本編1537~1545

『タランチュラロードイーバ ビギニング!!』-2

作者・ホウタイ怪人
1537

金桃寺***


東京都昔野市の住宅街から少し離れた、郊外の雑木林が広がる高台に、
舞原このはの父・一馬が住職を務める金桃寺はある。
現在この寺の住人は、一馬、このは、火浦直気・真由の兄妹、
そしてダークノイドの女戦士から足を洗い、今はブレイバベースの
研究施設での仕事の傍ら、幼い火浦兄妹の面倒を見ながら
このはと共に家事に従事しているダー・ユンの5人である。

このは「ただいま…」
直気「………」
真由「………」

夕方になり、このはたちが生田山のピクニックから帰って来た。
3人とも目は虚ろであり無表情である。

一馬「なんでえ、遅かったじゃねえか。心配したんだぞ!」
ユン「このは、今日は私の代わりにすまなかった」
このは「いいえ…別に…」
ユン「……このは?」

本当は今日のピクニックは、ユンが直気と真由を連れて行く
予定だったのだが、尾村豪の恐竜ゴンの墓参りに同行する
急用が出来たため、このはが代わりに二人に付き添って
生田山へ出かけていたのである。
…だが、気の抜けたようなこのはの返事に、ふと違和感を覚えるユン。

このは「お夕飯できたわよ…」

ユンと共に食事の支度を始めたこのはだったが、
彼女が運んできた味噌汁は全く味がしなかった…。

一馬「なんだこりゃ!? おいこのは、きちんと出汁は入れたのか?」
このは「あら…ごめんなさい……」
直気「ごちそうさま…」
真由「真由ももういらない…」
ユン「待て。3人ともほとんど食事に手をつけていないぞ?」

このはも直気も真由も、食卓の上に並べられた皿には
ほとんど箸をつけないまま、一馬とユンが困惑する中、
その日はさっさと各々の寝室へと引きこもってしまった。

そして、時計の針は深夜の12時を回り、すっかり寝静まった夜…。

1538

プラノドン「これから面白い事が始まるぞ!」

金桃寺の境内へと侵入したプラノドンは、就寝中のこのはを襲った。
驚いてベットから飛び起きるこのは。

このは「あ、あなたは…!?」
プラノドン「ァア―!! ァア―!! 来るのだ。早く来い!」

プラノドンは命令電波を発して、パジャマ姿のこのはを苦しめる。

このは「い、いや……いやあ!」
プラノドン「俺の命令に背くと、どうなるかわかったろ!?」
このは「お願い…やめて。気が狂いそう…!」
プラノドン「お前は今から俺の言うとおり行動しろ!
 わかったか!!」

このはを服従させることに成功したプラノドンは金桃寺を後にすると、
直ちに次のターゲットのいる場所へと向かう。


天使更生組合・事務所前***


プラノドン「次のターゲットのいる場所はここか!
 クォークォー、クォーォッ!!」

そこは天使更生組合と呼ばれる、古びた旧劇場跡を再利用した建物に
入居している芸能事務所であった。そこには宮坂瑠璃と共に生田山で
Gショッカーの陰謀に巻き込まれた鷲崎つばさが、兄・飛翔や
合宿所管理人を務める母・まりえと共に暮らしていた。

1539

そして翌朝…。

金桃寺***


桃矢「ここに来るのも久しぶりだな」

仮面ライダーディケイドこと門矢士の協力を得て、
異世界エターナリアでの戦いにも一区切りがついた
神城桃矢と仲間たちは、一時的な里帰りの意味で
地球-エターナリア間を結ぶディオドスシステムのゲートを通って、
再びここ金桃寺へと帰って来た。

彼ら――特に神城桃矢と金剛煌にとっては、
まさに愛する人の待つ帰るべき家である。

煌「このはちゃん、いきなり僕の顔を見て腰抜かさないかな…」
桃矢「今更何言ってんだよ煌。煌が生き返った事は
 内緒にしといて、当日にサプライズでびっくりさせて
 やろうってみんなで話し合ったじゃんか?」
煌「それはそうだけど…」

