『天凰輝シグフェル 序章』-3
作者・ティアラロイド
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京南大学付属病院・外科診察室***
あれから数日後、牧村光平は無事に退院して行った。
一方、光平の手術と治療を担当した医師である伝通院洸は、
あれからずっと数枚のレントゲン写真を集中するように見つめている。
愛「先生、どうされたんですか…?」
伝通院「…ん? ああ、魚住君か…」
伝通院の様子が気になった魚住愛が声をかけた。
愛「そのレントゲン写真って…確か」
伝通院「ああ、先日退院した牧村光平君のものだ」
愛「あの高校生の男の子のですね。これが何か?」
伝通院「いや、どこも異常は全くない。
正常な健康体そのものだ」
愛「先生…??」
伝通院「……(だが、なぜだ? このレントゲン写真には
何か奇妙な違和感がある。それに光平君の手術を担当した
あの日から、なぜか胸騒ぎが消えない。いったい彼の肉体に
何が起ころうとしているんだ…?)」
海防大学付属高校・男子硬式庭球部テニスコート***
そして光平が学校に復帰するようになってから、異変が相次ぐようになった。
放課後でのテニス部での練習中の事である。
部員A「いくぞ牧村~!」
光平「おう! どんと来い!」
相手の部員が打って来たサーブを、光平はラケットで打ち返した。
だがその瞬間、打ち返されたボールは言いようのない物凄いスピードで、
部員を掠めてネットを突き抜けるどころか、背後の校舎のコンクリートの壁にまで
鋭い破壊力でめり込んだのである。
部員A「…アワワワ)ガクガクブルブル」
相手の部員は腰を抜かして、ただ震えている。
部員B「……( ゚д゚)ポカーン」
部員C「……( ゚д゚)ポカーン」
慎哉「光平…!?」
光平「……!?」
一部始終を見ていた慎哉や他の部員たちが唖然とする中、
光平自身にもいったい何が起こったのかわからず、
ただその場に立ち尽くすしかなかった…。
江東区豊洲・住宅街 朝倉家***
部活での練習を終えて帰宅した光平と慎哉。
その日の食事当番だった光平は、さっそく調理の準備に取り掛かろうし
キッチンの水道の蛇口を捻ったのだが…。
光平「うわあっ!?」
突然蛇口が捻じ切れ、水道管から勢いよく水が大量に噴き出したのである。
キッチンは水浸しになったものの、すぐに水道業者に来てもらい修理してもらった。
光平と慎哉は、汚れた台所の床を二人で手分けして雑巾で拭いている。
慎哉「だけどオカシイなあ。まだ水道管の蛇口の交換の時期には
早いはずだけど…」
光平「……(違う…! あれは水道の蛇口部分が古くなっていたんじゃない!
俺が力で蛇口を捻じ切ってしまったんだ。いったい俺の身体はどうなっちまったんだ!)」
自分の身体の異変に気づき、徐々に不安に駆られていく光平。
こうして今日もいつものように夜が更けていく…。
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一方、その頃…。
神の神殿・精神と時の部屋***
マジマザー「――ジー・マジーネ!!」
メイジ「えいっ!!」
Barrier!!
マジマザーがワンドのエレメントキャップから連射した氷の矢を、
仮面ライダーメイジが六角形の障壁を生成して防ぐ。
Teleport!!
今度は魔法のリングの力で瞬間移動したメイジがマジマザーの背後に回り込み、
左腕のクロー型武器スクラッチネイルで奇襲を試みるが、マジマザーもさるもので、
すかさずマジカの呪文で自ら宙に浮き、メイジの攻撃を難なくかわした。
ここは地球の神の神殿にある、主に戦士たちの修行場所として利用されている、
「精神と時の部屋」である。この空間では、外の世界に比べて時間の進み方が違っており、
また、環境は極めて苛酷である。まず空気が外の約4分の1と非常に薄い。
エベレストの山頂ですら約3分の1の薄さと言われるため、
きちんと高所順応せずに動いてしまうと、常人なら即座に高山病に陥るでだろう。
さらには空間全体に常に10Gの重力までかかっている。
マジマザー「マジ・マジュナ!!」
メイジ「きゃあああっ!!」
マジマザーの放った強烈な冷気がメイジを襲う!
