『天凰輝シグフェル、最初の事件』-2
作者・ホウタイ怪人
1770
メガロシティ・テームブロック***
その日の夜も、光平はテームブロックをパトロールしていた。
同じように雄大もしつこく光平を繰り返し尾行する。
雄大「やっぱり今日もここへ来てる!
今日こそシグフェルの正体を確かめてやる」
しばらく繁華街を見回りながら歩いていた光平だったが、
どこからか謎の声が聞こえた…
???「……(助けて!)」
???「……(誰か助けて!)」
光平「――!!」
光平にはシグフェルとしての超感覚能力で、
普通の人間には聞こえない声や音が聞こえるのだ。
光平「これは…!?」
声のする方向へと導かれるように、
人の少ない裏通りへと入り込んでしまう光平。
やがて長い間使われていないらしい倉庫のような場所へと辿り着いた。
倉庫の中には誰も人はおらず、代わりにマネキンだけが多数並べられている。
マネキンA「………」
マネキンB「………」
光平「人がいるような気配がしたんだけど、誰もいないのかな…?」
マネキンA「……(助けて)」
マネキンB「……(ここから出して)」
なんとマネキンの中から助けを求める声が聞こえる。
光平「まさか!? このマネキンの中から聞こえるのか!」
その時突然、今まで暗かった倉庫内部の照明がパッとついた。
ウォンゴット「見たなッ…!」
ケルベルス「何やら鼠が入り込んだようだな?」
光平「誰だ!?」
光平の前に現れた二人組の怪しい男。一人は頭部の一部が機械化されており、
そしてもう一人は頭にもう一つの小さい顔がある不気味な容姿をしていた。
他にも巨大なバッファローのような装甲に覆われた怪物も脇に控えていた。
光平「これはお前たちの仕業なのか!?」
ケルベルス「いかにもその通り! このバランダに生気を吸い取られた人間は
こうしてマネキンに変わってしまうのだ」
バランダ「グゥゥゥゥ…!!」
妖魔獣バランダは、人間の生気を吸い尽くすことによって、
やがて手のつけられないほどの怪物へと進化するという。
ウォンゴット「妖魔ブティックへようこそ。
お前もマネキンに変わるがいい! やれっ妖魔獣よ!」
光平「妖魔!? 今回の事件は東条寺の仕業じゃなかったのか…!」
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ウォンゴットとケルベロスに命令された妖魔獣バランダが光平に迫る!
ところがそこへダンボール箱が、バランダの行く手を阻むように
勢いよく投げつけられた。
雄大「光平先輩、逃げてください!!」
光平「雄大!?」
光平が妖魔に襲われようとしている現場を目撃した雄大は、
敵の注意を引こうと片っ端からそこら辺にある荷物を
必死に辺り構わず投げつける。
光平を助けようとして、勇気を振り絞っての行動だった。
ケルベルス「生意気な小僧め。バランダよ、やってしまえ!」
雄大「うわああッ!?」
光平「雄大ッ!?」
勢い勇んで出て来たものの、雄大はあっけなく
妖魔獣の触手のように伸びる舌に絡め取られ捕まってしまう。
雄大「…先輩ッ! 光平先輩ッ!!」
光平「……(どうする! 雄大のいる前じゃ
シグフェルに変身できない!)」
ウォンゴット「まずはこの小僧からマネキンに変えてくれる」
雄大「助けてええッ!!!」
光平「やめろオオッ!!!」
その時、どこからか手裏剣が飛んできて触手を切り裂き、
雄大は妖魔獣の拘束から解放された。
雄大「うわっ!?」
光平「――今のは!?」
一瞬だけ光平は、手裏剣の飛んできた方向のビル屋上に
女性らしき人影が見えたが、それはまずさておき、
雄大の手を引っ張って必死に逃げる。
光平「雄大ッ、とにかく今は逃げるぞッ! こっちだ!!」
雄大「あ、はいっ…!」
ケルベルス「くくくっ…逃げられると思っているのか?」
懸命に逃げる光平と雄大だったが、
やがてバランダに街区の一角の隅にまで
追い詰められてしまう。
雄大「行き止まり!? そんな…」
光平「くっ…!!」
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バランダに追い詰められる光平と雄大。
もはやこれまでかと覚悟したその時、
バトルランチャーの砲弾がバランダに炸裂した。
バランダ「グガァァァァ…!!」
光平「チャックさん!!」
雄大「チャック先生!…いや、ボーグマン!
来てくれたんですね!?」
光平と雄大の視線の先には、バトルランチャーを構える
ボーグマン=チャック・スェーガーの姿があった。
サイソニック学園の卒業生でもある雄大は、
かつての妖魔王との最終決戦において
チャックたちボーグマンの雄姿を当時間近で見ている。
チャック(ボーグマン)「二人とも怪我はないか!?」
光平「俺たちなら大丈夫です!」
雄大「――アッ!! 光平先輩、危ない!!」
光平「えっ!?」
バランダ「グオオオッッッ…!!!!!」
体勢を立て直したバランダが不意に放った猛火攻撃で、
哀れ光平と雄大は微塵となって消えてしまった?
