『大追跡!鳳凰を狩る餓狼』-3
作者・凱聖クールギン
1398
東京メガロシティ・港湾地帯***
舞「あっ、八荒さんあそこ!」
八荒「シグフェルが、ネロスの奴らと戦ってるんだ」
舞「メタルダーもいるわ!」
タクシーを降りて走り、戦場へやって来た仰木舞と北八荒は、
置かれているコンテナの陰に身を隠しながら様子を窺う。
八荒「あのユニコーンみたいな化け物は一体何だ…?
見たところ、ネロスの仲間じゃなさそうだけど」
舞「もしかして、あれが流星さんの言っていた、
イーバっていう新種のモンスターかしら」
舞と八荒の目は、戦場の中心に陣取っている、
一際おぞましい姿の怪物に引かれた。
二足歩行で馬に似た頭部を持ち、額からは鋭い角が一本生え出ている。
胸はメカの装甲で覆われ、両肩には一門ずつ太い砲塔が装備されていた。
伝説の一角獣を擬人化し機械と融合させたようなその怪物こそ、
イーバの一種、ユニコーンイーバである。
ユニコーンイーバ「グゥゥゥ…!」
クロスランダー「な…何だこいつは…!?」
ゴブリット「ク、クロスランダー様、こいつはもしかして、
あのイーバとかいう怪物なのでは…?」
クロスランダー「何!? これがあのイーバ…?」
イーバの情報はGショッカーでも掴んではいたものの、
実物を目にするのはこれが初めてである。
メタルダー「シグフェル、これが君の戦っていた…」
シグフェル「ああ。これがイーバ。俺が戦うべき敵…」
メタルダー「………」
イーバを前にしたシグフェルの闘争本能が激しく燃え立つのを、
メタルダーは戦慄を覚えつつ感じ取る。
ユニコーンイーバ「グォォ…!」
デデモス「な、何だてめえ、やろうってのか!?」
しばし戦場を睥睨していたユニコーンイーバは、
やがてネロス軍団員達に狙いを定め、大きく咆哮すると、
両肩の砲塔から青白いビームを放って攻撃した。
ゴチャック「ぬおおっ!」
ゴブリット「ひゃああっ!」
強力なビームはネロス帝国の戦闘ロボット達を薙ぎ払い、
周囲のコンテナや倉庫を次々と爆発させる。
ゴチャック「イーバは黄泉がえった者を狙うと聞いていたが…。
ま、まさか、狙いは我々か…!?」
敵の真意に気付いてゴチャックが愕然とする。
これまでネロス帝国では、シグフェルを引き付ける存在であるイーバが
黄泉がえった者を標的にするという情報から、
一般市民の中で黄泉がえった者達をマークしイーバの出現を待ち伏せていた。
だが、かく言う彼らネロス軍団員も黄泉がえった者の一人には違いなく、
イーバは彼らを狙ってこの戦場に現れたのである。
ゴブリット「ぐわあっ!」
既に両腕を負傷していたゴブリットはビームを避けられず、
吹き飛ばされてダウンしてしまった。
デデモス「野郎! 舐めんなっ!」
左手の鋭い鉤爪を向けてユニコーンイーバに突進したデデモスは、
ユニコーンイーバの胴体を覆う装甲に勢いよく鉤爪を突き立てるが、
装甲には傷一つつけられず、逆に鉤爪の方が砕けてしまう。
デデモス「そ…そんな!?」
ユニコーンイーバ「ウォォォッ!!」
デデモス「うぎゃぁっ!」
一際大きく咆えたユニコーンイーバに、デデモスは何メートルも殴り飛ばされる。
衝撃で電子頭脳がクラッシュし、デデモスも戦闘不能となった。
クロスランダー「どいつもこいつも邪魔をしおって…。
ふざけるなぁっ!!」
激怒したクロスランダーは二丁拳銃でユニコーンイーバを射撃するが、
ユニコーンイーバは時空クレバスを発生させ、
放たれたビーム弾をその中へ吸収する。