攻撃を防ぎきれなかったメイジは、あえなく冷気の壁に吹っ飛ばされた。
マジマザー「さあ、今日の稽古はもうここまでにしましょう」
メイジ「はい、先生」
マジマザーとメイジは部屋の外へと出て変身を解き、
各々小津深雪と稲森真由の姿に戻る。
デンデ「お二人とも、お疲れさまでした」
ポポ「シャワーの準備、出来ている」
真由「ありがとうございます」
両親と姉の敵である宿敵メデューサとの戦いを経て、
個人の復讐を超え、与えられた魔法の力を人を救うために使うことを決意した稲森真由。
現在、彼女は警視庁国家安全局0課に民間人協力者の形で所属している。
改めてしかるべき師匠の下で魔法の修行をし直した方がいいだろうとの周囲の判断で、
魔法戦隊マジレンジャー=小津兄弟の母である小津深雪=マジマザーを
ブレイバーズを介して紹介された。
奇しくも真由は、最初の師ともいうべき存在だった笛木奏と同じ「白い魔法使い」に
再び弟子入りすることになったのである。
(それにしても目の前の2本の触覚を生やした異星人の少年が
地球の神様だと聞かされた時は、さすがの真由も驚いたが…)
深雪「順調に魔法の腕を上げているわ。
このぶんだと私が真由ちゃんに教えてあげられることも
そう多くはないわね」
真由「とんでもありません。まだまだ先生には教えてもらわなければ
いけないことがたくさんあります!」
深雪「そうね。でも焦りは禁物よ。貴女には充分に魔力が伸びる
素質があるのだから…」
そこへデンデが真由に、地上からの連絡を取り次いでくる。
デンデ「真由さん、国安0課の大門刑事から連絡です。
稽古が終わったら、至急来てほしいと」
真由「凛子さんが?」
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日本・東京・聖居桜田門前 警視庁***
凛子「ごめんね。急に呼び出したりして。
今警視庁の内部もゴタゴタしていて人手不足で…」
真由「いえ、全然大丈夫です。気にしないでください」
元々は警視庁鳥井坂署の新米女刑事だった大門凛子だが、
本庁の国安0課の幹部だった木崎政範警視の根回しで、
現在は同じく国安0課に配属されている。
今、警視庁内部では、スピンクス1号・2号と名乗った謎の二人組による
大規模な連続テロ事件の解決後の事後処理のためにごった返しており
極端な人手不足に陥っていた。
凛子「大門です。稲森真由を連れてまいりました」
尾上「ご苦労」
真由が凛子に連れてこられた部屋には、
立派な軍服を着込んだ中年の男性が立っていた。
真由「凛子さん、こちらの方は…?」
凛子「紹介するわ。こちらは地球連邦政府・国防省の尾上参謀よ」
尾上「尾上だ。よろしく」
そして凛子と真由は、尾上からある物を見せられる。
それは美しく輝きを放つ、大きな鉱石物だった。
真由「これは…魔宝石? いや違う!」
尾上「その通り、これは反重力鉱石だ」
真由「反重力鉱石?」
尾上「近年某所にて発掘された、太陽光のエネルギーを浴びることで
とてつもないパワーを発揮する石だ。これをブレイバーベースまで
運ぶことになったのだが、運搬中の護衛の人手が足りない。
そこで警視庁の国安0課にも応援を要請したというわけだ」
真由「事情はわかりました。任せてください!」
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○伝通院洸→牧村光平のレントゲン写真に奇妙な違和感を感じる。
○魚住愛→牧村光平のレントゲン写真を見つめたままの伝通院洸を気遣う。
○小津深雪→稲森真由の魔法の師匠となり、精神と時の部屋で稽古をつける。
○尾上参謀→国安0課に、反重力鉱石運搬の警護任務への協力を依頼。
○稲森真由→新たに小津深雪に弟子入り。反重力鉱石の運搬の警護任務に就く。
○大門凛子→稲森真由を警視庁に呼び出し、共に反重力鉱石の運搬の警護任務に就く。
○デンデ→小津深雪と稲森真由の魔法の稽古に付き添う。
○ミスターポポ→小津深雪と稲森真由の魔法の稽古に付き添う。
○牧村光平→無事退院したが、徐々に自身の肉体の異変に気付いていき、不安に駆られる。
○朝倉慎哉→牧村光平が捻じ切った水道の蛇口を業者に修理してもらう。
【今回の新規登場】
○小津深雪=マジマザー(魔法戦隊マジレンジャー)
夫・勇の留守を守りつつ、女手一つで5人の子供を育てあげた小津家の大黒柱。
長年修行を続けたことから魔法使いとしての能力と経験は高く、
夫を含む天空聖者同様そのままの状態での巨大化が可能。
冥府神トードによって長らくコレクションとして囚われていたが、
成長した自身の子供たち=マジレンジャーによって救出された。
○尾上参謀(バトルフィーバーJ)
国防省の参謀で、同じ一光流開祖・藤波白雲に師事した倉間鉄山将軍の弟弟子。
鉄山将軍を挑発しておびき出す餌として、エゴスのヘッダー指揮官に惨殺された。
○稲森真由=仮面ライダーメイジ(仮面ライダーウィザード)
ファントムの女幹部メデューサのゲートだった稲森美紗の双子の妹で、
涼泉学園高等学校の生徒。メデューサによって家族が皆死んだことを知らされ
絶望させられるが、生前の姉の言葉と、自らの強い意志によって
ファントムを生み出すことを回避し、そのことで白い魔法使い(笛木)に認められ、
魔法使いとなった。メデューサとの決戦後は笛木の正体を知り、魔法使いとして
戦うことに迷いを抱き始めるが、大門凛子の励ましもあり、再び戦いに臨んだ。
決戦後は旅立った操真晴人の代わりを果たすべく、大門凜子と共に国安0課の
サポートメンバーとなる。
○大門凛子(仮面ライダーウィザード)
警視庁鳥井坂署の新米女性刑事。「人を守るのが警察の務め」という信念を持ち、
管轄上ファントムの事件に関われないことに不満を抱く。
ファントム・ミノタウロスに狙われていたゲートであり、
自分を救ってくれたウィザード=操真晴人を慕い、面影堂に出入りするようになる。
その後木崎警視の根回しにより国安0課へと配属(出向扱い)となった。
○ミスターポポ(ドラゴンボールシリーズ)
古くから地球の神の付き人をしている、実質的な神の神殿の管理者。
年齢は1000歳以上。肌が黒く、ずんぐりむっくりの体型、どんぐり眼に
タラコ唇でほとんど表情の変化を見せない。着ている服はアラビア風で、
ターバンも身につけている。神仙界の事にも詳しい。
最終更新:2020年11月26日 10:07