『包帯男のシグフェルリポート』-1
作者・ホウタイ怪人
1646
豊洲住宅街・朝倉家***
コルベット准将配下の連邦軍の攻撃から辛うじて逃れたシグフェルと朝倉慎哉は、
なんとか無事に自宅へと戻って来た。闇夜に紛れて2階のベランダから部屋の中へと舞い降りる二人。
シグフェルが変身解除して牧村光平の姿に戻った瞬間、先程受けたダメージのせいか
部屋の隅々にシグフェルの翼の羽毛が舞い散る…。
光平「うっ……」
一瞬、よろめいてしまう光平。
慌てて慎哉が肩を貸して支える。
慎哉「光平、大丈夫か!?」
光平「この程度、なんともないよ」
慎哉「……ごめん」
光平「…?? なんで慎哉が謝るんだよ」
慎哉「…俺、あの場で結局、体が震えて何も出来なかった」
光平「なんだ、そんなことか。あの状況なら当然だよ。
それよりも俺のために今日みたいな無茶はしないでくれ」
慎哉「光平……」
こうしてその日は夜が明けた。
そして翌朝…。
海防大学付属高校・校門前***
その日もいつもと変わらぬ登校風景である。
今朝も普段通り登校してきた光平と慎哉は、
校門前で同じく登校してきた沢渡優香と会う。
優香「あっ……」
光平「あっ、優香、おはよう!」
慎哉「おはよう沢渡」
優香「う、うん…おはよう二人とも」
なんとなく朝からどこかぎこちない3人である。
優香「…ねえ、昨日はどうだったの?」
慎哉「どうもこうもないよ!
ブレイバーズの奴ら、
光平を騙して罠に掛けやがって!」
優香「…どういうこと?」
光平「……ごめん、後で詳しく話すよ。
今は教室に急ごう」
優香「うん…」
玄関の下駄箱で靴を履き替え、教室へと向かう3人だったが…。
優香「…あのね光平くん!」
光平「なんだ?」
優香「ううん…ごめんなさい。なんでもないわ」
光平「……??」
優香は昨夜、月野うさぎがセーラームーンに変身した瞬間を
目撃してしまった事を、未だに光平たちに言い出せずにいるのだった。
1647
日本海溝・ブレイバーベース***
剣持「これまでシグフェルが出現した場所を
嗅ぎまわっている者がいるだと?」
バトルフィーバー隊のバトルジャパン=伝正夫少佐から、
近頃シグフェルが過去に現れた現場に出没しているという謎の人影について
報告を受けるレッドマフラーの剣持保中佐。
村中「いったい誰が何の目的で?」
伝「ハッキリと姿を見た者もいないんだが、
誰かがかなり執拗に、それも密かに嗅ぎまわっている
事だけは確かなんだ」
剣持「気になる事はハッキリさせた方がいい。
我々でも探ってみよう」
ホウタイ怪人のアジト***
ホウタイ怪人「背は高く、脚は長い。瞳は翠色…」
Gショッカーに名を連ねる悪の組織の一つ、教祖サタンエゴスを唯一神と崇め、
世界に混乱をもたらす事を目的とするカルト集団である秘密結社エゴスの
地下に建設された最新科学捜査の研究施設である。
ヘッダー「見よ! 神子は足形からだけでも、
あれだけのことが割り出せるのだ!」
ゴメス「………」
ガラス越しに採取した試料の分析作業の様子を見学しながら、
エゴスのヘッダー指揮官より説明を受けるキャプテンゴメス。
エゴス一の鑑識術の達人であるホウタイ怪人は、
過去のシグフェルの出現場所から石膏を流して足形を採取し、
他にも現場に落ちていた髪の毛などのDNAが判別できそうな
試料を幾つも入手して、分析作業を進めていたのだった。
ホウタイ怪人「これでシグフェルに関するデータは全て揃ったぞ!
詳しい特徴はこのファイルを見ろ」
ヘッダー「ハ、ハハーッ!!」
ホウタイ怪人から渡された分析報告書に目を通す、
キャプテンゴメス、ヘッダー指揮官、女幹部サロメ。
サロメ「シグフェルは一人よ。どうしてデータが3人分もあるの?」
ホウタイ怪人「シグフェルには2人仲間がいる」
ゴメス「ほう、それは興味深い話ですな」
ホウタイ怪人「おそらく3人とも高校生。しかも全員、メガロシティにある
海防大学付属高校に通っている生徒だ」
ヘッダー「…海防大学付属高校?」
ゴメス「その学校であれば我々の方でも
前々からマークしていた。どうやらこれで決まりだな」
ヘッダー「すばらしい! これで今度こそシグフェルの正体が暴けるぞ!」
1648
サロメ「フン、手間のかかる話ね。
その海防大学付属高校に在籍している生徒の
人数だけで何百人いると思ってるの?
