本編971~974

『大統領暗殺計画』-6

作者・凱聖クールギン
971

UAE首都ドバイ・ビーチ***


ジョディ@通信「大統領! 上方から攻撃です!」
メタルウルフ「…くっ!?」

ザムザザーを屠り、浜辺に降りて一息ついたメタルウルフを目掛けて、
突然、上空から一発の炎弾が飛んで来た!
地上に着弾して巨大な火柱が立ち、メタルウルフを呑み込む。

メタルウルフ「奇襲攻撃とは恐れ入ったね」

炎の中から傷一つなく現れたメタルウルフは、
自分の背後に降り立った黒装束の怪人に向けて言った。

メタルウルフ「今頃遅れてやって来たのは誰だ?
 パーティーはもうお開きだよ」
バルゴグ「フフ…。釣れない事を言うな。
 我が名は魔道師バルゴグ。
 ティターンズの能無しどもが消えたところで、
 これから二人きりの二次会と洒落込もうじゃないか、メタルウルフよ」

黒いローブの怪人――魔道師バルゴグは魔法杖をかざし、
飄々とした態度でメタルウルフに戦いを挑む。

メタルウルフ「中東各地を騒がせている砂漠の魔人バルゴグ…。
 噂は前々から耳にしていたんだ」
バルゴグ「私も、リチャード・ホークのクーデターを粉砕した
 メタルウルフの評判は前から気になっていてね…。
 モビルスーツや巡洋艦をも沈めてみせるとは大したものだ。
 だが、まだ決して本気ではあるまい?
 ――メラストーム!!」

バルゴグが呪文を唱えると、魔法杖から炎弾が何発も放たれた。
降り注ぐ火球の雨をかわしながらマシンガンを連射し、
応戦するメタルウルフ。

メタルウルフ「どうだいジョディ、綺麗な花火だろう」
ジョディ@通信「ですが大統領、
 こちらも、もっとド派手にお返しするのが礼儀ではないでしょうか?
 敵は銃弾をほぼ無効化しています」
メタルウルフ「だろうね…。まるで手応えがない」
ジョディ@通信「原理は不明ですが、
 何らかの魔術で防御力を飛躍的に上昇させているようです」
メタルウルフ「だったら、これでどうだ?」

メタルウルフは武装をマルチミサイルMML8に切り替え、撃ち込んだ。

バルゴグ「うおおっ…!」

防御魔法・プロテスの結界を突き破り、バルゴグにダメージを与えるミサイル弾。
炎の中でローブを翻し、バルゴグは後退する。

972

ミサイルの爆撃を受けて後退したバルゴグは、
ドバイの街の小路を風のように駆け抜け、
追撃するメタルウルフを遮蔽物の多い廃車置き場へと誘き出した。

メタルウルフ「車の墓場、といったところかな。
 そして魔道師バルゴグの墓場でもある」
ジョディ@通信「敵はいい場所を選びましたね、大統領。
 ここの車達と一緒に、ペチャンコのスクラップにして差し上げましょう」

体当たりで廃車の山を軽々と蹴散らし、
メタルウルフは猛然とバルゴグに迫る。

バルゴグ「フフフ…。ライデイン!!」

バルゴグの魔法による雷撃が一台の廃車を直撃!
廃車は引っ繰り返ってメタルウルフに激突した。
高圧電流を帯びた鉄塊を殴り飛ばして粉砕し、
メタルウルフは武器をM79グレネードランチャーに持ち替える。

メタルウルフ「熱々のローストチキンにしてやるよ!」
バルゴグ「焼き滅ぼされるのは貴様の方だ。
 ――出でよ、ガオレンスフィア!!」

廃車を盾にしてグレネードの焼夷弾を防ぎながら、
時空クレバスから異世界の武器を取り出すバルゴグ。
巨大甲殻種シェンガオレンの素材から作られたヘビィボウガンが、
二発の滅龍弾を同時発射した。

