本編1484~1487

『砂漠の姫の来日』-10

 作者・ティアラロイド
1484

羽田空港・国際線ターミナル***


あれから数日後、フィリナが無事に離日する日がやって来た。
先日に手傷を負った腕に包帯を巻いている光平は、
慎哉や優香と共にロビーまで彼女を見送りに来ていた。

慎哉「なんかあっという間だったよなあ~」
フィリナ「いろいろと大変だったけどね(苦笑。
 ごめんなさい光平、大して役に立てなくて…」
光平「そんな気にしなくていいよ。
 久しぶりにフィリナの元気な顔が見られただけで
 大分気が晴れたしな」
フィリナ「なら、いいたんだけど…」

フィリナは従弟の光平の事が心残りなのか
心配そうな表情で彼を見つめる。そこへ
静弦太郎と霧島五郎、そして藤森典子がやって来た。

弦太郎「よぉ! もうフランスに帰るのか?」
フィリナ「あら弦太郎さん♪」
優香「この前はお世話になりました」
弦太郎「なあに、いいって事よ。
 そっちの坊主はもう怪我の方はいいのかい?」
光平「ええ、おかげさまでこの通り――」

光平は"もう大丈夫"と言わんばかりに
腕を大きく振るが……。

光平「イテテテッッ…!!」
五郎「おいおい、あんまり無理しちゃいけねえよ」
優香「もうっ、光平くんったら大丈夫?」
光平「ごめんごめん、もう本当に平気だから…」

フィリナと光平たちの元気そうな姿を見届けた
弦太郎たちは去ろうとする。

弦太郎「じゃ、俺たちはこれでな」
フィリナ「あら、もう行っちゃうの?
 なんだか名残惜しいわ」
弦太郎「アンタが無事に日本から離れるのを見届ける
 ところまでが俺たちの任務だ。それが終われば
 また次の目的地に向かって旅立つだけさ」
フィリナ「またいつか会えるかしら」
弦太郎「さあな。縁があったらまた会おうぜ!」
典子「では皆さんもお元気で」
優香「こちらこそ、皆さんもどうかお気をつけて」

こうしてフィリナと光平たちは、静弦太郎たちと別れた。

1485

再び周囲には秘密を共有する者たちだけになったフィリナは、
光平に諭すように改めて話しかける。

フィリナ「ねえ光平、この際ブレイバーズに名乗り出て
 保護を求めてみてはどうかしら?」
光平「フィリナ…」
慎哉「いきなり何を言い出すんですかフィリナさん!」

フィリナからの提案に、光平たちは困惑の色を見せる。

フィリナ「あなたたちも静弦太郎さんたちの活躍ぶりを見たでしょう。
 ブレイバーズの人たちなら決して悪いようにはしないと思うわ」
光平「わかったよフィリナ。考えてみる」
フィリナ「勿論急いで結論を出す必要はないけど、
 よく考えてみて」

フィリナの言葉に頷く光平。
その後フィリナは光平たちの見送る中、
フランス行きの便に乗り無事に離日して行ったのだった。

一方こちらは、本来の目的地の関門海峡に向けて
再び旅を再開した静弦太郎一行である。

五郎「なあ弦の字、お前今何考えてる?」
弦太郎「五郎、やっぱりお前もそう思うか」
五郎「シグフェルの正体ってのは、やっぱり……」

地上150メートルの高さから落下しても無事だった事。
そして独立幻野党の怪獣ロボットと戦った現場にも
手傷を負って居合わせていたこと。
やはりシグフェルの正体は"あの少年"以外には考えられない。
五郎がそれに言及しようとしたところで
弦太郎がそれを制止するように遮る。

弦太郎「よせよせ、俺たちの今の任務は
 関門海峡のビルドベースに向かう事だ。
 シグフェルの正体探しなんかは
 他の奴らにでも任せとけ!」
典子「…え、なに? 二人とも何の話!?」
弦太郎「なんでもねえよ! そら急ぐぜ!」

