『戦場に咲いた友情の花』-2
作者・シャドームーン
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佐原夫妻の墓前岬***
ボスガン「―でぇいッ!!」
BLACKRX「ぐぅぅ…ッ」
海を望む狭い岩場の闘技場で因縁の火花を散らす両雄。
だが、両者の攻防は互角とは言えなかった。
積年の雪辱に燃える烈火のような剛剣を振るうボスガンに対し、
RXは防戦一方、いや反撃の糸口は探っていたがどういうわけか
いつもに比べて体が重い。全身の強化細胞を活性化させている
遺伝子が仕事を放棄し、筋肉とバネを躍動させる血流はまるで
凍り付いてしまったかのように身のこなしに「切れ」を失っていた…。
BLACKRX「(…おかしい。何者かが、俺の動きを邪魔している!?)」
ガイナニンポー「アチョォーーー!」
ボスガン「フフ…どうしたRX。貴様ほどの男にしては、やけにおとなしい
ではないか? あっけなく終わってしまっては、怪魔霊界に落とされた
私の屈辱は晴れぬ……もっと足掻いて見せろ!」
ボスガンの剛剣とトリッキーな動きでRXを翻弄する怪魔獣人大隊の
コンビネーションに苦戦しながら、彼はこの勝負に水を差す存在を
索敵するべくソーラーレーダーを最大限に働かせていたが―――。
ボスガン「フゥ~どうやら貴様の悪運も、理不尽な奇跡とやらもここらが
終いのようだな。観念して今度こそ地獄へ落ちろRX!!」
BLACKRX「!」
振り下ろされた剣が、遂にRXの肩口から胸にかけて切り裂いたと思われた瞬間。
ボスガンはその奇妙な手ごたえを感じたと同時に、額の人面の口元を「ぎりぃぃ」と
歪ませ心底憎々しげにゲル状と化して離れる物体を睨んだ。
ボスガン「チィ~~ッ…バイオライダーめ!!」
バイオライダー「バイオアタック!」
ガイナニンポー「ぎゃっ!?」
バイオライダーに変身したRXはゲル化したまま空中を飛び交いながら、
怪魔獣人忍者部隊を絡め取り、まとめて動きを封じた。
―――そして一閃。
ザンッ!
獣人忍者「グェェェェ~!」
ドドドド、ドォーーンッ ………
ガイナニンポーを除く、獣人忍者達はバイオブレードで一網打尽に倒された。
そのまま一旦着地の体勢に入るバイオライダー。
水晶のように半透明な青い光が実体化していく僅かな隙を狙い、着地地点に
電磁波剣を発射するボスガン。以前シャドームーンにこの隙を突かれ劣勢に
陥った経験から、バイオライダーもこの攻撃は予想していた。
(ひひひひ…ほれ倅よ、今じゃ!)
(ウム。くらえい!)
…しかし。彼の足元からは、予測を遥かに上回る巨大な爆炎が立ち昇った。
ドゴォォォーーーーーーーッッッ …ズドガァンン!!!