一度戦死した金剛煌がエターナリアの地で"黄泉がえった"事は、
実はまだ金桃寺には連絡していない。このはたちを驚かしてやろう
という桃矢とテディアムの提案によるものであるが、
当の本人である煌は何やら不安そうである。

ビークウッド「でも気をつけてください煌。今地球では、
 黄泉がえり現象で復活した再生者(リザレクター)を狙う
 イーバと呼ばれる怪物が出没しているそうです」
煌「その話なら僕も聞いたよ。でも僕もあの世で界王さまの元で
 それなりに修行して力をつけたからね。決してみんなの
 足手まといになったりはしないよ」
桃矢「イーバだかネバネバだか知らねえけどよ、
 たとえどんな奴が現れたとしても俺が叩き潰してやるよ!
 決して二度と煌を死なせやしねえ!」
煌「ありがとう、桃矢くん♪」
桃矢「ま、まあな…(///)」
ガリエル「大将、なに赤くなってんだ?」
桃矢「うるせえ!!」

桃矢たちが五十段ほどの石段を登って寺門をくぐると、
小さな境内が広がり、老朽化した本堂が立っている。
懐かしい金桃寺の景色だ。
そこで一馬和尚やダー・ユンとの再会を果たす桃矢たち。
生き返った金剛煌の姿に一馬たちが驚いたのも束の間、
彼らはどうも浮かない顔をしている。

ビークウッド「どうしたのですかご住職?」
一馬「実はな…」

昨日の一部始終を桃矢たちに話して聞かせる一馬とユン。
このはと直気と真由の三人は、昨夜からずっと自室に
引き籠ったまま出て来ないらしい。

桃矢「このはが!?」
煌「行ってみよう!」

1540

桃矢と煌は話を聞き、すぐにこのはの部屋へと踏み込んだ。

このは「………?」
桃矢「このは…」
煌「や、やあ…このはちゃん、久しぶり。
 元気だった?」

このはは桃矢はおろか煌の姿を見ても
全く驚く様子を見せないどころか
少しの反応すら示そうとしない。

桃矢「このはどうしたんだ!?
 ほら見ろよ! 煌が生き返ったんだぞ!
 帰って来たんだよ!」
このは「フフフ……」
煌「このはちゃん!?」

いきなり不気味な笑い声を上げ始めるこのは。
なんと彼女は机の引き出しから拳銃を取り出し、
あろうことかその銃口を桃矢と煌に向けたのである。

桃矢「このは、そんな物いったいどうしたんだ!?」
煌「やめてこのはちゃん!!」

このは「…うっ!?」

突然その場に倒れ伏すこのは。
彼女に気づかれないように背後に回ったグレイファスが、
後頭部を打って気絶させたのである。

煌「助かったよグレイファス」
グレイファス「別の部屋にいた直気と真由も、
 やはり彼女と同じ症状だった」
テディアム「いったいどこのどいつがこんな真似を…」

ぐったりと床に横になり目を閉じているこのはを
心配そうに抱き抱えながら見守る桃矢。

桃矢「このは…」
このは「………」

そして金桃寺の本堂では、小さく不気味な蜘蛛が一匹、
まるでこちらの様子を覗き見するように
屋根から一本の糸を垂らしてぶら下がっていた。

謎の小蜘蛛「………」

1541

一方、その頃……。

天使更生組合***


真琴「皆さん、ご無沙汰しています」
DB「お邪魔します」
疾風「うわあーまこぴーだ! ホント久しぶり♪
 さあ上がって上がって♪」

大型LIVEイベントを目前に控えた
人気絶頂のアイドルグループANGELの陣中見舞いに訪れたのは、
おなじく飛ぶ鳥を落とす勢いの人気アイドル・剣崎真琴と
その敏腕マネージャー・DBである

