Gears Of Lyrical プロローグ

Gears Of Lyrical プロローグ

惑星セラ
千年にもわたる数々の大戦を経て、平和な時を得た惑星。
惑星の地下から偶然採掘された液体「イミュルシオン」、ライトマス処理によりエネルギーとしての利用が可能となり、人類は安価で無尽蔵のエネルギーを得ることができた。
しかし、それは同時に新たな戦争の火種になる。人類が不毛な争いを続けている頃、突如地下から現れた「ローカスト」が人類に対して総攻撃を仕掛けてきた。
人より遥かに大きく、強靭な体をもつローカストは出現から僅か24時間で惑星セラに住む人類の25%を虐殺した。
「Emergence Day(出現の日)」と呼ばれるこの大虐殺を機に、長い間続いたイミュルシオンを巡る大戦は終結せざるを得なかった。
人類の根絶やしのみが目的であるローカストに人間側の交渉は全て無視され、それまでの大戦によって疲弊していた国々は地中から自在に現れ、
強力な生体兵器を操るローカストの大群に次々と滅ぼされていった。
圧倒的不利となった人類は、ローカストが採掘できない硬い岩で形成された地層のあるハシント高原に退却。そして追い詰められた人類は極めて無謀な作戦を決行。
化学兵器と衛星軌道レーザーで、占領された都市を市民ごと焼きつくした―――

惑星セラの90%以上が焦土と化すという余りにも大きすぎる犠牲を払い、どうにか人類はローカストを退けた。
だが、ローカストの大半は地底へと逃げの延び、再び人類に苛烈な攻撃を続けていた。

そして今回の事態を重く見た時空管理局は、介入を決意。惑星セラに魔道士及び陸士等の派遣を決定した。
しかし、同時に人々はこう囁いた。

「時空管理局はイミュルシオンを手に入れる口実が欲しいだけだ。そうでなければ今まで黙っている訳がない」と―――

人類が生き残るために奮戦を繰り広げる数々の前線、その中の一つにその部隊はいた―――


怒号と銃声、断末魔と悲鳴、爆音が絶えず響く戦場。ひっきりなしに銃弾が飛び交い、一つ、また一つと命を奪ってゆく。

「ドム、右だ!!」

頭に青いバンダナを巻いた大柄な男、マーカス・フェニックスは昔からの相棒に叫んだ。

「任せろ!!」

ドムと呼ばれた髭を蓄えた男、ドミニク・サンチャゴはその声に応える。

「ヒーハー!んなへっぴり弾が俺様に当たるかよ!もっとよく狙いな!」

丸太のような太い剛腕を持つ、浅黒い肌の男、オーガスタス・コールは眼前の敵に身を曝していた。

「全く…、コール怪我しても知らねぇぞ!」

額にゴーグルを掛けた金髪の男、デーモン・ベアードは数少ない友人に呆れていた。
彼等の手にはアサルトライフル、銃身の下にチェーンソーが備え付けられた「ランサーアサルトライフル」を握りしめており。
全員が機械的な鎧のような鋼鉄のアーマーに身を包んでいた。
マーカスが積み上がられた土嚢から上半身を上げ、ライフルを水平に掃射する。弾が飛んだ先には白い体表の怪物―――、ローカストがいた。
背丈は2m近く、屈強な体躯を誇り爬虫類を連想させる外観をもつ。

「ヒルムナ、ウテ!!」

デスメタルを彷彿とさせる見た目通りの重く、低い声。その声に合わせて瓦礫の陰などから幾つものローカストが身を現した。
「キリがねぇ!」
「直に管理局の増援が来る手筈だ、それまで持ちこたえろ!」

そう言ったものの、マーカスは焦っていた。
(管理局か…、言ってることはいっちょ前だが殆んどが口先だけの連中…、増援はあまり期待できないな…、なんとかしてこの場を切り抜けないと…)

そんな思案に耽っている隙に、ローカストの一体、「ドローン」が迫ってきた。

「シネ!」

銃撃を掻い潜り、マーカスが身を隠している土嚢に迫る。ドローンが手にした銃を向けられる前に、マーカスは反撃に移った。
手にしたランサーアサルトライフルを起動、銃身下のチェーンソーが目覚めた。銃身から黒煙が噴き出し、幾つも並んだ鋼鉄の刃が動き出す。

「死ぬのは…」

立ち上がり、ライフルの左側面に付いたグリップハンドルを掴み、大きく振りかぶる。

「てめぇだ!!」

そして、振り下ろした。
振り下ろしたライフルはドローンの右肩に食い込む、猛烈なスピードで回転するチェーンソーが肉を裂き、骨を砕き、内臓を食いちぎる。

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォ!!!!!!」

血飛沫と肉片、ドローンの断末魔を伴いながら、チェーンソーは右肩から左脇腹へとドローンを切り刻む。
飛び散る血と肉が、マーカスの顔にかかった。袈裟切りにドローンを両断し、上半身と泣き別れになった下半身を蹴り飛ばす。
蹴られた際に一際大きく血の噴水が噴き上がった。

「ぼさっとするな!」
「悪かったな、ベアード!」

血まみれの顔を拭いつつ、土嚢に再びしゃがみ込む。いつの間にかローカストの前線が迫っていた。

(ちくしょう、ここまでか…?)

