はじめての外泊-new

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はじめての外泊-new - (2010/04/02 (金) 19:49:41) の編集履歴(バックアップ)


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はじめての外泊-4」つづき――2010-04-02 更新
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――(30)――
 比呂美は、眞一郎の下半身から目を離さない。怒っているのだろうか? 眞一郎の目の位置か
ら比呂美の顔を見下ろすとそんな風に見えた。そういう意味で内心ドキドキしながら、眞一郎は
比呂美の正面にしゃがんで膝立ちになり、ゆっくりと踵にお尻をのせた。すると、比呂美は顔を
上げて、めずらしくはにかんだ。
「……なんか、いつもより大きくなってない? ここ……」比呂美はまた下半身に目をやる。
「い、いや……なんていうか、はは……」とゴマかし笑いをしながら眞一郎は頭の後ろを掻いた。
比呂美はすぐ顔を上げ、どうしたの? という風に首を傾げる。自分から素っ裸で登場してきて
おいて、何をいまさら照れているのと思っているのかもしれない。それとも、あえて眞一郎に恥
ずかしい言葉を言わせようと意地悪しているのかもしれない。きょとんとした比呂美を見ている
と、何もかも見透かされているような気がしてくる。眞一郎は急に息苦しさを感じ、何もかもぶ
ちまけてしまったほうがいいように思えてきた。たぶん、そうしたほうが比呂美も安心できるの
ではないだろうか、と。
「あのさ、正直言うとさ……」
「うん、正直に話して」比呂美は待ち構えていたように笑った。なに話してくれるのかな~とい
った感じだ。
「なんていうか、すごく緊張しているというか……。あっ、でも変な意味で興奮しているとかじ
ゃないんだ。ここはこんなだけど……」と言って、眞一郎は股間のほうにちらっと目をやった。
「……お、男の子のことはよくわからないけど、ふつう、緊張しすぎるとこんな風に……」
 眞一郎がどぎまぎ話しだしたせいだろうか、比呂美は少し困ったようすで眞一郎を庇おうと口
を開いたが、眞一郎はそれを遮ってつづけた。
「こんな風になったの、おれも初めてで……。あ、でも、大丈夫。もうだいぶ落ち着いたから。
……こわいか?」
「えっ?」いきなり尋ねられてドキッとした比呂美は慌てて首を振った。そして、知らず知らず
のうちに不安そうな顔をしていたのだろうかと、それを隠すために俯いて頬の筋肉の力を抜いた。
「シャワーで洗ってるとさ、急にこんなになっちゃって。勝手に人工衛星でも打ち落とすんじゃ
ないかって焦ったよ」
 眞一郎がそう冗談を言うと、比呂美は半分意味が分からないという顔をして「ふふっ」とふき
だし、「触ってもいい?」と尋ねた。
「だめだめだめ」
「なにそれ」
「いまはだめ」
「……じゃ~、握ってもいい?」と簡単にあきらめない比呂美。
「それ、おんなじことじゃん」
 比呂美は口を尖らせて「うー」と不満そうに唸った。眞一郎は、駄々っ子のように睨んでくる
比呂美に呆れる表情を見せながらも、内心では比呂美に感謝していた。表に出さなくても比呂美
が必死になって自分の緊張をほぐそうとしているのが分かったからだ。比呂美のそういう気配り
や振る舞いについて、いつも脱帽させられる。いじらしいとさえ思うこともあった。
「時間、稼ぎたいから……」と、眞一郎は触らせられない理由を呟いた。
「時間? なんのこと?」
 意味が分からず目を丸くした比呂美は訊き返した。そのことが――比呂美に理由が伝わらなか
ったことが眞一郎には意外だった。比呂美がまた意地悪しようとしているのではないかと思った
が、比呂美はほんとうに意味が分からないようすだった。
「いや、ほら……」眞一郎はひとつ咳払いをして、言わなくても分かるだろう? という風にも
じもじした。比呂美は、え? なに? そんなに恥ずかしいことなの? と眞一郎の言っている
ことが分からずやきもきした。
「だから、おまえが言ったじゃん」
「ええっ、わたし? わたし、そんなに恥ずかしいこと言った?」
「恥ずかしい? ……くはないけど、女の心理としてはそうかな~というか……」
