本編1263~1269

『鳳凰の覚醒』-2

 作者・ティアラロイド
1263

お台場共和国イベント会場・歩道***


男の子「……。・゚゚・(≧д≦)・゚゚・。エーン!!」
母親「もう無理だから諦めなさい!」

会場内の街路樹が立ち並ぶ通路で、
幼稚園児くらいの幼い男の子が大声を上げて泣いている。
母親らしき女性が男の子を窘めて注意している様子を
たまたま見かけた優香が声をかける。

優香「どうしたんですか?」
母親「すみません。実はこの子の風船が
 あそこの木の枝に引っかかってしまって…」

見上げると、すぐ傍の街路樹の高いところの枝に、
確かに風船が引っ掛かっている。

光平「どれ、俺が取って来てやるよ!」
優香「光平くん、危ないわ。気をつけてね」
光平「大丈夫だよ。任せとけって」

光平は街路樹に軽々と登って、男の子のために
風船を取って来て上げた。

光平「ほら、もう大丈夫だぞ」
男の子「うん。おにいちゃん、ありがとう♪」
母親「どうもありがとうございました」

母子は深々と頭を下げて礼を言い、去って行った。
ふと優香は、光平の右手の甲が少し擦れて
血で赤くなっていることに気づく。

優香「光平くん、その怪我…?」
光平「えっ?…ああ、ほんの掠り傷だよ」
優香「ダメよ。ちょっと待って」

優香はポーチから絆創膏を取り出すと、
それを光平の右手の甲に貼った。

うさぎ「……ほぉ~お二人さん、アツイわねえ。(⌒-⌒)ニコニコ...」
美奈子「……このリア充が。(⌒-⌒)ニコニコ...」

気がつくと、月野うさぎたちが
光平と優香をニヤニヤと笑みを浮かべながら
じーっと見つめていた。

光平「――!!」
優香「――!! うさぎちゃん!? それに木野さんに愛野さんも見てたの?」
うさぎ「うん。ずっとさっきから」
光平「……(///)」
優香「……(///)」

光平も優香も赤面して押し黙ってしまう…。

光平「…そ、そうだ優香! あっちのパビリオンにでも行こう!(汗」
優香「…そ、そうね! そうしましょう! ごめんね、うさぎちゃんたち。
 私たち、あっちの"お菓子の家"に行ってるから!(汗」

光平と優香は、恥ずかしさから慌てて逃げるように
「お菓子の家」の入場者の列へと駆け込んだ。

1264

美奈子「光平くんって今時珍しいタイプの、
 なかなかいい感じの男の子よね」
まこと「悔しいけど優香ちゃんとはお似合いのカップルだ」

そこへ二匹の猫がうさぎたちの元へと走って来た。

うさぎ「あれっ、ルナ?」
美奈子「アルテミス? こんなところまでどうしたのよ?」
ルナ「ハァ…ハァ…やっと見つけた!」
アルテミス「どうしたのよ?じゃないっ!!
 美奈っ! この会場から妖魔反応だ!!」
まこと「なんだって!?」

急いで駆けつけて来たルナたちの通報を受け、
セーラー戦士に変身して現場へと急行するうさぎたち。
…だが、その様子を物陰からじっと息を潜めて
伺っていた謎の怪物の影があったことに、
まだセーラームーンたちは気づいてはいなかった…。

コボルトイーバA「グゥラァァァッ…!!」


「お菓子の家」内部***


パビリオンの中は不思議な色のブレスで充満した空間であり、
入場した観客たちは皆、意識を失って倒れてしまっていた。

ムーリド「ふふふ…夢を見ている間にエナジーを頂くわ!」

ムーリドが手にしていたリンゴが再び怪しい光を放ちだすと、
術にかかった入場客達のエナジーは次々と吸い出されていく。

光平「――おいっ! 優香っ! しっかりしろ!!」
優香「………」

ムーリド「…ん?」

よく見ると、入場客の中に一人だけ、
なぜか意識を失っていない人間がいた。
その少年は、連れと思しき気を失っている少女を
必死に起こそうとしている。

ジェダイト「小僧、どうしてお前だけ他の客とは違って
 ムーリドの幻覚に囚われんのだ?」
光平「なんだお前たちは…!?」

他の入場客が全員倒れている中で、
唯一意識を保っている少年=光平が声をした方を振り返ると、
ややウェーブがかった金髪のショートヘアの男=ジェダイトが
配下の妖魔と共にこっちを向いていた。

