ギャグ編11~14

『笑激の邂逅!セーラームーンVS月光刑事』-1

作者・ティアラロイド
11

東京都内某所 帝国財団美術館***


真夜中の暗い美術館内に突如として警報音が鳴り響く。
慌てて展示場に駆けつける警備員たちであったが、
灯りがついた途端、その表情はたちまち驚愕と共に凍りついた。

警備員「…や、やられた~! 神風強盗ダルクだ…!」

そこに掲げられていたはずの、時価数億円はするといわれる
世界至宝の絵画『モナベシの微笑み』が影も形もなく消えており、
代わりに犯行声明が書かれたカードが貼り付けられていたのだった。

そのカードの送り主の名は、神風強盗ダルク!!

警視庁***


聖居・桜田門の近くにある警視庁の本庁ビルの一室。
窓には暗幕がしっかりと張り巡らされており、光は一切部屋の中には差し込まない。
会議用の四角卓テーブルの片方には、警視総監・加賀美陸、そしてその傍らには
警視庁副総監・東一門、その二人の向こう側の席には、警察の会議室には
不似合いな女子高生らしき少女が緊張して面持ちで座っている。

陸「神風強盗ダルク…。2ヶ月前に刑務所を脱獄して以来、
 すでに数十件に及ぶ美術品窃盗を重ね、その被害総額は
 数百億円の域に達しようとしている。」
まろん「……」

そう…ここに座っているのは、かつて美術品に憑依した悪魔を回収しながら
巷を騒がせていた怪盗ジャンヌ=日下部まろんである。
度重なる神風強盗ダルクの犯行に頭を悩ませていた警察は、
ダルクと容姿や行動様式が極めて似ている(というか完全にパクられている)
怪盗ジャンヌことまろんに捜査協力を要請したのであった。

東「このままでは日本警察の面子は丸潰れだ。そこで是非とも
 君の力を借りたい。」
まろん「でも、私は…」
東「断れると思っているのかね? 今回の捜査協力と引き換えに、
 過去の怪盗ジャンヌの犯した数々の窃盗および建造物不法侵入の件は
 全て不問に付すと言っているのだ。」
まろん「……」
東「…それに、確か君の学校での親友の父親は桃栗署の警部だったね。
 いいのかな? 君の返答一つでお友達のお父さんの将来に傷が付いても――」
まろん「…そんな! 都は関係ありません!!」

協力要請を受諾しなければ、親友である東大寺都の父親・東大寺警部を左遷させるぞという
東副総監の遠まわしの脅し文句に対し、まろんは食って掛かる。

陸「まあまあ副総監、ここでそんな高圧的なものの言い方をしては
 まとまるものもまとまらなくなるじゃないか」
東「は、はあ…」
陸「どうかね日下部まろん君。頭を下げろといわれれば、この通り頭も下げる。
 ここはどうか、我々の頼みを引き受けてはもらえないかね?」
まろん「うっ…!?」

穏やかな表情でまろんに語りかける加賀美総監。しかしその両目には、
にこやかな笑顔とは正反対に、頼みを強制的に断れなくする鬼気迫る
眼力のような力が働いていた!

12

火川神社***


レイ「…で、引き受けちゃったの?」
まろん「うん…」

困り果てたまろんは、怪盗シンドバッド=名古屋稚空と共に
火川神社にいるうさぎたちのところへ相談に訪れたのだった。

稚空「いかにも警察らしい汚いやり口だな。そんな脅し
 突っぱねればよかったんだよ!」
まろん「でも…もし断って、都のお父さん――東大寺警部に
 迷惑がかかったりしたら…」
まこと「神風強盗ダルクって、確かジャンヌのコスプレをしてた
 変態のオッサンだろ?」
美奈子「それを本家の怪盗ジャンヌに捕まえさせようだなんて…」
まろん「ごめん、それ以上言わないで…」

自分そっくりの紛い物が中年の変態男だったという、思い出したくもない
事実を思い出さされ、ますます沈痛な表情になるまろん。それを見て重い
空気に包まれる周囲一同…。だがその暗いムードを吹き飛ばしたのが、
うさぎの明るい一言だった。

うさぎ「だぁいじょうぶだってまろんちゃん! このうさぎ様が
 ついているからド~ンと構えて安心しなさい!」
まろん「ありがとう、うさぎちゃん」
亜美「でもうさぎちゃん、神風強盗ダルクが次に狙う
 ターゲットが分からない事には、私たちも動きようがないわ」
うさぎ「…うっ! そうかぁ……」
レイ「まったくもう、何も考えないうちから大きな口叩くんじゃないわよ」

レイが呆れ顔で言う。

うさぎ「なによ~! レイちゃんのいぢわる~!!」
稚空「だけど実際問題、水野さんの言うとおり、ダルクの次の動きが
 掴めなければ、俺たちにもどうしようもないのは事実だ」
亜美「ここはブレイバーズの情報部にも協力してもらうしかないかしら…」