それを今から一人一人調べるのかしら」
ゴメス「いや、そこまで絞り込めれば充分だ。
700人もいる生徒の中でも、瞳が翠色をしている
人間など、そう何人もいない筈だからな。
ところでホウタイ怪人殿、その前に一つだけ確認して
おきたいことがあるのだが?」
ホウタイ怪人「なんだ?」
ゴメス「貴殿はその昔、バトルフィーバー隊の正体を
見事に暴いて見せた時に、バトルケニアこと曙四郎は
若いうちに頭髪が薄くなると断言されたそうですな?」
ホウタイ怪人「いかにも間違いはない!」
ゴメス「しかし私の知る限り、近年になってゴーカイジャーの前に
姿を現した曙四郎の頭髪はフサフサしていたぞ。それをどう説明
されるのですかな?」
ホウタイ怪人「…うっ!! そ、それは!?(汗」
一瞬言葉に詰まったかに見えたホウタイ怪人だったが、
すぐにクスクスと笑いだした。
ホウタイ怪人「クククク…」
ゴメス「何がおかしいのかね?」
ホウタイ怪人「このホウタイ怪人のプロファイリングに隙はない!
こちらのファイルにも目を通してみろ」
ホウタイ怪人は、自分の鑑識の腕に疑念を示したゴメスに
もう一冊分の報告書ファイルを手渡した。
ゴメス「…こ、これは! カツラ会社の顧客名簿リスト!?
確かに曙四郎の名前がある!」
衝撃の事実発覚! 現在のバトルケニア=曙四郎はヅラだったのだ!!
ゴメス「これは恐れ入った。確かに貴殿の鑑識と推理の腕に
間違いはないようだ」
ホウタイ怪人「分かればいいのだ!」
ヘッダーは戦闘兵士カットマンたちに指示を出す。
ヘッダー「直ちに海防大学付属高校とその周辺に
偵察網を張り巡らせるのだ!
ブレイバーズの連中には
くれぐれも気付かれぬようにな」
ホウタイ怪人「俺も直接現場に出向いて指揮を執る!」
1649
その日から、海防大学付属高校の周辺には、
強面の風貌をした怪しげな男たちが
カメラを片手にうろつくようになった。
全員がエゴスのカットマンの変装だ。
道を通りかかる生徒を一人一人下調べするように
じっと睨んでいて、いかにも薄気味悪さが滲み出ている。
光平「………(こいつら…いったい何者なんだ?)」
光平も不審な様子に気付きつつも、素知らぬフリをして
そのまま無言で男たちの前を通り過ぎる。
警官A「コラッ、君たちこんなところで何をやっている」
警官B「学校の近くに不審者が数人いるとの通報を受けた。
ここは生徒たちの学び舎だ。速やかに退去しなさい!」
学校の教職員からの通報を受けたパトカーがやって来て、
男たちを学校の周辺から追い払う。その様子を物陰から
見ているホウタイ怪人とサロメ。
サロメ「神子、いかが致しましょう?」
ホウタイ怪人「今ここで騒ぎを起こすのはマズイ。
警察を学校から引き離してくれ」
サロメ「ハハッ!」
サロメの指示で、人間の姿から元に戻ったカットマンたちが、
今度は裏口から学校の敷地内に潜入しようと試みるが、
壁伝いによじ登ろうとしたカットマンたちめがけて
バトルフィーバー隊のコマンドバットが投げつけられた!
カットマンA「うわああっ!?」
カットマンB「わあああっ!!」
侵入に失敗し地面に落ちるカットマンたち。
そして校舎のベランダにはエゴスの作戦を阻止せんとする
バトルフィーバーJの雄姿があった。
バトルジャパン「おいサロメ! シグフェルの正体を暴こうったって
そうは行かないぞ!」
ミスアメリカ「秘密の戦士の素顔を教える訳にはいかないわ!」
サロメ「おのれ~! シグフェルの正体を知りたがっているのは
お前たちだって同じだろうに! やれ~っ!」
1650
バトルコサック「たぁーっ!!」
バトルフランス「とりゃ!!」
バトルケニア「おらよっと!!」
次々と襲いかかるカットマンの群れを難なく薙ぎ払っていく
バトルフィーバーの5人。
ホウタイ怪人「ふはははは~!!」
校舎屋上に立ってバトルフィーバー隊を威嚇する
黒ずくめの包帯男=ホウタイ怪人。
バトルジャパン「ホウタイ怪人、やはり貴様だったか!」
ホウタイ怪人「久しぶりだなバトルフィーバー!
