本編1430~1436

『赤心少林拳、梅花の型』-5

 作者・ティアラロイド
1430

拳竜会本部道場***


慎哉「ぐはッ…!!」
雄大「うぐっ…!!」
大石の弟子A「さあ吐け! 正直に答えるのだぁー!!」

大石秀人率いる拳竜会の本部道場へと連れ込まれてしまった
朝倉慎哉と岡島雄大は、二人とも天井から吊るされて
続けざまに竹刀で打ちすえられるという拷問を受けていた。

大石の弟子B「しぶといガキどもめ!」
大石「こんな小僧どもがブレイバーズの仲間だとは思えん。
 なぜ我が拳竜会の本部道場のメインコンピューターにハッキングした?
 あの牧村光平とかいう小僧に頼まれたのか!?」
慎哉「…違うッ! これは全部俺一人だけでやったことなんだ…!」
大石「なに…?」
慎哉「…なあ、この事に雄大は関係ないんだ。
 そいつだけは帰してやってくれないか…?」

慎哉は雄大を庇おうとするが…。

雄大「…何言ってんスか…慎哉先輩。
 一人だけいいカッコしないでください……。
 僕だって光平先輩があれだけひどい目に遭わされて
 黙っていられなかったんッスよ…。
 ここまで来たら…もう一蓮托生ですからね…!」
慎哉「雄大、お前……」
大石「麗しい友情だな。お望みとあらば、
 もっと痛めつけてやる! やれッ!!」
大石の弟子たち「「――押忍!!」」

雄大「……(もう駄目だッ…!)」
慎哉「……(やられるッ…!)」

慎哉と雄大が覚悟を決めて目を閉じた時、
大きく叫ぶ光平の声がした。

光平「待てッ!!」

驚いて目を開ける慎哉と雄大。
そこには、大石配下の弟子たちを押しのけて道場に乗り込んで来た
牧村光平と沖一也の姿があった!

慎哉「光平…!?」
雄大「…光平先輩!!」

慎哉と雄大の痛々しい姿に愕然とする光平。

光平「慎哉! 雄大!」
慎哉「わりぃ…ドジ踏んじまった……」
雄大「へへへ…面目ない……」
光平「ごめんな…慎哉、雄大。俺なんかのために……」

1431

大石「久しいな沖一也、そして牧村光平。
 いったい何しに来た?」
光平「大石秀人、お前に再戦を申し込む!」
大石「…なるほど。それで沖一也、貴様が助っ人というわけか?」
一也「いや、俺はあくまでも見届け人として立ち会うだけだ。
 お前には光平君が一人で挑む!」

今の一也の言葉に大石は憤慨する。

大石「なんだとぉ!! たかが高校生の小僧一人に
 俺の相手が務まると思っているのか!!
 俺も随分と舐められたものだな!」
光平「その代わり俺が勝ったら、その二人を自由にしてもらう!」
大石「いいだろう! 返り討ちにしてくれる!」

大石配下の弟子たちが大勢取り囲むアウェイの状況の中、
こうして牧村光平と大石秀人の再戦が開始された。
両者が対峙する中、前回とは打って変わって互角の戦いが展開される。

光平「……(大石はまるで獣のような強さだ。
 だがその鋭い牙も、生命を慈しむ梅花の構えが
 全て受け流してくれる!)」
大石「バカな! こんな年端もいかない小僧に
 この俺が苦戦するというのか!?」

徐々に追い詰められる予想外の展開に、
焦る大石は光平に必殺の回し蹴りをお見舞いしようとするが、
回し蹴りの技は本来、相手に当たるまでの時間がかかる。
その隙を光平は見逃さなかった!

光平「いくぞ! 赤心少林拳、梅花上段突き!!」
大石「ぐわあああッッ!!!!」

壁際まで吹っ飛ばされる大石。

慎哉「やったああ!! ざまあみろ!!」
雄大「凄いや光平先輩!!」
一也「見事だ!!」

光平「勝った…のか…」

1432

大石の弟子A「せ、先生!?」
大石の弟子B「大丈夫ですか!?」
大石「ええい! よるなあ!!」

弟子たちの助け起こされる大石だったが、
まさかの自身の敗北に怒り心頭となっていた。

大石「…許さんッ! こうなれば貴様ら全員皆殺しだぁーッ!!
 ぐおおおおッッ……!!!」

大石は気勢を上げ、不気味な光が身体を包みこんだかと思うと、
ドグマ超A級怪人ギョストマの正体を現した!
それと同時に配下の弟子たちも全員ドグマファイターの姿に戻る!

