本編1728~1732

『シグフェル、新たなる戦いの始まり』-2

作者・ホウタイ怪人
1728

光平がブレイバーズの長期研修のため
朝倉家を離れて一週間ほど経過した…。
あれから連絡等は全くない。

慎哉「………」

慎哉が自室のパソコンで何やらハッキングして
熱心に何かを調べている。

慎哉「よしっ! わかったぞ!」
優香「これからどうするの?」
慎哉「決まってんだろ。光平の様子を
 直接見に行くのさ」

慎哉は今まで、光平が現在どこにいるのかを
あちこちに情報検索して調べていたのだ。
全ては光平の身を心配しての行動だった。
慎哉が優香を伴って一緒に自宅から外へ出て来ると、
玄関先の前では一台のパトカーが停まっていた。

チャック「よっ!」

優香「チャックさん…」
慎哉「………」

この付近を管轄しているメガロシティ署の刑事である
チャック・スェーガーと桂美姫の2人が、ずっと家の前を見張っていた。

慎哉「チャックさん、美姫さん……いや、これからは超音戦士ボーグマンと
 ファントムスワットの隊長さんとお呼びしましょうか?」
チャック「やれやれ、すっかり嫌われてしまったな」
美姫「黙っていた事は謝るけど、その件に関してはお互いさまよ」
慎哉「じゃあ、俺たちは急いでますんで、これで…」
チャック「どこへ行く?」
慎哉「ちょっと出かけて来るだけですよ」
美姫「光平君が戻って来るまで、あなた達の身に万一の事がないよう
 こっちはガードを固めてるのよ」
慎哉「余計なお世話です。自分の身くらい自分で守りますから。
 沢渡、さっさと行くぞ!」
優香「…え? あ、うん。チャックさん、美姫さん、
 私たちはこれで」

優香は申し訳なさそうにペコリとお辞儀をして、
慎哉と共にその場から去るが、チャックと美姫は
パトカーに乗り込んで尾行する。

慎哉「沢渡…」
優香「なあに?」
慎哉「次の曲がり角を右に入ったら走るぞ」
優香「…え!? あ、ちょ…ちょっと待って!!」

慎哉とは優香の右腕を引っ張り、急に走り出した。
そして右の角を曲がった時、もう2人の姿はどこにも
見当たらなかったのである。
あらかじめチャックたちの尾行を想定していた慎哉が、
事前に彼らの尾行をまくためのルートも下調べしておいたのだ。

チャック「しまった! どこにもいないぞ!」
美姫「やられたわね…」

1729

レッドマフラー隊・関東基地***


優香「いったいどうやって中に忍びこむの?」
慎哉「へへっ、任せとけって♪」

慎哉は持参して来た携帯端末から回線に繋いで、
あっさりと非常口のロックを解除して
まんまと基地内に潜入してしまう。

巡回の兵士たちに見つからないよう、
安全なルートを検索して訓練用グラウンドまで
辿り着いた二人が見たものは、年下の南三郎少年に
訓練でしごかれている迷彩服姿の光平の姿だった!

三郎「なんだそのへっぴり腰は!
 しっかり走らないか牧村隊員!」
光平「はい!!」

この光景を目にした慎哉と優香はびっくり仰天。

慎哉「あの教官、どう見ても中坊だろ!
 なんで光平があんな奴の言いなりになってんだ!」
優香「やっぱり光平くん、ブレイバーズの人たちから
 いじめられていたんじゃ…」
慎哉「だから俺は反対だったんだ!」

よりにもよって年下の少年から光平が
悪しざまに罵詈雑言を浴びせられている光景を見て、
慎哉は激しく憤慨。優香も心配そうな表情で様子を見つめる。
そこへ、たまたま通り掛かった海野隊員が…。

海野「コラッ君たち! こんなところで何をしている!」

優香「――!?」
慎哉「やべっ…」

◇    ◇    ◇

巡回中の海野隊員に見つかってしまった慎哉と優香。
ブリーフィングルームへと連れて来られた2人は、
案の定、剣持隊長からカミナリが落ちる。

剣持「君の友人でなければ、即座に不法侵入で
 逮捕するところだ!」
光平「申し訳ありません。責任は全て俺が取ります!」
慎哉「おい光平っ、もうこの人たちなんかに
 ヘーコラする必要なんかないぞ!」
光平「コラッ慎哉…。ここは俺がどうにかするから
 お前たちは黙って――」

騒ぎを聞いて驚いて駆けつけて来た光平は、
なんとかその場を取り繕うとするが……。

慎哉「これ以上お前が新人いびりされてる光景なんか
 見てられるか!」
優香「そうよ! あまりにもひどすぎます!」

慎哉と優香の猛抗議は収まらない。

1730

光平「新人いびりって……誰が?」

慎哉「え…?」( ゚д゚)ポカーン
優香「で、でも…! あの中学生くらいの男の子から
 ひどい言葉を浴びせられていたじゃない!?」

慎哉たちから「中学生」と言われて、光平にはそれが
南三郎少年の事を指しているとすぐに思い当った。

光平「ああ…三郎君の事か。確かに彼は俺より年下だけど、
 たとえ年少でも俺より遥かに経験豊かなベテラン戦士なんだ。
 ブレイバーズでは俺の先輩に当たるんだから当然だよ」
優香「でも……」
剣持「牧村隊員、君はたった今、ここにいる友人二人の
 不始末の責任を自分が取ると言ったな?」
光平「はい、確かに言いました」
剣持「では懲罰として、君に今からグラウンド50周を課す!」
慎哉「…ちょ、ちょっと待ってくれ!」
優香「悪いのは私たちです! 光平くんは何も悪くありません!」
光平「いいからここは俺に任せて、二人とも黙ってろ」

