true tears (アニメ) まとめwiki内検索 / 「比呂美のバイト その9」で検索した結果

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  • 比呂美のバイト その9
    【…怒らなかったんですか?】 比呂美のバイト その9 「ずっと秘めてきた湯浅君の気持ちを知って、主人は随分悩んだわ。 …でも最後は別れて湯浅君の背中を押した。彼女を返してあげたの ね」  返したって…。何、それ。モノみたいに。  比呂美は、眞一郎が4番との取引の対象として自分を扱った事を 思い出していた。口には出さないが、それは眞一郎との間に残る、 大きなしこりだった。 「母にとって、父は何だったんですか」  では、父と母の愛は幻想だったと言うのか。比呂美の声に隠しき れない険が混ざる。大切な思い出が壊れてしまいそうで怖かった。 「彼女は華やかな人だった。湯浅君は地味でね。二人が結婚すると 聞いて皆驚いたものよ。でもね」  理恵子はそこで一旦言葉を切った。比呂美は黙って続きを待って いる。 「湯浅君は、彼女が別の人とつきあっている時でさえ、いつも相談 ...
  • 比呂美のバイト その2
    【なんだ、もうフラれたのか?】 比呂美のバイト その2 「あの事故はアイツが悪いんじゃないか。あんな雪の日にバイクで二人乗りな んて、するほうがおかしいんだ。アイツが事故るのは勝手だけど、ちょっと間 違ったら、お前、死んでたんだぞ」  なんで、ここでまた4番が出てくるんだ。眞一郎は焦り、困惑していた。  二人の日々が壊れていくような不安が襲って来る。 「それでも、あの事故の責任は私にあるの」  比呂美の顔には、気後れも迷いも、欠片も存在していない。 「アイツが払えって言ったのか?」 「ううん。いらないっていわれちゃった。でも、そんなわけにいかないから」 「何十万もするんだろ。そんな、大変だよ。第一、部活はどうするんだよ」 「しばらく休むわ。今はそんなに厳しい時期じゃないから。まずはこの冬休み、 がんばってみる」 「でも…」 「もう決めたから」  こうなると比呂美の決心は動かない。それは引...
  • 比呂美のバイト その3
    【私、迷惑かけてるのに】 比呂美のバイト その3  バイト宣言を受けて大いに悩んでしまった眞一郎に比べ、比呂美の様子は、 昨日までとほとんど変わらなかった。教室内でも普通。部活も普段通りにこな し、眞一郎に色々と話しながら下校するその様子は、まるで何事もなかったか のようだった。 (比呂美にとっては、小さな事なのかな…)  眞一郎は、下校途中の坂道でそっとため息をつき、自分の中の悩みに戻って いった。父に言われた事。三代吉のヒント。…4番。考える事が多かった。  だから、眞一郎をそっと見つめる比呂美の瞳に、以前に似た危うい色が浮か んでいた事に、彼が気付く事はなかった。  アパートについた時、比呂美はいつもと少しだけ違う行動をとった。制服の まま、着替える事なく、バスタブに湯を張りはじめたのである。 「今日はシャワーじゃないのか?」  微笑むだけで、...
  • 比呂美のバイト その12
    【こういうの似合わないと思ってたのに】 比呂美のバイト その12  麦端神社の鳥居をくぐった女子高生が、参道に居た巫女に手を振った。 「お、居た居た。比呂美ィ~」  小走りに近寄ってきたのは、朋与だ。  その後ろにはさらに二人。三代吉と愛子。こちらは肩を並べ、ゆっくりと歩 いてくる。  参道の上、袴姿で雪かきをしていた比呂美が振り返る。昨晩少しだけ降った 雪が、境内を白く染めていた。 「朋与」  親友の顔を見て、比呂美の顔が少しだけほころぶ。巫女装束を身にまとう姿 を知り合いに見られるのは、ちょっと気恥ずかしかった。 「ほんとにやってたんだ、巫女さんのコスプレ」  朋与がおどけて言った。 「コスプレじゃないったら」 「でも、さすがバスケ部のエース。雪かきする姿が決まってる」 「掃除にバスケは関係ないでしょ」  笑って、比呂美は話しながら雪かきを再開す...
