『大追跡!鳳凰を狩る餓狼』-1
作者・凱聖クールギン
1371
ネロス帝国・ゴーストバンク***
ゴブリット「トップガンダーの兄弟機か…。
そりゃクロスランダー様も面白くねえわけだぜ」
相棒のデデモスから聞かされた風の噂。
自分達がトップガンダーの試作品ではないかという話は、
ゴブリットの電子頭脳の中でずっと燻ぶり続けていた。
ゴブリット「でもそんなの俺には何の責任もねえ話だし、
ぶっちゃけこれって八つ当たりだよな。
いつまでもあのブラック上司の下で働いてちゃ、俺には未来はねえか…」
とは言うものの、ゴブリットとデデモスはゴッドネロスの命により
クロスランダーの部下として配属されたアシスタントロボットである。
創造主が与えた運命を、己の意志で勝手に変更する事などできはしない。
大きな戦功を立てればゴッドネロスに評価され、一人立ちを認められるかも知れないが、
任務を帯びる時はほとんど常に三人ワンセットであり、
例えその中でいくらか目立った活躍をしたとしても、
手柄はいつも親分のクロスランダーに一人占めされてしまう定めなのであった。
ゴブリット「あ~あ…。単独任務、来ねえかなあ。
一発バーンと大手柄立てて、早いとこクロスランダーの下から離れたいぜ。
でもそんなでっかい任務、俺の所になんて回って来るわけねえよなあ…」
ゴブリットがゴッドネロスの御前に召されたのは、
そんな事を考えていた時の事であった。
普段、一緒に召集されるはずのクロスランダーやデデモスの姿はなく、
代わりに軍団長バルスキーが傍に立っている。
ゴブリット「(何でクロスランダーもデデモスも呼ばれず俺一人が?
もしかしてマジで単独任務? それともお叱りかな?
俺、最近何かやらかしたっけか…?)」
バルスキー「落ち着け、ゴブリット」
そわそわして足踏みをするゴブリットを、バルスキーが注意する。
淡い期待と、その数倍の不安とを抱きながらゴブリットが待っていると、
玉座にゴッドネロスが現れた。
ゴブリット「軽闘士ゴブリット、参上つかまつりました」
ゴッドネロス「よう参った…。
してその後、シグフェル捜索の成果やいかに」
ゴブリット「申し訳ございません。
クロスランダー様やデデモスと共に日夜捜索しておりますが、
今のところこれといった手がかりは掴めておりません」
ゴッドネロス「で、あるか…」
ゴブリット「も、申し訳ございません…!))ガクガクブルブル
明日もう一度、クロスランダー様やデデモスと、
東京都内を徹底的に捜索してみる手筈でありまして…」
ゴッドネロス「いや…、その儀には及ばぬ。
クロスランダーとデデモスにはシグフェル捜索を続けさせるとして、
そちは捜索班から外し別の任務を与えたい。…見よ」
ゴッドネロスは指先から光線を放ち、
一枚の写真をゴブリットの前に映し出した。
そこには、気の良さそうな白髪の老人の顔が映っている。
ゴブリット「…帝王、この男は?」
ゴッドネロス「山野満夫という元科学者だ。
この男、城南大学の生化学研究室に勤め、
古賀と長年親しく交友を持ち続けておったが、その後は教員に転職。
一昨年に退職し、今はメガロシティの外れで一人余生を送っておる」
ゴブリット「なるほど…。この男が、
帝王の秘密を友人であった古賀から聞かされているかも知れない、
という訳ですな」
ゴッドネロス「万が一にもその可能性がないとは言えぬ…。
余の秘密を知っている恐れがわずかにでもある限り、
例え老い先短い年寄りだったとしても、
この男を生かしておく訳には行かぬ。直ちに抹殺せよ!」
ゴブリット「ははっ、承知いたしました!」
バルスキー「お前には珍しい単独任務だ。
お前は以前、南米での失敗により強闘士の座を下ろし、
軽闘士にまで降格させていたが…。
これが成功すれば再び強闘士に戻してやるぞ」
ゴブリット「はっ、ありがたき幸せ」
ゴッドネロス「それだけではない…。
山野満夫を抹殺した暁にはそちをクロスランダーの配下から外し、
一人前の暗殺ロボットとして、晴れて一人立ちする事を認めてやろう」
ゴブリット「ま、まことでございますか!?」
ゴッドネロス「この任務の重要性を鑑みれば、
そのくらいの恩賞は当然の事…。
だが失敗は許されんぞ。できるかゴブリット」
ゴブリット「(独立キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!! やったぜ!