雄大「うわあああッッ!!」
光平「ぐっ…!! うわあああッッ!!」
チャック(ボーグマン)「――しまった!?
光平ッ!! 雄大ッ!!」
◇ ◇ ◇
ここは、再び先程の倉庫である。
ウォンゴット「我ら妖魔は地球の覇権争いで
Gショッカーや妖怪帝国に後れを取ったが、
これでその差も取り戻せる!」
ケルベルス「地球はいずれ我ら妖魔の物となるのだ。
フハハハハ…!!!」
目撃者の光平と雄大の口を完全に封じたと思い込んだ
妖魔集団GILの幹部ウォンゴットとケルベルスは
アジトで祝杯をあげる。勝利の美酒に酔いしれる彼らだったが――
???「果たしてそれはどうかな?」
どこからかウォンゴットたちの悪事を咎める声が
エコーのように響いて来た。
ウォンゴット「…だ、誰だ!?」
ケルベルス「何者だ! 姿を見せろ!」
驚くウォンゴットとケルベルス。そして周囲に一瞬広がる紅蓮の炎…。
それこそは、この世の悪を焼き尽くす正義のしるしである!
颯爽とその姿を悪党たちの前に現す地球の騎士、その名は天凰輝シグフェル!
シグフェル「天、悪蔓延ればそれを滅する! 俺はお前たちを地獄の業火で裁く使者!
天凰輝シグフェルッ!!」
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ウォンゴット「………(汗」
ケルベルス「………(汗」
掛け声と共に派手なポーズを自信満々に決めるシグフェル。
ウォンゴットとケルベルスは、見てて唖然としている。
シグフェル「……(決まったぁ! これで悟飯さんにも褒めてもらえるぅ~!)」
一人で勝手に余韻に浸っているシグフェル。
思わず心の中でガッツポーズをしているww。
ケルベルス「なんだお前は…?」
ウォンゴット「天凰輝シグフェルだと? バカな! シグフェルといえば
噂に聞く神出鬼没のニューヒーロー。こんなところにいるはずがない!」
ケルベルス「なんだかよく分からんが構わん! バランダよ、
お前のパワーがどれだけ上がったか試してみるがいい!」
バランダ「グオオオッッッ…!!!!!」
シグフェルVS妖魔獣のバトルが開始された!
口から高熱の炎を吐き出すバランダだったが、
シグフェルはそれを涼しげに振り払う
シグフェル「俺に炎の攻撃は通じやしないぞ!」
ブレス攻撃が通じないと見るや、バランダはその巨体で
シグフェルめがけて突進してくる。
ケルベルス「いいぞバランダ! そのまま押し潰してしまえ!」
シグフェル「そうはさせるか! 一気に決めてやる!
――フレアセイバァァーッ!!」
バランダの突進を撥ね退けたシグフェルは、
右手に愛剣フレアセイバーを具現化させ、
示現流必殺の構えを取る!
シグフェル「――はぁぁぁぁ、<<火焔十字の舞(クロスプロミネンス)>>」
バランダの胴体に横へ一閃、さらにフレアセイバーを天高く
上へ突き上げると、そのまま縦に強力な一撃が加わる。
バランダの顔と胸には炎で燃える十字が刻まれた。
シグフェル「チェストォォ――ッッ!!!!!!!!!!」
フレアセイバーの必殺剣による一刀両断が見事に決まり、
バランダは木っ端微塵に撃破された。
ウォンゴット「おのれ、まだ人間の生気が充分ではなかったか!」
ケルベルス「覚えておれシグフェルとやら。この次こそは必ず!」
ウォンゴットとケルベルスは捨て台詞と共に逃げて行き、
マネキンに変えられていた人々も、妖魔獣が倒されたことにより、
みんな無事に元に戻ったのであった。
◇ ◇ ◇
戦いを終えて光平の姿へと戻るシグフェル。
そこでは雄大とチャックが待っていた。
雄大「光平先輩、やっぱり先輩がシグフェルだったんですね!?」
やはり光平がシグフェルだったと知り、一人感激している雄大。
親しい先輩が憧れのヒーローだと分かり、嬉しくて舞い上がっている様子だ。
チャック「とうとうコイツにもバレちまったな」
光平「仕方ないですね…。でも雄大、
この事は学校の他のみんなには内緒だぞ」
雄大「その点なら安心してください。
こう見えても僕は口が堅いですから!
