところをラー・カイラムに保護される。
○ジュドー・アーシタ→
ジュピトリアンに拉致・拘束されていた。
●パプティマス・シロッコ→ジュドーを強化し尖兵として使う。
●プリンス・シャーキン、ガルマ・ザビ、オルドナ・ポセイダル
→Gショッカーの幹部として復活。捕えたリョウたちに、
ガルマと独自のパイプを持つグレミーから送られてきた、
ジュドーの洗脳強化の様子が録画された映像を見せつけ、心理的にいたぶる。
【今回の新規登場】
●サラ・ザビアロフ曹長(機動戦士Ζガンダム)
シロッコ直属の部下であり、ニュータイプの資質を備えている少女。
PMX-002ボリノーク・サマーンのパイロット。
○ジュドー・アーシタ(機動戦士ガンダムΖΖ)
サイド1のスペースコロニー「シャングリラ」にて、妹と暮らしながら
ジャンク屋稼業で生計を立てていたニュータイプ少年。偶然シャングリラに
入港してきたアーガマのΖガンダムを狙い、金に換えて妹を山の手の学校に
入れてやろうとした事がきっかけとなり、エゥーゴに参加して戦いに身を投ずる。
MSZ-010ΖΖガンダムのパイロット。
○ブライト・ノア大佐(機動戦士ガンダムシリーズ)
地球連邦軍独立部隊ロンド・ベル隊の総指揮官にして、同部隊旗艦ラー・カイラムの艦長。
ファーストガンダムからνガンダムに至るまで、ガンダムタイプMSを要する戦艦の艦長を務め、 時代々々のニュータイプ達を見つめ続けてきた人物。個性の強すぎる部下達をまとめ、
無能な上層部の妨害を退け、時には反乱軍の汚名を被ったりしつつ
宇宙を圧する巨大な敵と戦い続ける、同部隊にとってまさに大黒柱である。
○クリスチーナ・マッケンジー中尉(機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争)
地球連邦軍G-4部隊所属で、静止模擬操縦(スタティックシミュレーション)専門の
テストパイロット。RX-78NT-1のパイロット。
○コウ・ウラキ中尉(機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY)
地球連邦軍トリントン基地所属のテストパイロット。ナイメーヘン士官学校卒で、
根っからのMS(特にガンダム)好き。
RX-78GP03 ガンダム試作3号機(デンドロビウム)のパイロット。
○ルー・ルカ少尉(機動戦士ガンダムZZ)
エゥーゴの志願兵の少女。
●プリンス・シャーキン(勇者ライディーン)
妖魔帝国大幹部。化石獣を率いて人類攻撃を指揮する悪魔人のプリンス。
常に仮面を被っており、その肌の色は悪魔人特有の青い肌をしている。
平時は常にベロスタン&平祭官を従えている。
●ガルマ・ザビ大佐(機動戦士ガンダム)
ジオン公国軍地球方面軍司令。デキン公王の四男。
●オルドナ・ポセイダル(重戦機エルガイム)
二重太陽サンズを中心に五つの惑星を擁するペンタゴナワールドを絶対権力で統治していたポセイダル軍の首領。
最終更新:2020年10月29日 10:49