ギョストマ「グハハハハッ!!!」

慎哉「――なっ!!」
雄大「…ば、化け物!?」
光平「そういうことだったのか…!
 これでいろいろと合点が行ったぜ」

これで光平は、大石の初戦の時に感じた違和感の正体を理解した。
大石は実は人間ではなく、Gショッカーの怪人だったのだ。

一也「光平君、ここは俺が引き受ける!
 君はその二人を連れて早く逃げるんだ!」
光平「でもッ…!」
一也「いいから急げ!!」
光平「は、はい…!」

光平は慎哉たちを連れて道場から脱出した。

ギョストマ「これでようやく貴様と戦えるな。
 お前を倒した後で、あの小僧たちも後から追いかけて
 血祭りに上げてくれるぞ」
一也「そうはさせん! ――変身ッ!!」

一方、ドグマファイターの追手を振り切って、
安全な場所まで無事逃げのびた光平たちだったが…。

光平「慎哉、雄大のこと頼めるか?」
慎哉「おう! 任しとけ」
雄大「ちょ…ちょっと、光平先輩どこ行くんですか!?
 今戻ったら危ないですよ!!」
慎哉「光平なら大丈夫だ」
雄大「慎哉先輩…??」

二人と離れて一人きりになった光平は、
心置きなく紅蓮の鳳凰の姿へと変身する。

光平「――翔着(シグ・トランスッ)!!」

1433

原っぱで死闘を繰り広げている仮面ライダースーパー1とギョストマ。

ギョストマ「喰らえ! ギョストマ幻魔光線~!!」

ギョストマの両目から発射される幻魔光線には、
相手の手足を麻痺させ、思考能力を低下させてしまう能力があるのだ。

スーパー1「く、苦しい…! 身体が痺れるようだ…ッ」
ギョストマ「見たかスーパー1。お前との再戦を期していた俺は、
 密かに幻魔光線のパワーを強化していたのだ!
 いかに赤心少林拳・梅花の型といえども、容易にこれを
 破る事はできんぞ~!」

だが突然横からビーム状の灼熱の炎がギョストマめがけて浴びせられた。
超高温の熱さに苦しむギョストマ。それによって攻撃の手は緩み、
スーパー1は幻魔光線から解放された。

ギョストマ「…あ、熱い~!! 身体が焼け爛れそうだぁ~!!」
スーパー1「――君は!?」
シグフェル「仮面ライダー!?」

いきなり何の前触れもなくシグフェルが現れた事に驚くスーパー1。
しかし驚いたのはシグフェルの方も同じ事だった。
ギョストマと戦っているはずの沖一也はどこに行ったのだろう。

シグフェル「ライダー、沖一也さんは!?」
スーパー1「……(なぜシグフェルが沖一也の事を知っている?)」

シグフェルの言葉を不審に思ったスーパー1だったが、
とりあえずその場を取り繕う事にする。

スーパー1「大丈夫だ。沖一也なら、私が安全な場所まで避難させた」
シグフェル「そうか…。よかった」

ホッと胸を撫で下ろしているように見えるシグフェル。
不思議に思ったスーパー1だったが、敵をすぐ目の前にして、
今はそんな事をゆっくり考えている時間はなかった。

シグフェル「ライダー、詳しい事情は言えないけれど、
 今は一緒にアイツと戦わせてくれ!」
スーパー1「それはこちらこそ願ってもない事だ。
 俺は仮面ライダースーパー1。いくぞシグフェル!」
シグフェル「おう!!」

スーパー1とシグフェルのW攻撃によって一気に形勢は逆転。
続々と繰り出される突きや蹴りの攻撃を前にして、
もはやギョストマに勝機はなかった。しかし……。

ギョストマ「……(シグフェルのその構え、どこかで見たような)」

シグフェルの技の動きに、どこか見覚えがあるギョストマ。
それはついさっきまで自分より格下だと散々見下していた
あの少年の動きと同じものだった。

ギョストマ「……ま、まさかあの小僧が!
 そうか…そうだったのか! あの小僧がシグフェルだったのか」

だがそれに気づいた時には既に遅し。
スーパー1とシグフェルは同時に
ギョストマに止めを刺す態勢へと移行していた。

スーパー1「赤心少林拳、梅花二段蹴りッ!!!」
シグフェル「てりゃあああッッッ!!!!!」

スーパー1とシグフェルの偶然の絶妙なタイミングでの
梅花二段Wキックがギョストマに炸裂した。

ギョストマ「…テ、テラーマクロォォッ!!!」

ギョストマは死の直前にようやく突き止めたシグフェルの正体を
他の誰にも告げる事が出来ないまま、壮絶に爆死したのであった。

1434

戦いが終わった後、スーパー1と別れ、
シグフェルの姿から変身を解いた光平は、
慎哉と雄大、沖一也、そして後から追い付いてきた
沢渡優香に草波ハルミと合流した。

慎哉「一也さん、無事だったんですね!」
一也「ああ、仮面ライダーが助けてくれたんだ」

皆が互いの無事を喜び合う中、
光平は一人神妙な面持ちで一也に話す。

光平「一也さん、ブレイバーズのヒーローたちが
 どんな気持ちで普段悪と戦っているのか、
 少し解ったような気がします…」
一也「どうしたんだいきなり、そんな話を切り出して?」
光平「いえ、なんでもありません。気にしないでください」