ボスガン「…おおお!?」
バイオライダー「うわぁぁーー!」
渦巻くように発生した火柱に、全身を焦がされ地に伏すバイオライダー。
体中の傷跡から、痛々しい白煙を吹き上げて苦しむ彼を見下ろし、
ガイナニンポーが猿さながらに飛び跳ねて主を賞賛する。
ガイナニンポー「ギャハハハ、ザマァないぜ~! 流石はボスガン様…
私めのような者が言うのは何ですが、その至高邪神様から頂いた
御力、このガンナニンポー感服仕りましてございます!!」
ボスガン「……………」
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ボスガンは自分で放った電磁波剣の想定外な威力を、訝しんでいたが……
頭に過った「もしや」という考えを即座に消し去った。
宿敵RXをこの手で、という思いはボスガンに限らずクライシス帝国の者なら
誰もが願うこと。だが彼には、そんな矜持よりも胸に再燃しつつある密やかな
野望のほうが重要なのだ。「得体の知れぬ下衆ども」の口車に敢えて乗って
やったのも目的達成後の見返りが非常に魅力あるものだからだ。
形はどうあれ、宝珠の一つを持つ此奴を自分が討ち取ったという結果と効用
さえあれば充分…そう今は目的を達することが最優先で成すべき事。
ボスガン「…いづれにせよ、今日が貴様の命日であることだけは変わりはない。
それもこのボスガンが全クライシス戦士に代わって息の根を止めたという
揺ぎ無い事実が絶対に必要なのだ。RX覚悟ォッ!!!」
バイオライダー「ぐ………ここまでなのか…」
◇ ◇
サンドルバ「仮面ライダーの中でも噂に高い太陽の子にしては随分と
あっけない幕切れだなキバよ」
魔女キバ「ま~噂なんてもんは大概尾ひれがつくからのう。実態はこれじゃあ~
ヒッヒッヒ…奇跡なんてもんがそうしょっちゅう起こるわけなかろぉ。
(と言いつつも、ライダーJめのぶっ飛んだ異能ぶりを見とるからのう…
彼奴ら“賢者の石”を持つ輩は侮れん。じゃからこそここまでのお膳立て
を整えてやったんじゃからのう…ヒヒヒヒ)」
魔女キバ「それサンドルバ、出番じゃぞ! お前が奴を討ち取るのじゃあッ!
わしは念のため奴が身動きとれんようにしておくでな」
サンドルバ「うむ頼んだぞキバ。どぉりゃあああー!!」
魔女キバが術を唱え、サンドルバが槍を構えて飛び上がろうとしたその時、
二人の背後から一発の銃声が鳴り響き、彼らの足元で爆発した。
ズドォーーンッ!!
キバ&サンドルバ「お、おわぁ~~~っ!??」
◇ ◇
ボスガン「うぬ!?」
バイオライダー「………う…こ、こいつらは……」
突然の爆発で吹っ飛ばされた観戦者が、彼らの心地よい観戦座席から
放り出され闘技場の待っただ中へ転がり込んだ。
ガイナニンポー「何だ何だキサマら! ボスガン様の邪魔をする気か?」
ボスガン「おのれやはり……くぅ、下衆共がッ」
魔女キバ「お~イタダタ…だ、誰じゃあいきなり!!」
観戦者2名を背後から自慢の業物で“蹴り飛ばした”人物が、
岬の下に見える草村を掻き分けゆっくり姿を現した。
その人物は――いや、人ではない。異様に大きい銀色の右腕…
そこには精密な機械部品内部を想起させる、コードのようなものが
複雑に絡み合い人間の剥き出しの筋肉組織のようであった。
体は黒衣に覆われているが、左半身には鮮やかなイエローのラインが
入っている。拳銃の弾丸のような形をした黒い頭部、そこに隻眼の
赤い眼が光っていた。キバ親子を吹き飛ばしたロングライフルを肩に
担ぎ、腰にポケットの付いた赤いベルトを巻いているロボット戦士。
彼の姿はまるで西部劇に登場する荒野のガンマン………
とゆうよりは、ヒットマン・スナイパーといったイメージが浮かぶスタイルである。
トップガンダー「勝負の邪魔をする気はない。だが、その無粋な“観客”が
横から割って入ろうとしたのでな」
ボスガン「ぬう、何だとぉ!! 貴様ら~ッ…!!!」
魔女キバ「ええいこうなったらトドメを刺したが勝ちじゃあっ!
倅よ。此奴らはわしが時を稼ぐ、虫の息のそいつを早く殺せい!」
サンドルバ「ようし! 死ねぃ、仮面ライダーッ!!」
ガイナニンポー「待てぃ、我らをおいて勝手な真似は許さんぞ!」
ズドォーンッ!!