メタルウルフ「おおっと…!」

シールドで咄嗟に滅龍弾を防いだメタルウルフだが、
対巨大モンスター用の強力兵器を受けてさすがに数m後ろへ押し戻される。

メタルウルフ「面白い武器を使うな。
 だが私にはどんな兵器も技も通用しない。
 なぜなら、私はアメリカ合衆国大統領だからだ!」
バルゴグ「フフ…。こいつに耐えるとはさすがだな。
 さすが、米帝のボスはタフガイだ」
メタルウルフ「お褒めのついでに、正体を語ってくれる気はないか?
 その口ぶりだと、我々アメリカの事がよほど嫌いなようだけれども」
バルゴグ「いずれ嫌でも知る事になるだろう。命あらばな」

ガオレンスフィアをリロードし、再び狙いを定めるバルゴグ。
メタルウルフもM2バズーカを取り出し、引き金を引いた。
激しい撃ち合いが辺り一面を爆炎に包み、廃車を火達磨にして次々吹き飛ばしてゆく。
互いの姿が爆発で視認できなくなるほどの爆撃戦はしばらく続いた。
そしてそれが収まった時には……魔道師バルゴグの姿は消えていたのである。

973

ジョディ@通信「敵影は姿を消しました、大統領」
メタルウルフ「魔道師バルゴグ…。いつかまた会うだろうね」
ジョディ@通信「謎の相手でしたね。
 今回のティターンズによる暗殺計画とは無関係のようですが…。
 アラブに根を張る反米勢力の一員でしょうか?」
メタルウルフ「分からない。だが、いずれ知る時が来るというなら、
 気長にそれを待とうじゃないか」

メタルウルフの装甲を解除するマイケル・ウィルソンJr。
それをビルの屋上から密かに見下ろしていたバルゴグも、
黒いローブを脱ぎ捨てアフマド・アルハザードの姿に戻る。

アルハザード「フフフ…。
 メタルウルフことマイケル・ウィルソンJrか。
 手並みは分かった。聞きしに勝る相手よ」
秘書N「勝負はお預けにしてよろしいのですか?」
秘書R「ティターンズの仕業に見せかけて、
 ウィルソン大統領を抹殺する好機だと思いますが…」
アルハザード「今、奴を仕留めてもアメリカ影の政府の手助けをするだけだ。
 それでは面白くない。いずれ奴とは、
 国際政治の舞台ではっきりと決着をつける」

マイケル・ウィルソンJrは以前、
サラジアの覇権主義政策とテロ支援を推し進めている人物として
アルハザードを名指しで批難した事がある。
アルハザードからすれば、自分を個人的にもマークしている
超大国アメリカの大統領は目の上のたんこぶであった。

アルハザード「――化忍パルチス!」
パルチス「ははっ!」

赤と黒の、放射状の縞の忍者装束を着た世界忍者が
アルハザードの前に跪いた。
動物以外なら誰にでも化けられる変装術の達人、化忍パルチスである。

アルハザード「引き続き、迎賓館の職員に扮してウィルソンを見張れ。
 どんな些細な点でも調べ上げて報告するのだ。
 約束通り報酬は弾むぞ」
パルチス「ありがたき幸せ!」

身を翻し、一瞬で迎賓館のボーイに化けたパルチスは飛び去った。
アルハザードも二人の秘書を引き連れ、迎賓館へと戻って行く。

974

【今回の新規登場】
●化忍パルチス(世界忍者戦ジライヤ)
 世界忍者でも屈指の変装の達人で、動物以外なら何にでも化ける事ができる。
 刑事に変装して山地闘破に濡れ衣を着せたり、山地ケイの友人の女性に成りすまして
 ブラックセイバーを爆破しようとするなど、変装を活かした撹乱戦法が得意。

○マイケル・ウィルソンJr→魔道師バルゴグの強襲を退ける。
○ジョディ・クロフォード→バルゴグの襲撃を受けたメタルウルフを引き続きサポートする。
●魔道師バルゴグ→メタルウルフを強襲。交戦の末引き上げる。
●化忍パルチス→迎賓館のボーイに変装し、マイケル・ウィルソンJrを見張る。

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最終更新:2020年11月22日 13:55