『天凰輝シグフェル 序章』-6
作者・ティアラロイド
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ビッグベイサー・メインルーム***
海底深くに建造されたバトルフィーバー隊の秘密基地・ビッグベイサーである。
尾上参謀の突然の訃報は、倉間鉄山将軍の元にも届いていた。
伝「将軍、尾上参謀が昨夜の反重力鉱石輸送の任務中、
殉職されました」
鉄山「………」
鉄山は向こうを向いて立ち尽くしたまま、全く動かず、
その表情はこちらから窺い知ることはできない。
伝「将軍…?」
鉄山「…すまんが、しばらく一人にしてくれんか」
伝正夫は無言で深く一礼すると、静かに退室した。
その時、苦楽を共にした弟弟子を再び失った
鉄山将軍の頬に一筋の涙がうっすらと流れていた事を
知る者は誰もいない。
地球連邦軍極東支部・伊豆基地 戦死者用霊安室***
地球連邦軍伊豆基地の霊安室では、大門凛子と稲森真由も立ち会う形で、
亡くなった尾上参謀とその家族との涙の対面が行われていた。
夫の亡骸を前にして激しく慟哭して崩れ落ちる尾上の妻。
そしてその様子を、指を口にくわえながらただ茫然見つめている、
まだ幼い尾上の男の子。
その光景にいたたまれなくなった真由は、思わず廊下へと飛び出した。
凛子もその後を追う。
凛子「真由ちゃん、いらっしゃい…」
声を押し殺して泣いている真由をそっと支えながら、
凛子は優しく声をかけた。
真由「あたし…誰も守れなかった!」、
力なく首を振る真由を廊下の椅子に腰かけさせ、
その隣に座った凛子は真由を慰める。
凛子「それは違うわ。よく聞きなさい、真由ちゃん」
真由の震えている肩を抱きながら、凛子はゆっくりと喋りだした。
凛子「今回の事はあたしたち全員の責任。
決して真由ちゃんだけのせいではないわ…。
だからもう、自分だけを責めるのはおやめなさい」
真由「でも、あたしはこの魔法の力を、
人を守るために使うって決めたのにっ…」
凛子「そうね…。でもそれなら尚更、貴女は自分を
せめてはいけないわ」
真由「凛子さん…」
凛子「亡くなられた尾上参謀のためにも、
私たちが頑張らなくちゃ。ね」
真由「………」
背中を撫でてくれる凛子の優しい手を感じながら、
真由は黙って何度も何度も頷いた。
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神の神殿・精神と時の部屋***
マジレッド「うわあああっ!!!!!」
マジグリーン「ぐわああああっ!!!!!!」
マジイエロー「うわあああっ!!!!」
真由が変身した仮面ライダーメイジの魔法攻撃で、
マジレッド、マジグリーン、マジイエローの3人は吹っ飛ばされた。
マジグリーン「痛タタタッ…。どうしたんだ、今日の真由ちゃん?」
マジレッド「凄い気迫だ…」
マジイエロー「この前の特訓の時とは、まるで別人じゃねえか…」
メイジ「ハァ……ハァ……!!」
マジピンク「コラッ、しっかりしろ男ども!
女の子一人相手にだらしがないぞ!」
マジブルー「次は私が相手よ!」
メイジ「お願いしますっ!」
マジブルー「――ジー・マジカ!!」
マジブルーの水を自在に操る呪文で発生した大津波がメイジに迫る!