クロスランダー「な、何っ!?」
今度はクロスランダーの目の前に時空クレバスが開き、
先程発射したビーム弾が至近距離から撃ち返された。
クロスランダー「ぐおおっ! ば、馬鹿な…!」
自分の弾丸を腹に喰らい、クロスランダーは悶えながら倒れた。
ユニコーンイーバは更にビームを乱射して攻撃、暴れ回る。
舞「きゃあっ!」
八荒「舞ちゃん!」
戦いの様子を撮影しようとカメラを向けた舞だったが、
狙いを外れたビームの一発は舞と八荒が隠れていたコンテナに命中。
大爆発を起こしてコンテナを炎上させた。
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メタルダー「ヤァッ!!」
舞と八荒の危険を見て、メタルダーは自分の方へユニコーンイーバの注意を引き付け、
レーザーアームを光らせて斬りかかろうとするが、
ユニコーンイーバが盾のように時空クレバスを作って自分の前に展開したので
それ以上突っ込む事ができずに後退する。
メタルダー「くっ…。時空クレバスを自在に操るのか」
時空クレバスが消えると同時に両肩からのビームで攻撃するユニコーンイーバ。
メタルダーの頑丈なボディもビームの直撃を受けて火花を上げた。
負けじと突進するメタルダーだが、やはり形成された時空クレバスによって
進路を塞がれてしまい近付けない。
メタルダー「駄目だ。これではどうしようもない…!」
攻め手を封じられて苦戦するメタルダー。
だがその時、メタルダーの後ろから飛んで来た一筋の火炎が、
時空クレバスをまるで物理的に破壊するかのように突き破り、
ユニコーンイーバの体に命中してダメージを与えた。
メタルダー「……!」
シグフェル「イーバは俺に任せろっ!」
メタルダーが振り返った先にいたのはシグフェルだった。
ユニコーンイーバに指先からの火炎を当てたシグフェルは、
猛ダッシュでメタルダーを追い抜き、ユニコーンイーバに突っ込んで行った。
シグフェル「行くぞ!」
ユニコーンイーバ「シィグゥフェルゥ…!」
ユニコーンイーバも牙を剥き、シグフェルに向かって突進する。
正面から激突した両者は激しく殴り合った。
クロスランダー「これが、シグフェルとイーバの戦いか…」
メタルダー「どちらも凄まじいパワーだ」
さしものクロスランダーも、
しばらくはシグフェルとイーバの格闘を呆然と見ていたが、
やがて冷静さを取り戻したゴチャックがクロスランダーに進言した。
ゴチャック「イーバなど今はどうでもいい。
とにかくシグフェルの捕獲を最優先すべきと心得る。
それが帝王のご命令ですぞ!」
クロスランダー「よし分かった。見ていろ…」
ゴチャックの進言を受けたクロスランダーは銃を取り、
ユニコーンイーバと戦うシグフェルを横から奇襲射撃した。
シグフェル「うわっ!」
メタルダー「クロスランダー!」
クロスランダー「フハハハハ!
どんな好機も決して逃さんのが真の殺し屋というものよ!」
銃撃を浴びて倒れたシグフェルに、
ユニコーンイーバは長い角を向けて突進し跳ね飛ばす。
シグフェルのピンチを見て、再びメタルダーが割って入り、
ユニコーンイーバの正面に躍り出て注意を引き付けた。
1400
シグフェル「くっ…!」
痛みを堪えて立ち上がり、すぐにメタルダーに加勢しようとするシグフェルだったが、
その前にゴチャックが立ち塞がる。
シグフェル「邪魔だ、どけ!」
ゴチャック「ククク…。そうは行かんな。
我こそは戦闘ロボット軍団・爆闘士ゴチャック!