  • 比呂美のバイト その11
    【それはないです、比呂美さん…】 比呂美のバイト その11 (いやこれは反則だろう…)  初めて仕事着で出てきた比呂美を見て、眞一郎は内心で激しいツッコミを入 れた。初めて仕事着を着用する、バイト仲間の女の子達は、お互いに見せ合っ て、似合うだの綺麗だの、やいのやいの言っている。 「あ、眞一郎くん。似合う?」  比呂美がくるっと回ってみせた。  ひいき目に見なくとも、仕事着を着た比呂美は群を抜いていた。普段から背 筋がきちんと伸びていて、スタイルが良い事もあって、やたらに良く似合うの だ。  眞一郎は思わずぼーっと見惚れてしまい、上司が咳払いして彼を正気づかせ た。 (なんだか、これだけで十分元は取れているような気が…)  全く本末転倒な話である。が、眞一郎も男だ、仕方が無い。  業務中で自分で出来ないがゆえに、三代吉をカメラマンとして引っ張りだそ う...
  • 比呂美のバイト その4
    【かなわないなあ…】 比呂美のバイト その4 「眞ちゃん、あなたは駄目よ」  仲上の母はとっておきの笑顔で言った。  それなりに年齢は出ているものの、元々美しい母である。その笑顔の迫力は 尋常ではない。 「なんでだよ!」  気圧された眞一郎は、反発してみせるのがせいぜいだった。 「成績悪すぎるもの。バイトなんかしたらどうなるか」  声からも表情からも怒りや不快感は全く感じられない。不機嫌さのかけらも ない。  それであるがゆえに、なおさらその言葉は重かった。  事実、眞一郎の成績は悪いのだ。  比呂美の顔がほんのわずかに陰るのを感じ、眞一郎は焦った。 「あなたがこの先どんな進路を選ぶにしてもね。今の成績では学びたい事も学 べないし、行きたい所にも行けないわ。もし好きな女の子が出来たとしても、 責任を示す事もできないでしょう」  母はそこまで言う...
  • 比呂美のバイト その5
    【うらやましいぞこいつ】 比呂美のバイト その5  両親に話した翌日、バイトの面接はあっけないほど簡単に終わり、二人揃っ て採用となった。  元々良く知った場所である。仲上の名が後押ししたのも間違いない。そこだ と聞かされた時に眞一郎は渋ったが、代案が出せるわけでもなかった。  採用する立場から見た時、誰もが認める美しく気立ての良い比呂美に対し、 自分の人員としての魅力が大きく欠けている事を、眞一郎は良く知っていた。 その場所でなくては、都合よく二人そろって採用される事もなかっただろう。 それはわかっている。  それでも、仲上家の名が影響してくる職場である事に、多少の抵抗を感じざ るをえない。その眞一郎に、比呂美は言った。 「甘えなければいいの。おじさんやおばさんの顔をつぶさないよう、逆に顔を 立てられるように頑張れば、皆にプラスになるはずよ」  女は、強...
  • 比呂美のバイト その7
    【置いてかないで…】 比呂美のバイト その7(改) 「比呂美?」  眞一郎が棺と比呂美が居る部屋に戻ろうとドアを開けた時、比呂美は入って くる自分を"見て"いた。比呂美が動いている…? 「ごめんな。帰りが遅くなった」  彼女はまたすぐに顔を伏せた。それが自分の言葉に反応してのものかどうな のか、眞一郎にはわからなかった。  目にすがるような光が浮かんでいたように見えたのは、気のせいだろう…。 彼女とはそこまで何かを期待できる関係ではないのだ。  眞一郎は比呂美の隣に座り、穏やかに語りかけた。 「覚えてるか? お前、子供の頃、絵本が好きだっただろ」  返事はない。  わかっている事だ。構わず続けた。 「おばさんに『ママ、本読んで』ってよく言ってたよな」  持って来た一冊の絵本を比呂美の前に置く。 「ほら、これ。お前が大好きだった絵本。俺が遊びに行くと、いつも持ってた」...
