本編1342~1346

『始動!秘密計画』-1

 作者・凱聖クールギン
1342

ネロス帝国・ゴーストバンク***


謎の新ヒーロー・シグフェルの出現は、
直ちにネロス帝国にも伝えられた。

ゴッドネロス「新たな敵が現れた…!
 その名はシグフェル…」

ゴッドネロスは指先から光を放ち、
フレアセイバーを振るって戦うシグフェルの映像データを
集合したネロス軍団員達に見せる。

クールギン「呪博士、クモナポレオン、タイガーネロ以下、
 GOD悪人軍団の怪人達はシグフェルと戦い、
 多数戦死を遂げた。
 共に出撃したザンギャックの艦隊も大損害を受け壊滅状態だ」

クールギンが結果を告げると、全軍団がどよめいた。
いくら若造のワルズ・ギルが指揮を取ったとは言え、
圧倒的な陣容をもって実行に移された東京侵攻作戦である。
成功を予期する声はネロス帝国内でも少なくなかった。
まさか、実質たった一人の敵を相手に大敗を喫し、
邪将を含む多数の怪人と戦闘メカを失って逃げ帰って来るなど、
ネロス帝国の面々にとっても全く予想外だったのである。

ゲルドリング「あのボンクラ皇子の事や。
 きっと調子に乗って油断しとったに決まっとるがな」
ゴチャック「しかし、精強を誇るGODの怪人達までもが揃って討ち取られるとは
 どう考えても尋常ではありませぬ…!」
メガドロン「シグフェルとは、一体何者なのだ!?」
タグスキー「それほどの敵ならば、ぜひ一度手合わせを挑みたいものだ」
タグスロン「しかし兄者、舐めてかかれば我らも命はないぞ」

口々に騒ぎ立てるネロス軍団員達。

クールギン「静まれ…!
 一連の戦闘後、シグフェルはいずこかへ飛び去った。
 奴の正体が何なのか、今どこにいるのか、現時点では全く不明だ。
 ブレイバーズの一員ではないようだが、
 それでも我らGショッカーの敵である事だけは間違いない」

クールギンの一喝で静粛を取り戻した軍団員達は、
揃って帝王の言葉を待つ。

ゴッドネロス「奴は必ずまた現れる…。
 シグフェルを探し出して捕獲し、余の前に引きずり出せ。
 謎の戦士の正体、余自らが暴いてつかわす」

ゴッドネロスはそれだけを命じて軍団員達を下がらせ、
クールギンだけがその場に残った。
しばらくの沈黙の後、ゴッドネロスがゆっくりと口を開く。

ゴッドネロス「クールギン、近う寄れ」
クールギン「ははっ」

クールギンを玉座のすぐ前まで招き寄せたゴッドネロスは、
耳打ちするように声を低めて言った。

ゴッドネロス「ザンギャックとGODの侵攻を防いだ
 シグフェルの力、やはり生半可なものではあるまい」
クールギン「ご心配召されますな、帝王。
 例えいかなる強敵であろうとも、
 このクールギンが必ずや討ち果たしてご覧に入れます」
ゴッドネロス「いやそうではない…。
 余は、奴の持つ巨大なパワーが欲しくなった。
 シグフェルのあの力をネロス帝国の戦力とできれば、
 メタルダーとてもはや敵ではない」
クールギン「……!」

一瞬にしてゴッドネロスの真意を悟ったクールギンは、
全身が粟立つのを感じた。

クールギン「帝王…、まさか、“あの計画”に
 シグフェルを組み込むというお考えで…?」
ゴッドネロス「驚く事もあるまい。
 余は、奴の持つ超パワーに惚れたのだ。
 あれこそ余が長年探し求めていた、
 メタルダーをも倒し得る無敵の力…!」

クールギンの言う“あの計画”とは、
ネロス帝国で以前から進められているあるプロジェクトの事で、
ゴッドネロスと腹心のクールギン以外、その存在を知る者はいない。

ゴッドネロス「かねて準備してあった秘密計画は、
 シグフェルという要素を加えていよいよ完成する。
 天から舞い降りた紅蓮の鳳凰か。
 奴の出現はまさしく天恵よ。フフフフ…ハハハハハ…!!」
クールギン「帝王…!」

狂気を帯びたゴッドネロスの高笑いに、
クールギンは沸き上がる戦慄を抑えながら深く跪いた。

ゴッドネロス「時は来たり…。
 “グライアー計画”を発動するため、
 必要な人材を直ちにゴーストバンクへ集めよ!」

遂に動き出したネロス帝国の秘密計画。
グライアー計画とは一体何か!?