いざ尋常に勝負だシグフェル!」
やむなくゴチャックに向かって戦闘体勢を取るシグフェル。
琉球空手を戦闘スタイルに生かして戦うシグフェルだが、
ゴチャックも恩師である巨人ビッグウェインから
あらゆる武術を徹底的に叩き込まれてきた格闘家ロボットである。
構えや間合いの取り方一つ見てもただ者ではないと、
格闘技の経験からシグフェルはすぐに悟った。
ゴチャック「ゴチャックフライング!」
シグフェル「おっと!」
シグフェルが距離を詰めようと踏み込んだ瞬間、
ゴチャックは両腕でシグフェルを捕らえ力一杯投げ飛ばす。
放り投げられたシグフェルは翼で浮力を作り、
空中で体勢を立て直して着地したが、
すかさず突っ込んで来たゴチャックに押さえ込まれ、首絞めをされた。
ゴチャック「ゴチャックロック~!」
シグフェル「ぐ……がっ……」
シグフェルの首をねじ切らんばかりに捻るゴチャック。
意識が危うく落ちそうになるシグフェルだったが、
最後の力を振り絞り、渾身の肘打ちをゴチャックの脇腹に炸裂させた!
ゴチャック「うおっ!?」
凄まじいパワーの一撃を受け、ゴチャックの脇腹にクレーターができる。
シグフェル「止めだ!」
絞め技を振りほどいたシグフェルは、
琉球空手の型に倣った見事な正拳突きでゴチャックの頭を殴り、
電子頭脳をショートさせて倒したのだった。
一方、ユニコーンイーバと一対一で戦うメタルダーは、
相変わらず敵の繰り出す時空クレバスに翻弄され、手出しができずにいた。
メタルダー「何とかして時空クレバスを破らなければ、
奴に攻撃を当てる事は不可能だ」
メタルダーの戦闘マニュアルコンピューターがフル回転し、
イーバの無敵の盾とも言うべき時空クレバスへの対処法を模索する。
そして導き出された答は――。
メタルダー「――流星キックだ!」
先刻、舞から借りたタブレットで見たウルトラマンジャックの技である。
ジャックがキングザウルス三世のバリアを飛び越えて攻撃したように、
イーバの時空クレバスもジャンプで突破する事は可能なはずだ。
メタルダー「問題は、奴がどこに時空クレバスを作るかだ」
キングザウルス三世のバリアと違って難しいのは、
時空クレバスがいつも決まった位置にではなく、
イーバの任意の位置に出現するため、ジャンプの距離間隔が計りにくい点である。
事前に時空クレバスの位置を確定できない以上、
ユニコーンイーバが時空クレバスを発生させた直後にこれを飛び越え、
二つ目の時空クレバスが張られる前に懐に飛び込んで攻撃するという、
疾風の如き素早い動きが求められる。
メタルダー「よし…。やってみるしかない」
猛然とユニコーンイーバに突進を開始するメタルダー。
ユニコーンイーバは自分の正面に時空クレバスを展開して防御する。
メタルダー「今だ!」
時空クレバスが張られた瞬間、両脚で力強く跳躍するメタルダー。
空中で体を捻り、そのままキックの体勢に入る。
ユニコーンイーバは咄嗟に自分の斜め上に二つ目の時空クレバスを張ろうとするが、
急降下するメタルダーはそれをギリギリで間に合わせず、
必殺の流星キックをユニコーンイーバの角に炸裂させて蹴り折った。
ユニコーンイーバ「グァォッ!?」
メタルダー「ヤァッ!」
ユニコーンイーバの懐へ飛び込んだメタルダーは折れた角をキャッチし、
そのままユニコーンイーバの腹に突き刺した。
長く鋭い角がメカの装甲を貫通し、
ユニコーンイーバは口から血とも体液ともつかない液体を吐いて
悶えながら仰向けに倒れる。
ユニコーンイーバ「グォ…ヴァァッ…!」
メタルダー「やった…!」
遂に絶命するユニコーンイーバ。
ブレイバーズの戦士が、初めて自力でイーバを仕留めた瞬間であった。
1401
メタルダー「クロスランダー!」
