本編797~801

『メカゴジラ発進せよ』-1

 作者 凱聖クールギン
797

愛媛県・鬼ヶ城山***


鬼ヶ城山のネオショッカー基地をメタルダー達が壊滅させた翌日、
通報を受けたGUYS JAPANのZATが現地へ到着し、
この山に繁殖した古代昆虫メガヌロンの駆除作戦を開始した。

森山「この山は現在、ZATが作戦行動中です。
 一般の登山客の皆さんは、安全が確保されるまで山への立ち入りを禁止します」

山の麓に停められた特殊装甲車ウルフ777の隣に立って、
ZAT紅一点の森山いずみ隊員が登山口の通行を監視する。

学「さすがZAT。格好いいなあ~」
トップガンダー「だが、あの程度の大きさの怪物なら、
 わざわざ彼らを呼ばずとも俺達の手で退治できるはずだが…」
八荒「まあ、餅は餅屋って言うことだし、
 全部で何匹いるかも分からない虫の化け物、
 ここは怪獣退治のプロに任せるのが一番だよ。
 舞ちゃんの雑誌のお遍路取材も、まだまだ撮り残した場所があるしね」
舞「ええ、そうね。
 でも、今回はそれどころじゃない大スクープに出くわしちゃったわ」

倒されたメガヌロンの死骸を映した写真を眺めながら、
舞は溜息をつく。

山では、二谷一美副隊長が指揮するZAT隊員達が、
茂みや洞窟に隠れているメガヌロン達を虱潰しに捜し出し、
ZATガンで始末していた。

南原「おっ、また現れたぞ!」
北島「飛んで火に入る夏の虫ってのはこいつらの事だな…。
 よし、攻撃だ!」

巣のある水源の近くまで踏み込んできたZATに、
メガヌロンは巣を守ろうと次々姿を見せて攻めかかるが、
これが索敵の手間を省かせるだけの結果となり、
出て来た順からZATガンの銃火の餌食となる。

メガヌロン「キュキュキュキュキュ――」

藪の中から、一際大きなメガヌロンの個体が姿を現した。
ZATの北島哲也、南原忠男両隊員がすかさずZATガンを撃ちかけるが、
このメガヌロンは生命力も他よりいくらか強靭で、
銃撃を浴びて苦しみながらもしぶとく地面を這って前進してくる。

南原「副隊長! 弾丸が効きません!」
二谷「よし…。レーザーに切り替えて熱線で焼いてしまうんだ!」
北島「了解!」

二谷一美副隊長の指示でZATガンのカートリッジを交換し、
実弾からレーザーに切り替えた北島と南原がメガヌロンを再攻撃。
光線を受けたメガヌロンは痺れたように動きを止め、
地面にうつ伏せに沈んだ。

南原「やった!」
北島「…待て、様子がおかしいぞ!?」

北島が異変を感じたその時、
全身にビーム光を迸らせながらうずくまっていたメガヌロンが痙攣を起こし、
呻くような奇声を発したかと思うと、
見る見るうちに巨大化した!

南原「うわぁっ!!」
北島「しまった…。
 レーザーのエネルギーを吸収して異常成長を起こしたんだ」
二谷「こんな事になるとは…。
 とにかく、ひとまず退避!」

798

宇和島市街***


巨大メガヌロン「キュキュキュキュキュ――」

ZATガンのビームエネルギーを吸収し、
細胞分裂が刺激されて体長30mほどに巨大化したメガヌロンは、
山を下りて麓の街を破壊し始めた。

八荒「な、何だありゃあ!?」
学「あの虫の怪獣だ!」
流星「あの虫は突然変異を起こしたんだ。
 全身の細胞が異常に成長している」
闘破「とにかく、ここから逃げよう!」

ZATは戦闘機スカイホエールとスーパースワローに乗り込み、
空からメガヌロンを攻撃する。

二谷「怪獣をこれ以上前進させるな。攻撃開始!」
南原「了解!」

二機の戦闘機からミサイルが撃ち込まれるが、
体細胞が異常進化したメガヌロンは耐久力も各段に向上しており、
凄まじい集中砲火を浴びてもびくともしない。

北島「タフな奴だな…。
 通常のミサイルじゃあ、まるで効果がない」
二谷「凄まじい生命力だ。
 太古の昔、苛酷な原始の地球環境で進化してきた古生物の矜持と言うべきかな」
南原「副隊長、感心している場合じゃありませんよ」
北島「そうだ。虫には、やっぱり殺虫剤がいいんじゃないか?」
二谷「よし…。奴に殺虫剤を噴霧しよう。
 ベープ作戦開始だ!」

