『男塾OB集結! 仁義なき大戦争の幕開け!!』
作者・赤戦闘員 影村
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その日の深夜……。
東京赤坂・某高級料亭***
ここは政財界のトップクラスのVIPがよく使用する事で知られる
老舗の高級料亭である。一見しただけでは普通の料亭の建物にしか
見えないが、敷地を囲む頑丈な外壁の所々には、対侵入者用の
監視カメラがしかけられており、まさに要塞といった雰囲気である。
その最奥の座敷では、先程から目の前に並べられた膳にも
手をつけず、深刻そうな面持ちで会談している二人の重鎮がいた。
一人は、日本の影の首領(ドン)と呼ばれた男塾塾長・江田島平八。
そしてもう一人は、元内閣総理大臣・板垣重政である。
板垣「許せ江田島。剣君がこのような事態になったのは
全てわしの責任だ。お前の大事な愛弟子を預かっていながら…」
江田島「言うな板垣よ。剣桃太郎…決してあの程度の事で
死ぬような漢ではない。必ず奴はどこかで生きておる」
重苦しい雰囲気の中、江田島がようやく
猪口を手に取りくいっ、といく。
江田島「今はそれよりも板垣よ、今後の事だが…」
板垣「わかっておる。総理臨時代理の茅葺君も頑張ってくれている。
それにアメリカから――確か名前は滝君とかいったか、
例のFBI捜査官も明日には成田に着くはず。
この老骨板垣の命を賭けても、白河如き若造の好きにはさせん!」
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翌朝――。
永田町・首相官邸***
白河「ではどうあっても公民権法案の閣議決定を行なうと?」
茅葺「予定に変更はありません。審議会での答申を待って、
法案は閣議決定を経て衆議院に提出します」
首相官邸の総理執務室に押しかけた白河尚純と押し問答をしている
この女性――名は茅葺よう子。剣桃太郎の前任者にして、
日本憲政史上初の女性の内閣総理大臣である。
剣桃太郎から万が一の際の首相臨時代理に指名されていた。
白河「審議会の内容は非公開です。密室での審議など、
まさしく民主主義に反する行いではありませんか!」
茅葺「審議会で作成した法案は必ず国会の委員会にも報告されます。
民主主義に反するとは思いません」
白河「フッ、どうやらこれ以上話しても埒が明かないようだ」
白河は軽蔑したようにわざとらしくため息を漏らすと、
室内の周囲をくるりと見回した。
白河「ところで冴島危機管理監のお姿が見えないようだが…?」
火野「冴島危機管理監には剣総理の捜索のため、一昨日から
現地で指揮を執ってもらっています」
白河の問いに、首相デスクに座る茅葺の傍らに控える
内閣官房副長官の火野が答える。
白河「ほう~ご苦労な事ですな。無駄な事だとは思うが…」
火野「どういう意味でしょうか?」
白河「火野先生、貴方も剣内閣で官房副長官に抜擢されて、いい気に
なっているようだが、我々の側に鞍替えするなら今の内ですよ」
火野「………」
白河「では、今日のところはこれにて失礼」
総理執務室から立ち去る白河。
それを見計らったように、隣りの部屋へと通じる同室内の別の扉から開き、
中から3人の人物が出て来た。公民権法案作成審議会のメンバーとして、
官界や民間から集められた面々である。
一人は背広姿に眼鏡をかけた中年の、評論家か学者風の男。
もう一人は同じく眼鏡をかけた中年ながら、実年齢よりも若く見え、
ストレートの長髪を後ろで紐で結わえている男。