敵は大挙をなして自分達を殺しに向かってきている。たった4人に対して過剰なまでの攻撃と兵力、自分達をここに向かわせた帽子を被った大佐の顔が酷く憎たらしく思えた。

「くそっ…」

更に悪態をついた時、

「リボルバー…」

それは、

「シュート!!」

やってきた。

「グオオォォ!?」

青い光弾が、一体のドローンの頭を捉える。直撃を受けたドローンはそのまま倒れた。

「アラテカ!?」

突然の攻撃に慌てたローカストの軍勢、それが仇となった。

「クロスファイアー…」

オレンジ色の魔力光が少女を照らす。二つに結った魔力光と同じオレンジ色の髪、白を基調とした軽装の服、それらを照らしながら光は更に大きくなる。

「シュート!!」

幾つものオレンジ色の魔力弾が、ローカスト達に殺到する。頭に当たり、瓦礫に当たり、銃に当たりローカスト達を無力化してゆく。その好機をマーカスは逃さない。

「グレネード!!」

腰に下げたトゲ付きの鉄球、中世の騎士が振るったといわれるモーニングスターに酷似したグレネードの柄を4人が握った。
数回振り回し、勢いをつけて投げる。地面に落ちてから数回の電子音の後、ローカスト達の中央で爆発した。
破片が飛び散り、近くにいたものに襲いかかる。あるものは腕を、あるものは足を、あるものは頭を吹き飛ばされながら絶命した。
それでも残ったローカスト達に止めの一斉射撃を加える。突然の事態に何が起こったか認識できなかったローカスト達は、恰好の的だった。
マズルフラッシュが瞬き、銃弾が飛び出し、動けなかった「的」に当たる。
4人がマガジン一つ分を撃ち終えると、辺りは静かになった。
地面には幾つものローカストの死体が横たわり、その死体から溢れる血が大地を潤していた。
薄く風が吹き、砂塵が舞う。戦闘の痕跡を覆い隠すように、砂塵が死体を包んだ。

「助かったな…、で」

マーカスは突然現われた二人の少女に向きなおった。
片方は青空のような青い髪、右腕にギアが付いた手甲をはめており、足には何故かローラーブーツ。白い鉢巻を締め、同じく白いジャケット。
もう片方は鮮やかなオレンジ色の髪、両手にデリンジャーのような拳銃を握っている。こちらも同じく、白を基調としたジャケットを羽織っていた。
二人はともに十代中頃にみえ、とても戦場で戦うような人間には見えなかった。

「お前たちが管理局の言ってた「増援」か?」
「はい、時空管理局、機動六課所属、ティアナ・ランスターです」
「同じくスバル・ナカジマです」

ティアナと名乗ったオレンジ髪の少女が敬礼し、慌ててスバルと名乗った青髪の少女がそれにならった。

「おいおい、管理局はこんな嬢ちゃん達を戦場に放り込むのか?」
「管理局は才能があれば年齢とかは不問らしぞ、コール」

二人の少女を見たコールがどことなく呆れた口調で疑問を喋り、ベアードが解説を入れた。

「申し遅れたな、COG所属、デルタ部隊隊長マーカス・フェニックス軍曹だ」
「同じくドミニク・サンチャゴ二等兵」
「同じくオーガスタス・コール二等兵だ。よろしく頼むぜ」
「デーモン・ベアード二等兵だ」

全員敬礼、最後にベアードが面倒くさそうに挨拶し、互いの紹介を終えた。

「よろしくお願いします。フェニックス…」
「ああ、俺達の階級は特に気にしなくていい。それと気軽にマーカスと呼んでくれ」
「いや、しかし…」
「大丈夫だよティア、マーカスさん達もこう言ってるんだし」
「あんたは黙ってなさい!!失礼でしょう!!」
「え~、でも~」
「うるさい!!」

ティアナがスバルの頬を両手で引っ張り、文字通り「黙らせる」、スバルは必死にティアナを引きはがそうとしていた。
「気にすんなって、うちの隊長殿がこう言ってんだし」
「でも…」
「大丈夫、俺達はいつもそうしてる」
「はぁ…、じゃあ、ま、マーカスさんよろしくお願いします」
「ああ」

二人の少女と四人の男達が出会った瞬間であった。

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最終更新:2009年08月20日 21:26