再び銃声が鳴り響き、今度はサンドルバの槍先が粉微塵に粉砕された。
サンドルバ「うぐっ! …き、貴様ァッ!」
トップガンダー「動くな。そっちの婆さんもな…あんたが妙な術を
唱えるより速く、俺の銃はこの男の頭を破壊する」
サンドルバ「何だと! そんなコケオドシなんぞに」
トップガンダー「…試してみるか?」
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黒衣のロボット戦士が発する抑揚の無い乾いた声は、完全に場を支配していた。
彼の持つライフルの射速と威力は先ほど体感済みである。
虚勢を張りながらも、サンドルバは顔に滲み出る汗を否定できなかった。
息子を溺愛する魔女キバは焦りながら懇願する。
魔女キバ「わわ、分かった。分かったから、その物騒なモノを下ろせ、な?」
サンドルバ「キバ!!」
魔女キバ「大事な倅の命には代えられんわい。忌々しいが仕方がない」
サンドルバ「ぐぐぐ、ここまで来て絶好の機会を~っ!」
二人は悔しがりながら、怪しげな霧に包まれて姿を消した。
バイオライダーは、この短い一部始終の間をただ無為に地に伏して
いたわけではなかった。深く傷付いた体が完全に癒えるには今しばらく
の時が必要だが、体内にあるキングストーンは絶え間なく陽光を吸収し
続け損傷の回復と生命維持に務めていた。
そしてなにより、先ほどから卑劣な邪魔を続けていた者達を目の前に
したことで凄まじい怒りの感情が『怒りの王子』を駆け巡り……
バイオライダー「~~~~ッ…クライシス、許さぁぁぁんッ!!!」
満身創痍の体に鞭打ち、尚も水晶の輝きを纏いながら立ち上がる
不死身の剣士バイオライダーの威容。
勝利を確信していたガイナニンポーは怯むが、バチバチと未だに火花
と白煙を上げている姿を見て下卑た笑いを浮かべながら飛びかかった。
ガイナニンポー「ボスガン様、この野郎大怪我でふら付いてますぜ。
つまりもう液化して逃げたり素早くは動けんわけだ…私にお任せを!
きぃぇーーーーっ逃がしはせん、バイオライダー!!」
バイオライダー「逃げはしない!」
ガイナニンポーは空中から如意棒を構えて襲いかかりながら、破壊光線の
乱射をバイオライダーに浴びせかける。周囲の爆発に微動だにせず、
バイオライダーはバイオブレードを逆袈裟に構えた。
ガイナニンポー「死ぃねぇ~~~っ!!」
バイオライダー「スパーク・カッター!」
――ズバァンッ――
“逆風の太刀”が青い光を放ちながら、怪魔獣人の体を切り裂く。
―が、やはり万全な状態ではないのか、それとも使命を果たそうとする
敵の執念か、バイオブレードは完全にはガイナニンポーを両断できず、
脇腹から鳩尾付近で刀身を握り締めるガイナニンポーによって阻止
されていた。「カラァーン…」と音を立て、二つに切られた如意棒が
二人の足元の岩場に転がった。
ガイナニンポー「ガフッ…くふふ、しぶといキサマのことだ、俺とてそう
簡単にお命頂戴といくとは思っちゃいないさぁぁぁ……
ボスガン様ーッ今ですぞ、私めごと、此奴をブッタ斬っておくんなせぇ!」
ボスガン「よくやったガイナニンポーよ! そのまま、動かすな……」
ガイナニンポー「バイオライダー、俺と一緒に怪魔霊界へ来いーっ!」
バイオライダー「折角のご招待だが…冗談じゃないぜッ!」
液化が叶わないならば、接近戦で敵を迎え撃つ。
バイオライダーは閃光に包まれてBLACKRXへと姿を戻す。
掴まれているバイオブレードはリボルケインとなり、切り裂くのではなく
“貫き倒す”リボルクラッシュならば、この体勢からでも充分であった。
バイオライダーから戻っても、負った傷はそのまま残る……
RXは激痛を堪えながら、渾身の力を込めてリボルケインを突き入れた。
ガイナニンポー「グェェ…ギャ、ギャァァッ!?」
BLACKRX「うおおおおーートゥァッ!!」
ガイナニンポーの背中を突き破り、火花が噴出して行く。
RXはリボルケインを引き抜いた時、怪魔獣人は悲痛な断末魔を
残しながら崩れ落ち、爆発を起して砕け散った。