1343

成田空港***


ロボット工学の世界的権威である光明寺信彦博士がアメリカから帰国した。
シカゴで開かれた学会に出席した博士は、
今後のロボット開発と平和的運用について各国の学者と意見を交わし、
大いに収穫を得て日本へ戻って来たのであった。

光明寺「コスモアカデミアまで頼む」
運転手「分かりました」

空港を出た博士はタクシーに乗り、
学会での成果をまとめるためそのままコスモアカデミアへ行こうとしたのだが、
どうもタクシー運転手の様子がおかしい。

光明寺「…君、道が違うようだが?」
運転手「いいえ、これでいいんですよ。光明寺博士」
光明寺「……!?」

生気のない不気味な返事をした運転手は、
獣のような唸り声を上げると、狼のような恐ろしい怪物の姿に変貌した。

ブライディ「ガルゥゥ…!」
光明寺「な…何だ君は!?」
ブライディ「ネロス帝国・モンスター軍団豪将ブライディ!
 光明寺博士、お前の行き場所はコスモアカデミアではない。
 ゴーストバンクだ!」

ハンドルを強引に切って山道に入ったタクシーは、
人気のない原始林の中で止まった。

ブルチェック「光明寺博士、ようこそネロス帝国へ」
ムキムキマン「帝王ネロス様がお待ちだぜ!」
フーフーチュウ「光栄に思うんだな、ジジイ!」

ブライディが光明寺博士を車から引きずり下ろすと、
機甲軍団の烈闘士ブルチェック、ヨロイ軍団の中闘士ムキムキマン&フーフーチュウの三名が
博士を取り囲み、林の中に置かれたゴーストバンク直結のゲートを示して言った。

光明寺「君達、何の真似だ!?
 私を一体どうしようというんだ?」
ムキムキマン「さあ~? 詳しい事は、俺達も知らねえなあ」
フーフーチュウ「そいつは帝王にお会いしてから聞きやがれってんだ」

ムキムキマンとフーフーチュウが自慢の筋肉を見せつけ、
にやけた含み笑いをしながら言う。
ブルチェックは右腕の速射砲を博士に向け、
抵抗すれば射殺すると脅す仕草をした。

ブルチェック「帝王ゴッドネロスはお前と二人きりで話がしたいと仰せだ。
 我々はお前をゴーストバンクへ案内するためにこうして参上したのだ」
光明寺「ふざけるな!
 悪の帝王ゴッドネロスと、話し合う事など何もない!」
ブライディ「ガゥゥ~! 嫌とは言わせんぞ博士。
 帝王のお召しに対して拒否権などはないのだ。さあ来い!」
光明寺「うっ…! は、離せ…」

1344

ブライディが光明寺博士の首根っこを掴んで無理矢理歩かせ、
背中を押してゲートへ入らせようとしたその時…、
どこからか聞こえて来るトランペットの音色が林の中に響いた。

ブライディ「…!? 何だこの音は」
ムキムキマン「どこだどこだ?」
フーフーチュウ「どこにいるんだ?」
ブルチェック「あっ、あそこだ!」

ブルチェックが指差した木の上では、
青いヘルメットを被った赤いジャケット姿の青年が、
悠々とトランペットを吹き鳴らしていた。

ブライディ「何者だ!?」
イチロー「…悪のあるところ必ず現れる。
 悪の行なわれるところ必ず行く。
 正義の戦士・キカイダー01!!」
ブルチェック「何!? キカイダー01だと?」
イチロー「行くぞネロス帝国!
 チェンジキカイダー・ゼロワン!!」

青年――イチローはそう名乗ると、
赤と青の人造人間・キカイダー01に変身した!