これでもうクロスランダーの野郎に顎で使われる事もなくなるんだ!)
ハ、ハイッ!! ぜひやらせていただきますっ!」
ゴッドネロス「山野満夫をこの世から葬り去り、
余の秘密を無限の闇に包め――!!」
1372
東京・メガロシティ***
優香「あ、このお菓子美味しそう」
光平「山野先生、甘いのが好きって言ってたからなあ。
お土産にはこれが良さそうだ」
ある晴天の日曜日。
ショッピングモールのお菓子売り場で少し高級な和菓子を選んで買い、
買い物袋を提げて外に出た牧村光平と沢渡優香は、
向かいのコンビニで先に買い物を済ませていた朝倉慎哉と合流して歩き出した。
慎哉「おい、見ろよ光平。スポーツ新聞まで、
野球やサッカーそっちのけでシグフェル特集だぜ」
コンビニで買って来たスポーツ新聞の一面を示しながら慎哉が言う。
Gショッカーの東京侵攻を防いだ鳳凰の戦士。
謎のニューヒーロー・シグフェルの出現は、今や世間でも大きな話題となっている。
慎哉「だからあれほど忠告してただろ…。
地球の平和を守るのは
ブレイバーズの仕事で、
シグフェルは極力目立たない方がいいって」
光平「そんな事言ったってさ…。
目の前であれだけ大変な事になってたのに、
さすがに黙って見てるわけには行かないじゃないか」
シグフェルに関しては、これまでGショッカー対策の観点から
ブレイバーズが厳重な情報統制を敷いていたため、
その存在が世間一般に知られる事はなかった。
しかしシグフェルが直にGショッカーと接触してしまった今、
これ以上の規制は意味がないとしてブレイバーズは報道を解禁。
マスメディアがシグフェルをこぞって取り上げるようになり、
世の中はたちまちシグフェルの話題で持ち切りとなったのである。
光平「でもマスコミはまだ分かるとしてもさ、
何でブレイバーズにまで、俺がシグフェルだからって
こんなに追い駆け回されなきゃいけないんだ?
その辺の事情が、どうもいまいち呑み込めないんだよな」
慎哉「多分、自分達の味方になって地球のために戦ってくれとか、そんな感じだろ?
悪いけど、今のシグフェルはまず自分の謎を追うので手一杯だ。
とてもじゃないが、そこまでは手が回らないよ」
光平「毎回呼びかけを無視しちゃって、
何だか申し訳ないとは思うんだけどな…」
自分を取り巻く周囲の状況に、
困惑気味に溜息をつく光平であった。
優香「でもこれからどうするの…?
こうなったらマスコミもブレイバーズも、
どんどんシグフェルの正体を探りに来るわよ」
光平「これからはもっと慎重に行動するよ。
とにかく、俺が今すべきなのは自分の秘密を解き明かす事。
そのために、まずは東条寺理乃について早いとこ洗い出さなきゃな」
光平に謎の改造手術を施した東条寺理乃については、
既に慎哉がインターネットを駆使してかなりの手がかりを調べている。
その中の一つに山野満夫という、光平達がよく知る人物の名前があった。
慎哉「それにしても、灯台下暗しってまさにこの事だな」
光平「ああ、まさか俺達の中学時代の先生が、
東条寺宗晴博士の関係者だったなんてびっくりだよ」
光平と慎哉が通っていた中学校で理科の教師をしていた満夫は、
教職に就く前は科学者をしており、城南大学の生化学研究室に
東条寺理乃の父・宗晴と同時期に在籍していた。
科学者崩れだけあって専門知識が豊富で、面白い授業をする人気の教師だったが、
一昨年、光平達の卒業と同時に定年退職。
今はメガロシティの外れにあるマンションの一室で
趣味の盆栽に没頭しながらのんびりと暮らしているらしく、
光平が連絡を取り、話を聞きに行きたいと頼むと快諾してくれた。
光平「今度こそ何か情報が手に入ればいいけど…。
宗晴博士の痕跡は、東条寺理乃に消されてしまって
なかなか残されてないみたいだからな」
慎哉「おい…、だとすると、
山野先生ももしかして東条寺の奴に命を狙われているんじゃ…?」
優香「大変だわ! 早く山野先生を守らなきゃ!」