光平「…幻覚? するとこれはお前たちの仕業なのか!」
ジェダイト「なんにせよ、エナジーを吸い出せないのであれば
 用はない。ムーリドよ、こやつをさっさと始末しろ」
ムーリド「お任せを」
光平「――!!」

ムーリドは光平に急接近して頭突きをかます。。

光平「ぐわああぁぁっっ!!!」

抵抗むなしく、光平は壁にぶつかった衝撃で
意識を失ってしまった。

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ムーリド「フフフッ…今すぐに楽にしてあげるわ」
???「――お待ちなさい!!」
ムーリド「――!?」

いよいよムーリドが、倒れている光平の息の根を完全に止めようとしていた時、
颯爽と登場したのは、セーラームーン、セーラージュピター、セーラーヴィーナスの
三戦士であった。

ムーリド「フンっ…。来たか!」

ムーリドは気を失っている光平を腕で掴んで拾い上げると、
適当にそこら辺へと投げ捨てる。

ムーン「光平くん!?」
ジェダイト「久しぶりだったな、セーラームーン!
 そしてセーラージュピターにセーラーヴィーナス、
 お前らとは初めてになるな。我が名はダーク・キングダム
 四天王が一人、ジェダイトだ! 覚えておけ」
ムーン「ジェダイト…!」
ヴィーナス「いったい何をたくらんでいるの!?」
ジェダイト「我らが大いなる支配者がGショッカーのバトルファイトを
 制されるためには、もっと大量のエナジーが必要となる。そのための
 エナジー集めだ」
ジュピター「やっぱりダークキングダムもGショッカーに加わっていたのか!」
ジェダイト「一度は貴様たちのために"永遠の眠りの刑"に処された屈辱!
 今こそこの場で晴らしてくれる! やれっ、ムーリド!!」
ムーリド「ハハッ!!」

ムーン「おなかをぺこぺこに減らしてお菓子の家にやって来たお客さんから、
 逆にエナジーを絞り取ろうだなんて許せない! この愛と正義のセーラー服
 美少女戦士、セーラームーンが月に代わっておしおきよ!」

               __      _ ,ィ.二 ヽ
              /´__ >ー_'二 - ┴L. } }
                 { 〈 /´  - '      、 Y ノ!
                z'´j   , - ¬,  ,   ヾ. !
             /    、 {ーx '-ァ イ_ ノ  、} ',
             {/,  、 ヽ.トLj/z=‐くィ_ チ|   ',
             l ヽ. 、_7ヨハ.ヽ  {しリ | Y li   !
      , ィ       |  ト-:ハ. 弋り i:. ゞ' ,, jソ l',  l
      {. {      l  /  ヽヌ ''  r ヘ.  /┘  ! ,  ヽ
 r - ――ゝ \   / //  _└'>  二 イ __  ヽヽ  |
   ̄ ̄フ --  ヽ/ //   l }  _ハr:ッ'´/ ̄`ヽ, l| ',
     {   ,'  ∨ / r‐、/ ':T TT//イ´, -- 、  ',l ', ヽ
    // ̄ ヽ  ヽ! } ‐' ´_`!少'/  {´_    ヽノヽ ヽ  ',
   .〈/     /ヽ  \! i ´ /〉ィ´ }/´ ̄  ヽ._/ | ', ヽ.|
        /' ,-',   ヽ __ ノ_, -'´     /  |_}  !  l ヽ
         / /{ ハ.   / /「´     , -'´   /     ヽ. ヽ ',
       / {. ヽ_V l l|   , - '、 ___./      |  ! |
     /    lー-- ' ヽ {. '、 ヽ -'´     /- ― ┐   ヽ ヽ ヽ


対峙するセーラー戦士と妖魔ムーリド。

ムーリド「この私を以前の私と同じだと思っていると、
 痛い目を見るぞ!」

ムーリドは幻覚のブレスを吹くと、無数の毒蛇が宙を舞って
一斉にセーラー戦士達に襲いかかった。それを必死に振り払って
逃げようとするセーラー戦士達。

ジュピター「くっ…!!」
ムーン「やだやだやだあ~っ。蛇怖~い!!」
ヴィーナス「落ち着いてセーラームーン!
 これは幻覚よ!」

ジェダイト「ハッハッハッハ!! 二度も同じ手に引っかかるとは
 相変わらずバカな奴。ムーリドよ、あとは任せるぞ」
ムーリド「ハハッ。お任せを」

ジェダイトは身を翻すと一瞬でテレポートして姿を消した。

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セーラームーンの右腕に一匹の蛇が噛みつく!

