『地球の女王(クィーン)』-2
作者・ティアラロイド
1022
中の都・キングキャッスル***
成田空港から飛行機に乗っておよそ9時間。
世界地図上のちょうど真ん中に位置する"中の都"。
地球連邦の精神的支柱である国王の居城の所在地である。
大統領府や連邦議会のあるダカールが政治的首都なら、
中の都は地球の文化的首都であると言える。
うさぎ「………」
アステリア「どうしたの? 落ち着かない様子ね」
うさぎ「いや、まだその心の整理が…(汗」
アステリア「いい加減腹を括りなさい。
いずれ地球人口70億人が、貴女の双肩にかかることになるのよ」
うさぎ「亜美ちゃんたちに黙ってきちゃったけど、
大丈夫かなあ…」
リリーナ「貴女以外のセーラー戦士の皆さんには、
別に如月ハニーさんたちから重要な説明があります。
ですからご心配には及びません」
リリーナと聖天子も同行する中、アステリアと呼ばれる
外見は10歳くらいながら随分と貫禄のある物腰の美少女に案内され、
月野うさぎは国王の間へと連れてこられた。
アステリア「ここよ」
開かれた大きなドアを潜ると、中で待っていたのは犬型地球人の初老の男性、
そしてマントを羽織った屈強な体つきの壮年の男であった。
リリーナ「国王陛下、月野うさぎさんをお連れいたしました」
聖天子「国王、ご無沙汰しております」
国王「これは聖天子様、ようこそおいでくだされました」
聖天子「ご紹介します。こちらが月野うさぎさんです」
うさぎ「ど、どーも…月野うさぎです。よろしくお願いします(汗」
国王「ハハハ…緊張するのも無理はないが、
まずはリラックスしたまえ」
気さくな性格の国王は、うさぎたちにソファへの着席を勧める。
国王「さぞかし驚かれたことだろう。半ば強引にこの場に
お連れしたことはこの通りお詫びする」
うさぎ「あ…いえ…そんな…お気になさらずに」
アステリア「今日貴女をここに呼んだのは、将来の地球の女王候補として、
そろそろ帝王学の勉強を始めてもらうためよ」
うさぎ「そんな…いきなり帝王学だなんて言われても、
あたしには政治の事なんてさっぱり…」
リリーナ「地球の国王には連邦政府の大統領と違って政治の実権はありません」
うさぎ「そういうことじゃなくって……」
1023
ダンテツ「地球の王たる資格を持つためには、地球のメロディを
聞き入れることが必要だ」
先ほどから国王と一緒にいた、マントを羽織った屈強な男――桐生ダンテツが口を開く。
うさぎ「あの…こちらの方は?」
リリーナ「この方は桐生ダンテツ。この方も地球の王(キング)たる称号を持つ御方です」
うさぎ「地球の王…地球のメロディ…」
ダンテツ「お前はまだ地球のメロディを聞いたことはないのか?
ならば地球の声を聞き入れるための修練が必要だ!」
アステリア「貴女にはそのために、新組織プリンセス・ユニオンの
行動隊長となって戦ってもらうわ」
うさぎ「プリンセス・ユニオン…?」
プリンセス・ユニオン、略してPUとは、
ブレイバーズを側面から支える
後方支援組織であり、その上層部は世界の王侯貴族、VIP令嬢等で構成されている。
リリーナ「これまで地球の平和を守ってきたヒーローたちは、
政治権力の世界とはなるべく一線を画してきました。
ヒーローたちの持つ力を強大です。それを人間同士の
醜い権力や利権上の争いに利用されることを恐れてきたからです」
アステリア「でもこれからはもうそうも言っていられないわ。
今後は国家機関も民間も一致協力して、巨大な悪の脅威に立ち向かう必要がある…」
聖天子「貴女にはその象徴的存在となっていただきたいのです」
うさぎ「あたしが…?」
未だ戸惑ううさぎに、聖天子が優しく語り掛ける。
聖天子「うさぎさん、いずれ今の聖居は貴女にお譲りし、私は聖室父祖伝来の地である京都に戻ろうと思っています」
国王「貴女以外に適任者はいない。是非引き受けてください」
うさぎ「………」
日本・東京麻布 月野家***
その後、日本に帰国し自宅へと帰ったうさぎは、
すぐさまその日の夜に国際電話で海外へとかけた。
電話の相手は勿論、海外留学中の恋人にして未来の夫、地場衛である。
うさぎ「ねえ、どうしたらいいと思う、まもちゃん?」
衛@電話の声「うさこ自身はどうしたいんだ?」
うさぎ「…どうしたいって言われても、そりゃあ、
叶うことならこれからも普通の女の子として
何事もなくみんなと楽しく穏やかに暮らしたいけど」
衛@電話の声「だけどなうさこ、その普通の女の子としての暮らしも、
もし地球が悪の手に落ちれば打ち砕かれる」
うさぎ「………」
衛@電話の声「お前の力を必要としている人たちがいるんだ。
引き受けてみたらいいんじゃないかな。レイちゃんや亜美ちゃん
たちもいる。勿論俺も出来る限りお前を支える。お前は一人じゃない」
うさぎ「…わかった。実はあまり気は進まないんだけど、考えてみる」
1024
一方、その頃…。
地球から遠く離れた、遥か銀河系の彼方。
ザンギャック本星・皇帝の宮殿***
アクドス「………」
居城・謁見の間の玉座で、Gショッカーから送られてきた親書に
黙々と目を通す皇帝アクドス・ギル。
バッカス「叔父貴、Gショッカーは何を言ってきやがった?」
アクドス「フフフ…表裏六柱の至高邪神め、
噂の
ブレイバーズとやらに相当手を焼いておるらしい。
是非ともザンギャック帝国の力を借りたいと
向こうから頭を下げて申し出てきおった」
バッカス「その申し出を受けるのか?」
アクドス「ワルズ・ギルを総司令官として、遠征軍を派遣する。
すでにダマラスにその準備を進めさせてある」
バッカス「……(チッ、またワルズのボンボンか)」
アクドス「ワルズ・ギルがGショッカーの次期創世王に指名されれば、
労せずして我がザンギャックは、失われてしまったかっての
広大な植民星の数々を取り戻すことができよう!」
同宮殿 バッカス・ギルの私室***
バッカス「チッ、面白くねえっ!」
バッカス・ギルは憂さを晴らすように
酒瓶の中身をぐいぐいと飲み干す。
この宇宙創世以来おそらく初となるであろう、三次元宇宙の制圧まで
あと一歩まで進んでいたといわれる宇宙帝国ザンギャック。
海賊戦隊ゴーカイジャーの活躍によって二度目の地球遠征にも失敗し、
皇帝アクドス・ギルと皇太子ワルズ・ギルが戦死した結果、
それによって生じた政治空白によって内部崩壊を起こしたのはご承知の通り。
そのザンギャック帝国を建て直し、勢いに乗って本星に乗り込んできた
ゴーカイジャーを返り討ちにした功労者が、他ならぬこのバッカス・ギルなのであるが、
先帝であるアクドスとワルズの父子が黄泉がえりにより復活し、
皇帝と皇太子の地位にそれぞれ復位した今、バッカスの立場は微妙なものになっていた…。
エンター「ご機嫌斜めのご様子ですね、バッカス・ギル殿下」
バッカス「エンターか。これが飲まずにいられるか!