  • 比呂美のバイト その6
    【私は…満足してるわ…】 比呂美のバイト その6  比呂美の言う"倉庫"の中は、確かに倉庫然としていた。  小さな二部屋の中には様々な家財道具が所狭しと並べられている。通路は確 保されているものの、布団一枚置くスペースもない。水まわりには使用感がな く、ゴミもない。生活の気配は全くなかった。  掃除自体は行き届いている。空気もよどんでいないから、きちんと換気も行 われている。おかげで倉庫等に特有のカビ臭さも無いのは立派な管理だとは言 える。  だが、この部屋自体が完全に荷物を置くだけの場所、つまり"倉庫"として使 われているのは明らかだった。  実家の近所なため、建物そのものにもちろん見覚えはある。だが、眞一郎の 中で、この建物に何らかの意味を持つ記憶はない。友人知人が住んでいた事も ないし、もちろん比呂美が母親と住んでいた家とも違う。  それでも...
  • 比呂美のバイト その8
    【そんなの聞いてない…】 比呂美のバイト その8(ver0.7β) 「ただいま」  夕方遅く、裏口から眞一郎の声が聞こえた。帰宅したようだ。  ほんの少し遅れて、表玄関に比呂美の澄んだ声が響いた。そんなに他人行儀 にすることはないのにといつも感じるのだが、今までの経緯を考えると仕方が ないのだろう。  迎えに出た理恵子を驚かせたのは、比呂美が普段身につける事のないコート を着ていた事だった。だが、彼女には見覚えのあるコートでもあった。あれは 湯浅夫人のコートだ。 「お帰りなさい。荷物は運び出せた?」  コートの事には何も触れず、少女に問う。 「はい。無事に。トラックのおじさんにお世話になりました。鍵、お返ししま す」  比呂美は白い手のひらに小さな鍵を乗せて差し出した。  眞一郎は制服のままだが、比呂美は着替えているようだ。アパートに寄って からこちら...
  • 比呂美のバイト その13
    【わかるな、眞一郎】 比呂美のバイト その13 「比呂美!」  眞一郎が走り寄り、10歩ほどの位置で止まった。 「眞一郎くん…」  比呂美はその姿を見てハッとし、目を伏せた。石動純と一緒にいる所は、ど うもあまり見られたくはなかったらしい。 「あのさ…」  眞一郎が近づこうとした所で、比呂美が言った。 「何でもないから。4番はちょっと用事があって、伝えにきてくれただけで…」  少し慌てたその言葉は、今の眞一郎の耳には言い訳めいて聞こえていた。 (4番…だと…?)  態度には表さないが、石動純は甚大な精神的ショックを受けていた。  4番である、4番。石動さんでも純くんでも、乃絵のお兄さんでもなく、4 番。いくらなんでもそれはないだろう。  純は、有体に言ってよくモテた。言い寄って来る同年代の女の子には不自由 した事がなく、乃絵に抱いた禁断の想いと性...
  • 比呂美のバイト その1
    【バイト、しようと思うの】(その1)  それは、晴天の霹靂だった。  眞一郎と比呂美が付き合いはじめて10日。学校帰りに比呂美のアパートに 寄るのは眞一郎の日課となっていた。  バスケの練習があるため、普段の比呂美の帰りは遅い。最初の頃はアパート や学校の外で彼女の帰りを待っていたのだが、結局、学校の図書室で時間をつ ぶした後、一緒に下校する事で落ち着く事になった。  わざわざ時間を合わせてまで一緒に登下校など、当人達以外にとっては無駄 な事にしか見えないだろう。だが今は、並んで歩くだけでも心がときめいたり 安らいだりしてしまう。そういう幸せを二人は満喫していた。 「熱いねぇ…」  呆れたように評したのは、他人の事は言えない三代吉である。 「店員がこんなに熱くて、客入るのかよ」とは眞一郎の弁。あからさまに虫の ついた看板娘など、看板にならないからだ。  冷やかし混じりの忠告を受けてから、...
