本編463~469

『Gショッカー海底基地大乱戦』-1

 作者・深海魚人デズル
463

麓の洞窟の中***


焚き火をしながら、傷ついた剣崎一真を介抱する花形。

剣崎「あ、貴方は…!?」
花形「気がついたか」
剣崎「申し訳ありません。俺としたことが不覚を取りました」
花形「焦るな。君はまだアンデッドと化した自身の身体に
 慣れていない。相手があのラッキークローバーの北崎では
 無理もないことだ」
剣崎「………」
花形「今またスマートブレインは再び、天王路と結んだ村上の一派に
 よって牛耳られた。その村上の背後にはGショッカーが控えている」

花形は話を続ける。

花形「傷が癒えたら、すぐに台湾海峡へ向かいたまえ」
剣崎「…Gショッカーの海底基地がある場所ですね」
花形「D&Pの登太牙君には既に話をつけてある。君は台北で
 紅渡君と合流し、Gショッカーの日本攻撃を阻止するんだ」

だが、その場に忍び込んだ一匹の奇妙な青い蝶が、
その二人の話の様子を見ていることに、花形も剣崎も気づいていなかった。


スマートブレイン本社・モニター室***


青い蝶=自身の使い魔から送信されてくる映像を眺めながら
ほくそ笑むスマートレディ。

スマートレディ「フフフ…おバカさんたち。貴方たちの考えそうなことなんか
 全部お見通しよ。すぐに海底基地の警備本部に通報しなきゃ♪」

464

成田空港***


ニューヨーク発成田着の便で今朝到着したばかりの滝和也FBI特命捜査官を
一人出迎えたのは、警視庁新宿西警察署の野上冴子署長である。

冴子「はじめまして、滝捜査官」
滝「ほぉ、光栄ですな。貴女の様な美人から
 お出迎えを受けるとは」
冴子「まずは署の方に出向く前に、
 二人だけでお茶でもしません?
 まずは私の車へ」

冴子の運転するスポーツカーに乗って成田を出発した二人は、
成田ICから高速へと入り、そのまま首都高の方向へと向かう。
やがて都内に入り首都高から降りた車は、東星大学近くの
繁華街へと向かって行った。

滝「いったいどちらに向かっているんですかね?」
冴子「今にわかりますわ。きっと驚かれるわよ。フフフ…」
滝「…???」

そして車は喫茶店らしき建物の前で止まった。
冴子に促されて車から降りた滝の目に、
店の看板の文字がとまった。

滝「…アミーゴ?? 確かどっかで聞いたような」

店の中に入ると初老の店主が切り盛りしていた。
そして滝とその主人が互いに顔を見合わせた瞬間――

藤兵衛「――はい、いらっしゃ……滝!?」
滝「――おやっさん!?」

465

バダンとの戦い以来、数年ぶりに再会をした
仮面ライダー1号2号最大の戦友である
立花藤兵衛と滝和也の両雄。
その日は互いに積もる話に花が咲いたのは言うまでもない。

滝「また喫茶店とレーシングクラブを始めたんですね」
藤兵衛「水臭いぞ。たまには連絡くらいよこせ。
 ところでそちらの人は?」
滝「ああ、彼女は――」

藤兵衛はそっと滝の小耳に顔を寄せて囁く。

藤兵衛「えらく別嬪さんじゃないか。
 嫁さんが家で嫉妬するぞ…」
滝「――おやっさん!!」
冴子「私はこういう者です。本日は公務ではなく
 建前上私用できていますので、手帳ではなく名刺で失礼」

冴子は名刺を藤兵衛に差し出す。

藤兵衛「ほうほう何々、新宿西署の署長さん…」
冴子「では早速ですが本題に――」

冴子の話によると、行方不明となっている
グレートマジンガー&ゲッターチームの所在が
その後の太平洋上の米海軍第七艦隊独自の調査によって判明した。
彼らは現在、Gショッカーの海底基地に囚われている。
だが問題はその場所である。
Gショッカーの海底基地は、中国と台湾の領海のちょうど境界線の位置に秘密裏に建設されている。 地球連邦政府が設立された今でも、中国と台湾の緊張関係は続いている。日米の後押しを受けた台湾は、中国の猛反対を押し切る形で地球連邦に加盟している。
もし米海軍や日本の海上自衛隊が本格的に救出に動けば、
中国政府を刺激しかねないのである。
勿論、極東の地球連邦軍も、三輪長官一派に指揮権を牛耳られている
今の状況では当てにはできない。