 女の心理? と書かれた風船が比呂美の視界の中でふわふわ浮かんだ。そして弾けた。
「ああ!」と、比呂美は喉のつっかえ棒が取れたような声を上げた。眞一郎が言おうとしている
のは、比呂美の中に入っている時間――ペニスを挿入している時間のことなのだ。そのことがよ
うやく分かったのだ。比呂美は、コンドームをつけないで交わろうと眞一郎に求めたとき、自分
は何て言ったのかを急いで思い返した。でも、正確に思い出せなかった。長くつながっていたい、
などとストレートに要求してはいないはずだ。なのに、眞一郎が『あれ(射精)のときまでの時
間』を気にして、どうもプレッシャーを感じていたことに、男と女の根本的な違いを感じた気が
した。
 男は、愛を施すことだけを考え、
 女は、その愛を受け止めることだけを考える。
 そういうことなんだろうか……。そう思って、あらためて見た眞一郎の顔、そして体は、なぜ
だか男らしく見えた。比呂美は、眞一郎が伝えたがったことはあえて口に出さずに、もうわかっ
たよ、という風に微笑んでみせた。その代わり、自分から恥ずかしいことを言ってやろうという
気になった。
「……なんか、新婚、初夜……みたいだね……」
 その直後、眞一郎が前屈みになって、むせた。眞一郎は必死になってそのときの光景を頭の中
から振り払おうとした。でも、想像の川のすでに決壊してしまっていた。次々と、比呂美とこう
なりたいという願望が湧き起こってきて、どうしようもなくなった。
 新婚旅行で海外になんか行きたくない――眞一郎はそう思っている。人里離れた山奥の小屋に
一週間くらいふたりきりで生活し、そこで、比呂美と契りを交わす。それが眞一郎の夢のひとつ
だった。これには、確固たる動機が眞一郎にはあった。それは、比呂美はふたりきりにならない
となかなか本心を表さないということだった。だから、できるだけ完全な『ふたりきり』という
状況を作って、比呂美がほんとうの自分を見せたときに子ども作りたい。それに、ほんとうの比
呂美を見てみたい気がする。いまの比呂美はまだ17歳だけど、比呂美の『女』としての『本
性』はこんなものではないはずなのだ。眞一郎を驚かせないために比呂美はまだ自分を隠してい
る。眞一郎は薄々そんな気がしていたのだ。
 いきなり眞一郎の妄想を打ち消したのは、眞一郎の右手首に加わった感触だった。眞一郎がそ
こに目をやるやいなや、あれよあれよという間に、眞一郎の右手は、比呂美の左手に掴まれても
っていかれた。やがて、眞一郎のその掌は比呂美の左側の鎖骨のあるところに押し当てられた。
この部分はバスタオルで覆われていない。比呂美の素肌の感触が、条件反射的に眞一郎の右腕を
引っ込めさせようとした。でも、比呂美はそれをさせなかった。眞一郎は堪らず声を上げた。
「どうするんだよ」
 そう言った直後は、眞一郎はそう言ったことを後悔した。何もそこまでうろたえるようなこと
でもないのだ。いきなりなこととはいえ、なんだか情けないなと思ったが、比呂美は眞一郎のそ
んな態度に全然気にするようすもないし、眞一郎の問いかけにも答えず、ただじっと、眞一郎の
胸のあたりに視線を落としていた。仕方がない、比呂美の出方を窺ったほうがよさそうだと、眞
一郎はそのままじっとしていた。
 眞一郎の動揺が治まったのを察して、比呂美はようやく口を開いた。
「眞一郎くんだけじゃ、ないよ……」
「え……なんのこと?」
 眞一郎がそう訊き返すと、比呂美は眞一郎の顔を見つめた。
「緊張しているのは、わたしもおんなじ」
「…………」
 何て返したらいいのか分からず眞一郎が黙っていると、比呂美は掴んだ右手を下へずらしてい
った。バスタオルを押しのけ、掌は比呂美の乳房の柔らかな感触で支配される。それだけではな
い。バスタオルは、比呂美の背後で誰かが引っ張ったんじゃないかというくらい、ものの見事に
はだけて、比呂美の背中側にきれいに落ちてしまった。バスタオルの演出も重なって、あらため
て比呂美の裸体の美しさに眞一郎は息を呑まずにいられなかった。でも、眞一郎はまだ冷静でい
られた。それは、比呂美が執拗に性的に誘惑してくる素振りではなかったからだ。比呂美の顔の
表情はそういうものではなかったし、いま眞一郎の右手は比呂美の心臓のあるところに押し当て
られているのだ。
「わかる? わたしも、かなりドキドキしてる」と言って、比呂美は自分の胸に押し当てている