今日のところはほんの挨拶代わりだ!
俺はエゴス一の鑑識の名手! 謎のヒーロー・シグフェルの正体、
必ずこの俺様が突き止めて見せるぞ!!」
まるで勝ち誇るような不気味な笑い声と共に、
ホウタイ怪人はその場から姿を消したのだった。
バトルコサック「どうするジャパン?」
バトルジャパン「過去に俺たちの正体を暴いた実績のある、あのホウタイ怪人だ。
ついに奴が自らシグフェルの正体探しに乗り出してきたとなると、
これはいよいよ油断はできなくなったな…」
ミスアメリカ「時間がないわね…」
外での騒ぎを聞きつけた生徒たちにも動揺が広がる。
男子生徒A「なんだなんだ?」
男子生徒B「いったいどうしたんだ?」
女子生徒A「すぐ近くで
ブレイバーズとGショッカーが戦っていたみたいよ」
男子生徒C「スゲー! 俺も見に行きたかったなあ!」
教師A「君たち、警察の方からもう騒ぎは収まったとの連絡がありました。
すぐにそれぞれの教室に戻りなさい!」
光平「………」
ついに学校の周辺にまで、
ブレイバーズとGショッカー双方の手が伸びて来た。
その事に動揺を隠せぬ光平であった。
光平「いったい俺はこれからどうしたらいいんだ…!
もし俺のせいで学校のみんなまで巻き込む事になったら…。
教えてくれ、父さん…! 母さん…!」
つづく…。
1651
○剣持保→伝正夫から、これまでのシグフェルの出現現場に出没する謎の人影について報告を受ける。
○村中隊員→伝正夫から、これまでのシグフェルの出現現場に出没する謎の人影について報告を受ける。
○伝正夫/バトルジャパン→海防大学付属高校近くでエゴスと戦闘。
○バトルコサック→海防大学付属高校近くでエゴスと戦闘。
○バトルフランス→海防大学付属高校近くでエゴスと戦闘。
○バトルケニア→海防大学付属高校近くでエゴスと戦闘。
○ミスアメリカ→海防大学付属高校近くでエゴスと戦闘。
●キャプテンゴメス→秘密結社エゴスのホウタイ怪人に、シグフェルの正体割り出しを依頼。
●ヘッダー指揮官→キャプテンゴメスにホウタイ怪人の能力を説明する。
●女幹部サロメ→ホウタイ怪人と共にシグフェル捕獲作戦の現場指揮を執る。
●ホウタイ怪人→シグフェル捕獲作戦の現場指揮を執る。
○牧村光平/シグフェル→
ブレイバーズとGショッカーの手がいよいよ学校周辺にまで伸び、激しく動揺する。
○朝倉慎哉→シグフェルが
ブレイバーズに騙し打ちされたと憤慨している。
○沢渡優香→偶然見てしまったセーラー戦士たちの正体を、牧村光平たちに今も言い出せずにいる。
【今回の新規登場】
○神誠=二代目バトルコサック(バトルフィーバーJ)
初代バトルコサックである白石謙作の国防省での先輩。
国防省兵器研究所の研究員として三村教授の助手を務めていた。
謙作の殉職を受けて、強化服を引き継ぎ二代目バトルコサックとなる。
無口だが、行動力を備えた男。
○汀マリア=二代目ミスアメリカ(バトルフィーバーJ)
アメリカ国籍を持つFBI捜査員。負傷して帰国したダイアン・マーチンの
後任として二代目ミスアメリカとなる。変装術にも長けている、行動派の女戦士。
●ヘッダー指揮官(バトルフィーバーJ)
秘密結社エゴスの大幹部。サタンエゴスの立案した作戦を実行に移す役割を担い、
本部内で部下たちに行動指示を与える。怪人誕生の瞬間に感極まって「おぉ~御子よ!」と
叫ぶのが決まり文句。卑怯もまた兵法とする武道「邪神流」の使い手でもある。
●女幹部サロメ(バトルフィーバーJ)
エゴスのアメリカ支部からヘッダー指揮官が呼び寄せた、自称「世界最強の美女」。
ヘッダー秘蔵の弟子でもあり、独自の犯罪組織を率いてアメリカ国内の数々の
暗殺事件の影で糸を引いていた。ペンタフォースを跳ね返してしまう程の
強靭な肉体を持つ。
●ホウタイ怪人(バトルフィーバーJ)
秘密結社エゴスの怪人で、足跡などから相手の身体的特徴を調べる事が出来る
鑑識の名手であり、現在で言うプロファイリングの天才。特殊な粘土を用いて
明少年の手から汀マリアの素顔を割り出した。武器の十字剣を巧みに操る。
最終更新:2020年12月03日 08:21