ムーン「――痛ッ!!」

噛まれた傷からセーラームーンの右腕が徐々に石化していく。

ムーン「や~ん!このままじゃ石になっちゃう!!」
ジュピター「なら、そうなる前に倒すまでだ!
 ――スパークリング・ワイド・プレッシャーッ!!!!!」
ヴィーナス「――ヴィーナス・ラブ・アンド・ビューティ・ショォーック!!!!!」

セーラージュピターは薔薇のピアスからティアラの避雷針へ放電し、
両手に圧縮して超高電圧球を投げつけ、セーラーヴィーナスが生成した
ハート形の衝撃光弾と合体、妖魔ムーリドに命中する。

ムーリド「ぐわあああっ!!」

ムーリドは大ダメージを受けてよろめいた。

ヴィーナス「今よ、セーラームーン!」
ムーン「わかったわ!!」

セーラームーンは、エターナル・ティアル先端の飾りから
巨大なハート形の光の塊を放ち、妖魔ムーリドに激突させる。

ムーン「――ムーン・スパイラル・ハート・アタック!!!!!」
ムーリド「…む、無念ッ!!!」

ムーリドは見事に浄化されて消滅した。
それと同時に、石化しかけていたセーラームーンの
右腕も元通りに治る。

ムーン「ふ~ん、助かった…」
ヴィーナス「終わったわね」
ジュピター「でもおかしい…。部屋の中に充満している霧が
 全然晴れないぞ」
ヴィーナス「そういえば……」

敵を倒したにもかかわらず、なぜか言い知れぬ緊張感から
全く解放されないセーラー戦士3人。その時、同じ部屋の中から
女性の悲鳴がした。

???「キャアアッ――!!」

ムーン「なに!?」
ヴィーナス「あっちの方から声がしたわ!」
ジュピター「行ってみよう!」

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ムーン「あっ!? あの人はさっきの!?」
ヴィーナス「光平くんが風船を取ってあげた親子…!?」

見れば、先ほどの母子連れが、犬の獣人のような姿をした
怪物にじわじわと追い詰められていた。

母親「…あ、ああ…やめて……こっちに来ないで!」
男の子「ママ、怖いよぉ~!!」

コボルトイーバA「ガルルルグゥッ…!!」

ヴィーナス「なんなのアイツは!?」
ジュピター「まだ妖魔が残っていたのか!?」
ムーン「あの母子を助けないと!
 ――ムーン・ティアラ・アクション!!!!!」

セーラームーンは謎の怪物の注意をこちらに引きつけようと、
額のティアラを外し、エナジーを纏わせ円盤状に変化させて
怪物向かって投げつける。その攻撃は当たったものの、
怪物=コボルトイーバAは全く意に介する様子もなく、
まるで何も感じていないか、あるいは無視するかのように、
自らの鋭い爪を母子に伸ばそうとする!

ジュピター「バカにしてるのか!」
ヴィーナス「それなら腕ずくでも止めて見せるわよ!」

セーラージュピターとセーラーヴィーナスは、
コボルトイーバの両脇から抑え込みにかかるが、
凄まじい怪力と腕力を持つコボルトイーバにAに
逆にぶん投げられてしまう。

コボルトイーバA「グォォバァァァッッ!!!」
ジュピター「うわああっっ!!」
ヴィーナス「いやああっっ!!」

激しい衝撃で壁にぶつかるジュピターとヴィーナスだが、
それでもなんとか懸命に立ち上がり、体勢を立て直そうとする。

ムーン「ジュピターちゃん! ヴィーナスちゃん!」
ジュピター「…くそぉっ!!」
ヴィーナス「ならこれならどう!?
 ――クレッセント・ビーム・シャワーァッ!!!!!」

全身の光のエネルギーを指先に集中させたヴィーナスは、
上空にビームを放ち、光の雨の様に拡散乱射して、
コボルトイーバAを周囲から蜂の巣攻めにして攻撃する。
だが、いきなりコボルトイーバAを庇うように
無数の小型の時空クレパスが開き、ビームを全て吸収。
そして同時にセーラー戦士たちの背後にもたくさんの
時空クレパスが空間に穴をあけ、そこから今吸収したばかりの
ビームが降り注がれた!