――ドガァァァンッ!!――
ガイナニンポーの壮烈な最期の余韻覚めやらず、ボスガンは剛剣を
握り締めて膝を着いているRXに斬りかかる。
通常であれば、部下の最期を見届けると撤退の早い海兵隊長であったが、
今日は事情が違っていた。RXの首を獲る以外、彼に退路はないのだ。
必殺の一撃を叩き込んだ直後で、ハイブリット・エネルギーの青白い
光が刀身から消えかかるリボルケイン。そのリボルケインで尚も剛剣を
受け止め気迫で何度も斬り結ぶRXとボスガン。
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トップガンダー「漸く、邪魔者は全ていなくなったか…」
二人の死合いを静かに見ていたトップガンダーが、何処かへ立ち去ろうと
したその時、何者かが放った光弾がRXに命中し、キックの体勢に入る
途中だった彼は撃ち落されてしまった。またしても偶然通りかかった彼の
目撃した『決闘』は横槍が入る格好となった。
関わる気もなく、立ち去るつもりだったロボット戦士はその足を止めた――
BLACKRX「う…ガテゾーン!」
ガテゾーン「RX! 地獄で待ってても来ねぇから迎えに来てやったぜ」
二人の対決に待ったをかけたのは、怪魔ロボット大隊の機甲隊長ガテゾーンであった。
愛用のレーザー銃でRXを狙撃したニヒルな機甲隊長は、ボスガンの前に歩み寄る。
突然邪魔をされた海兵隊長は、彼がここへ来た理由はほぼ分かっていたが、
それでも高いプライドゆえか、激怒して詰め寄らざるを得なかった。
ボスガン「何用だガテゾーン!! 貴様の助けなど…ッ」
ガテゾーン「フン、結構押され気味だったじゃねぇか。
俺は助けに来たんじゃないぜ。命令でお前の“私闘”
の中止と連れ戻しに来たのさ。フッ、将軍がお怒りだぜ…
もっと早く倒せてりゃ状況は変わったろうがな…時間切れだ」
ボスガン「ぬぬ~~~……ちっ…」
ガテゾーン「さっさと戻ったほうが身のためだぜ?」
ボスガン「だまれ! …言われずとも分かっておるわ」
ガァーーンッ
ガテゾーン「うおっ!?」
ボスガン「また貴様か……」
トップガンダー「俺はこの男に加勢する義理も、お前達に恨みも
ないが…再び二対一で勝負を続行するというなら、
お前の相手は俺がしてやろうか…?」
BLACKRX「…君は、一体…」
ガテゾーン「ほ~見たことねえ面だな。何処のどなた様か知らねぇが、
余計なお節介を焼くと早死にすることになるぜ、あんた」
トップガンダー「…かもしれん。だが、もう経験済みだ」
ガテゾーン「こいつぁ面白れぇ! 挨拶代わりにこんなのは…どうだい?」
ズギューーーンッ!
ドギューーーーーンッ… ……
咄嗟にガテゾーンがレーザー銃を抜き放ち発射する。
その光弾は、ほぼ同じタイミングでライフルを構えて発射した
ロボット戦士の弾丸と宙でぶつかり合い弾けた……
ガテゾーン「…( ̄ー ̄)ニヤリ やるな…お前さん気に入ったぜ。
俺が推薦してやるからクライシスに来ねぇか?
それともあんたもそいつみたいに、人間に義理立て気取るほうかい?
よせよせ…人間共についたってイイことなんざ何もないぜ」
トップガンダー「人間に義理などない。またその必要もない。
だが…俺が友と認めた男は人間のために、というやつが好きでな。
それと良いこと…があるかないかは、経験してみなければ分かるまい。
少なくとも俺は…居心地は悪くはなかったが――」
ガテゾーン「ふーん…フフフ、あんたも相当なワケありらしいな。
残念だぜ。その口ぶりじゃあ、多分何処かで敵同士として
会うことになりそうだ。…まそれはそれで楽しみだがね」
話終えるとガテゾーンはボスガンをチラリと一瞥すると、姿を消した。
ボスガンも戦闘の傷口を押さえながら、口惜しげに吐き捨て消える。
241
◇ ◇
五郎「う、うーーーん…☆」
光太郎「気がつきましたか、五郎さん」
五郎「光太郎さん…んん? あ、あのバケモノはァ!?」
光太郎「もう大丈夫。心配ないよ…」
五郎「そうかぁ~やっぱりRXがギッタギタにやっつけてくれたんですね!