シグフェル「残るはお前一人だ!」
クロスランダー「フフフ…。望むところだ。
今度こそ俺はメタルダーを討ち取り、シグフェルを捕らえて
ネロス帝国のナンバー1ロボットの座に輝いてみせる!」
ユニコーンイーバがメタルダーに倒され、
ゴブリット、デデモス、ゴチャックもことごとく戦闘不能となったところで、
クロスランダーは再びシグフェルとメタルダーに挑戦する。
メタルダー「行くぞ!」
クロスランダー「来いメタルダー!」
まずはメタルダーが仕掛けた。
クロスランダーに正面から攻めかかるメタルダーだが、
二丁拳銃の乱射で容易に近付けない。
シグフェル「うおおっ!」
シグフェルも続けて突っ込み、一発目のビーム弾を身軽にかわしたが、
もう一丁の銃から間髪入れずに放たれた二発目の直撃を受け、
手痛いダメージを負って倒れ込んだ。
シグフェル「くっ…! 二丁拳銃ってのはなかなか厄介だぜ」
メタルダー「こうなったら、二人のコンビネーション攻撃だ!」
シグフェル「よし…!」
一人に同時に二丁の銃を向けられると厳しいが、
一丁ずつなら何とか対処できる。
メタルダーとシグフェルは距離を取って左右に分かれ、
クロスランダーを挟み撃ちにする態勢を取った。
クロスランダー「フン、小癪な…」
自分の右に立つメタルダーに右手の銃を、
左に立つシグフェルに左手の銃を向け、
クロスランダーは仁王立ちの姿勢で身構える。
メタルダー「レーザーアーム!!」
メタルダーの右手に、青白い高熱の電光が走る。
メタルダーの必殺技・レーザーアームである。
シグフェル「なるほどね…。俺もやってみるか!」
メタルダーのレーザーアームを見て閃いたシグフェルは、
ごく自然に、その動作を真似るようにして右手を振り上げた。
シグフェル「フレイムアーム! …ってとこかな」
指先から迸った真っ赤な炎がシグフェルの手を包み、
レーザーアームの火炎版とでも言うべき灼熱の手刀が完成する。
「フレイムアーム」。シグフェルは一見してレーザーアームの要領を掴み、
自分の技に応用して新技を編み出したのである。
シグフェル「………」
メタルダー「………」
クロスランダー「さあ、どこからでもかかって来い!」
二人の突進するタイミングがズレては、
クロスランダーに片方ずつ順に対処されてしまい意味がない。
左右に分かれたメタルダーとシグフェルは互いの動きをよく注視し、
呼吸を合わせて仕掛けるべき時を計る。
メタルダー「――今だ!」
シグフェル「――よし!」
寸分のズレもなく、左右から同時に駆け出した両者。
クロスランダーは二人に一丁ずつ向けていた二丁拳銃を同時に発砲した。
シグフェル「とうっ!」
メタルダー「ヤァッ!」
飛んで来たビーム弾を、シグフェルとメタルダーはジャンプで飛び越え、
空中で腕を振り上げ手刀の斬りつけ態勢に入る。
メタルダー「つぁっ!!」
シグフェル「喰らえぇぇぇっ!!」
さしものガンマンロボット・クロスランダーも、
素早く上に跳んだ両者を同時にロックオンして二発目を撃つのは不可能だった。
右からはメタルダーが青い光の手刀・レーザーアームを、
左からはシグフェルが赤い炎の手刀・フレイムアームを降下と同時に振り下ろす。
クロスランダー「ぐわぁぁぁっ!!」
両肩から胸まで斜めに斬り下げられて、クロスランダーは大爆発。
胴体が木端微塵に吹き飛び、首から下を失った頭部が爆風に乗り宙を舞った。
1402
舞「やっぱり強いわ。さすがシグフェル!」
八荒「舞ちゃん、そんな事より、ほらシャッターチャンス!」
舞「ええ、分かってる!」
戦いが終わり、コンテナの陰から出て来た舞はカメラを向け、
炎の中で残心の姿勢を取るシグフェルを撮影する。
メタルダー「シグフェル…」
シグフェルに歩み寄り、声をかけようとするメタルダーだったが、