そして最後の一人は背の低い小柄な老人である。
旋風「白河氏はようやくお帰りか。やれやれ…」
黒主「彼にも困ったものです。今の人類が未来へと進むためには、
ナチュラル以外の存在とも手を取り合える世の中を作る以外に
道はないということを解ってくれればいいのですが」
茅葺「ご覧のように事態は切迫しています」
火野「皆さんには作業の方を急いでいただかなければなりません」
河村「わかりました。ベストを尽くします」
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同官邸内・移動中のエレベーターの中***
白河の秘書「しかし意外でしたね。茅葺よう子と言えば親中国派。
親米派の剣桃太郎とは反りが合わないものとばかり思っていましたが…」
白河「それは昔いた党の老人共やマスコミが勝手に決め付けた
イメージに過ぎん。そもそもあの女は親米ではないが親中でもない。
むしろ日本主導で対等な関係の日米安保を再締結したいと
考えている点においては、剣桃太郎とは政治的同志であると言えるだろう。
それに改憲に慎重な事で知られる板垣が、あの軍国主義の塊のような江田島と
親友同士なのだ。何があっても不思議ではない」
表面上は平静さを装う白河だが、その瞳からは苛立ちを隠せないでいた。
白河「官邸を出たら、至急EP党の坂田さんに連絡を取れ」
白河の秘書「えっ、EP党の坂田龍三郎党首にですか!? わかりました」
同官邸内・総理執務室前 休憩ロビー***
備え付けの自販機から缶コーヒーを購入し、一服してる
先程の公民権法案作成審議会のメンバー3人の内の2人――。
文部科学省名誉顧問・旋風太郎左衛門と、
黒主学園理事長・黒主灰閻である。
旋風「黒主さんや、そう言えばお前さんはそもそも
なんで委員会のメンバーを引き受けたんじゃね?」
黒主「昔交わしたある人との約束でしてね。それに
仲間と共に旅に出た一人娘がいましてね。その娘のためにも
父親として少しでも生きやすい世の中に近づけてあげたいんですよ」
旋風「…ほう、"伝説のヴァンパイアハンター殿"にも
いろいろと複雑な事情がおありなんじゃな」
黒主「さて、何の事でしょうか?」
旋風のさりげない過去の素性に関わる指摘を、
黒主はわざとらしく笑って誤魔化し、さらりとかわす。
黒主「そういう貴方こそ、なぜ審議会のメンバーに?
"風魔の頭領"殿」
旋風「さあて、何の事かのう…」
今度は旋風が自身の正体の指摘に対して、
わざとらしく笑って誤魔化す番である。
旋風「元々は文部科学省からの意向もあるが、
実を言うとわし自身は異種族との平和共存なんて興味ないし、
正直どーでもいいとも思っとる」
黒主「…では、何で?」
旋風「決まっとるじゃろ。そっちの方が"面白そう"だからじゃよ。
仲良く共存なんて、喧嘩して争うよりも数倍難しそうじゃからな!」
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一方、その頃……。
東京都内の某五つ星高級ホテル***
学ラン姿のガッシリとした体格の男たちが大勢
続々とホテル正面玄関から中へと入っていく……。
ホテルマンA「お、お客様、まことに申し訳ありませんが……」
ホテルマンB「当ホテルへのその御服装でのご入館は……」
???「構わん。私の客だ」
ホテルマンたち「……!!」
背後からした声に振り返ったホテルの従業員たちは
皆一様にびっくりした。
なんと自分たちが勤めるホテルの社長――松尾鯛雄も
同じ学ラン姿だったのである!