藤兵衛「そこで、国家や国境の枠組みに囚われない
 仮面ライダーの出番っていう訳ですな」
冴子「勿論、日本政府も後方から出来得る限りの
 支援を約束してくれています」
藤兵衛「わかりました。なんとか連絡をつけてみましょう。
 マジンガーやゲッターの噂なら、わしもよく聞き知っている。
 同じ地球の平和を守る仲間のためなら、あいつらも
 きっと快く引き受けてくれるでしょう。ただ、決して
 お上のためにやるわけじゃあありませんよ」
冴子「OK、それでよろしくてよ」
滝「ですがおやっさん、連絡を取るといっても
 どうやって…?」
藤兵衛「うむ、そうだな~。志郎や敬介や茂の奴も
 そろそろまたぶらりと現れそうなもんなんだが…」

466

Gショッカー海底基地***


台湾海峡・中台両岸領海境界線付近に建設された
Gショッカーの海底基地である。日本攻撃の要であると同時に
軍事的な緩衝地帯とも重なるため、地上の人間の国家の軍隊は
滅多に寄り付かないという、まさに悪の組織にとっては
格好の位置にあった。

そこへ、魔魚将軍アンゴラスと悪霊将軍ハーディアスが帰還する。
出迎えに出たのは白いスーツの男。どことなく覇気がない…。

アンゴラス「出迎えご苦労アポロガイスト!」
ハーディアス「捕虜共は元気にしておるか?」
白いスーツの男「問題はない。大人しいものだ」
アンゴラス「もし逃げられでもしたら、
 それは捕虜収容所の所長であるお前の責任だ。
 心しておけよ」
白いスーツの男「承知している」
アンゴラス「心得ましたと言え!」

アンゴラスは激しい口調で白いスーツの男――
――アポロガイストを叱責した。アポロガイストは素直に従い、
「心得ました」と言い直す。その言葉を聞いて、
アンゴラス、ハーディアスの両将軍は満足そうに笑みを満面に浮かべ、
その巨体を激しく揺らしながら司令室へと向かった。

白いスーツの男「………」

467

自室――すなわち基地内の捕虜収容所の所長室…というには
粗末な部屋の中で、アポロガイストはスキットル(蒸留酒用の水筒)を
片手に今日も酒を煽る日々を送る。その様子をすぐ傍らから見ている、
ヨレヨレの黒いタキシードを着た一人の老人――名を死神クロノスという。

死神クロノス=灰色の老人は、
クッションもない粗末な造りの椅子に腰を下ろし、
複雑な顔でアポロガイストを見つめていた。

灰色の老人「何を考えている?」
白いスーツの男「何も考えてなどいない。もはや俺は
 GOD秘密警察の第一室長ではない。至高邪神のご勘気を被り、
 今はただの捕虜収容所の所長だよ」

アポロガイスト――元GODの大幹部であり、
泣く子も黙る秘密警察を取り仕切る、
GOD総司令の信任厚きエリートであった。
Gショッカーが創設される際にも、
新たに新設される秘密警察組織の長官には
そもそも彼が就任するはずであったのだ。
ところがそこにヘドリアン女王を筆頭とする闇女王同盟からの
横槍が入る。女王の讒言によって彼はこの僻地へと左遷され、
今では昔の面影など全く感じさせないほどに
酒浸りの日々を送っている。

灰色の老人「お前は生ける屍の如き男だったのか?
 わしはあんたのそんな姿など見たくはないぞ」
白いスーツの男「…意外だな。GODの怪人は皆、
 俺の事など嫌っているものとばかり思っていたぞ」
灰色の老人「勘違いせんでもらおう。わしも貴様は嫌いじゃ!
 たがおぬしの能力と忠誠心は以前から買っておる。
 だが今のお前の姿をご覧になったら、総司令は
 なんと仰るじゃろうな」
白いスーツの男「………」