ハッと顔を見合わせて頷き合った三人は、
山野満夫の住んでいるマンションへ道を急いだ。
1373
その頃――。
同じメガロシティの外れを、同じく男二人と女一人のグループで
忙しなく歩き回っている者達がいた。
八荒「ねえ舞ちゃん、俺もう疲れたよ。
さっきからずっと歩きっ通しで足が棒みたいだ。
ちょっと休もう。ね?」
舞「もう…。だらしない事言わないの、八荒さん」
流星「シグフェルはいつどこに現れるか分からない。
もう少し頑張って捜索を続けよう」
八荒「流星はタフだよな~。ったく超人機ってのが羨ましいぜ」
剣流星、仰木舞、北八荒の三人は、
舞のマスコミとしての仕事と流星のブレイバーズでの任務を兼ね、
シグフェルを探し求めてこのメガロシティに来ていた。
舞「突如現れて東京を救った謎のニューヒーロー・シグフェル。
彼が何者なのかは、今一番のホットな話題よ。
シグフェルの行方を追い、その姿をシャッターに収める!
カメラウーマン舞の血が騒ぐわ~」
シグフェルに関して話題沸騰の今、
舞の所属している会社の雑誌『週刊アップ』でもシグフェル特集が組まれる事になり、
そのために舞はシグフェルの姿を激写しようと、
ここメガロシティを朝から駆けずり回っているのだった。
一方ブレイバーズとしても、シグフェルの正体を早急に突き止め、
その巨大な力が悪の手に落ちてしまう前に保護しようと、
メタルダーこと剣流星以下、数多くのヒーローが手分けして捜索している。
流星「シグフェルが飛び去る方向は、いつも東京の臨海副都心方面だ。
それにサージェス財団には、メガロシティの郵便局が消印の
小包がシグフェルから届いている。
そう考えると、シグフェルの居場所はきっとこの辺りだ」
八荒「そして、流星がメタルダーになるのと同じで、
誰か人間がシグフェルに変身しているらしいんだよな」
流星「ああ。それもセーラームーン達からの目撃談だ」
舞「そういうブレイバーズからの情報を優先的に提供してもらえるのも、
流星さんのお陰ね。シグフェルの特ダネをゲットするためには、
このアドバンテージは大きいわ」
流星「僕らブレイバーズとしても、シグフェルの行方を追う上で、
舞さんのような信頼できるマスコミ関係者と連携できるのは大きいんだ。
シグフェルを発見したら、彼の身に何か大変な事が起きる前に
ブレイバーズの保護を受けるように説得したい」
という訳でメガロシティに目星をつけ、
シグフェルを追い求めて奔走している舞達だったが、
それでもやはりと言うべきか、シグフェルはそう簡単には姿を見せてくれない。
舞「…ここまで手がかりゼロ。
まあ予想はしてたけど、ちょっと厳しいわね…」
流星「場所を絞ったとは言っても、
シグフェルに関してはまだまだ情報不足だ。
今は根気よく探し続けるしかない」
八荒「ねえ二人とも、そろそろお昼ご飯にしない? ねえってば」
舞「よし、こうなったら聞き込み調査よ。
道行く人達にシグフェルに関する情報を当たってみましょう」
八荒「え~っ、まだ続けるの…?」
1374
八荒「舞ちゃんもパワフルだよな~。
…でもよ、人間が変身してるとなると、
案外、そこらの通行人の兄ちゃんとかが実はシグフェルかも知れないんだろ?
例えば…」
八荒は、三人で何やら話しながら道を歩いている
高校生くらいの若者達の一団にふと目をやった。
舞「よし、まずはあの子達から」
八荒「あっ、ちょっと待って舞ちゃん!」
八荒が止めるのも聞かず、舞はその若者達のグループに近付いて行き、
彼ら――光平と優香と慎哉に思い切って声をかけた。
舞「あの~、ちょっとすみません。
私、『週刊アップ』という雑誌でカメラウーマンをしている
仰木舞といいます」
優香「…えっ!? あの仰木舞さん?」
光平「知ってるのか? 優香」
優香「うん。ほら、この前一緒に読んだ
四国に現れたウルトラマンの写真を撮影した人よ」
慎哉「ああ、あの昆虫怪獣の!