ホテルマンA「しゃ、社長――!!」
ホテルマンB「どうしたというんです!! 社長までそのお姿はっ!?」
松尾「男塾同窓会。俺たちの集いにはこの学ランしかないのだ」
田沢「フッフフ、大した出世だな松尾。今や日本の…いや世界の
ホテル王ってか?」
松尾「何を言ってやがる田沢。お前こそゼネコン業界の
ナンバーワン社長様じゃねえか!」
田沢「ワッハハハ、大したことないわい!」
ホテルマンA「お、男塾同窓会……??」
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同ホテル内・大宴会場***
男塾の同窓生達がズラリと式場内に並ぶ中、
一人、壇上へと上がる富樫源次。
富樫「知っての通りだ。俺たちの大将――かっては男塾筆頭。
現内閣総理大臣・剣桃太郎が暗殺された。殺ったのは白河尚純。
しかし本当の敵は奴や三輪防人のバックについている
地球教団を中心とする影の地球連邦政府――
ロゴスだ。
奴らの目的は白河を傀儡とし、この日本を牛耳ることだ。
近い時期に予想されるGショッカーの日本侵攻を迎え撃つためにも、
公民権法はなんとしても成立させなきゃならねえ。
だが敵の力は強大だ。これは生き死にを賭けた戦争になるだろう」
伊達「………」
藤堂「………」
富樫「だからあらかじめ言っておく。俺たちが男塾を卒業したのはとうに昔の話だ。
血の気だけで生きてた時代は終わっている。今や皆、社会的な地位もあり、
多くの部下や社員、そして愛する家族もいるだろう。
その肩には大きな責任を持って生きている。ここから去りたい者は去ってくれ。
恥じることはねえ。これから始まることは分別のある大人のすること
じゃねえんだからな…!」
赤石「何つまらねえゴタク並べてやがる富樫!」
元男塾二号生筆頭・赤石剛次が前へと進み出る。
赤石「男は誰でも心に一本のドスを呑んでいる!
要はそのドスの日頃の手入れの問題だ!
そいつを錆び付かせているような野郎はここには居ねえぜ!!」
虎丸「ロゴスだかGショッカーだか知らねえが」
飛燕「思い知らせてやりましょう!」
松尾「男塾魂をなっ!!」
富樫「フッフフ…そうか。ちっとも変わってねえんだな、てめえらよ。
嬉しくなるほど変わっちゃいねえぜ…!」
富樫はうっすらと瞳に涙を浮かべる。
富樫「だったら昔のように派手に
オドってやろうじゃねえか――っ!!」
男塾OB全員「おおお――っ!!!」
日本を守るため、ついに集結を果たした男塾OBたち。
しかし、こうしている間にも日本を虎視眈々と狙う
悪の魔手が刻一刻と男塾OBに対しても迫っていたのである――!!
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○江田島平八、板垣重政→深夜、都内の某高級料亭にて会談。
今後の事を話し合う。
○茅葺よう子→既に退陣して総理の座を退いていたが、
剣内閣の首相臨時代理として再登板。
○火野隆司→剣内閣の内閣官房政務副長官を務めている。
○冴島十三→行方不明の剣総理捜索のため、官邸を離れて
直接現地に赴き指揮を執っている。
○河村武憲、黒主灰閻、旋風太郎左衛門→公民権法案作成委員会の
メンバーとして招聘されている。
○男塾OBたち→悪の勢力から日本を守るために、再び集結する。
●白河尚純→EP党の坂田龍三郎との接触を図る。
【今回の新規登場】
○板垣重政(マーダーライセンス牙)
元内閣総理大臣。百年に一人の逸材、真実と正義の人。
総理在任時に、自身と検事総長と内閣情報調査室長との三人による
極秘会談を経て、超法的私設組織“牙”を創設した。
戦時中は悪名高い731部隊に見習い研究員として在籍していたが、
戦後、二度とこのようなことがあってはならぬと
総理の椅子を目指し政界入りした。
○茅葺よう子(攻殻機動隊S.A.C.シリーズ)