へっ、クライシスの亡霊どもめ、おとといきやがれってんだ!」
光太郎「いやそうじゃないだ。彼がいてくれなかったら危なかったよ」
五郎「彼? …うわっ!?」
トップガンダー「…………」
五郎は大怪我を負って包帯だらけの光太郎に気がつき、
相当な激戦だったろうことと、気絶してしまった情けない自分を恥じた。
聞けば、光太郎の手当てもこの黒衣のロボットがしてくれたという。
光太郎「…もう行くのか?」
トップガンダー「ああ。俺も探しているやつがいるんでな」
光太郎「色々ありがとう。そうだ、良かったら名前を教えてくれないか?」
トップガンダー「トップガンダーだ」
光太郎「トップガンダー…君が探しているというのは、君の…」
トップガンダー「友だ。俺は彼に力を貸し、最後まで共に戦うと
誓った…しかし果たせなかった。やつが今も生きて何処かで戦っているなら
今度こそ、俺は約束を果たす。それが俺が生きている理由だ…」
光太郎は11人ライダーの情報網を話し、一緒に行かないかと誘ったが
彼は無言で去って行った。彼の過去のこと、探し人の名前など聞きたい
ことはたくさんあったが、トップガンダーの静かに語る背中はそれを拒否して
いるようにも思えた。光太郎もまた、自身の過去に暗い影を持つ青年である。
無理に尋ねることもあるまい…なにより彼とは、この先に進む道が何処かで
繋がっている…そんな不思議な予感が光太郎にはあった。
五郎「クールだねぇ」
光太郎「きっとまた会えるさ。案外、彼の尋ね人は俺達の
すぐ近くにいるかもしれない…」
五郎「ええ!? こ、光太郎さん…あれ、あれ…何だありゃーっひええ」
光太郎「…あれは…(!…本郷先輩からだ。あれに乗っている、のか…?)」
空を見上げる二人の頭上に、バビロス号の機影が差し掛かった。
――この後、南光太郎は本郷猛・一文字隼人と再会し、宇宙刑事シャイダー達と
邂逅を果たしてコム長官から提案されたプランの実現に力を尽くす事となった。
242
クライス要塞 地球攻撃兵団司令室***
ジャーク将軍「愚か者めがッ! 貴様の抜け駆け癖は、
死んでも直らんようだな!!」
ボスガン「ぐがぁぁぁ…ッ!!!!!」
無幻城が浮かぶポイントゼロと同じ宙域を航行しているクライス要塞。
その司令室では、居並ぶ三大隊長の前でボスガンの独断専行の罪に
対する仕置きタイムが行われていた。ジャーク将軍の杖から発する
雷撃を浴びた者は、二十四時間麻痺状態に苦しむのだ。
ダスマダー「…皇帝陛下もお怒りだぞ、ボスガン。しばらく謹慎を命じる」
ジャーク将軍「うぬ…!」
のたうつ海兵隊長を彼の親衛隊チャップが肩を貸し、退室して行った。
相も変わらず最高司令官たるジャーク将軍の権限を飛び越えて、
皇帝の代弁を執行するダスマダーは彼にとって目障りであった。
ダスマダー「時にジャーク将軍。何処の誰が、奴に要らざることを吹聴し
鼓舞したかだが…本件は、我がGショッカーのトップシークレットにまで
関わると判明した。よって以後の調査は
秘密警察に任せて頂こう」
ジャーク将軍「ぐ…何ぃ!?」
ダスマダー「これは皇帝陛下、即ち至高邪神閣下の御意向でもある。
……不承知かね、将軍?」
ジャーク将軍「……好きにするがいい!」
ダスマダー「ご理解痛み入る。だがフフフ…マリバロンは不服なようだな」
マリバロン「別に…」
嫌味タップリに笑いながら出て行ったダスマダーを、ジャーク将軍の黄金仮面から
除く口元が忌々しげに歪み見送っていた。しかし、最も鋭い眼差しを向けていた
のは怪魔妖族大隊の諜報マリバロンであった。
かつて四大隊長の中で最後まで生き残り、皇帝の手で処刑されてしまった、
唯一ダスマダー大佐の正体を知る彼女…。
マリバロン「(ダスマダーめ…二度と将軍を使い捨てなどにはさせぬ!)」
ジャーク将軍「マリバロン。報告を聞こう」
マリバロン「ハッ! RXめは宇宙刑事達と接触し、近々他のライダー達も
メタルダーを伴って日本に続々と集結中とのこと……」
ガテゾーン「メタルダーか…人間が造った超人機…興味あるぜ。
将軍。我らが宿敵RX及び十人ライダーが、メタルダーと一緒に
いるというなら…ネロス帝国と共同で奴等を一気に殲滅しては如何かと」
ジャーク将軍「ほう怪魔ロボット大隊とネロスの戦闘ロボット軍団の大部隊で
攻勢をかけるというのか。面白い…やってみよガテゾーン。帝王ゴッドネロス
には、余から直々に共同作戦の提案をしておこう。だが…分かっておるな?