あの特集なら、俺も興味を引かれて読みましたよ」
優香「『週刊アップ』はよく読んでます。
私、実は前から仰木さんの写真が大好きだったんです~」
舞「本当? ありがとう。嬉しいわ~」
以前は雑誌編集部内でも決して評価の高くなかった舞だが、
四国でウルトラマンやメガヌロンのスクープに成功してからは株が急上昇し、
今では『週刊アップ』に自分の専用ページを持てるまでになっている。
光平「(この人…何か普通の人とは違うような?)」
流星「(彼は普通の人間…いや、何かが違う。
でもなぜだろう。何がどう違うのか、
どうしても分からない)」
舞と優香と慎哉が盛り上がっている傍らで、
光平はシグフェルの能力で流星の異質さに気付き、
流星もマルチアイのサーチ機能で
光平に普通の人間とは違う何かがあるらしいのを感じた。
しかし、それが一体何なのか――つまり、流星がメタルダーであり、
そして光平がシグフェルであるという事までは、
この時点ではお互いに分からなかったのである。
舞「…あ、それでね。実は今、
我が『週刊アップ』ではシグフェルの行方を全力で追ってるの。
できればシグフェルを見つけてカメラに収めたいんだけど…。
何か情報とか知らないかしら」
光平「ええっ!? シグフェルを?」
流星に気を取られてそれまで話の輪に加わっていなかった光平が、
思わず素っ頓狂な声を上げた。
八荒「そんなに驚かなくたっていいだろ?
悪の大軍が雲霞の如く押し寄せる中、
颯爽と現れて東京の危機を救った無敵のニューヒーロー。
今これを特集しなくてどうするって話だよ」
舞「色々な情報を総合すると、
シグフェルはこのメガロシティ周辺にいる確率が非常に高いの。
これまでの目撃談では、いつもこっちの方角に飛び去ってるそうだし…。
あなた達も、シグフェルを見た事とか、
何か知っている事とかないかしら?」
光平「(し、しまった…! もうそこまで割り出されてるなんて…)
さ、さあ…。話題になってるのはよく耳にしますけど、
直接見たりした事はないですね…」
優香「私も…全然何も分からないです。すみません」
慎哉「あ…あの、俺達急ぎますんで、それじゃ」
慌てて話を強引に切り上げ、
光平達は逃げるようにその場を去って行った。
流星「(彼は一体…)」
終始無言でいた流星は、何かが引っかかるという思いで
光平の背中を見送ったのだった。
1375
慎哉「バカ野郎! だから言ったじゃないか~!」
光平「だって、まさか飛び去る方向までチェックされてたなんてさあ~」
逃げるようにそそくさと舞達の前を離れた光平達は、
ようやく目的地である山野満夫のマンションの前までやって来た。
光平「え~っと…(汗
山野先生の部屋は、このマンションの5階だ」
慎哉「よし、行こうぜ」
マンションの玄関へ入り、エレベーターで5階へと上がって行く光平達。
しかし道路を挟んだ向かいのビルの屋上では、
ゴッドネロスの指令を受けたゴブリットが満夫の部屋に銃を向けていた。
ゴブリット「ブレイバーズの戦士でもない老いぼれ一人、
殺すのなんて造作もないぜ。
これであのうざったいクロスランダーの子分から解放されるなんて、
俺にもツキが巡って来たなあ~」
満夫を狙撃しようと、窓の向こうの様子を窺うゴブリット。
間もなく来る約束の光平達に紅茶を出そうと、
満夫は窓際に置かれたポットからティーカップに湯を注いでいるところだった。
いよいよ撃とうと、ゴブリットは愛用のビームライフルの照準を絞る。
満夫「………」
ゴブリット「死ねっ、ジジイ!」
ゴブリットが引き金を引こうとした、その瞬間である。
満夫が突然倒れ込み、姿が見えなくなったかと思うと、
窓ガラスに鮮血が飛び散った。
ゴブリット「な、何だ…!?」
まだ撃ってはいない。
驚いたゴブリットはしばし呆然とするしかなかった。
◇ ◇ ◇
エレベーターを出て、5階の満夫の部屋の前まで来た光平達は、
「山野満夫」と書かれた表札を確認してドアチャイムを鳴らす。
光平「山野先生~、こんにちは」
慎哉「…おかしいな。ちゃんと約束してあったのに留守かよ」
チャイムを何度押しても返事はない。
その時、光平の持つシグフェルの本能が部屋の中の異変を察知した。
光平「…!」
優香「どうしたの? 光平くん」
ドアに近付いて耳を澄ますと、
部屋の中から何か獣の唸り声のようなものが聞こえる。
光平「…優香、慎哉、下がってろ」
二人を後ろに下がらせた光平は、
ロックのかかったドアを怪力で壊して開け、部屋の中へと踏み込んだ。
途端に立ちこめる血臭が光平の鼻を突く。
リザードマンイーバ「ギシャァァァァ!!」
光平「…!!」
滅茶苦茶に荒らされた部屋の奥で、
蜥蜴のような怪物が、血まみれで床に伏した満夫を踏みつけている。
その怪物――リザードマンイーバBは光平を睨むと牙を剥き、
猛然と襲いかかって来た!