日本憲政史上初の女性首相。米中EUそれぞれと等しく距離を保って
日本独自の外交政策をとろうとする単独国連協調路線を掲げる。
元々は解散総選挙対策のため総理総裁の座に担ぎ出されたが
その政治的手腕も確かなものであり、決して張子の虎ではない。
公安9課の他に航空自衛軍にも直属の特殊部隊を持っている。
○火野隆司(美少女戦士セーラームーン実写版)
国会議員。火野レイ=セーラーマーズの父。
娘がセーラー戦士である事は知らない模様。
娘とは疎遠な関係にあったが、後に和解した。
○河村武憲(絶対可憐チルドレン)
元はエスパーの存在に警鐘を鳴らす著書もある大学社会学科助教授で、
反エスパー組織「普通の人々」の支援者だったが、息子のタケシが
エスパーであることがわかってからは、タケシをバベルに預け、
逆にエスパーの立場から警鐘を鳴らす側に考えを変えた親馬鹿。
彼の転向と密告により、「普通の人々」の北練馬支部は壊滅した。
○黒主灰閻(ヴァンパイア騎士/ヴァンパイア騎士Guilty)
黒主学園理事長。黒主(玖蘭)優姫の養父で、愛娘の優姫に対しては
かなりの度を越えた親馬鹿である。吸血鬼に大切な人を殺された過去を持つが、
人間と吸血鬼の架け橋を育てるべく、一般生徒が通う普通科(デイ・クラス)と、
エリートである吸血鬼(ヴァンパイア)が通う夜間部(ナイト・クラス)に
分かれた黒主学園を創設した。自身もまた「伝説」と謳われるほどの
凄腕のヴァンパイアハンターであり、現役復帰時には一人称が「僕」から
「俺」に口調が変わる。
○風魔小太郎=旋風太郎左衛門(隠の王)
日本の忍の世の五大勢力の一つである風魔の里の頭領。
非常に飄々としており、掴み所が全く無い。
何を考えているのかも分からない変人。ちゃらけている様だが、
甘い考えを持つ者が嫌いらしく、「不殺」の忍道を「甘い」と言い切る。
風魔の里では若い長身の男の姿だが、表の世では小柄な老人の姿に化け、
「旋風太郎左衛門(つむじかぜたろうざえもん)」と名乗り、
文部科学省の高官を務めている。
○松尾鯛雄(魁!! 男塾/天より高く)
男塾OB。現在はホテル王。「サザエさん頭」と呼ばれる
独特な髪形をしている。男塾の中ではかなりの酒豪。
○田沢慎一郎(魁!! 男塾/天より高
男塾OB。現在はゼネコン業界の№1社長。「男塾一の天才」
「男塾のコンピューター」の異名を持つ。実際のところ数学も
九九が全て言える程度、ローマ字を「イタリア語」と言ってしま
ような男ではあるが、くず鉄からロボットを作ってしまうという
器用な一面も。
○赤石剛次(魁!! 男塾/天より高く)
男塾OB。現在は民族派系政治結社会長。男塾二・二六を起こし
無期停学となった元二号生筆頭。一文字流斬岩剣の使い手。
○虎丸龍次(魁!! 男塾/天より高く)
男塾OB。現在は虎丸ファイナンス会長。入学式での「根性バッタ」で
鬼ヒゲ教官に屁をかけ、半年間「獄悔房」で重さ200kgの釣り天井を支えた
経験あり。独自開発した猛虎流拳法と相撲が得意。
○藤堂豪毅(魁!! 男塾/天より高く)
男塾OB。現在は藤堂財閥総帥。藤堂兵衛の養子であるが、
現在養父との関係は断絶している。元冥凰島十六士の総大将。
○三面拳飛燕(魁!! 男塾/天より高く)
男塾OB。現在は全日本青年医師会理事長。
美しい容姿・華奢な体つきながら、数少ない鳥人拳の使い手。
○伊達臣人(魁!! 男塾/天より高く)
男塾OB。現在は関東極天漠連合会長・初代伊達組組長。
頬に傷をつけた教官を殺害(男塾二・一五事件)した件で退学処分を受け、
その後「関東豪学連」の総長となり、三面拳飛燕、雷電、月光と共に
桃、J、富樫、虎丸と驚邏大四凶殺で死闘を繰り広げ、その後男塾に入り
一号生として再入塾した。「孤戮島」出身。槍の使い手でもある。
最終更新:2020年11月08日 16:00