『地球の騎士「天凰輝」誕生』-2
作者・ホウタイ怪人&ユガミ博士
1746
千葉・房総半島の海岸某所***
道着姿に着替えた光平は、海岸の岩の上で
静かに目を閉じて座禅を組み瞑想している。
光平「………」
キアイドーに完膚なきまでに打ち負かされた光平は、
生まれて初めて感じた死の恐怖を打ち勝つためには、
こうなれば自分の精神力で自分自身に勝つしかないと考え、
荒波が迫る中、一人で修行に励んでいた。
光平「やあぁぁぁっ!!!」
立ち上がった光平は木刀を手に持ち、
目の前の大きな岩に何度も繰り返し打ちかかるが、
岩はビクともしない。
光平「やっぱりダメだ……」
玄海「無駄じゃ!光平君」
光平「――!?」
光平が驚いて声がした方向に振り向くと、
そこには弟子の弁慶を伴った玄海老師の姿があった。
どうやらシグフェルがキアイドーに敗れたとの話を聞き、
わざわざ駆けつけて来てくれたらしい。
弁慶「………」
光平「玄海老師!? いつこちらへ?」
玄海「迷いの心で幾ら打ちつけたところで、その石は割れん!
かえって己自身の恐怖は増すばかりじゃ!」
光平「ではどうしたら!?」
玄海「ついてきなさい」
志葉邸***
玄海老師と弁慶に伴われて、光平がその足でやって来たのは、
武家屋敷風の広い邸宅だった。
彦馬「これは玄海老師、わざわざのお運び、
誠に恐縮にございます」
玄関先でこの家の執事か用人らしき
初老の和服に袴姿の男性が、礼儀正しく玄海らを出迎える。
玄海「ご当主の丈瑠殿はご在宅かな?」
彦馬「はい。只今ご案内いたします」
玄海「いやなに、気遣いは無用。勝手知ったる屋敷じゃ」
1747
光平「あの弁慶さん、ここはいったい…?」
弁慶「ここは江戸時代に、房総半島の内この地帯を治めていた大名で、
旧華族である志葉家のお屋敷だ。…と言っても、今のお前には
アヤカシ外道衆と戦った侍戦隊シンケンジャーの本部と言った方が
解り易かろう」
光平「ここが噂に聞いたシンケンジャーの……」
志葉家初代当主・烈堂は、クサレ外道衆の頭目・脂目マンプクを封印した功績を
徳川家康に認められ、今の千葉県北部の辺りを治める大名となった。
以来、志葉家は代々外道衆のアヤカシと戦い続ける宿命にある。
そういえば、自分の歓迎会の時にほとんどのヒーローたちと面識が出来た光平だったが、
あの時あの場で志葉家の当主の姿を見た覚えはない。その事を弁慶に尋ねると――
弁慶「ははは…志葉のご当主は、そういった賑やかな催しが
苦手だと聞いているからな」
光平「……???」
応接間で出された茶を飲みながら、この家の主が現れるのを待っていると、
一人の若い青年が姿を見せた。
丈瑠「玄海老師、お久しぶりにございます」
玄海「光平君、引き合わせよう。こちらは志葉家19代目当主・志葉丈瑠殿じゃ」
丈瑠「志葉丈瑠だ。よろしく」
光平「よ、よろしくお願いします!……(この人がシンケンレッド)」
玄海「相手が剣を使うのであれば、こちらも剣の使い手に
教わるのが一番じゃ」
ブレイバーズにも剣を武器に戦うヒーローは数多いが、
シグフェルは炎の剣フレアセイバーを武器としている以上、
同じく火を力にする剣士である丈瑠が特訓相手に選ばれたのは、
玄海老師の慧眼である。
丈瑠「俺との修練は厳しいが、覚悟はあるか…?」
光平「…覚悟はあります。俺に教えてください、丈瑠さん!」
丈瑠「その覚悟、確かに俺が預かった!」
林の中で互いに竹刀を構える丈瑠と光平。
丈瑠「一応、剣の心得はあるようだな?」
光平「小さい頃に沖縄の祖父に習って、少しかじったことがあります」
丈瑠「…なるほど。薩摩示現流か」
ちなみに光平の父方の祖父・靖臣は、江戸時代に琉球に移住した薩摩藩士の末裔である。
幕末においても、かの新撰組が何より恐れたのが薩摩藩士の操る示現流であった。
丈瑠「キアイドーのような強敵を相手にする真剣の立ち合いでは、
竹刀剣道のように振り回す剣法は役に立たない。
一撃必殺の打ち込みと気迫で勝負が決まる。
ひたすら気迫と一撃に鍛錬を極める示現流は、
正にそれに適している」
光平「はい!」
丈瑠「良し。そしてキアイドーに強力な一撃を加える為にも、お前には
自身の持つ火の力、キアイドーの剣の速さを凌ぐ速さを鍛えてもらう
必要がある。俺は技を教えるつもりは無い。だが、それらを鍛えれば
自ずと己の技が見えてくる筈だ」