眞一郎の右手を見た。
「……う~ん、よくわからない」
 眞一郎自身、いまもなお半端なくドキドキしているのだ。掌で感じる振動が比呂美のものなの
か、自分のものなのか、判別できるほど余裕はなかった。
 比呂美は、眞一郎の反応に半分は不満そうに、半分は納得したように微笑んで、眞一郎の右手
を離した。このあと慌てて手を引っ込めるのも可笑しな感じなので、眞一郎は極力自然な風を装
って、さりげなく腕を戻した。でも、眞一郎がほっとしたのも束の間だった。
 比呂美はお尻を浮かすと、眞一郎に抱きついてきたのだ。両腕を眞一郎の背中に回して力を込
める。たちまち、眞一郎のペニスは、主(あるじ)の下腹と比呂美の下腹でサンドイッチになっ
た。固くなったペニスの何ともいえない異物感を比呂美も同じように感じているのだろうか。眞
一郎はそう思うと、比呂美の乳房が容赦なく押し当てられているのも忘れて恥ずかしくなったが、
比呂美が首元でゆったりと呼吸しているのを感じて、すーっと心の中に安心感が広がるのを感じ
た。不思議な感じだった。傍から見るとどうみてもエッチな『行い』なのに、当の本人たちは安
らぎを得るためにそうしている。眞一郎は、いまそう思ったことを口に出してみた。
「なんだか、安心する……」眞一郎は比呂美をさらに抱き寄せた。
「これしかないな、って思ったの……」
「…………」眞一郎が黙っていると比呂美がさらにつづけた。
「だって、こうやって抱きしめられると、わたし、すごく安心できたんだもん」
「……そ、そうなんだ」眞一郎に思い当たる節がないわけではなかったが、意外そうにそう答え
た。比呂美の感想をもっと聞きたかったのだ。
「だから、たぶん、眞一郎くんも、おんなじなんじゃないかって思って…………。でも、男と女
では感じ方は違うよね。エッチな気分になる?」
「いいや」眞一郎はきっぱりと否定すると、比呂美は、ふふふっと気持ちよさそうに笑った。
「よかった……。もし、エッチな気分になってたら、いまごろ押し倒されてるもんね」
 眞一郎はそんな比呂美の冗談には付き合わず、「ありがとう」とつぶやいた。
「え、なに?」比呂美は訊き返す。
「ありがとうって言ったんだ。わかってたよ、おまえがおれを何とか落ち着かせようとしている
の」
「…………」比呂美は黙っていた。比呂美の体が一瞬こわばるのを眞一郎は感じた。
「ごめん。不安だったんだろう? いきなりおれが裸で出てきたから」
「あはははっ」比呂美はこんどは弾けるように笑った。
 眞一郎は比呂美の後頭部に手を回し、比呂美の顔を自分の体に押し付けた。そのとき触れた比
呂美の後ろ髪がひんやりしていたことに、びくっとなった。堪らず、比呂美の髪を撫でた。山奥
で湧き出た清流に手を突っ込んでいるような感覚だった。心がさらにすーっと落ち着くのを感じ
た。比呂美は満足げに吐息を漏らす。比呂美の髪に触(さわ)れるのはこの世の男性で自分だけ
だ。眞一郎が強くそう思うと、体の芯がいままでとは違った熱気を帯びるのを感じた。激しいけ
れども揺らめかない炎、そんな炎が灯った感じだった。
 比呂美の髪の感触を楽しんだあと、眞一郎は静かに言った。
「比呂美、ひとつお願いがあるんだけど」
「なに?」あらためてそう言われて、比呂美はきょとんとなった。
「その、ちょっと言いにくいんだけど……」
「だから、なによ」男らしくないな~という感じで、比呂美は少し口を尖らせる。
「あんまり……。これから、あんまり、なるべく、エッチな声を出さないでほしい、んだけど…
…」
「はあー?」比呂美は思わず眞一郎から体を離し、眞一郎の顔を覗き込んだ。眞一郎が何を言い
たいのかまるで分からなかったのだ。
「いや、だからさ、さっきも言ったろ。できるだけ、その、長くさ……」
 そう言われて、比呂美はようやく意味を理解した。理解したのはいいけれど、なんだかまた急
に恥ずかしくなって、眞一郎の胸をバチンと叩いた。自分がエッチな声を漏らすと、射精を迎え
るのが早くなると眞一郎は言っているのだ。眞一郎の提案を歓迎すべきなのか、抗議すべきなの
か、比呂美は分からなくなって、眞一郎に向かってこう口走っていた。「ばかみたい」と。

 つづく……

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