  • 比呂美のバイト その10
    【問題は彼女じゃない。夫でもない】 比呂美のバイト その10 「後になって、二人の関係は、そんなに継続的なものではなかった事がわかっ たの。でも、あなたが家に来た頃は、まだ確かではなくて…」  理恵子の声は、沈んでいた。比呂美を苦しめた自覚があるからだろう。  間違いではあっても、「嘘」ではなかった。当時、彼女は本当にその疑惑で 苦しんでいた所だったのだ。  だがそのせいで、比呂美は自分の想いを過度に封じた。仲上の人々とぎこち ない関係を築くことになった。イスルギノエに入られもした…。  単なる間違いで済まされる問題ではない。  だからといって、理恵子の立場や心情を考えれば、簡単に確かめ、信じられ る問題でもないはずだ。夫が「あの時だけだ」と言ったところで、どうしてそ れを信じられるだろう…。  理恵子はそれ以上は語らない。比呂美に時間を与えてくれているよう...
  • hiromiss
    ...02:古傷 03:比呂美のバイト その1 04:比呂美のバイト その2 05:比呂美のバイト その3 06:比呂美のバイト その4 07:比呂美のバイト その5 08:比呂美のバイト その6 09:比呂美のバイト その7 10:比呂美のバイト その8 11:比呂美のバイト その9 12:比呂美のバイト その10 13:比呂美のバイト その11 14:比呂美のバイト その12 15:比呂美のバイト その13 16:4番の受難 その1 17:4番の受難 その2 18:比呂美の嫉妬 19:眞一郎の絵 その1 20:BX-02 ルミの暗闘(β版) 名無しさん 俺は比呂美には勝てません 交差点 比呂美END予想SS 祭りの日の夜に おいてかないで… そんなこと、決まってるだろ 前編 本編後日談の妄想1 マグカップネタからの妄想 ...
  • 明るい場所に
     true tears  SS第十二弾 明るい場所に 「まずはメガネの話をしよう」  比呂美が仲上家を出て行ったという事実を、眞一郎は受け入れる。  思考をまとめるために、比呂美の部屋で比呂美のいた場所に立ってみる。  ほんの少しでもわかり合いたくて。  新たな決意をしてふたりの思い出の場所に向う。  第十一話の内容を予想するものではありません。  石動純は登場しませんが、展開上、名前は出てきます。  眞一郎応援記念に描いてみました。  前作より前の出来事です。  true tears  SS第十一弾 ふたりの竹林の先には 「やっと見つけてくれたね」 ttp //www7.axfc.net/uploader/93/so/File_4523.txt.html  以前に書き込んだ第十話の眞一郎部屋と比呂美部屋の台詞の修正版を、 最後に...
  • ファーストキス-15
    ▲ファーストキス-14C ――第十五幕『お邪魔します』――  噴水広場で行われた身内だけのささやかなセレモニーは、やがてお開きとなって――。  比呂美は、ヒロシと理恵子と一緒に家へ帰るため駐車場に向かった。乃絵もその車で家 まで送ってもらうことになった。眞一郎は、壁絵に再び暗幕を縛りつけると、照明器具な ど返却や学校の部室の片付けのため、西村先生と行動を共にした。愛子と三代吉は、だれ にもいえない秘密の時間を過ごすため、どこかへ自転車を走らせた。  そして、夜明けを迎えた。  眞一郎は、結局、夜の九時過ぎに帰宅した。  部室の片づけをしたあと、学校の宿直室で仮眠を取らせてもらい、午後から、明日の噴 水広場で行われる壁絵の披露式典の打合せ、その後、壁絵制作者が集っての前夜祭に参加 させられていたのだった。  眞一郎が家の中に入ったとき、中は静かだった...
  • 少し、このままでいい?
    アニメ true tears SS『少し、このままでいい?』 ※6話以降という設定で、眞一郎と比呂美が結ばれる話です。  ──────────  いつからこんな関係になってしまったんだろう……  ふと気がつくとそんなことばかり考えている自分に気付いた。  本格的な冬が近づきつつある日曜の朝、 「眞ちゃーん、ご飯用意できてるわよー」  着替えを終えてベッドの上でぼんやりしていると、階下から母さんに呼ばれた。 「……今行くからー」  日曜くらいのんびり寝ていたいとも思うけど、うちはみんな揃って飯を食うのが当たり前なので仕方なく起き上がる。  どっちにしろこういう生活が身についてるので、逆に起きないと落ち着かなかったりするのだけど。  廊下はひんやりとしていて少しだけ身が引き締まる感じがした。  晴天の朝の日差しもまぶしく心地いい。 「おはよ...