お互いに庇いあう光平と慎哉と優香。

剣持「では3人とも一人ずつ25周として軽減しよう。
 3人分合わせて合計75周だ。南隊員、君が最後まで
 しっかりと監督して見届けるんだ」
三郎「了解しました、剣持隊長!」
慎哉「………(コイツ、さっきの光平をいびってた中坊!!)」

◇    ◇    ◇

三郎「へえ…3人ともなかなかやりますね」

三郎が感心しながら見ている中、
光平たち3人がグラウンド25周を走り終えた頃には、
もう全員ヘトヘトになってその場に倒れ込んでいた。

慎哉「…ハァ…ハァ。こう見えても俺は運動部なんだ…!
 この程度大したことなんてあるか…! なめんなよ!」
優香「…ハァ…ハァ。私だって…ハァ…陸上部なんだから!」
光平「慎哉…優香……」

そこへ3人分のバスタオルを持って、佐原千恵と小野隊員がやって来た。

小野「シャワーの準備をしてあるわ」
千恵「せっかくだからそこの二人も汗を流して行きなさい」

1731

お言葉に甘える形でシャワーを借りた慎哉と優香が、
汗を流して着替えて出て来ると、ブリーフィングルームでは
さっきとは一転した驚きの光景が…。

光平「こんな簡単な問題も解らないのか!」
三郎「イテッ!!」

なんと光平が三郎の頭に拳骨を食らわしていたのである。
どうも光平が三郎の勉強を見てやっているらしいが…。

優香「…こ、これって!?(汗」
慎哉「いったいどうなっているんだ!?」

てっきり三郎が光平をいじめているものとばかり思い込んでいた二人は、
さっきとは光平と三郎の立場が逆転している様子に困惑している。
そこへクスクスッと笑みを浮かべながら、佐原千恵が話しかけて来た。

千恵「これで分かった? 光平君が決して"新人いびり"なんて
 受けていないってことが」
優香「いったいこれはどういうことなんですか!?」
千恵「それはね…」

千恵は、優香と慎哉の二人に事情を丁寧に説明した。
南三郎は13歳の時にブレイン党の攻撃で両親と姉を失い、
天涯孤独の身となった。その点では幼い時に両親を失った
光平とも境遇はよく似ている。

光平「ほら、ここの公式はこうやって解くんだよ」
三郎「あーなるほど、さすが光平さんだね♪」

三郎は、まるで実の兄が出来たかのように光平に懐いており、
また光平の方も可愛い弟のように三郎を可愛がっていた。
そしてこうして今も実の兄弟のように無邪気にじゃれ合いながら、
光平が三郎の学校の宿題を見てやっている。
二人は実は大いに仲が良かったのだ。

意外な展開に些か拍子抜けしながらも、
ひとまずは納得して帰路に着く慎哉と優香であったが……。

優香「よかった。光平くんが楽しくやっているみたいで…」
慎哉「…でも、なんかブレイバーズに光平を取られたみたいだよな?」
優香「………」

一応安心はしつつも、慎哉と優香の二人は
複雑な寂しい思いに駆られるのであった。

――その時、二人の頭上を、
何か飛行物体が通り過ぎたような気がした。

優香「……?」
慎哉「…なんだ今の?」
優香「自衛隊の戦闘機か何かかしら…」

◇    ◇    ◇

レッドマフラー隊の関東基地へと向かっている謎の飛行物体。
それは自衛隊や在日米軍の戦闘機などではなく、
国籍不明のモビルアーマーだった!

コクピットには、サラジアシークレットサービス所属の強化人間である
エージェントSSS8が操縦している。

SSS8「まもなく目的地の上空に到達する。攻撃準備…」

1732

○チャック・スェーガー →朝倉慎哉と沢渡優香の身辺をガードしていたが、尾行をまかれる。
○桂美姫→朝倉慎哉と沢渡優香の身辺をガードしていたが、尾行をまかれる。
○剣持保→基地内に不法侵入してきた朝倉慎哉と沢渡優香に激怒。
○南三郎→先輩戦士として牧村光平の訓練教官を担当。光平とは実の兄弟のように仲がよい様子。
○海野隊員→基地内に不法侵入してきた朝倉慎哉と沢渡優香を見つける。
○小野隊員→グラウンドを走り終えた牧村光平たちのために、シャワーを用意してあげる。
○佐原千恵→朝倉慎哉と沢渡優香に、牧村光平と南三郎が仲の良い事を伝える。

○牧村光平→ブレイバーズ新人隊員として研修中。
○朝倉慎哉→牧村光平の事が心配になり、レッドマフラー隊の基地に忍びこむ。
○沢渡優香→牧村光平の事が心配になり、レッドマフラー隊の基地に忍びこむ。
●エージェントSSS8→サイコガンダムに乗り、シグフェルのいるレッドマフラー隊基地を攻撃するため出撃。

【今回の新規登場】
●エージェントSSS8(闘争の系統オリジナル)
 サラジアシークレットサービス所属の工作員。強化人間であり、
 ティターンズから横流しされたMRX-009サイコガンダムの同型機を操る。
 その与えられた任務は、シグフェルこと牧村光平の抹殺である。
 戦闘訓練を受けたためか、格闘技のセンスもあるようだ。

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最終更新:2020年12月03日 08:35