スカイホエールの機体下部にある化学分析室で殺虫剤が調合され、
同時に毒性薬剤の被害が出ないよう、
周辺住民のより遠くへの避難が進められる。

森山「副隊長、一般市民の避難は完了しました」
南原「風向きもOKです。
 町とは反対の山の方に吹いています」
二谷「よし、ベープを投下しろ!」

スカイホエールから巨大なベープ(殺虫剤噴霧器)が
メガヌロンの傍に投下され、稼働して霧状の殺虫剤を撒き散らす。
噴霧された殺虫剤を浴びたメガヌロンは痙攣を起こして動きを止めた。

南原「副隊長! 効果は抜群ですよ!」
北島「だが、奴はしぶといぞ…。
 あれだけ大量に浴びてもまだ生きている」
二谷「それでも、音を上げるのは時間の問題だ。
 このまま絶命するまで浴びせ続けるんだ!」

文字通り虫の息となったメガヌロンに、
フル回転で殺虫剤をしつこく浴びせ続ける巨大ベープ。
海からの風が吹き、散布された薬剤を乗せて山の方へと流れて行った…。


鬼ヶ城山・四合目***


ジラース「zzzzzz…。グ…ググゥゥゥ――」

鬼ヶ城山の洞窟の中へ、麓から潮風が流れ込む。
洞窟の奥で眠っていた怪獣ジラースの鼻腔を、毒々しい薬剤の匂いがくすぐった。
時間と共にどんどん洞窟内に溜まって行く有毒な空気は、
徐々にジラースを窒息させてその安眠を妨げた。

ジラース「グゥゥ……ギャォォォ――ン!!」

苦しくなったジラースは遂に目覚め、
怒りの雄叫びを上げながらその黒い巨体を持ち上げた。
鬼ヶ城山の岩壁の一角が崩れ、中からジラースが姿を現す。

南原「副隊長! 怪獣です! あれはゴジラ…!?」
北島「いや、首に大きな襟巻がついている。
 あれはジラースだな」
二谷「あんなものが山の中に眠っていたとは…。
 やむを得ん。ジラースも退治するぞ!」
森山「でも、メガヌロンは…?」

麓へ下りてきたジラースは背鰭を青く発光させ、口から熱線を発射。
メガヌロンを絶命寸前まで追い詰めていたベープを焼いて破壊してしまった。

二谷「しまった…! あと一息だったものを」
南原「メガヌロンが息を吹き返すぞ!」

殺虫剤の散布が止まったため、
死にかけていたメガヌロンが一命を取りとめ、
凄まじい生命力で生気を回復していく。

ジラース「ギャォォォ――ン!!」
メガヌロン「キュキュキュキュ――!!」

ジラースとメガヌロンは野獣の本能によって引き合い、
街を破壊しながら戦い始めた。

799

九州・阿蘇山***


その頃――。
阿蘇山の麓に張られたテントの中で、
パソコンの画面が刻々と映し出すグラフと睨めっこしていた山根健吉は、
グラフの数値が突然異常に跳ね上がったのを見て思わず身を乗り出した。

健吉「大変だ…!
 ラドンが目覚めようとしている!」

健吉はテントから飛び出して阿蘇山の頂上を見た。
火口から煙が上がっているが、噴火ではない。
中で猛烈な突風が起き、土砂を巻き上げているのだ。

ラドン「キャォ――ォォォン!!」

火口の中で、永く休眠状態にあった身体をマグマの熱で温め、
生気が漲るのを待っていたラドンは遂に復活し飛び立った。
大きな翼を羽ばたかせて火口内の土砂を巻き上げ、
揚力を起こしてそのまま空へと力強く飛翔する。

健吉「うわっ!?」

火口から現れたラドンが真上を通過した――。
そう思った瞬間、強烈な風が健吉の背後のテントを中の機材ごと吹き飛ばした。
高速飛行するラドンが衝撃波を起こしているのだ。

健吉「こちら阿蘇ラドン観測隊。
 土橋さん、応答願います。ラドンが復活しました!」

自分も突風に吹き飛ばされながら、
健吉は必死の思いで東京の土橋竜三に連絡した。


東京・総理官邸***


土橋「総理、非常事態です。
 阿蘇山のラドンが目覚めました」
剣「直ちに航空自衛隊を出動させ、迎撃するんだ!
 特殊作戦室の黒木特佐に指揮権を預ける」
土橋「分かりました。今、黒木特佐と連絡を取ります。
 …黒木君、私だ。ラドンが出現した。
 直ちに出動を……
 何? 今メカゴジラの格納庫前にいる?」