RXは…あやつだけは我がクライシス側の手で討ち取るのだ!!」
ガテゾーン「アイアイサー!」
ガテゾーンの怪魔ロボットラボ***
組み立て途中のメカ類や、バラバラのスクラップの山が雑多に置かれている
機甲隊長の部屋。隅のほうには愛車ストームダガーも整備中であった。
そんな中、コードに繋がれた怪魔ロボット達を頭と分離したガテゾーンボディが
器用に黙々と調整している。宙をふらふらと浮くガテゾーンヘッドのほうは、
そんな様子を座って眺めているマリバロンと語らっていた―――
マリバロン「ライダーには宇宙刑事の連中もくっついてるわよ。
大丈夫なのガテゾーン?」
ガデゾーン「俺を信じねぇってのか? …任しておきなって!
こんな時のためのGショッカーだろってね」
マリバロン「どうする気?」
ガテゾーン「宇宙刑事ねぇ…確かに奴等の超兵器は厄介だ。
だからよ…あいつらにはあいつらの、恨みを持ってる方々に
引き受けてもらうのさ。すでに手は回してある」
マリバロン「なるほど、分断作戦というわけね」
ガテゾーン「そういうことさ…よし、完成だ!」
マリバロン「見たことのないロボットね…こいつの名前は?」
ガテゾーン「久々の新作だぜ。さぁ起きてみな。自己紹介しろ!」
ガテゾーンが起動スイッチを入れると、その怪魔ロボットは機械音と
金属音を鳴らして起き上がり、産声を上げた。
シュバリアン「我が名は、クライシス帝国最強の戦士シュバリアン!」
ガテゾーン「おう。お前の戦果には期待してるぜ、シュバリアンよ」
シュバリアン「ハハーッ。お任せ下さい、ガテゾーン様」
マリバロン「(最強の…って何体いるのよ…)」
そんな様子をこっそり覗き見ている影があった。
ゲドリアン「ふん、お前らなんかに何ができる。この裏切り野郎どもが!