光平「――翔着(シグ・トランス)!!」
一瞬の内に炎を纏い、シグフェルに変身した光平は、
飛びかかるリザードマンイーバBをパンチで返り討ちにした。
リザードマンイーバB「シィグゥフェェェル…!」
シグフェル「こいつ、よくも山野先生を…!」
再び突っ込んで来たリザードマンイーバBを押さえ込み、
背中から卓袱台に叩き付けるシグフェル。
卓袱台の上で仰向けになったリザードマンイーバBに、
シグフェル怒りの鉄拳が炸裂した。
リザードマンイーバB「グボァッ!!」
シグフェルの強烈なパンチはリザードマンイーバBの腹を、
その下の卓袱台ごと突き破って床まで達した。
すかさず腕を引き抜き、体液に濡れた手で素早く印を結ぶと、
シグフェルは青白い熱線を胸から放つ。
シグフェル「これで最期だ…!」
リザードマンイーバB「ギャァァァァァッ!!」
シグフェルの光線で撃たれたリザードマンイーバBは
瞬く間に蒸発、跡形もなく消滅してしまった。
1376
シグフェル「山野先生、しっかりして下さい!」
満夫「ううっ…!」
戦闘を終えたシグフェルは満夫を抱き起こそうとするが、
既に遅く、満夫は苦しそうに唸るとそのまま息絶えてしまった。
シグフェル「山野先生…!
くそっ、やっぱり東条寺の奴が
宗晴博士の痕跡を消して回ってるのか…?」
愕然としてシグフェルが変身を解こうとしたその時、
部屋の窓ガラスが音を立てて割れ、
何者かが勢いよく部屋の中へ飛び込んで来た。
シグフェル「…!」
ゴブリット「貴様は、シグフェル!?」
窓から部屋へ侵入したゴブリットは、
そこにあのシグフェルがいた事に驚きしばし唖然とする。
ゴブリット「こいつは驚いたぜ…。
まさかあのシグフェルとこんな所で会うとはな。
そのジジイを殺ったのはお前か?」
シグフェル「違う…」
ゴブリット「だろうな。
シグフェルってえのは正義のヒーローだって聞いてるからなあ」
シグフェル「お前も俺を知っているのか」
ゴブリット「そりゃあそうよ。この前のGODやザンギャックとの戦いで、
一躍有名になった無敵のシグフェル様じゃねえか」
ビームライフルをシグフェルに向けて牽制し、
小生意気な軽口を叩きながら、内心ゴブリットは思わぬ事態に小躍りする。
ゴブリット「(おいおい、こいつは願ってもないビッグチャンスだ。
シグフェルを倒して捕まえれば強闘士どころか、
一気に雄闘や暴魂、いや凱聖の地位だって夢じゃねえ!)」
ゴブリットがビームライフルを構え、シグフェルも戦闘体勢を取って対峙する。
だがそこへ、室内が静かになったと見た優香と慎哉がドアを開け、
おずおずと中へ入って来てしまう。
優香「光平くん、大丈夫…?」
慎哉「おい、山野先生は…?」
シグフェル「…!? 二人とも、まだ来るな!」
ゴブリット「( ̄ー ̄)ニヤリッ くたばれシグフェル!」
シグフェルに隙が生まれたのを見て、
すかさずライフルを乱射するゴブリット。
シグフェル「危ないっ! …うわっ!」
優香と慎哉を守ろうと咄嗟に立ち塞がったシグフェルは、
全身にゴブリットのビーム弾を浴びてしまった。
慎哉「光平!」
優香「光平くん!」
ゴブリット「オラオラ死ねえっ!!」
更に容赦なくゴブリットはライフルを撃ちまくり、
部屋中にビーム弾を雨霰とぶちまける。