  • 乃絵と比呂美のあいだに2
    前乃絵と比呂美のあいだに 病院へ行くには、竹やぶのトンネルを抜けて海岸通りに出るのが一番早い。 (眞一郎くん!!) 逢いたい、今すぐ眞一郎に逢いたい!! 比呂美の両脚は普段以上の力を発揮して、悪路を駆け抜けていく。 ……その時…… …………ガサガサッ…ガサッ……ザザッ………… 右側の竹やぶが不穏な音を立てて揺れ、何か塊の様なものが滑り降りてくる。 「!!」 バスケで鍛えた反射神経が反応して、頭が命じるより早く、比呂美の身体は止まった。 塊は人だった。見覚えのあるライトグリーンのコート………… 「比呂美っ!!」 息も絶え絶えの眞一郎が、比呂美の視界に飛び込んでくる。 突然のことに呆然としている比呂美を抱きしめようとする眞一郎だったが、 何かが彼の心にブレーキを掛け、その動作を止めさせる。 比呂美には、それが眞一郎の答えだと思え...
  • 37スレ目のゴールデンウィークの妄想
    847 名無しさん@お腹いっぱい。 sage 2008/05/06(火) 22 51 03 ID OjYLiUum お前らどうしたww 過疎り杉w 849 名無しさん@お腹いっぱい。 sage 2008/05/06(火) 23 14 51 ID gBy+fyYb 保管庫の新作見るのに忙しいんだろ 851 名無しさん@お腹いっぱい。 sage 2008/05/06(火) 23 29 17 ID 3OkoLYTZ 流石に燃料不足は否めない。 じゃあ比呂美のゴールデンウィークでも妄想しようか。 1. 中上の手伝い (家事、事務) 2. 自分ちの家事 (たまってる掃除とか洗濯とか) 3. 眞一郎くんとデート (パボーレとか? 或いは多少遠出?) 4. 朋与とショッピング 5. バスケットボール部の合宿 6. バイク代貯めるアルバイト 泊まりの旅行は優等生な高校生なのでありません。 852 名...
  • 降り立つ場所
    11作目今回は進路ネタ          降り立つ場所 制服も既に夏服へ変わり太陽の日差しが容赦無く射す季節 ある出来事により数日、比呂美は少し落ち込んでいた 眞一郎が書いた絵本がコンクールで小さな賞を取ったのだ 初めは比呂美も自分の事のように喜んでいたが日を経つにつれある不安が沸きだしてきた 『私は眞一郎くんの夢の邪魔になるかも知れない』 その不安に色々と考える比呂美 (眞一郎くんに話せば私を想って絵本作家の道を辞めるかもしれない) (じゃあ、朋与や愛ちゃん、野伏君に相談する?) (多分ダメ、私に有利な条件を眞一郎くんに突きつけるかも知れない) (やはりこれは私自身で解決しないと) (そうしないと近いうちに言ってはいけない言葉を眞一郎くんに絶対に言ってしまう) 【私と絵本どっちが大切なの?】 (この言葉だけは絶対に言ってはいけない) そ...
  • 「今だけは……忘れられるから……」
    「乃絵と付き合ってやってくれ」 「俺が石動乃絵と付き合う代わりにあんたに比呂美と付き合ってくれって言ったらどうする?」 「かわいいよな。あの子。……じゃ、そうゆうことで」  売り言葉に買い言葉。というつもりでもなかったが、眞一郎は石動純の言動に納得がいかず、勢いに任せてそんなことを言ってしまった。  比呂美は石動純のことが好きだと言っていたし、自分も比呂美を諦めるためには必要なことのようにも思える。  けど、胸の奥の蟠りが気持ち悪かった。  眞一郎と純とのやりとりからほぼ二月が過ぎた。  あれから純とは何もなかったが、比呂美と接する機会が減ったように眞一郎は感じていた。  もともと学校でも家でも会話することが少なかったが、早くに登校したり帰宅が遅かったり姿を見ることも少なくなった気がした。  部活が忙しいんだろうと眞一郎は推測していたが、実際...
