『砂漠の姫の来日』-3
作者・ティアラロイド
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東京エネタワー***
スティングフィッシュオルフェノク@井沢の影「邪魔をするな…」
スティングフィッシュオルフェノクは下半身が魚のような遊泳態となり、
まるで水の中を泳ぐように宙を舞って、静弦太郎と光平たちに襲いかかる。
弦太郎はアイアンベルトでスティングフィッシュオルフェノクの尾部分を絡め取り、
その動きを封じる。
弦太郎「なにボサッと突っ立ってる!? 早く逃げろ!」
光平「…は、はいッ!!」
光平はフィリナを連れて非常階段の方へ逃げようとするが、
その前にエレファントオルフェノクが立ちはだかる。
エレファントオルフェノク@ロングコートの男の影「待て。逃がさないぞ…」
光平「くっ…! フィリナ、こっちだ!!」
フィリナ「ええ!!」
必死に反対方向へと走る光平とフィリナだが、
下半身が四肢に変化したエレファントオルフェノクにあっという間に
追いつかれてしまい、その巨体に突撃されて二人は引き離されてしまう。
光平「うわあああッッ!!!」
フィリナ「キャアアッッ!!!」
弦太郎「まずいッ!?」
二人の危機に弦太郎が傍まで駆けつけ、まずはフィリナの手を握るが、
逃げ惑う観光客の群れによる混乱に巻き込まれ、光平に近づけない。
そうこうしているうちに、光平はエレファントオルフェノクに蹴り飛ばされて
展望台のガラス窓を突き破って外へと放り出されてしまった。
弦太郎「しまった!」
フィリナ「光平ッ!!」
光平「うわあああッッ!!!」
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***同タワー 非常階段***
なんとか非常階段へと逃げ込んだ静弦太郎とフィリナ。
しかしフィリナは元来た方向へと戻ろうとする。
フィリナ「放して! 光平が…! 光平が…!」
弦太郎「諦めろ! あの高さから落ちたらもう助からんッ!」
フィリナ「――!!」
自分を引き留める弦太郎の言葉に、
思わずフィリナは激昂して平手打ちをお見舞いしてしまう。
弦太郎「………」
フィリナ「ごめんなさい……」
フィリナはすぐに我に返って冷静さを取り戻し、
弦太郎に謝罪する。
弦太郎「気にするな。女に殴られるのは慣れっこだ。
それにしても本当に家族として愛しているんだな。
あの光平っていう坊やのことが」
フィリナ「ええ、そうよ。私が子供の頃から大好きだった、
まだ何も知らなかった幼い私に広い世界の事をいろいろと
教えてくれた大切な叔母様の忘れ形見…。それが光平よ。
もし光平の身にもしものことがあったら、私は天国にいる
叔母様に顔向けが出来ない」
弦太郎「そうだったのか…」
フィリナ「光平はきっと無事よ」
弦太郎「そう信じたい気持ちはわかるがな…」
フィリナ「いいえ、光平はきっと大丈夫だわ」
弦太郎「………」
その時、タワー全体が激しく揺れるのが感じられた。
弦太郎「なんだこれはいったい!?」
1455
同タワー 地上・正面入り口近く***
地上に落下した光平は、先に地上へと避難していた慎哉と優香と合流した。
優香「光平くん!」
慎哉「光平! フィリナさんは!?」
光平「わからない…。途中ではぐれて見失ってしまったんだ」
慎哉「なんだって! お前がついていながら!!」
光平「あの静弦太郎って人が一緒だから大丈夫だと思う」
その時、地面が激しく揺れた!
優香「地震…?」
それは地震ではなかった。大きな影が東京エネタワーに抱きつくように
張り付いている。幻兵団の怪獣ロボット・ザイラユニコンがエネタワーを
揺らしているのだ。
慎哉「か、怪獣ッ!?」
光平「フィリナを助けに行く!!」
ようやく変身のタイミングを掴んだ光平はシグフェルにその姿を変えると、
ザイラユニコンに向かって飛翔し立ち向かっていく。
しかしそれこそが策士キャプテン・ゴメスの罠だった!