天井の電球が割れ、家具が蜂の巣になり、
部屋のあちこちに飾られていた盆栽鉢が砕け散る。
ソファーの陰に身を隠して伏せた三人だが、
乱射されたビーム弾の一発は近くに置かれていた花瓶を粉砕し、
飛び散ったガラスの破片が優香の右手に当たった。
優香「きゃっ!?」
シグフェル「優香!」
ガラスで切れた優香の手の甲から血が滴り落ちる。
シグフェルは立ち上がり、指先から火炎を放って反撃した。
シグフェル「この野郎、喰らえっ!」
ゴブリット「ぎゃっ…! アチチチチ…!」
灼熱の炎がゴブリットの左腕を包んで燃やし、
たちまち黒焦げの半壊状態にしてしまう。
片腕を一撃で潰され、これは敵わぬと見て、
ゴブリットは左腕を庇いながら窓際へと後退した。
ゴブリット「ち、畜生…!」
ゴブリットは窓から飛び降りて外へ脱出。
停めてあった戦闘バイク・サーキュラダーに跨って逃走した。
シグフェル「優香、大丈夫か?」
優香「こ…光平くん…」
翼で覆うようにして、シグフェルは優香を抱き締めた。
切れた右手の甲から血を流しながら、
うずくまった優香は恐怖でガタガタ震えている。
シグフェル「あいつ…許さん!」
優香を傷つけられたシグフェルの――光平の怒りが激しく燃えた。
シグフェル「慎哉、優香を頼む!」
慎哉「お、おう!」
優香を慎哉に任せると、窓の外へ力強くジャンプして翼を広げ、
ゴブリットを追うためシグフェルは飛翔した。
1377
○剣流星→シグフェルの行方を追ってメガロシティを訪れ、牧村光平達と邂逅。
○仰木舞→シグフェルの行方を追ってメガロシティを訪れ、牧村光平達と邂逅。
○北八荒→シグフェルの行方を追ってメガロシティを訪れ、牧村光平達と邂逅。
●ゴッドネロス→山野満夫の抹殺をゴブリットに指令。
●バルスキー→山野満夫の抹殺をゴブリットに指令。
●ゴブリット→山野満夫の抹殺任務をゴッドネロスに与えられるが、リザードマンイーバに横取りされる。
シグフェルと遭遇し戦闘、左腕を破壊されサーキュラダーで逃走する。
○牧村光平→東条寺宗晴について調べるため山野満夫の元を訪ね、その途中で剣流星達と邂逅。
リザードマンイーバを倒し、現れたゴブリットを追って飛び立つ。
○朝倉慎哉→東条寺宗晴について調べるため山野満夫の元を訪ね、その途中で剣流星達と邂逅。
ゴブリットと遭遇し戦いに巻き込まれる。
○沢渡優香→東条寺宗晴について調べるため山野満夫の元を訪ね、その途中で剣流星達と邂逅。
ゴブリットと遭遇し戦いに巻き込まれる。
○山野満夫→牧村光平達の訪問を受ける直前、リザードマンイーバに殺される。
●リザードマンイーバB→東条寺宗晴の関係者である山野満夫を抹殺。シグフェルと戦い倒される。
【今回の新規登場】
○山野満夫(闘争の系統オリジナル)
元科学者。古賀竜一郎博士の知己で、
城南大学の生化学研究室に東条寺宗晴博士と同時期に在籍。
科学者を辞めてからは教師に転職し、
牧村光平や朝倉慎哉の通っていた中学校で理科を教えるが、その後退職した。
趣味は盆栽。
●リザードマンイーバB(闘争の系統オリジナル)
堕神の使徒で、蜥蜴人間の姿にメカの装甲が融合したような姿をした怪物。
以前にシグフェルが倒したリザードマンイーバとは別個体。
最終更新:2020年11月26日 10:25