土橋からの電話に応えた黒木翔特佐は、
つくば基地の格納庫に鎮座するメカゴジラの元へと早足で歩いているところであった。

黒木「ラドンを倒すには通常兵器では明らかに威力不足です。
 愛媛にはジラースとメガヌロンも同時に出現しました。
 この事態に対処できる兵器は、メカゴジラしかありません」
土橋「しかし……メカゴジラは未完成だ。
 兵器の最終テストがまだだし、
 メインエンジンのエネルギーチャージも完了していない。
 そんな状態でどれだけ戦えるか…」
黒木「やれるだけやってみます。
 勝つには、それしかありません」

メカゴジラの頭部コクピットに乗り込んだ黒木は、
スロットル・レバーを力強く押し込みジェットエンジンを吹かした。

黒木「メカゴジラ、リフトオフ…!!」

轟音とともに背部のロケットを噴射して浮上したメカゴジラは、
空を切り裂く超音速で西へと急行した。

800

東京・総理官邸***


剣「黒木君のことだ。きっとやってくれるだろう。
 ここは彼を信じ、判断を尊重しよう」
土橋「しかし総理…」
剣「メカゴジラの応援として、航空自衛隊にも出動を命じる。
 九州方面の総力を結集してラドンを倒す!」

ラドン復活に備えてかねて臨戦態勢を取っていた自衛隊に、
剣桃太郎首相は出動命令を下した。
九州各地の航空自衛隊基地と佐世保港に停泊中の空母から、
F‐15戦闘機とメーサー攻撃機が次々と発進する。

剣「ラドンの進路は…?」
土橋「北西へ向かっています」



佐賀県・佐賀市***


阿蘇山を飛び立ったラドンは佐賀へ襲来。
ソニックブームで佐賀市内を破壊し始めた。

「避難警報! 避難警報! 怪獣が出現しました!
 全校児童は教師の指示に従って、直ちにグラウンドへ避難して下さい!」
鵺野「か、怪獣…!?」

佐賀の小学校で授業をしていたぬ~べ~こと鵺野鳴介の教室に、
突如、避難警報のサイレンが響く。
鵺野が児童に避難の指示を出す暇もなく、校舎の真上をラドンが通過した。
窓ガラスがことごとく割れ、プリントが突風に舞い、机や椅子が風圧で引っ繰り返る。

鵺野「みんな、怪我はないか!?」

子供達が驚きと恐怖で泣き始める。
教室内のパニックを鎮めて、鵺野はガラスの割れた窓の向こうを見た。
ラドンを追うように、戦闘機の編隊が轟音と共に上空を飛び去って行く。

鵺野「ラドン、か…。こりゃ大変だ」

航空自衛隊はラドンに攻撃を開始した。
ラドンの背後を取ったF-15戦闘機のサイドワインダーが次々発射され、
巨大怪獣の体熱を感知したサイドワインダーが横へかわそうとしたラドンを追尾する。
命中! ラドンの左右の翼が爆炎を上げた。
すかさずメーサー攻撃機も怯んだラドンにメーサービームを撃ち込み、
背中の皮膚を超高熱のマイクロ波で焼き払う。

ラドン「キォォォ―――ン!!」

攻撃を受けて怒ったラドンは方向転換し、反撃に出た。
正面から体当たりを仕掛け、二機のメーサー攻撃機を翼で粉砕。
更に戦闘機を凌駕するスピードで旋回して背後を取り、
後方からクラッシュしてF-15戦闘機一機を叩き落とした。
犠牲を払いながらも航空自衛隊は果敢に攻撃を続け、
数的有利を活かして多方向から絶え間なくミサイルの猛火を浴びせる。

黒木「ラドンに接近。これより戦闘に入ります」

つくばから全速力で飛んで来たメカゴジラが空中戦に参戦。
ラドンも一際巨大な敵の出現に注意を引きつけられ、凶暴な闘志を向ける。

黒木「レーザーキャノン、発射!」

メカゴジラの両眼からレーザーが発せられ、ラドンに命中。
強烈な衝撃を受けたラドンは墜落するように高度を下げたが、
すぐに体勢を立て直し、再び猛然と上昇してくる。

黒木「4式レールガン、射撃開始!」

腕に装備されたレールガンによる連射でラドンを牽制しつつ、
背後を取って追跡するメカゴジラ。
その後方に編隊を組んで続く自衛隊機からも、
ミサイル弾とメーサー光線が一斉に撃ち込まれる。
怒り狂ったラドンは方向転換し、メカゴジラに正面衝突を仕掛けようと
猛然と突っ込んで来た。