弦太郎たち3人を乗せたジープは、
今日も青空の下を爽快にひた走るのであった。

ま~ぼろしのぉ~♪みどぉ~りもとめてぇ~♪


1486

ネロス帝国・ゴーストバンク***


ゴーストバンクの広間に置かれた台座の上に、
シグフェルの羽根を乗せてその前に跪くクールギン。
周囲を取り囲むネロス軍団員達からはどよめきにも似た声が漏れる。

クールギン「これがシグフェルの翼から切り取った羽根です。
 凱聖クールギンより、謹んで帝王にご献上申し上げます」
ゴッドネロス「うむ。これへ」

羽根を乗せた台座は秘書KとSの二人によって
ゴッドネロスの玉座の前へと運ばれた。
紅蓮色の羽根を手に取り、まじまじと見詰めるゴッドネロス。

ゴッドネロス「よくやったクールギン。
 これぞまさしくシグフェルの羽根…。
 早速、ゾルベゲール博士を主任とする科学班に引き渡し、
 解析に及ばん」
クールギン「御意」
ゴッドネロス「これで我が野望はようやく実現を見る…。
 よいか、スマートブレインを初めとして、
 他のGショッカー組織はシグフェルの謎を血眼になって追っておるが、
 我がネロス帝国がシグフェルの羽根を入手した事は、
 くれぐれも他言無用…。万が一にも情報を漏らした不埒者は、
 即刻、首を刎ねると覚悟せよ」
タグスキー&タグスロン「………」

反逆者の抹殺役を任されているタグ兄弟が
無言で剣と薙刀を構えると、他の軍団員達は一斉に慄いた。

ゴッドネロス「大手柄を上げたクールギンには、
 何なりと褒美を与えよう。何か望みのものはあるか」
クールギン「………」

クールギンは深く跪いたまま、しばし沈黙し、
やがてゆっくりと口を開いた。

クールギン「帝王のありがたきご配慮を賜り、
 我が身は既に過分の栄達に浴しておりますれば、
 これ以上、望むものなど何一つございませぬ。
 ただ帝王におかれましては、何とぞこれからもお変わりなく、
 帝王に粉骨砕身お仕えする忠義の軍団員らをご愛顧下さりませ。
 我が願いはそれだけにございます」
ゴッドネロス「ふむ…」

ロビンケン「さすがは我らの軍団長殿。
 このような時にあっても実に謙虚に、
 我々部下どもの身ばかりを考えて下さるとは」
ゲルドリング「何じゃいクールギンの奴、
 ええカッコしおって。
 ワシなら金銀財宝、山ほど頂戴するところやけどなあ」

クールギンの発言に、他の軍団員達は感銘を受けたり、
逆に嫌味に感じたりといった感想を漏らす。
だが当のゴッドネロスだけは、クールギンの真意を吟味するかのように
しばし黙ったまま、恭しく足元に跪くこの側近の姿を見詰めていた。

ゴッドネロス「フフフ…、よう分かった。
 そちも、これからも変わりなく励めよ、クールギン」
クールギン「は…ははっ!」

願いを快諾したゴッドネロスの言葉になぜクールギンが戦慄したのか、
その理由を知る者は誰もいない。
帝王ゴッドネロスと凱聖クールギン。
二人の胸に去来するものとは…?


 1487
○静弦太郎→フィリナの離日を見届けて、東京から離れる。
○霧島五郎→フィリナの離日を見届けて、東京から離れる。
○藤森典子→フィリナの離日を見届けて、東京から離れる。
●クールギン→シグフェルの羽根をゴッドネロスに献上。
●ゴッドネロス→クールギンからシグフェルの羽根を受け取る。

○牧村光平→羽田空港でフィリナを見送る。
○朝倉慎哉→羽田空港でフィリナを見送る。
○沢渡優香→羽田空港でフィリナを見送る。
○フィリナ・クラウディア・アルシャード→日本を離れる。

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最終更新:2020年11月26日 10:42