ムキムキマン「か~っ! 出たな01!」
フーフーチュウ「噂には聞いてたが、
 本当にメタルダーそっくりじゃねえか!」
ブルチェック「これが光明寺博士の造った、
 人造人間キカイダー01か…!」

ブライディ、ブルチェック、ムキムキマン、フーフーチュウが
樹上から飛び降りたキカイダー01を取り囲む。

ブライディ「ガルァ! 行くぞ01!」
01「来い、ネロスのモンスター!」

ブライディが鋭い爪を光らせ、牙を剥いて襲いかかる。
モンスター軍団きっての猛者と評されるブライディだが、
01はそんなブライディとも互角以上の格闘能力を見せ、
俊敏なブライディの攻撃をかわしながらパンチとキックで応戦する。

キカイダー01「ゼロワンカット!」
ブライディ「ギャゥ~ッ!!」

100トンの威力がある01の水平チョップがブライディに炸裂。
ブライディは脳天を叩かれて苦しみながら倒れた。

ブルチェック「死ね01!」
キカイダー01「くっ…!」

ブルチェックが腕の速射砲と耳の機関砲を乱射し、
更に頭の大砲を撃ってブライディを援護射撃する。

キカイダー01「ゼロワンタイフーン!」

体を高速回転させ、ブルチェックの撃つ弾を跳ね返す01。

キカイダー01「サンライズ・ビーム!!」
ブルチェック「ぐわぁっ!?」

ソーラーエネルギーを光線状にして撃ち出す01の必殺技が、
ブルチェックの右肩を爆破し、速射砲の付いた右腕を叩き落とした。

ムキムキマン「うりゃあ~!」
フーフーチュウ「おりゃあ~!」
キカイダー01「…彼らは人間だ」

完全な良心回路を持つキカイダー01は、
例え悪人であっても人間に危害を加える事はできない。
攻めかかるムキムキマンとフーフーチュウに手出しができず、
じりじりと後退するキカイダー01。

ムキムキマン「オラオラどうしたぁ~!」
フーフーチュウ「かかって来いやぁ~!」

良心回路によるブレーキが仇となり、
あろう事か戦闘力では最弱クラスの二人に一方的に押しまくられてしまう01。
やがてムキムキマンとフーフーチュウは左右に分かれ、
01を挟み撃ちにして体当たりを仕掛けた。

キカイダー01「トォッ!」
ムキムキマン&フーフーチュウ「「ぶべらっ!?」」

左右から同時に突進したムキムキマンとフーフーチュウは、
キカイダー01のハイジャンプで見事にかわされ、味方同士で正面衝突。
組み合ったまま無様に倒れ込んだ。

フーフーチュウ「うが~! 大噴火!!」
ムキムキマン「がぁぁ~っ!!」
キカイダー01「博士、今のうちに逃げましょう」
光明寺「よし…!」

光明寺博士をサイドカー・ダブルマシンの助手席に乗せ、
01は全速力で戦場を離脱した。

ブライディ「おのれ逃がしたか!」
ブルチェック「あれがメタルダーの兄弟機とでも言うべき
 キカイダー01…。恐るべき相手だ」

1345

ネロス帝国・ゴーストバンク***


ゴッドネロス「何…!? 取り逃がしただと…?」
ブライディ「申し訳ありません、帝王。
 もう一歩のところで、現れたキカイダー01めに邪魔されました」
ゴッドネロス「ううむ…!」

光明寺博士の拉致失敗の報を受けた帝王ゴッドネロスは、
悔しそうに拳を握り締めて唸った。

クールギン「光明寺博士を拉致すれば、
 奴が開発した人造人間が助けに来るのは最初から分かり切っていた事。
 だからこそ機甲軍団からも援護の人員を出させたというのに、
 手玉に取られて帰って来るとはどういうわけだ」
ブルチェック「面目ございません…!
 私の射撃能力の限りを尽くして撃ちまくりましたが、
 ほとんどダメージを与えるには至らず…」
ムキムキマン「ったく、頼りにならねえぜ」
フーフーチュウ「階級が一番下の俺達の方がよっぽど役に立ってたよな」
クールギン「黙れ! 博士を取り逃がした以上、お前達も同罪だ!
 偉そうに軽口を叩くな!」
ムキムキマン「ひっ!?」
フーフーチュウ「も、申し訳ありません軍団長」
ゴッドネロス「もうよい…! 四名とも下がれ」