シグフェルは何かを逡巡している様子で顔をそむけ、寂しげにうつむいた。
メタルダー「………」
本当なら、ブレイバーズに加わるようシグフェルを勧誘すべき立場のメタルダーだが、
訳ありげなシグフェルの態度がそれを躊躇わせた。
本当は共闘した事を称え合い、喜び合いたいのに、
何かがそれをさせてくれない様子である。
シグフェルの事情、また胸中は、恐らく予想以上に複雑だ。
今はまだ、仲間に誘う言葉はシグフェルには届かないとメタルダーは判断した。
メタルダー「シグフェル、一つだけ聞かせてくれ。
君は何のために戦っている?」
シグフェル「…よく分からない」
メタルダーの問いかけにそれだけ答え、
シグフェルは背を向け、悲しそうに空を見上げると、
そのまま翼を羽ばたかせて飛び去ってしまった。
八荒「何だよ。やたら強いくせに、愛想だけは良くねえの…」
舞「謎のスーパーヒーロー・シグフェル。
できれば直撃インタビューと行きたかったけど、
あの様子じゃそういうのは無理そうね…」
メタルダー「シグフェル…」
メタルダーは気付いていた。
去り際に向けられたシグフェルの目が、とても悲しげだった事に、
それは自分の存在そのものに悩み、苦悩している者の目である。
「風よ、雲よ、太陽よ、心在らば教えてくれ。なぜこの世に生まれたのだ――」
かつてそう叫んだ自分と相通じる心境がシグフェルの目に読み取れた気がして、
メタルダーは胸に詰まるものを感じるのであった。
◇ ◇ ◇
バルスキー「シグフェル…。
次こそは必ず、お前を捕らえてみせるぞ…!」
地面に転がったクロスランダーの首を拾って小脇に抱えながら、
バルスキーは夕暮れの空を見上げて言った。
クロスランダーの首「ぐ…軍団長殿…。
も…申し訳…ございません…。俺は…お、俺は…!」
バルスキー「もう何も言うなクロスランダー。
お前はよく戦った。この敗戦の責任は俺が取る。
さあ、帰るぞ。車を出せ」
ゲバローズ「了解。発進します!」
無残に破壊されたクロスランダーら戦闘ロボット達を収容し、
バルスキーはゲバローズに命じてドライガンを走らせた。
1403
八荒「えっ? 写真を雑誌に載せない!?」
舞「ええ。何だか、その方がいい気がするの」
事件後。せっかく激写に成功したシグフェルの写真を、
『週刊アップ』に掲載するのをやめるという舞の発言に八荒は驚く。
八荒「ど、どうして…?
せっかくあんな危険な目に遭ってまでモノにした
最高のスクープ写真なのに」
舞「だって…。この写真に映ったシグフェルの目、
何だかとっても悲しそうに見えて来るんですもの」
八荒「目…?」
舞から手渡されたシグフェルの写真を、
八荒はまじまじと見詰めて首を捻る。
流星「シグフェルは、自分が戦っている理由は何か分からないと言っていた。
古賀博士に眠りから覚まされて、起動したばかりの僕と同じだ。
彼は自分が置かれた状況にきっと戸惑っている」
舞「これは私の凄~く勝手な推測だけど…。
シグフェルは、きっと自分から望んでシグフェルになったわけではないのよ。
どういう経緯かは分からないけれど、何か思わぬ出来事があって、
自分の意思に反してシグフェルになってしまった人がいて…。
そう、仮面ライダーの本郷さんや一文字さんみたいに、
シグフェルっていうのは誰か普通の人が、
何かの力で強制的に異形の姿に変えられてしまったものなのかも知れないわ」
流星「僕もそんな気がする。
彼はきっと、色々と悩み苦しんでいるんだ。
ブレイバーズの呼びかけにすぐに応じようとしないのも、
彼自身、まだどうしていいか分からないからじゃないだろうか」
八荒「う~ん、なるほどねえ…。
あくまで推測に過ぎないけど、確かにその可能性はあり得るな」
舞「そういう事を考えると、