俺は誰も信用しねぇ…必ず、俺のやり方でGショッカーの頂点に
立ってやるからなァァァ~そしたらお前ら、残らず処刑してやるぜギャヒヒ…」
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○南光太郎/BLACKRX→トップガンダーの助力で魔女キバらの妖術による
危機を脱する。ガイナニンポーと怪魔獣人忍者隊を倒し、ボスガンを退ける。
本郷猛、一文字隼人、宇宙刑事シャイダー一行と合流。
○トップガンダー→RX対クライシスの決闘を邪魔しようとした魔女キバ、サンドルバ
をライフルで制する。ガテゾーンと挨拶代わりの早撃ちを競う。
●ボスガン→不調のRXを後一歩まで追い詰めるが敗退、謹慎刑に処される。
●ガイナニンポー→スパークカッターを阻止するが、直後にRXのリボルクラッシュを食らい爆死。
●ガテゾーン→ジャーク将軍の命によりボスガンを連れ帰る。ネロス帝国との共同
作戦を提案、クライシス側の作戦指揮を命じられる。
●ジャーク将軍→ボスガンに罰を与える。ガテゾーンにネロス帝国との共同作戦指揮を
命じ、帝王ゴッドネロスに作戦の提案を伝える。
●マリバロン→ダスマダーのジャーク将軍に対する態度に一際不快感を抱いている。
●ゲドリアン→自分を陥れた全員に深い恨みと復讐を密かに誓っている。
●ダスマダー→ボスガンに関わる黒幕の調査を
秘密警察の権限で強引に奪取。
●魔女キバ→妖術でRXの動きを封じる。トップガンダーに邪魔され撤退。
●サンドルバ→漁夫の利を得てRXを討とうとするが、トップガンダーに邪魔される。
【今回の新規登場】
○トップガンダー(超人機メタルダー)
ネロス帝国戦闘ロボット軍団の元暴魂。常に一対一の正々堂々とした勝負を
好む独自の美学を持っていることから、メタルダー抹殺に一度敗れた後裏切り者
として帝国から追われる身となる。メタルダーに命を救われて以来、良き好敵手
となったが後に共にネロス帝国を打倒することを誓う。その志半ばで、クールギン
(実はゴッドネロス)の凶刃に斃れ命を落としたメタルダー最愛の戦友。
クールな性格だが繊細な内面も宿す、孤高のガンマンロボット。
●ジャーク将軍(仮面ライダーBLACKRX、劇場版オールライダー対大ショッカー)
黄金の鎧に身を包む、クライシス帝国地球攻撃兵団の最高司令官。
クライシス皇帝より賜った杖を携えて、失態を晒した者には雷撃により
容赦なく処罰を加える。非情な武人だが時として腹心に温情を見せる。
失策を重ねたすえに皇帝の怒りにより、怪人ジャークミドラへと改造されてしまう。
そして死の間際に将軍の姿に戻り、RXの死を宣言しながら哄笑して散った。
●諜報参謀マリバロン(仮面ライダーBLACKRX)
怪魔妖族大隊を率いる四大隊長の紅一点。諜報網を駆使して
あらゆる情報に精通しているほか、無数の妖術を体得している。
その忠誠心から皇帝やジャーク将軍の信望も厚かったが、南光太郎と
皇帝の会見で皇帝が光太郎にサーの称号を贈ることが承服できず、
皇帝の怒りを受けて消滅した。四隊長の中で最後まで生き残り、
ダスマダーと皇帝の関係を唯一人知ることとなった。
●機甲隊長ガテゾーン(仮面ライダーBLACKRX)
怪魔ロボット大隊を率いるニヒルな性格のロボット戦士。
クライス要塞のメカニックを一手に担い、自ら数々の怪魔ロボットを製作。
一発必中のレーザー銃を携行、怪魔界一の狙撃の腕を持つ。
RXへの勝機を得るため、 ダスマダーと結託したことが原因でジャーク将軍
から大隊長の身分を剥奪され追放、ゲドリアンの弔いと必勝を宣言して
ネオストームダガーでRXに挑むが敗れ、ヘッドにRXキックを受けて砕け散った。
●牙隊長ゲドリアン(仮面ライダーBLACKRX)
怪魔異生獣大隊を率いる牙隊長。怪魔界でも最も暗く寒いゲドラー域の
出身のため、陽の当たる世界でぬくぬくと暮らす人間を最も憎んでいる。
後に皇帝の怒りを示す最終時計を消すための人柱にされ、他の大隊長を
深く恨んでクライス要塞の機関部に篭城、自らのエネルギーをゲドルリドルに
送ってRXを倒し、皇帝に裏切り者達全員の処刑を願うが本懐叶わずに、
ゲドルリドルが敗れたことで逆流したエネルギーを浴びて砂と化して消滅した。
●シュバリアン(仮面ライダーディケイド)
ガテゾーンが「久々に腕を奮った」新作怪魔ロボット。
実は以前に完成間近だったが、出撃の機会の無いままお蔵入りに
なっていたらしい。また、どういうわけかすでにRXと謎の
仮面ライダー達との交戦データが記録されていたりする。
やはり自信過剰な性格をしており、自らが最強の戦士と疑わない…
最終更新:2020年11月08日 15:27