怒ってブライディ達を下がらせたゴッドネロス。
玉座の前には再びクールギンだけが残った。

クールギン「光明寺博士の誘拐に失敗したのは、
 グライアー計画を進める上では小さからぬ痛手…。
 望月博士もヒドーマンの執拗な拷問にも関わらず、
 未だに首を縦には振りませぬ。
 今後いかが致しましょうや」
ゴッドネロス「構わぬクールギンよ…。
 例え光明寺や望月が使えなかったとしても、
 代わりとなる者はこの世界にいくらでもおる。
 例えばこの男…」

ゴッドネロスは指先から光を放って立体映像を作り出し、
一人の薄汚れた老人の姿を映して見せた。

クールギン「この男は…!」
ゴッドネロス「存じておろう?
 元ドグマのゾルベゲール博士だ」

ナチス・ドイツの狂気の天才科学者ゾルベゲール博士は、
死後、保存されていた脳から復活してドグマに雇われるようになった、
殺人兵器Rガスの開発者である。

ゴッドネロス「今は黄泉がえり、
 ドグマの追討を怖れて山奥に身を隠しておる。
 だがあのような優れた頭脳を、世界の片隅で腐らせておくのは惜しい」
クールギン「されどこのゾルベゲールという男、
 ドグマのテラーマクロに謀反を企てた前科があります。
 帝王に対しても、果たして忠誠を保つかどうか…」
ゴッドネロス「そんな事は承知の上よ。
 ゾルベゲールは邪念に満ちた男だがその腕前は確かなもの…。
 クールギン、そちに任せる。この男を余のために使いこなし、
 光明寺に代わってグライアー計画に参加させよ」
クールギン「はっ、帝王の仰せのままに…!」

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○光明寺信彦→ネロス帝国に拉致されそうになるが、キカイダー01に助けられる。
○キカイダー01→ネロス帝国に拉致されそうになった光明寺博士を救出。
●ゴッドネロス→シグフェルの出現をネロス軍団員達に告げる。
          秘密計画「グライアー計画」の発動を宣言し、
          ゾルベゲール博士の招聘をクールギンに命じる。
●クールギン→シグフェルの出現をネロス軍団員達に告げる。
●ゲルドリング→シグフェル出現の報を聞いて驚く。
●ゴチャック→シグフェル出現の報を聞いて驚く。
●メガドロン→シグフェル出現の報を聞いて驚く。
●タグスキー→シグフェル出現の報を聞いて驚く。
●タグスロン→シグフェル出現の報を聞いて驚く。
●ブライディ→光明寺博士を拉致しようとするが、キカイダー01に妨害され失敗。
●ブルチェック→光明寺博士を拉致しようとするが、キカイダー01に妨害され失敗。
●ムキムキマン→光明寺博士を拉致しようとするが、キカイダー01に妨害され失敗。
●フーフーチュウ→光明寺博士を拉致しようとするが、キカイダー01に妨害され失敗。

【今回の新規登場】
○イチロー=キカイダー01(キカイダーシリーズ)
 光明寺信彦博士によって造られた人造人間。
 ジロー=キカイダーより先に誕生し、仁王像の中に封印されていたが、
 日本を取りまく悪のエネルギーが増大したのを感じて起動した。
 完全な良心回路を持っており、正義のために迷いなく戦うが、
 人間に対しては例え悪人であっても危害を加える事はできない。
 必殺技はブラストエンド。

○光明寺信彦(キカイダーシリーズ)
 ロボット工学の世界的権威。
 キカイダーとキカイダー01の生みの親で、二人に良心回路を搭載した。
 一時は記憶喪失となり各地を放浪していた他、
 脳をハカイダーに移植されてしまった事もあるが
 娘の光明寺ミツ子の手術によって脳と記憶を回復した。

●中闘士ムキムキマン(超人機メタルダー)
 ネロス帝国・ヨロイ軍団中闘士。
 フーフーチュウの相棒で、ヨロイ軍団には数少ない生身の戦士。
 プロレス技を得意とするが、実力は低い。

●中闘士フーフーチュウ(超人機メタルダー)
 ネロス帝国・ヨロイ軍団中闘士。
 ムキムキマンの相棒で、ヨロイ軍団には数少ない生身の戦士。
 怒ると頭部が大噴火し炎を放つ。
 小型の弓を武器とするが、実力は低い。

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最終更新:2020年11月26日 10:20