ジュピター「――なっ!?」
ヴィーナス「そんな!!」
ムーン「きゃあああっ!!」

自分たちの攻撃で逆に大ダメージを受けてしまったセーラー戦士たち。
こうしている間にも、例の母子にコボルトイーバAの魔手が迫る。

母親「お願い…せめて…この子だけは!」
男の子「ママ、怖いよぉ~!!」

コボルトイーバA「グアアルァァァ…!!」

ムーン「やめて!!」

その時だった。今まで気を失い
床に倒れたままだった光平の両眼がカッと見開き、
妖しくも鋭く紅い眼光を放ったのは…!

光平「――!!」

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ヴィーナス「アレは妖魔じゃないわ!」
ジュピター「他の組織のGショッカーの怪人でもない…。
 …とすると、アイツがブレイバーズから情報のあった
 新たな敵――イーバ!?」
ムーン「このままじゃあの母子が!!」

コボルトイーバAの鋭く研がれた爪がいよいよ
母子へと振り下ろされようとしていたその時、
その腕を片手で掴んで制止した人影があった。

コボルトイーバA「グアァッ…!?」
光平「………」

光平はコボルトイーバAの腕を掴んだまま
軽々と背負い投げをする。

ヴィーナス「いったい誰なの!?」
ジュピター「霧のせいで顔が全然見えない!」
ムーン「………」

部屋に充満している霧のため、
コボルトイーバAが誰と戦っているのか
まったく視認できない状態のセーラー戦士たち。
これまでブレイバーズの歴戦のヒーローたちでさえも
ほとんど手も足も出なかった謎の怪物イーバ相手に
互角の戦いを見せるとは、いったい何者なのだろうか…。

コボルトイーバA「ググガァァァッッ!!!」
光平「………」

逆上したコボルトイーバAは光平に掴みかかるが、
光平は構えをとりながら、まるで赤子をあやすかのように
あっさりと振り払いながら、無意識のうちに
大きく両腕を動かすポーズを取る。

光平「――翔着(シグ・トランス)ッ!!」

光平の全身が瞬く間に、真っ赤に燃える炎と熱気に包まれ、
やがて刺々しい装甲部分が皮膚の外へと突き破るように浮き出ていき、
その姿は異形の戦士――シグフェルとなった。

シグフェル「………」

変身者の素顔こそ霧のせいで確認できなかったものの、
予想を超える意外な展開に呆気にとられて
茫然としているセーラー戦士たち。

ムーン「あれは…!?」
ヴィーナス「変身…したの??」
ジュピター「もしかしてアレが、情報にあったシグフェル…!」

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○セーラームーン/月野うさぎ→妖魔ムーリドを倒す。その後、コボルトイーバAと交戦。
 変身者の素顔こそ見れなかったもののシグフェルの変身を目撃。
○セーラージュピター/木野まこと→妖魔ムーリドを倒す。その後、コボルトイーバAと交戦。
 変身者の素顔こそ見れなかったもののシグフェルの変身を目撃。
○セーラーヴィーナス/愛野美奈子→妖魔ムーリドを倒す。その後、コボルトイーバAと交戦。
 変身者の素顔こそ見れなかったもののシグフェルの変身を目撃。
○ルナ→お台場イベント会場での妖魔反応を、月野うさぎたちに知らせに来る。
○アルテミス→お台場イベント会場での妖魔反応を、月野うさぎたちに知らせに来る。
●ジェダイト→妖魔ムーリドに任せてさっさと撤退する。
●妖魔ムーリド→セーラームーンに倒される。

○シグフェル/牧村光平→妖魔ムーリドに襲われ気絶するが、突然起き上がり変身してコボルトイーバAと戦う。
○沢渡優香→妖魔ムーリドに襲われ、気を失う。
●コボルトイーバA→ターゲットの母子を襲うが、セーラー戦士、続いてシグフェルと交戦。

【今回の新規登場】
○アルテミス(美少女戦士セーラームーンシリーズ)
 セーラーヴィーナスこと愛野美奈子のパートナーで雄の白猫。
 真面目かつクールな性格で使命には忠実。お調子者の美奈子に頭を悩ませている。
 ルナと同様、額に三日月模様がある。

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最終更新:2020年11月26日 10:10