自分を責めるのはやめられないかもしれない。
でも、そればかりにいつまでも囚われていては、
亡くなった尾上にも、そして尾上の妻と子にも顔向けできない。
そして自分が尊敬する魔法使い・操真晴人のようにもなれないかもしれない。
でも自分は、今出来る限りの事を精一杯頑張ろう。
真由は自分の心にそう誓うのであった。
警視庁・捜査本部会議室***
加賀美「これが、君たちが遭遇したという、
新しい敵かね?」
昨夜、反重力鉱石輸送隊を襲撃した謎の怪物たち、
そして現れた正体不明の異形の戦士について、
加賀美陸警視総監も加わる形で、本庁幹部たちから
事情聴取を受ける、北条明、毛利亮一、西園寺治の3名。
中央正面のスクリーンには、ビットスーツのカメラに収められた
昨夜の様子の映像が映し出されている。しかし動画の一部は
ピンボケしており、所々ハッキリ映っていない個所もある。
捜査管理官「時空クレパスを意のままに操る怪物か…」
刑事部長「それからこれ、最終的に襲ってきた怪物たちを
撃退したという謎の生物だが、いったいなんなのかね?」
西園寺「それもまだわかりません」
毛利「怪物たちは、その生物の事を"シグフェル"と呼んでいました」
北条「我々が昨夜遭遇した怪物たちは、Gショッカーではないと思います」
捜査管理官「Gショッカーを超える、新たな敵が現れたとでも言いたいのかね!?」
北条「はい!」
北条の返答に、本庁幹部たちはどっとどよめく。
公安部長「総監、どのように考えられますか?」
加賀美「………」
公安部長からの問いかけに、加賀美陸は暫し沈黙した後、
このように発言した。
加賀美「君たちの言うことが本当であれば、
それはもう、EBE(イーバ)としか言いようがないな…」
刑事部長「総監?」
加賀美「この件については当面の間、トップシークレットとする!」
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警視庁地下・ZAC本部***
島津「イーバか…。加賀美総監も上手いネーミングを考え付いたもんね」
ZAC本部へと戻った北条たち3人は、
織田キャップと島津キャップ代行に報告する。
西園寺「なんなんですか? そのイーバっていうのは」
島津「イーバとは本来、米国の極秘文書の中などに登場した
"Extra-terrestrial Biological Entities=EBE 地球外生命体"
を指した用語の事よ。要するに正体不明ってこと。地球にも堂々と
異星人が普通に訪れるようになった今のご時世じゃあ、
もう完全に死語だったんだけどね」
矢沢「そのイーバを倒したシグフェルってのも気になりますね。
我々の味方なんでしょうか?」
織田「それも含めて、今のところは正体不明というところなんだろうな…」
西園寺「こんな時に先輩がいてくれたら…」
ふと西園寺は、長らく空席となってままのデスクに視線を向ける。
その机は、かつて自分たちと同じサイバーコップに所属し、
"ジュピター"のビットスーツを装着して共に戦った武田真也が
座っていた席である。
武田の正体は、23世紀の未来世界から時空を超えて現代に流れ着いた、
コンピュータによる支配と戦う人類解放軍の戦士で、Z-226(ゼット・ダブルツーシックス)であった。
デストラップとの最終決戦の後、武田は、サイバーコップの実質的まとめ役であった上杉智子や
一度は敵同士となったものの和解した戦友ルシファーと共に未来世界へと帰還した。
その後の武田たちの消息については、杳(よう)として知れない…。
北条「武田の事はもう言うな。それよりもイーバはなんで
反重力鉱石を無視して尾上参謀を狙ったんだ?」
毛利「尾上参謀にそんな得体のしれない化け物に
恨まれるような心当たりがあったとも思えないしな…」
西園寺「――あっ!!」
突然何かを閃いたように大声を上げた西園寺に、
周囲はびっくりする。
毛利「…な、なんだよ突然! ビックリさせんなよ」
西園寺「いたんですよ!」
島津「何が?」
西園寺「イーバがあの日の夜、手にかけた人間が尾上参謀の他にも!」
北条「なにっ…?」
西園寺「ほら、あのモグラのエイリアン!」
北条「――!!」
確かにあの日の夜、イーバ2体が直接手を下して死に至らしめたのは、
尾上参謀とモグラルギンだけである。他にも警護にあたっていた北条たちに
大門凛子や稲森真由、連邦軍兵士たちもそれぞれ重傷こそ負ったが、
いずれも生き残り殺されてはいないのである。
北条「尾上参謀とGショッカーの怪人に何の共通点があるって言うんだ?」
西園寺「尾上参謀は一度エゴスとの戦いで殉職されていて、
あのモグラの化け物だって一度は地球戦隊ファイブマンに
倒されてるじゃないですか!?」