黒木「メガ・バスター、ファイア!!」

メカゴジラの口から虹色の熱線が発射され、ラドンの頭部を直撃!
さしものラドンも大きく後ろへ吹き飛ばされる。

黒木「熱線の命中により、ラドンの速力半減!」

顔から血を流したラドンが、空中で怒りの雄叫びを上げる。
傷つきながらも再び加速し、メカゴジラに向かって来ようとしたその時、
急にラドンの表情が変わった。

ラドン「――?」

小さく首をかしげる仕草をしたラドンは突如、方向転換。
戦いをやめて戦闘機の間をすり抜け、戦場から離脱してしまった。

土橋「ラドンが逃げた…!?」
剣「いや違うな。
 何かを嗅ぎつけてそこへ向かったような…。まさか…!」

桃太郎と土橋が見守る対策本部のレーダーが映す光点は、
ラドンが全速力で南東の方角へ向かった事を示していた。

801

●メガヌロン→ZATに駆除されるが、ビームを受けた一体が異常成長して巨大化。
      宇和島市街を破壊し、ジラースと戦う。
●ジラース→ZATの噴霧した殺虫剤のため苦しくなって眠りから覚醒。
      宇和島市街を破壊し、メガヌロンと戦う。
△ラドン→阿蘇山の火口から飛び立ち、佐賀に襲来。
     航空自衛隊とメカゴジラを相手に空中戦を展開するが、途中で離脱する。
○メカゴジラ→黒木翔特佐の操縦でつくば基地を発進。
        佐賀でラドンを捕捉し空中戦を展開する。
○二谷一美、北島哲也、南原忠男→鬼ヶ城山のメガヌロンを駆除するが、ZATガンのビームで巨大化させてしまう。 巨大メガヌロンにベープ作戦を仕掛けるがジラース出現により失敗。
○森山いずみ→地上で市民の避難誘導を行なう。
○山根健吉→阿蘇山のラドン復活を土橋竜三へ報告。
○黒木翔→ラドンを倒すため、メカゴジラに乗り込み発進。
       佐賀でラドンと空中戦を展開する。
○剣桃太郎→ラドン撃滅のため、九州各地の航空自衛隊に出動命令を出す。
○土橋竜三→ラドン対策の進言を剣総理に行なう。
○北八荒→メガヌロンの件をGUYS JAPANへ通報。
○鵺野鳴介→小学校での授業中、ラドン襲来の被害を受ける。


【今回の新規登場】
○二谷一美(ウルトラマンタロウ)
 ZAT副隊長。前任の荒垣修平に代わり極東支部に赴任してきた。
 涙もろく負けず嫌いで、年配だがバイタリティーでは若い隊員にも遅れを取らない。

○北島哲也(ウルトラマンタロウ)
 ZAT隊員。情報分析とメカニックが得意の知性派。
 海へ行くと任務を忘れて釣りを始めてしまうほどの大の釣り好き。
 初恋の幼馴染をドルズ星人に連れ去られ怪獣に改造されてしまった辛い過去を持つ。

○南原忠男(ウルトラマンタロウ)
 ZAT隊員。射撃やマシン操縦の腕前は一流。
 九州出身で、自分を「太陽の子」と呼ぶほど明るい性格。

○森山いずみ(ウルトラマンタロウ)
 ZAT隊員。紅一点で主に本部での通信を担当するが、実戦の腕も実は一級品。
 気配りが良く、明るい笑顔でムードメーカーとしても活躍する。

○メカゴジラ(ゴジラVSメカゴジラ/ゴジラ×メカゴジラ/

 ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS /半オリジナル)
 対ゴジラ決戦兵器として自衛隊が完成させた巨大ロボット。
 過去に作られたGフォース製メカゴジラと3式機龍の長所を併せ持つ。
 武器は口からのメガ・バスター、目からのレーザーキャノン、腕の4式レールガン、
 バックユニットの多連装ロケット弾、胸部のアプソリュート・ゼロ、
 腹部のプラズマ・グレネイドなど多数。

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最終更新:2020年11月19日 07:27