  • 比呂美の嫉妬
    注意書き ttの世界観にない仕掛けを入れています。我慢できない人は読まないでください。 勢いで、ラフとして書いた、一発ネタです。細かい矛盾つぶしはしていません。 バイトシリーズの時間軸とは違い、独立した短編です。設定等も関連ありません。 時間的には、2年生(平成23年)の初夏あたりになります。 BX-01 比呂美の嫉妬(独立) (コンタクト、忘れちゃった…)  そろそろ日が沈もうとする頃、比呂美は近所の商店街にケーキを買いに来て いた。  メガネもコンタクトも忘れてしまったせいで、少し離れた所がボヤけて見え ている。気をつければ支障はないし、部屋に戻るのも面倒だったため、そのま ま出てきてしまったのである。  比呂美の眼は、それほど良くはない。日常生活が不可能なほど見えないわけ でもないが、免許は裸眼では取れないだろう。  ふと視線を上げた彼女は...
  • こんな恋いつか私もしてみたい
    負けるな比呂美たんっ! 応援SS第36弾 『こんな恋いつか私もしてみたい』 昼休みも もう終わる 学食で部の子達と時間をつぶしてから教室に戻った これからはこんな日が増えるかも… 寂しいような 嬉しいような 複雑な思い まあ今は報告が楽しみだ お姫さまは… 居ない なんだ、ギリギリまで粘ってるんだ って、あれ、王子さまは居るのにね ああ、一緒に戻るのが恥ずかしくて 時間差にしてるんだ 芸が細かいね 今更なのに… あ、戻ってきた 「比呂美、どうだった?」 期待してインタビュー これも親友の大事な勤め 「えへへ」 そう笑う比呂美の顔 何かヘン あれ? 嫌な予感… 「どした?」 何で嬉しそうじゃないの? 比呂美の持ってる弁当箱 結び目が綺麗なまま… ちょっと まさか! ...
  • 乃絵と比呂美のあいだに3
    前乃絵と比呂美のあいだに2 「ただいま」 朝からショッピングモールに画材を買出しに出掛けていた眞一郎は、昼食に間に合うように家に帰宅した。 玄関には見覚えのあるブーツ……というか、この家でブーツを履く人間は一人しかいない。 いつもは右に曲がる廊下のつき当たりを、左へ曲がって酒売りカウンターの方へ…… パソコンの置いてある所を覗いて見ると、やはり彼女はそこにいた。 「ただいま」 「あ…お帰り、眞一郎くん」 帳簿を打ち込む手を止めて、眞一郎に向き直る比呂美。 春休みになってから、比呂美は仲上酒造の経理を頻繁に手伝うようになっていた。 バスケ部の練習に行く以外は、ほとんど仲上家にいると言ってもいい。 誰に命令された訳でもないのに何故……と思わないでもないが、その事を比呂美には訊かない。 比呂美には比呂美の考えがあるのだろう。 開いてくれた...
  • ある日の比呂美・番外編2-3
    前:ある日の比呂美・番外編2-2 眞一郎の両肩に手を置いて、そこを支点に比呂美は身体を動かし続ける。 楕円から八の字へ…… 胸の先にある桃色の小肉が、縦横無尽に眞一郎の背で踊った。 「気持ち……いい?」 「……あぁ…………うっ!」 瞼を閉じて身体を小刻みに震わせる眞一郎の痴態が、比呂美の心を熱くさせ、その口元を緩ませる。 だが、そんな比呂美の優位は長く続かなかった。 攻撃に使用している部位は女にとって……比呂美にとって最も『感じやすい』部分。 性感の激しい高揚と限界が比呂美の神経に襲い掛かり、少しずつ意識を混濁させていく。 「…はっ……はぁ……はぁ……」 感じはじめていることを眞一郎に悟られないように、漏れ出る嬌声を押さえ込もうとする比呂美。 しかしそれは、湧き出す悦楽の前では無駄な抵抗でしかない。 程なく、比呂美の声は比呂美自身の制御...