光平「火の力に速さか・・・・・」
丈瑠「まずは速さを鍛える。さぁ、俺に打ち込んで来い!」
光平「行きます!タァ!!」
丈瑠に鍛えていく部分を教わった光平は丈瑠に剣を打ち込んでいく。
そして始まる丈瑠との修練は実に険しく、時には他のシンケンジャーを
相手に剣技を磨いていく。そしてその様子をそっと見守っている
サングラスの青年――地場衛の姿があった。
衛「………」
1748
ギガントホース・艦橋司令室***
一方、ザンギャックの旗艦であるギガントホースに帰還したキアイドーは
シグフェルを仕留めずに戻ってきた事をワルズ・ギルから責められていたが
キアイドーは気にせずケロッとしていた。
キアイドー「俺は、俺の流儀で仕事をするまでだ」
ワルズ・ギル「ぐぬぬ、貴様~!」
???「・・・その様な賞金稼ぎ風情に頼るからですよ、殿下」
ダマラス「何奴!?」
ワルズ・ギル達の前に現れたのは、1万年前最強の護星天使と謳われ
地球救星計画で地球を破壊し、新たに星を創り出そうとした救星主の
ブラジラだった。姿を現すと、ワルズ・ギルに膝をついて、頭を垂れる。
ワルズ・ギル「・・・・お前は確かブラジラとかいったな。何しに来た?」
ブラジラ「はい、殿下。この私めも殿下の配下にお加えいただく参上いたしました」
ダマラス「お待ち下さい殿下!こ奴は自分の目的の為に、様々な組織を利用してきた者。
信用されてはいけませぬぞ!」
自分を配下に加える様に言うブラジラだが、ブラジラが過去ウォースター、
幽魔獣、マトリンティスと様々な組織の一員となり、その裏で利用してきた
という経歴を知るダマラスはブラジラがワルズ・ギルの配下に加わる事に反対する。
ブラジラ「流石は皇帝アクドス・ギル様の懐刀で在らせられるダマラス参謀。
私の様な者を警戒されるのは至極同然。ですが、私もヒーローには恨みを
持つ身・・・・私を配下に加えて下さるのであれば、かならずやシグフェルを
討ち取ってみせましょう」
ワルズ・ギル「・・・・良し。ブラジラよ、お前を我が配下に加えてやろう。そして
キアイドーと共にシグフェルを倒して来い!キアイドーもそれで良いな?」
キアイドー「俺の邪魔をしなければ、構わん」
ダマラス「殿下!うぬぬ・・・殿下に妙なマネをすれば、その時は覚悟しろ!」
ブラジラ「かならずや、ご期待に副えましょう(・・・ふん、ザンギャックの力、
利用させてもらう」
ワルズ・ギルはブラジラを自分の配下に加える事を決め、反対していた
ダマラスもしぶしぶ承諾する。だが、ワルズ・ギルの配下に加わった
ブラジラは内心ではザンギャック帝国の力を利用しようと考えていた。
そしてキアイドーとシグフェルの再戦は刻一刻と近づくのであった。
1749
◯玄海老師→キアイドーに敗北した牧村光平に、志葉丈瑠を引き合わせる。
◯弁慶→玄海老師と共に牧村光平を志葉邸へ連れてくる。
◯志葉丈瑠→牧村光平に修練を積ませる。
◯日下部彦馬→牧村光平、玄海老師、弁慶を出迎える。
◯地場衛→丈瑠の下で修練を積む牧村光平の様子を見守る。
●司令官ワルズ・ギル→シグフェルを仕留めなかったキアイドーを責める。
そして救星主のブラジラを配下に加え、キアイドーと共に
シグフェルを始末するように命令を下す。
●参謀長ダマラス→ブラジラが配下に加わる事を反対するが、しぶしぶ承諾する。
●賞金稼ぎキアイドー →ワルズ・ギルにシグフェルを仕留めなかった事を責められる。
●救星主のブラジラ→ワルズ・ギルの配下に加わる。内心ではザンギャックの
力を利用しようと考えている。
◯牧村光平/シグフェル→キアイドーに敗北した為、1人修行に励んでいた所、
玄海老師によって、志葉丈瑠と引き合され、丈瑠から修練を課される。
【今回の新規登場】
●救星主のブラジラ(天装戦隊ゴセイジャー)
ウォースター、幽魔獣、マトリンティスといった様々な組織を渡り歩いた
ブレドランの正体。1万年前、幽魔獣を封印した最強の護星天使で
ゴセイナイトの本来の持ち主。人間を根絶やしにして汚れきった地球を
一度破壊し、新しい星を創る「地球救星計画」を画策し、そうして創った
星の「命を導く者」として君臨しようとしていた。ダークヘッダーを配下として
従えている他、様々な組織で活動していた「ブレドラン」を分身体として
呼び出す事が出来る。趣味はコスプレ。
最終更新:2020年12月03日 08:45