無言で考え始める一同。だがそこに突然、強い突風とプロペラの回る騒音が鳴り響いた。

うさぎ「な、なにっ!? なんなの!?」

13

神社の境内に強引に降り立つ一機のヘリコプター。
中から降りてきたのは二人の中年のスーツ姿の男だった。

聖羅無々「日本に三人の名刑事あり! 陸に海パン刑事!
 海にドルフィン刑事! そして空にはこの私、月光刑事!」
聖羅美茄子「同じく、相棒の美茄子刑事です」
稚空「警察の人間か?」
聖羅無々「はじめまして日下部まろんさんに名古屋稚空君。
 そしてセーラー戦士の皆さん。警視庁特殊刑事課の月光刑事です。」
レイ「特殊刑事課…?」
まこと「あたしたちのことは全部調査済みって訳かい?」
聖羅美茄子「フフフッ…当然だろう。今や警察も君たちも
 共に地球の平和を守る仲間同士。

 情報の共有はごく自然なことだと思うがねえ」
稚空「ごく自然ねえ…」

稚空は、月光刑事を名乗る二人の男を訝しむように見つめる。

聖羅無々「これまでの地道な捜査が実を結び、すでに神風強盗ダルクの
 次なるターゲットは判明している!」
聖羅美茄子「神風怪盗ジャンヌに怪盗シンドバッド、
 そしてセーラー戦士の諸君、君たちにも今回の作戦には
 協力してもらう!」
うさぎ「泥棒さんを捕まえるんでしょ? なんだか面白そう♪」
レイ「まあ、乗りかかった船だしね」
美奈子「もうこの際やったろうじゃない!」

ほぼ全員の了承を取り付けたところで、空を見上げる聖羅無々。

聖羅無々「今日は満月の夜になりそうだな…」
うさぎ「満月…?」

聖羅無々がふと漏らした一言が気になるうさぎ。

聖羅無々「では諸君、今夜9時ジャスト、

 藍羽財団CEO宅玄関前に集合してくれたまえ!」
聖羅美茄子「諸君の働きに期待している!」

そう言い残すと、二人の刑事たちは再びヘリへと乗り込み、飛び去っていった。

うさぎ「行っちゃった…」
亜美「………」
まろん「どうしたの、水野さん?」
亜美「…何かあの刑事さんたちの、うさぎちゃんと美奈子ちゃんを見つめる視線が
 異様な気を発していたような気がするの」
うさぎ「…えっ!?」
亜美「…あ…え…えっと…きっと気のせいだわ。き、気にしないで」

しかし、亜美の感じたその妙な予感は不幸!?にして的中していたのである。


ヘリの機内***


先ほど飛び去ったヘリの操縦席では、セーラー服を着た怪しげな人影が…!?

???「あれがセーラームーンにセーラーヴィーナス…!」
???「どちらが真の美少女戦士と呼ばれるに相応しい存在か、
 思い知らせる日がついに来たようね。うふふ…ふはは…あはははは!!!!!!!!!!」

愛と正義のセーラー服美少女戦士セーラームーンに、最大の危機が迫る?

14

●神風強盗ダルク→刑務所を脱獄。再び高価な美術品の窃盗を繰り返す。
○加賀美陸→日下部まろん=神風怪盗ジャンヌに、半ば強要する形で神風強盗ダルク逮捕への協力を依頼。
○日下部まろん→警視庁から神風強盗ダルク逮捕への協力を要請される。
○名古屋雅空→警視庁から神風強盗ダルク逮捕への協力を要請されたまろんに付き合う。
○月野うさぎ→警視庁から神風強盗ダルク逮捕への協力を要請されたまろんから相談される。
○水野亜美→警視庁から神風強盗ダルク逮捕への協力を要請されたまろんから相談される。
○火野レイ→警視庁から神風強盗ダルク逮捕への協力を要請されたまろんから相談される。
○木野まこと→警視庁から神風強盗ダルク逮捕への協力を要請されたまろんから相談される。
○愛野美奈子→警視庁から神風強盗ダルク逮捕への協力を要請されたまろんから相談される。
○聖羅無々→日下部まろんとセーラー戦士達に接触。セーラームーンに並々ならぬ対抗意識を燃やす??
○聖羅美茄子→日下部まろんとセーラー戦士達に接触。セーラーヴィーナスに並々ならぬ対抗意識を燃やす??

【今回の新規登場】
●塚本容疑者=神風強盗ダルク(こちら葛飾区亀有公園前派出所)
 神風怪盗ジャンヌのコスプレをして、高価な美術品を強奪していた
 連続窃盗犯。その正体はオカマで中年の変態男。麻生瑠璃華こと
 プロファイリング刑事と亀有公園前派出所の面々の活躍により逮捕された。

○聖羅無々=月光刑事(こちら葛飾区亀有公園前派出所)
 警視庁特殊刑事課会員番号4番。夜間戦闘機「月光」に乗り行動する。
 セーラームーンの格好をしており、他にもさまざまにコスチュームチェンジを
 することで特殊能力を発揮することになっている(但し、余り役に立ったことはない)。

○聖羅美茄子=美茄子刑事(こちら葛飾区亀有公園前派出所)
 月光刑事のパートナー。こちらはセーラーヴィーナスの格好をしている。
 プリクラやルーズソックスのコギャル文化に詳しく、武器は鉄球。

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最終更新:2021年01月07日 07:48