これまで偶然にも超人機メタルダーや仮面ライダースーパー1と共に戦う機会を得て、
その戦いぶりを間近で見ていたシグフェル=光平にとって、
「激しい戦いの中にあっても、生命を慈しむ心を忘れない」という
赤心少林拳の極意と重なるモノを感じたのであろう。
しかしそのような事情を、当の沖一也が知る由もなかった。

光平「一也さん、ハルミさん、本当にありがとうございました。
 玄海老師や弁慶さんにはよろしくお伝えください」
一也「わかった。老師たちには君の成長を確かに伝えておくよ」
ハルミ「みんな元気でね♪ また会いましょう」

こうして光平たちは深々と礼をして、
沖一也たちと別れたのであった。

雄大「でも光平先輩、なんか以前と変わりましたよね」
慎哉「うんうん俺もそう思う。なんか一回り大きく成長したっていうかさあ」
光平「そうかなあ……」

慎哉と雄大の褒め言葉に、光平はなんとなく照れる。

光平「優香、この間はひどい事をして本当にごめん!
 埋め合わせならなんでもするからさ。遠慮なく言ってくれ」
優香「そう? なら湾岸マリンタワーの展望台に
 夜景のきれいなレストランがあるの。今度の日曜そこに連れてって」
光平「…えっ?(…あそこ確か料金が凄く高いんだよなあ)(汗」

優香の提案に、思わず心の中で自分の財布の中身と
相談を始めてしまう光平だったが……。

優香「ダメ…?」
光平「そ、そんなことないよ! 男に二言はない!
 どんと任せとけって!!」
優香「ホントに? うふふ、嬉しい♪」

慎哉「やれやれww」
雄大「きっと光平先輩って、結婚してからも
 お嫁さんの尻に敷かれるタイプっスね」

1435

笑顔で去っていく光平たちをじっと見送る沖一也。
その見つめる視線には、一つの疑念が浮かんでいた。

一也「………(なぜシグフェルはこの俺、沖一也の事を知っていた?
 それにシグフェルがギョストマと戦っていた時の構えは、まさしく梅花の型。
 赤心少林拳で梅花の型を会得している者は、玄海老師、弁慶、それにこの俺の
 3人だけのはずだ…。――!!…いや待て、他にもう一人いる!!)」
ハルミ「どうしたの一也さん、そんな怖い顔して?」
一也「…まさか、な」
ハルミ「え…?」
一也「いや、なんでもない。さて、俺たちもそろそろ帰るか。
 谷のおやっさんたちが心配してる」

谷モーターショップのある方角へと戻っていく一也とハルミ。
その様子を近くの丘の上から見ている玄海老師と弁慶。
実は彼らも先程のギョストマの戦いからずっと陰ながら彼らを見守っていた。

玄海「………」
弁慶「老師、あの光平という少年に何かまだ思うところでも?」
玄海「いや、なんでもない。我らもそろそろ寺に戻るとしようか」

弁慶を伴い秩父山の赤心寺へと戻って行く玄海老師。
果たして光平を見つめる玄海老師の胸には何が去来していたのであろうか。
こうしてドグマ王国によるシグフェル捜索作戦は完全に失敗に終わり、
この日はそれぞれが無事に帰路に着いたのだった。

1436

○沖一也→シグフェルと共闘してギョストマを倒す。
○草波ハルミ→沢渡優香を麓の市街地まで送り届け、牧村光平たちと別れる。
○玄海老師→スーパー1とシグフェルがギョストマに勝利したのを見届ける。
○弁慶→スーパー1とシグフェルがギョストマに勝利したのを見届ける。
●大石秀人/ギョストマ→死の直前にシグフェルの正体に気がつくが、誰にも報告できずに爆死。

○牧村光平/シグフェル→仮面ライダースーパー1と共闘してギョストマを倒す。
○朝倉慎哉→拳竜会本部で拷問されるが、牧村光平に助けられる。
○岡島雄大→拳竜会本部で拷問されるが、牧村光平に助けられる。
○沢渡優香→牧村光平と日曜にデートの約束をして仲直り。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2020年11月26日 10:33