……ただ、その、先輩」
光平「…どうしたんだよ?」
雄大「大変言いにくいんですけど……何なんですか、
さっきの決め台詞とダサいポーズは…。正直に言って
見てたこっちも恥ずかしかったですよ…」
光平「ええっ!? ガ━━ΣΣ(゚Д゚;)━━ン!!
二週間も寝ないで考えたのにぃっ!!」
チャック「ハハハ…(汗」
雄大の率直な指摘に、思わず凹んでしまう光平。
来週までには今度こそカッコイイ決め台詞と決めポーズを
考えておこうと心に誓う光平であった(笑。
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それにしても、あの時手裏剣を投げて
妖魔獣の触手から雄大を救ってくれたあの女の人影は、
いったい誰だったのだろう…。
朱音「お頭…」
文蔵「朱音、お前の使命は
ブレイバーズを監視する事であって、
手助けする事ではない。それだけは忘れるな」
朱音「ハハッ!」
◇ ◇ ◇
――そして翌日の朝。
海防大学付属高校・校門前***
雄大「おっはようございさます!先輩方♪」
光平「お、おう…! おはよう雄大」
いつもの朝の登校風景だが、校門前で光平たちと合流した雄大は、
いつにも増して元気そうである。
慎哉「今日はやけに元気そうじゃないか?」
雄大「ズルいじゃないですか慎哉先輩、それに優香先輩も!
僕一人だけに光平先輩の事を内緒にしてたなんて!」
優香「あ、そ…そのことね…(汗。
そういえば岡島くんにもバレちゃったんだっけ…」
光平「コラッ、雄大! 声が大きいってば…!
他のみんなもいる前だぞ」
慌てて雄大に口止めする光平だったが、
そこへ眼鏡を掛けた一人の青年が歩いて近づいて来た。
悟飯「やあ、光平君!」
光平「あ、悟飯さんじゃないですか!」
優香「光平くん、この方は知り合い?」
光平「ちょうどいい機会だから、みんなにも紹介するよ。
こちらは海防大学の準教授を務めていらっしゃる孫悟飯さん」
悟飯「君たちが光平君の友達だね。彼から噂には聞いているよ。
僕は孫悟飯だ、よろしく♪」
慎哉「は、はじめまして」
優香「よろしく」
悟飯と握手を交わす優香たち。
雄大「悟飯さんって中国の方なんですか?」
悟飯「今日から海防大学に赴任する事になってね。
毎朝パオズ山の自宅から舞空術で通勤しているんだよ」
優香「……(ブクウジュツ…? 何のことかしら?)」
慎哉「……(パオズ山? 聞いたことのない地名だな)」
悟飯「高等部とは隣接しているとはいえ敷地が違うけれども、
これから何かと君たちとも顔を合わす機会も多いと思うんで、
こちらこそよろしく」
実はこの孫悟飯こそ、シグフェルに変な決めポーズをいろいろと吹き込んで伝授している
張本人「グレートサイヤマン1号」その人である事など、慎哉たちは知る由もなかったのであった(笑。
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○チャック・スェーガー →妖魔獣バランダに襲われていた牧村光平と岡島雄大を助ける。
○孫悟飯→海防大学に準教授として赴任。
●ウォンゴット→人間マネキン化作戦をシグフェルに阻止される。
●ケルベルス→人間マネキン化作戦をシグフェルに阻止される。
●妖魔獣バランダ→人間の生気を吸い取りマネキンに変えていたが、シグフェルに倒される。
○牧村光平/天凰輝シグフェル→妖魔獣バランダを撃破。岡島雄大に正体がバレる。
○沢渡優香→牧村光平に孫悟飯を紹介される。
○朝倉慎哉→牧村光平に孫悟飯を紹介される。
○岡島雄大→シグフェルの正体が牧村光平であると知るが、内緒にすると約束する。光平に孫悟飯を紹介される。
△千坂朱音→妖魔獣バランダに襲われていた岡島雄大を、手裏剣を投げて救う。
△世羅文蔵→千坂朱音に「お前の役目はブレイバーズを監視する事であって、助ける事ではない」と釘をさす。
【今回の新規登場】
●ウォンゴット(超音戦士ボーグマン)
妖魔の犯罪組織GILの三神官の1人で、妖魔機械を指揮する。頭の一部が機械化されている。
昔は天才発明家であった。ダストジードを疎ましく思い、響リョウ諸共抹殺すべく
ギルトライアングルのエネルギーを攻撃に転用する『トライアングルビーム』で攻撃するが、
難を逃れたジードの剣で逆に返り討ちにされてしまう。
●ケルベルス(超音戦士ボーグマン)
妖魔の犯罪組織GILの三神官の1人で、妖魔獣を指揮する。頭にもう1つの顏を持つ。
昔は超一流の科学者であった。メガロシティに最後の妖魔石を設置するために
自らも妖魔獣人となって出撃するが、スーパーサンダーの突撃を受けて戦死する。
最終更新:2020年12月03日 08:48