DB「これはつまらない物ですが」
電光「これはおおきに」
玲子「せっかくだからみんなでお茶にしましょう」
真琴「そんなお気づかいなく」
疾風「いいから遠慮しないで♪」

DBから風呂敷に包まれた菓子折を受け取る、
ANGELメンバーの一人でお笑い担当の鷹城電光。
事務所の社長である天賀井玲子は、
メンバーたちにお茶の用意を指示する。

真琴「…で、その後どうなんですか?
 例のシグフェルの行方は」
DB「皆さんも毎日シグフェルの追跡任務に追われて
 さぞ大変でしょう」
電光「それが最近シグフェルもイーバの方も
 めっきり姿を現さんようになってしもうてな」
真琴「そうだったんですか…」
銀牙「何も起きないに越した事はない。
 おかげで我々もLIVEのレッスンの方に専念できる」
飛翔「真琴ちゃんたちプリキュアも、
 今は神様の神殿で修行に励んでいるんだろ?
 そっちの方こそ大変じゃないのかい?」
電光「さぞかし鬼のような怖い監督に
 シゴかれてるんとちゃうか?」

電光が両手の人差し指を角に見立てて
ジャスチャーをしながら心配する様子を見せる。

真琴「いいえ、確かに戦闘訓練は厳しいですけど、
 ベジータさんもトランクスさんも熱心に指導して
 くれています。だから私たちも頑張らなくちゃ」
電光「健気やなあ~」

電光は腕を組んで、目を閉じながら
大げさに頷き感心する。

1542

鷲崎飛翔らANGELメンバーと剣崎真琴…。
実はお互いの正体が、ライディーンとプリキュアである事は
ブレイバーズが設立されるかなり以前から双方共に知っている。
それだけ実は両者は付き合いが長い。

故郷・トランプ王国がジコチューに攻め滅ぼされ、
次元を超えて地球へと命辛々逃げて来たキュアソードと妖精ダビィ。
全く未知の土地で路頭に迷っていた彼女らに救いの手を差し伸べたのが
天使更生組合の社長・天賀井玲子であった。
まだ右も左も分からなかった真琴とダビィに芸能界でのイロハを教え、
アイドル歌手「剣崎真琴」のデビューを後押ししたのは、
他ならぬ天賀井玲子と彼女の事務所に所属している
ANGELのメンバーたちだったのである。

その後、ドキドキ!プリキュアチームの活躍と奮戦により
ジコチューから解放されたトランプ王国は共和制へと移行し、
地球連邦政府とも正式な国交を結んでいるのはご存知の通り。
真琴にとって「天使更生組合」はまさに恩人とも言うべき存在なのだ。

瑠璃「………」
つばさ「………」

宮坂瑠璃と飛翔の妹・つばさが、先程の菓子折りの中身を開けて器に載せ、
全員分のお茶と一緒にテーブルに運んできた。

真琴「あ、瑠璃さん、いらしてたんですか?」
瑠璃「いらっしゃい……」

瑠璃は真琴に対して素っ気ない返事をする。
その両目は虚ろであり、それは彼女の横にいるつばさも同様だ。
不審に思ったDBは、飛翔たちにそっと耳打ちして尋ねる。

DB「どうしたの瑠璃ちゃん?」
飛翔「それが昨日からずっとあの調子なんだ…」
疾風「きっと飛翔さんが昨日のデートの約束を
 ドタキャンしたからまだ怒ってるんだよ」

疾風が澄ました顔で言う。

飛翔「だってそれはしょーがないじゃないか。
 おい瑠璃、いくら怒ってるからって
 真琴ちゃんにまで冷たい態度取ることないだろ!」
真琴「やめて飛翔さん、今はそっとしておいてあげないと…」
飛翔「うむぅぅぅ……」