クロノスは会話を打ち切り、部屋から出て行った。
部屋の中で一人になったアポロガイストは、
しばしの沈黙の後、突然天井に向けて声を上げた。

白いスーツの男「いつまでそこに隠れている?」

468

???「これはこれは…。さすがは"元"GOD秘密警察第一室長殿。
 とうにお気づきであったか」

天井から謎の声が返事をすると、一枚の巨大なトランプカードが出現し、
それが裏返ると同時に、その声の主=ジェネラルシャドウが姿を現した。

シャドウ「かつてGODの殺人マシーンとまで恐れられた鬼の室長殿は、
 今では単なる腑抜けに成り下がったと聞いていたが、どうやら
 実態は違うようだな」
白いスーツの男「はて、なんのことやら」
シャドウ「よせよせ、貴殿ほどの漢に下手な芝居は似合わん。
 ミケーネのバカ将軍どもは欺けても、俺の目は誤魔化せんぞ」

アポロガイストはその言葉に対して否定も肯定もしなかった。

白いスーツの男「フッ、それよりも"影の将軍"ともあろう者が
 こんな薄汚い所にわざわざ何の用だ?」
シャドウ「俺も貴殿と同じで暇な身の上でな。
 一つトランプ占いの相手でもしてみないかね?」
白いスーツの男「生憎だが俺は占いなど信じない主義だ」
シャドウ「まあそう言わずに一枚…」

ジェネラルシャドウはカードの束を差し出す。
アポロガイストはその中から無造作に一枚を抜き出した。

シャドウ「ほう、これは面白い、ハートの8。
 運命の出会い、予期せぬ再会、待ち人来たる…といったところかな?」
白いスーツの男「待ち人来たる…だと?」
シャドウ「あ、そうそう、俺の仕入れた情報では、
 近々地上の人間共がここの捕虜を救出すべく、この海底基地への
 奇襲攻撃を計画しているとの事だ。あるいはその時にでも…。
 フフフフフッ……――トランプ・フェイド!!」

白いマントを翻し、その場から消えるジェネラルシャドウ。
アポロガイストは吐き捨てるように言う。

白いスーツの男「フン、ジェネラルシャドウ…食えない男だ」

469

○剣崎一真→北崎に破れ負傷。花形に介抱される。
○花形→北崎に破れ負傷した剣崎一真を介抱。彼に台湾へ向かい
 紅渡と合流するように指示を出す。
○滝和也→日本に到着。成田空港で出迎えた野上冴子と共に
 喫茶アミーゴに赴き、立花藤兵衛に接触。
○野上冴子→成田空港で滝和也を出迎えた後、共に喫茶アミーゴに
 赴き、立花藤兵衛に接触。
○立花藤兵衛→滝和也と久しぶりの再会。Gショッカー海底基地に
 囚われているグレートマジンガー&ゲッターチームの救出作戦に
 協力を要請すべく、仮面ライダーたちに繋ぎをつけることを承諾。
●スマートレディ→花形たちの動向を監視。
●魔魚将軍アンゴラス、悪霊将軍ハーディアス→Gショッカー海底基地に
 陣取っている模様。失脚中のアポロガイストを小馬鹿にしている。
●アポロガイスト→ヘドリアン女王の讒言によって、海底基地の
 捕虜収容所所長に降格させられている。
●死神クロノス→アポロガイストを迎えに現れ、現場復帰を説得中。
●ジェネラルシャドウ→アポロガイストの様子を見に現れる。


【今回の新規登場】
○花形=ゴートオルフェノク(仮面ライダー555)
 スマートブレインの元社長。自身を含めたオルフェノクの利益を
 代表する立場にあったが、オルフェノクの力に覚醒した人間が
 力に溺れて心を失っていく姿を目の当たりにして、人間のために
 オルフェノクは滅ぶべきとの考えに改める。村上一派を放逐し、
 木場勇治をスマートブレインの新社長に据えた。
 ヤギの特性を持つオルフェノクに変身し、時速310kmで疾走可能。
 巨大な建造物さえ破壊できる。

●魔魚将軍アンゴラス(グレートマジンガー)
 魚類型戦闘獣を率いるミケーネ7大将軍の一人。
 津波を起こすことができる。

●悪霊将軍ハーディアス(グレートマジンガー)
 悪霊型戦闘獣を率いるミケーネ7大将軍の一人。
 魔術や妖術を得意とする。

●アポロガイスト(仮面ライダーX/仮面ライダーディケイド)
 GOD秘密警察第一室長。大ショッカーの幹部としても暗躍。
 COD総司令からの信頼は大変厚く、唯一、総司令に意見できる特権を有する。
 普段は人間体の姿で怪人たちを一喝! 「アポロ・チェンジ!」の掛け声で
 怪人体に変身する。「迷惑な奴なのだ!」が口癖。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2020年11月08日 16:06