「いてっ」
絆創膏が張られた部分を避けて命中した攻撃に、眞一郎が思わず声を上げる。
比呂美が「これでチャラ」と言って悪戯に微笑むと、眞一郎も困ったような顔で笑い返してきた。
「まだ痛いか?」
「うん…ちょっとズキズキする。……ちゃんと…全部挿ったの?」
恥ずかしいことを口走りながら、眞一郎が嵌まり込んでいるところを覗き込んでみる。
(……やだ……すごい……)
桜色の肉が左右に割れ、その中心の孔が、眞一郎の陰茎をしっかりと咥え込んでいた。
それに会陰部を流れる、愛液とは違う生温かい液体の感触……
少量ではあるが、やはり出血もしてしまったらしい。
「……挿った…ね……」
「……うん……挿った」
二人で結合している部分を凝視しながら事実を確認し終わると、眞一郎は顔を近づけ、唇を求めてきた。
痛みで動けない以上、今できる愛撫はこれだけ、ということなのだろう。
互いの唾液を呑み合う激しい口付けを交わしながら、意識を膣の内部に向けてみる。
先刻、手の平で感じた熱の塊……猛々しいペニスの息吹が胎内に感じられた。
自分でも触れたことのない…女の器官を押し上げて圧迫してくる、眞一郎の情熱……
(……眞一郎くんが……眞一郎くんが…私の中にいる………)
『女』になったのだ、という強烈な実感……
形容不能な想いが心を震わせ、自然と目尻に透明な雫が湧き出した。
「! 比呂美……また痛み出したのか?」
比呂美の喉が嗚咽で鳴るのに気づき、眞一郎は慌てて身体を起こす。
「……ううん…………違うの……」
首を横に振り、これが悲しみの涙ではないことを知らせる比呂美。
…………眞一郎と深く……深く繋がることが出来た…………
その喜び……充足感を泣く事でしか表現できないのが……もどかしい。
「……眞一郎くん……好きよ…………愛してる…… あなたがいれば…私は……」
…………他には何もいらない…………
と言いかけて、それはとても陳腐なセリフだと気づき、途中で言葉を打ち切る。
伝えられない…… 言葉じゃ足りない…… ……心が…苦しい……
だが、その気持ちは眞一郎も同じだった。
「……俺だって…俺だって、お前を愛してる…… お前がいれば……俺は……」
眞一郎も、想いを最後まで言葉にすることが出来ない。
口先で紡ぎだす音では不足だと、その苦しげな表情が物語っている。
「比呂美っ」
伝えきれない想いをぶつけるかの如く、眞一郎は闇雲に身体を抱きしめてきた。
その動きが傷口を擦り、忘れかけていた苦痛が蘇って、思わず「んっ」と呻きを漏らしてしまう。
「あっ、ゴメン!」
「いいの……もう…大丈夫だから……して……」
「……無理するなよ。もう少しこうして…」
眞一郎の気遣いを、比呂美は柔らかな微笑みで遮り、痛みの先にあるものを要求する。
「したいの。……眞一郎くんと……」
「……比呂美……」
……本当は…本当の想いは……もっと深い……
……溶けたい…… ……溶けて混じって……眞一郎と一つの存在になりたい……
……でも、それが叶わないなら……せめて……
……この痛みの向こう側にあるものを……眞一郎と二人で…見つけたい……
……そこに……二人の想いを本当に繋げてくれる何かが……ある気がするから……
…………
「…………眞一郎くん……『セックス』……しよ……」
ただ純粋に……眞一郎を求める比呂美の…飾りの無い素直な言葉。
「…………」
僅かな逡巡のあと、眞一郎は比呂美の想いに応えるように頷くと、
ゆっくりと腰を前後に動かし始めた。