ゴメス「今だ! やれッ!!」
森林緑地の陰に隠れて待機していた幻兵団の伏兵数人が、
ゴメスの指示を合図に一斉にシグフェルめがけてバズーカ砲のような砲筒から
特殊ゴムネット弾を複数発射する。
シグフェル「…な、なんだこれは!? うわあああっっ!!!」
シグフェルは身体をネットに絡め取られ、地上に落下してしまう。
シグフェル「くそっ、こんなもの!!」
シグフェルはネットを引き千切ろうとするが、まるで鳥黐(とりもち)のように
身体中にネットが粘着して思うように動けない。炎の力で焼き切ろうとしても、
結果は同じ事だった。
ゴメス「無駄だ。その特殊ネットは高温を吸収すればするほど強度が上がる仕組みになっている。
我々の誇る科学陣が君のデータを詳細に分析して、地道に研究を積み重ねた成果だよ」
シグフェル「誰だお前は!?」
ゴメス「はじめましてシグフェル。私はGショッカーのキャプテン・ゴメス」
シグフェル「Gショッカー…?」
"Gショッカー"と聞いて、この前のクロスランダーとの一件を思い出したシグフェル。
彼らは明らかに自分=シグフェルを捕えようとしていた。
そういえばあの大石秀人=ギョストマも、後から聞いた噂では
その目的はシグフェルを探し出すことにあったらしい。
かなり以前からGショッカーは自分を捕獲しようと機会を狙っていたのではないか…。
シグフェルはそんな嫌な予感に駆られた。
シグフェル「俺をどうするつもりだ!?」
ゴメス「君をこれからGショッカーへと御招待する」
シグフェル「イヤだ! 俺はGショッカーなんかには行かない!」
ゴメス「君に拒否権はない」
初めてシグフェルと直接言葉を交わし、その生の声を聞く機会を得たゴメス。
自分が想像していたのよりも意外に若く聞こえるその声色と口調に、
ゴメスには一つの疑問点が思い浮かんだ。
今までは"シグフェルはもっと年長の猛者"という先入観を知らず知らずのうちに
抱いていたが、実はシグフェルは意外に年少、もっとハッキリ言ってしまえば
10代の年頃の少年なのではないか…と。
よく考えてみれば、Gショッカーと敵対する宿敵
ブレイバーズの構成員に未成年者は珍しくない。
かつて自分を散々手こずらせた大鉄人ワンセブンのパートナー南三郎もまだ中学生であった。
これはシグフェルに対する考察を一から見直さなければならないかもしれないと
考えるゴメスであった。もっとも、ここで捕まえてしまえばどうでもいいことだが…。
ゴメス「運び出せ」
ショッカー戦闘員「イーッ!!」
配下のショッカー戦闘員たちにシグフェルを連行するよう命令するゴメス。
果たしてシグフェル=牧村光平の運命は!?
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○静弦太郎→スティングフィッシュオルフェノク、エレファントオルフェノクと交戦。フィリナを連れて脱出。
●スティングフィッシュオルフェノク→静弦太郎と交戦。
●エレファントオルフェノク→静弦太郎と交戦。
●ザイラユニコン→東京エネタワーを揺らす。
●キャプテン・ゴメス→巧妙に罠を貼り、特殊ネット弾でシグフェルを捕獲。
○牧村光平/シグフェル→東京エネタワーの中でフィリナとはぐれる。変身してザイラユニコンに立ち向かうが、
待ち構えていたキャプテン・ゴメスの罠にはまり特殊ネットの中に捕獲される。
○フィリナ・クラウディア・アルシャード→東京エネタワーの中で牧村光平とはぐれ、静弦太郎と共に非常階段に逃げ込む。
○朝倉慎哉→東京エネタワー地上の入り口近くで牧村光平と合流。
○沢渡優香→東京エネタワー地上の入り口近くで牧村光平と合流。
最終更新:2020年11月26日 10:37