アクドスの叔父貴とワルズのボンボンが返り咲いて以来、
俺は部屋住み同然の飼い殺しよ」
ヴァグラスの幹部エンター。ヴァグラス首領メサイアのアバター(分身体)だが、
以前より知略に長け、メサイアから独立した後は独自にザンギャック帝国や
デーボス軍ともコネクションを築くなど、なかなかの謀略家でもある。
エンター「私には不思議でなりません。どうみてもワルズ殿下より
バッカス殿下、貴方の方が明らかに優秀で能力をお持ちなのにです。
アクドス陛下は何をお考えなのでしょう?」
バッカス「エンター、てめえは"バカな子ほど可愛い親心"ってヤツを知ってるか?」
エンター「Quoi?」
バッカス「優秀な人材とやらがかえって邪魔になることだってある。
叔父貴は可愛い可愛いバカ息子のために、いずれ"優秀な"俺様を排除に
動くかもな。だがそうはさせねえぜ。ひっく…!!」
1025
○国王→月野うさぎと対面。うさぎにPU行動隊長就任を要請する。
○聖天子→キングキャッスルまで月野うさぎに同行。うさぎにPU行動隊長就任を要請する。
○リリーナ・ドーリアン→キングキャッスルまで月野うさぎに同行。
うさぎにPU行動隊長就任を要請する。
○桐生ダンテツ→月野うさぎにPU行動隊長就任を要請する。
○アステリア・リーザマリー・ド・ロシュフォール→月野うさぎにPU行動隊長就任を要請する。
○月野うさぎ→地球国王と対面。PU行動隊長就任を要請される。
○地場衛→国際電話で月野うさぎから相談を受ける。
●アクドス・ギル→表裏六柱の至高邪神の要請に応え、再び地球遠征軍派遣を決定する。
●バッカス・ギル→叔父アクドス・ギルに対して含むところがある様子。
●エンター→バッカス・ギルと通じている。
【今回の新規登場】
○地場衛=タキシード仮面(美少女戦士セーラームーンシリーズ)
黒髪で長身の好青年。タキシード仮面としてセーラー戦士達を見守りサポートする。
クールかつやや意地悪な性格で、月野うさぎとは出会うごとに軽口を叩くような関係だったが、
前世の記憶を取り戻すうちに恋仲となる。
○桐生ダンテツ=二代目キュウリュウシルバー(獣電戦隊キョウリュウジャー)
桐生ダイゴの父で、ダイゴの信念である「竜の道」を説いた人物。
賢神トリンにとって「キング」と称される存在。実はダイゴが赤ん坊の時に
地球から発せられた大地の光を浴び、地球のメロディを聞き入れることの
できる能力を得た人物であり、トリンやドクターウルシェードと連絡を取りながら、
能力を使って秘石やオカリナを探し当てていた。
●皇帝アクドス・ギル(海賊戦隊ゴーカイジャー)
自らを「全宇宙を支配する偉大な皇帝」と称するザンギャック帝国の支配者。
戦闘ではアクドソードという大剣を武器に使い、肩からは火球を発射する。
●新司令官バッカス・ギル(特命戦隊ゴーバスターズVS海賊戦隊ゴーカイジャー THE MOVIE)
ザンギャック帝国の新司令官。皇帝アクドス・ギルの甥に当たる。
酒好きで、性格は短気。態度も常に荒々しい。
●エンター=エンター・ユナイト(特命戦隊ゴーバスターズ)
ヴァグラスの幹部。フランス語を交えて話すのが特徴。通常は人間の姿で社会に暗躍し、
亜空間にいるメサイアを人間界に出現させる為に必要なエネトロンの奪取を狙う。
専用のノートパソコン型端末を所持しており、ディスプレイ横のスロットに
メタウイルスカードを読み込ませ、無機物にウイルスプログラムを
インストールすることで、メタロイドの作成とデータの転送を行う。
メサイアカードを取り込んだことで、強化形態=エンター・ユナイトへと変身する。
最終更新:2020年11月22日 14:06