織田「すると何か、お前は"一度死んで黄泉がえり現象で生き返った人間"が、
イーバに標的にされてると言いたいのか?」
島津「それはちょっと考えすぎじゃないかしら。
推理としては強引すぎるわ」
織田「…いや、ちょっと待て。その強引な推理が案外当たっているかもしれないぞ!」
北条「キャップ、この警視庁や
ブレイバーズの中にも、
"一度死んで黄泉がえり現象で生き返った人間"は大勢所属しています。
イーバもあの2匹で終わりだとは到底思えません。早く該当者に警告して
注意を促さないと!」
島津「でもこの件はトップシークレットなんでしょう?」
織田「それについては私から総監に進言しよう」
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○伝正夫→倉間鉄山に尾上参謀殉職を報告する。
○倉間鉄山→尾上参謀の訃報に接し、涙する。
○大門凛子→落ち込んだ稲森真由を励ます。
○仮面ライダーメイジ/稲森真由→イーバとの戦いの敗北で精神的に落ち込むが、大門凛子の励ましで吹っ切れ、立ち直る。
○マジレッド/小津魁→精神と時の部屋で、稲森真由の特訓を相手をする。
○マジグリーン/小津蒔人→精神と時の部屋で、稲森真由の特訓を相手をする。
○マジイエロー/小津翼→精神と時の部屋で、稲森真由の特訓を相手をする。
○マジピンク/小津芳香→精神と時の部屋で、稲森真由の特訓を相手をする。
○マジブルー/小津麗→精神と時の部屋で、稲森真由の特訓を相手をする。
○加賀美陸→謎の怪物を「イーバ」と命名。この件をトップシークレットに指定する。
○北条明→本庁幹部たちにイーバとシグフェルに遭遇した一部始終を報告する。
○毛利亮一→本庁幹部たちにイーバとシグフェルに遭遇した一部始終を報告する。
○西園寺治→本庁幹部たちにイーバとシグフェルに遭遇した一部始終を報告する。
○矢沢大介→ZAC本部に戻って来た北条明たちから、イーバとシグフェルに関する報告を聞く。
○島津瑞恵→ZAC本部に戻って来た北条明たちから、イーバとシグフェルに関する報告を聞く。
○織田久義→ZAC本部に戻って来た北条明たちから、イーバとシグフェルに関する報告を聞く。
【今回の新規登場】
○島津瑞恵(電脳警察サイバーコップ)
ZACの秘書兼キャップ代行。織田キャップのサポートを行い、織田の不在時には指揮を執ることもある。
かつてビットスーツの研究員と恋仲になった過去があるが、その彼は研究所を襲ったミサイルの犠牲になっている。以来独身を通し、彼の子供とも言うべきビットスーツを使用するZACの仕事に従事している。
○小津魁=マジレッド(魔法戦隊マジレンジャー)
小津家三男、末っ子の17歳。桐東高校の2年生で、
所属しているサッカー部のマネージャー・山崎由佳に想いを寄せていた。
得意な魔法は物質変換をする練成術。5聖者守護隊の炎を司る
天空聖者フレイジェルの力によってマジレッドに変身、さらに魔法大変身で
炎の剣を持つマジマジン・マジフェニックスに2段変身する。
最終決戦後は、インフェルシアと人間界をつなぐ「インフェルシア親善大使」となった。
のちに地球にやって来たゴーカイジャーのマーベラスとハカセの勇気を試し、
彼らにマジレンジャーの大いなる力を託した。
○小津蒔人=マジグリーン(魔法戦隊マジレンジャー)
小津家長兄の24歳。自宅近くに「アニキ農場」という畑を持っている農場経営者で、
父・勇と母・深雪不在の期間は、家計は事実上彼一人で支えていた。植物と心を通わせたり
操ったりする「植物魔術」が得意。5聖者守護隊の大地を司る天空聖者グランジェルの力でマジグリーンに、
さらに魔法大変身で怪力を武器とするマジマジン・マジタウロスに2段変身、「マッスルグリーン」と言う
筋肉質体型に変身することが可能。将来ブラジルに「大アニキ農場」を作る夢を持ち、
英語も流暢に話せる。
○小津芳香=マジピンク(魔法戦隊マジレンジャー)
小津家長女の第2子で22歳。変身呪文を得意とする。
者守護隊の風を司る天空聖者ウインジェルの力でマジピンクに変身、
さらに魔法大変身でやはり変身能力が武器のマジマジン・マジフェアリーに2段変身する。
自由奔放な性格で、天然ボケな小津家のムードメーカー。
○小津麗=マジブルー(魔法戦隊マジレンジャー)
小津家次女の第3子、20歳。母と同じ占いを水晶玉を使って行える。
5聖者守護隊の水を司る天空聖者スプラジェルの力によってマジブルーに変身、
さらに魔法大変身で水中戦を得意とするマジマジン・マジマーメイドに2段変身する。
最終決戦直前においてヒカルと結婚。現在は夫と共に天空聖界マジトピアで暮らしている。
最終更新:2020年11月26日 10:09