1543

真琴に宥められて一旦は引き下がる飛翔。
気を取り直し、茶碗に手を伸ばしてお茶を飲もうとする。

瑠璃「………」
つばさ「………」

なぜかさっきからその様子をじっと押し黙ったまま
注目している様子の瑠璃とつばさ。
そのただならぬ視線に気が付き、イヤな予感が脳裏を走った
真琴とダビィは慌てて飛翔たちがお茶を口にするのを寸前で制止した。

真琴「飛翔さん、みんな、そのお茶を飲んじゃダメ!!」
飛翔「えっ…?」

DBがすく側にいた疾風から茶碗を取り上げ、
中のお茶の匂いを鼻で嗅ぐ。

DB「間違いないわ! このお茶の中には毒が入っている!」
エース「まさか!?」

いきなりの展開に信じられないといった表情の飛翔たち、
だが次の瞬間、瑠璃とつばさは台所から包丁を持ち出し、
奇声を発して暴れ出した!

瑠璃「うわああああっ!!!」
つばさ「わあああああっ!!!」

飛翔「やめるんだ瑠璃! つばさ!」
疾風「いったいどうしちゃったの二人とも!?」
エース「取り押さえるんだ!!」

已む無く瑠璃とつばさの二人から包丁を取り上げ、
当て身で気絶させる飛翔たち。

玲子「真琴ちゃん、ダビィ、おかげで助かったわ…」
真琴「いえ、でも…」

真琴とDBは、気を失っている瑠璃とつばさを心配そうに見つめる。

飛翔「いったいどうしてこんなことに…」
エース「とにかく、今は二人を病院に運ぶんだ」

瑠璃とつばさの二人を抱えて病院へと運ぶ飛翔たち。
その様子を、天使更生組合事務所のガラス窓の向こう側から、
一本の糸を垂らした小さな蜘蛛が窺っていた。

謎の小蜘蛛「………」

1545

○神城桃矢→金桃寺に里帰り。舞原このはと再会するが、彼女に襲われる。
○金剛煌→金桃寺に里帰り。舞原このはと再会するが、彼女に襲われる。
○グレイファス→金桃寺に里帰り。洗脳された舞原このはを取り押さえる。
○ビークウッド→金桃寺に里帰り。
○ガリエル→金桃寺に里帰り。
○テディアム→金桃寺に里帰り。
○舞原このは→怪鳥人プラノドンの洗脳電波で操られる。
○火浦直気→怪鳥人プラノドンの洗脳電波で操られる。
○火浦真由→怪鳥人プラノドンの洗脳電波で操られる。
○舞原和馬→様子が豹変した舞原このはたちの様子に困惑。
○ダー・ユン→様子が豹変した舞原このはたちの様子に困惑。
○鷲崎飛翔→様子が豹変した宮坂瑠璃たちの様子に困惑。
○エース羽田→様子が豹変した宮坂瑠璃たちの様子に困惑。
○鷹城電光→様子が豹変した宮坂瑠璃たちの様子に困惑。
○鳥飼銀牙→様子が豹変した宮坂瑠璃たちの様子に困惑。
○大鳥疾風→様子が豹変した宮坂瑠璃たちの様子に困惑。
○天賀井玲子→様子が豹変した宮坂瑠璃たちの様子に困惑。
○宮坂瑠璃→怪鳥人プラノドンの洗脳電波で操られる。
○鷲崎つばさ→怪鳥人プラノドンの洗脳電波で操られる。
○剣崎真琴→天使更生組合の事務所に、LIVE前の陣中見舞いに訪れる。
○DB→天使更生組合の事務所に、LIVE前の陣中見舞いに訪れる。
●怪鳥人プラノドン→舞原このはや宮坂瑠璃を洗脳電波で操る。
●???→金桃寺や天使更生組合での様子を監視している。

【今回の新規登場】
○舞原一馬(獣戦士ガルキーバ)
 舞原このはの父で、金桃寺の住職。
 神城桃矢とアニマノイド三戦士を寺に居候させる。
 ピークウッドとはいい漫才コンビである。
 かつては軍の特殊部隊の一員であったらしい。

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最終更新:2020年12月03日 08:07