今シグフェルを興味本位で追い駆け回して報道のネタにするのは、
ちょっと不謹慎な気がするのよ。
だからせっかく撮ったスクープ写真だけど、これはお蔵入り。
シグフェル特集がなくてもしっかり読者に楽しんでもらえるような、
別のネタを探して写真にするわ」
八荒「舞ちゃんは偉いな~。
そこらの下世話な金儲け主義のパパラッチとは大違い。
これぞマスコミの鑑だね」
舞「もう、八荒さんったら~」
少し照れくさそうに笑う舞。
次号の『週刊アップ』はシグフェル特集こそなかったものの、
舞があちこち駆けずり回って撮影した「東京街並み探訪 ~豊洲編~」が充実の内容で、
読者からまずまずの好評を得たという。
◇ ◇ ◇
数日後――。
包帯を巻いた右手でゆっくりとページを捲りながら、
優香は光平と一緒に『週刊アップ』の最新号を読んでいた。
光平「フレイムアーム! か…///
何で俺、あんな風にしたんだろう」
自分の右手を見ながら光平が呟く。
レーザーアームの要領を一瞬で掴んで我流にアレンジしたシグフェルの高い戦闘センスは、
変身している光平自身、驚きを禁じ得ないほどのものである。
技の名前を叫んだのも含めて、本能に導かれるようにして自然にできてしまった事だったが、
後で思い出してみると不思議であり、微妙に気恥ずかしい面もなくはないのであった。
光平「(ともかく、技を一つモノにできたのは収穫…かな)」
優香「ねえ光平くん! 聞いてる?」
光平「…あ、悪い悪い。ちょっとぼんやりしてた。
ええっと、何の話だっけ?」
優香「ほら、ここのお店、今度行ってみたいなって」
、
ボーイフレンドの自宅の近所という事もあってか、
『週刊アップ』で紹介されている豊洲の町並みを優香はとても楽しそうに眺めている。
慎哉「どの雑誌も揃いも揃ってシグフェル特集ばかりな中で、
こういう地味に面白い企画をやるんだから
『週刊アップ』はやっぱり違うよな」
光平「でもさ…豊洲特集って、思い切りうちの近所じゃん!
この新しくできたラーメン屋なんて、すぐ裏のあそこだろ?
もしかしてあの仰木さんって人、
もうそこまで分かってるんじゃ…」
優香「それはないと思うけど…。
…あ、ここの公園も素敵ね。今度連れて行ってよ」
光平「ああ。ここもうちのすぐ近くだよ…」
近所の街並み、美味しいレストラン、素敵なデートスポット…。
これでもかと言わんばかりに馴染みの場所ばかりが撮られた雑誌を、
冷や汗をかきながら読む光平であった。
1404
○メタルダー→シグフェルと共闘し、ユニコーンイーバとクロスランダーを倒す。
○仰木舞→シグフェルのスクープ写真の撮影に成功するが、雑誌への掲載は取りやめる。
○北八荒→シグフェルのスクープ写真を雑誌に載せないという舞の決断に驚く。
●クロスランダー→メタルダーとシグフェルの同時攻撃で敗れる。
●デデモス→ユニコーンイーバに倒されてダウンする。
●ゴブリット→ユニコーンイーバに倒されてダウンする。
●ゴチャック→シグフェルと戦うが敗れる。
●バルスキー→シグフェルに敗れたクロスランダー達を収容し撤退する。
●ゲバローズ→シグフェルに敗れたクロスランダー達を収容し撤退する。
○シグフェル→メタルダーと共闘し、ゴチャックとクロスランダーを倒す。
その後、『週刊アップ』の豊洲特集を読んで冷や汗をかく。
○朝倉慎哉→『週刊アップ』の豊洲特集を読む。
○沢渡優香→『週刊アップ』の豊洲特集を読む。
●ユニコーンイーバ→ネロス軍団員を襲うが、メタルダーに倒される。
【今回の新規登場】
●ユニコーンイーバ(闘争の系統オリジナル)
堕神の使徒で、ユニコーンにメカの装甲を融合させたような怪物。
両肩に一門ずつビーム砲を装備している。
最終更新:2020年11月26日 10:29