  • 第十二話の妄想 後編
     true tears  SS第十七弾 第十二話の妄想 後編 「本当だ、俺、何やってんだろ」   第十二話の予告と映像を踏まえたささやかな登場人物たちの遣り取りです。  妄想重視なので、まったく正誤は気にしておりませんが、 本編と一致する場合もあるかもしれません。  本編に出て来た伏線を回収してみたいなと思います。  石動純は登場しますが、乃絵にキス発言をします。  明るい展開を心掛けているので、良識のある登場人物ばかりになりました。  最後には第十二話の妄想の要約をしてあります。  前作  true tears  SS第十六弾 第十二話の妄想 前編 「きれいよ、あなたの涙」「何も見てない私の瞳から…」 「キスしてもいいか?」   ttp //www7.axfc.net/uploader/93/so/File_4773.txt.html ...
  • 第十三話の妄想 比呂美エンド 前編
     true tears  SS第十八弾 第十三話の妄想 比呂美エンド 前編 「そう? ありがとう」「こんな自分、嫌なの」  第十三話の予告と映像を踏まえたささやかな登場人物たちの遣り取りです。  妄想重視なので、まったく正誤は気にしておりませんが、 本編と一致する場合もあるかもしれません。  比呂美エンドにしてあります。  本編が最終回ですので、妄想も最終回になります。 「置いてかないで」  比呂美の口から洩れた言葉はむなしく響いた。  眞一郎は振り返る事無く去って行く。  比呂美は右足の下駄を脱いだまま立ち竦んでしまう。  奉納踊りが終わったために人影は少なくなりつつある。  比呂美は歩こうとせずに硬直したままだ。 「比呂美、どうしたの?」 「何があったんだ」  仲上夫妻が慌てて駆け寄ってくれた。  手には眞一郎が踊りで使用し...
  • バスに揺られて
    夏休み真っ最中の8月某日。 比呂美と眞一郎は海に来ていた。といっても泳ぎに来たわけではない。 眞一郎は石段に座って、水平線を見ながら大きく伸びをする。 「せっかくの夏休みだってのに、補習のせいで一日無駄にしちゃったなぁ」 「眞一郎君は毎日ダラダラして無駄に過ごしてるでしょ」 比呂美のきついツッコミが入る。 今日は補習がある登校日。 その帰り道にこうして二人で海に寄ったのだ。 太陽が傾き始めても、気温は一向に下がりそうもない。 冬は雪が積もる富山でも、夏というのは当たり前に暑い。 比呂美も眞一郎の隣に座り、同じ水平線を見ながら言った。 「来週の日曜日、泳ぎに来ない?」 「バスケ部の練習は?」 「休みなの。だから……ね?」 「いいよ」 「やたっ!そうと決まれば水着を買いに行かなくちゃ。晴れるといいな~」 (比呂美の水着...
  • 言っちゃった…
    負けるな比呂美たんっ! 応援SS第15弾 『言っちゃった…』 それはいつものことだった。 眞一郎の的外れな善意が比呂美の神経を逆なでする。 そう、それはいつもの、特に珍しくない出来事だった。 眞一郎の話の間、比呂美の表情は眞一郎の善意とは裏腹に険しくなる一方である。 普通なら途中で気付きそうなものだが、眞一郎は眞一郎で眼の前の少女を喜ばせたいがために 『真心の想像力』発動中で比呂美の険しい表情の意味に気付けずにいる。 いつもなら比呂美の爆発もコントロールされたものだったが 眞一郎の善意があまりにも比呂美にとって受け入れがたい内容だったがために ついコントロールに失敗した。 「眞一郎くんなんて、大っ嫌いっ!」 言った瞬間、比呂美は己の言葉の重大さに気付き、恐れた。 取り返しのつかない失敗、決して許されないはずの… 「あ、...
