『サラジアの狂える魔人』-1
作者・凱聖クールギン
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アメール民主共和国***
灼熱の砂漠に吹く風は、ひどく乾燥していて暑苦しく、
そしてどこかきな臭い…。
かつて独裁王制を敷いていた中東の国アメールは、
国王が自ら退位して王制が廃止され、平和的に民主制へと移行した。
武力や流血によらず、国と国民のより良い未来のため、
進んで主権を返上した当時のアメール王室の英断は国内外から高い評価を集め、
元女王のマイラは今ではアメールの特別平和大使を務めている。
アブダダ「マイラを乗せた車は間もなく、
首都へ戻るためにこの道を通る。
間違いなく討ち果たしてくれ」
SSS9「…任せろ」
サラジア・シークレットサービスの秘密工作員、
エージェントSSS9(スリー・エス・ナイン)が
ライフルを構えて砂丘の陰から道路を窺う。
サングラスをかけた怪しげな風貌のこの男は、
隣国の
サラジア共和国からやって来た、知る人ぞ知る凄腕のスパイである。
SSS9「道路には地雷が仕掛けてある。
万一、車から無事脱出できたとしても、
私のこの銃で蜂の巣だ。マイラ元女王の命はない」
アブダダ「この俺を国王としてアメールに王制復古が成った暁には、
サラジアへの利権提供は惜しむまい。
アラブの盟友として共に手を取り合い、憎き米帝を倒すのだ」
SSS9「…楽しみにしていよう。
(我々に国を売ることになるのが分からんとは…愚かな奴め)」
マイラの叔父アブダダは王族がそれまでの特権を失った民主化に反発し、
民主制打倒と王制復活のための反政府闘争を展開していた。
そして隣国のサラジアが彼を密かに支援し、
アメールに自国寄りの傀儡政権を打ち立てようと画策しているのだ。
SSS9「…来たぞ」
砂漠の都市間高速道路を走ってきた黒いベンツが地雷を踏んで爆破炎上。
車外へ這い出る獲物を撃とうとSSS9が狙いを定める。
だがしばらく待っても、燃え盛る車から人が出てくる気配はない。
SSS9「死んだか…」
アブダダ「マイラ……許せ」
アブダダは姪のマイラを自ら手にかけるのを躊躇い、
以前は妖魔一族に、そして今回はサラジアエージェントに直接の下手人を任せた。
己の野望のためとは言え、無惨な姪の最期に天を仰ぐアブダダだったが…。
X「許さん!」
アブダダ「ぬ!? 貴様は」
SSS9「…仮面ライダーX!」
炎上するベンツの陰から姿を現したのは、
ライドルスティックを構えた仮面ライダーXであった。
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X「剛忍アブダダ! マイラ元女王はお前の暗殺計画を察知して
専用ヘリで空から首都へ戻った。
そしてお前を縄にかけるようこの俺に依頼したというわけさ」
SSS9「チッ…、計画が漏れていたか」
アブダダ「おのれXライダー!
愚民どもの民主政府に協力する奴は誰だろうと生かしておかん!」
X「行くぞ、アブダダ!」
アブダダが投げた手裏剣をかわして大ジャンプし、
敵前に降り立ったXはライドルでアブダダの棍棒と渡り合う。
SSS9「死ね…!」
サラジアエージェントのライフルが銃弾を連射。
さしものXも胸のアーマーから火花を散らして転倒した。
アブダダ「くたばれXライダー!」
アブダダの投げた爆発性の光る粉がXを包む。
粉が舞い散る中、次々と起こる爆発がXを痛めつけた。
X「くっ…。ライドル風車!」
ライドルを風車のように高速回転させ、風を発生させるX。
風に乗った粉はアブダダの周囲に飛んでゆき爆発する。
アブダダ「ぐおぁっ!」
SSS9「無理な相手だ…。アブダダ、撤退するぞ」
アブダダ「ぬう…! おのれX、
アメールを手に入れるまで、俺は何度でも帰って来るぞ!」
ダメージを負ったアブダダはエージェントSSS9と共に敗退した。
X「アメールの反政府テロをサラジアが影で後押ししている…。
となると、その更に背後にはネロス帝国が…?
奴らはサラジアだけでなく、中東全域に魔の手を伸ばし始めたか…!」
○仮面ライダーX→アメールで剛忍アブダダと戦い撃退する。
●剛忍アブダダ→マイラの暗殺をエージェントSSS9に依頼するが失敗。
仮面ライダーXと戦い敗退する。
●エージェントSSS9→マイラの暗殺を剛忍アブダダに依頼されるが失敗。
仮面ライダーXと戦い敗退する。
【今回の新規登場】
●剛忍アブダダ(世界忍者戦ジライヤ)
アメール民主共和国の元女王マイラの叔父。
独裁王制を復活させるためマイラの暗殺を企んだ。
武器は短刀と棍棒、二連装ハンドショットなど。
●エージェントSSS9(ゴジラVSビオランテ)
サラジア共和国の諜報組織サラジア・シークレットサービスの秘密工作員。
コードネームは「スリー・エス・ナイン」と読む。
最終更新:2020年11月22日 13:45