  • 春雷-2
    ――第二幕『私を守ってね』――  次の日、誕生日当日、眞一郎は慌てて学校から戻ってきた。  朝食の時、理恵子が、今日の誕生日のことに大して触れなったのがかえって不気味に思 えていたからだった。 ……まさか、ド派手なことを考えているのではないだろうか……  いくら比呂美が賛同してくれたといっても、それはあまりにも無神経というもの。  眞一郎はずっと、どちらかといえば質素な誕生日を、迎えていた。ヒロシがあまり騒ぐ のが好きではないし、酒蔵の従業員がいつも近くにいる中で羽目を外すことは出来なかっ たのた。だが、今年は少し『状況』が違う様に眞一郎は感じた。  家へ帰りついた眞一郎は、台所に居る理恵子を見るなり、ほっと胸を撫で下ろした。何 かの料理の下ごしらえはしていたが、周りを見渡しても特別変わった様子はなかった。普 段と変わらない。 「比呂美ちゃんは?」...
  • はじめてのBD
    『 は じ め て の B D 』  クリスマスまであと○日――というカウントダウンの声が町の至るところで聞こえていた。麦 端町はもうすでに純白のベールをまとい、自然界のほうではホワイト・クリスマスの準備が終わ っているようだ。  先日、比呂美は第一志望の大学の推薦枠に見事に合格した。つまり、高校での学業をいち早く 修了したことになり、大学受験を控えたクラスメートの応援役に回った。学校の休み時間、比呂 美の周辺にはいつも、片手ならぬ両手に参考書やノートを抱えた女子生徒が群がり、比呂美がト イレに席を立つことすらままならなかった。加えて、仲上家のお店の手伝いも容赦なく激化した。 早い時期に大学受験を突破してくれて、理恵子の遠慮がなくなったこともあるが、それ以前に、 これからの時期はお店にとって一年で一番忙しくなるので比呂美を頼りにせざるを得なかったの が理恵子の本音...
  • レッツねとられ
    前スレでちょこっと書いてたりしたものですが、また投下してみます 純×比呂美もので、ちょっと(?)NTR気味+比呂美が若干(?)壊れてる のでそういうのが嫌いな人注意 「あなたが好きなのは、私じゃない。あなたには、あの子以外のことはどうでもいいのよ。なぜ分からないの?」 「ッ!」 比呂美が純の無意識の心理を的確に当ててやると、純は驚いたようにのけぞった。 二人の関係が、終わった瞬間だった。 しかし、すぐさま帰ろうとした比呂美の手を、純は引き戻した。 「なに?」 比呂美は純を嫌悪するかのように睨みつける。 「……確かに、あんたの言う通りなのかもしれない」 純はしおらしく言った。 「分かったの? だったら――」 「あんた言ったよな? このままだと、また他の人を巻き込むって」 「……ええ」 純に強く握りしめられている手首が痛む。...
  • ファーストキス-12
    ▲ファーストキス-11B ――第十二幕『そんなの関係ないよ……』―― 「ごめん、待った?」  漫画によくあるような自分の台詞に、比呂美はふきだしそうになったが、今はさすがに 笑えない。 「いや、いま来たところ。時間、ちょうどだし」  眞一郎もまた比呂美と同じことを思う。  約一週間お互い我慢して、ようやく交わした言葉がこれなのか……。  ふたりは、もっと気の利いた台詞をいえなかったものかと、心の中で頭を掻いた。  駅前の喧騒の中、二人の間だけは、なにか特別な空間のようだった。正確に表現するな ら、比呂美の周りは、と言い替えた方がいいかもしれない。ばっちりおめかしした比呂美 は、枯れた木でも蘇らせることができるのではないかと思うくらい若々しいパワーに満ち 溢れていた。それに加え、もはや17歳の小娘の立ち振る舞いではなかった。  眞一郎は、はじめて見る比呂...
  • 第十一話の妄想 後編
     true tears  SS第十四弾 第十一話の妄想 後編 「やっぱり私、お前の気持ちがわからないわ」 「うちに来ない?」(予想)  第十一話の予告と映像を踏まえたささやかな登場人物たちの遣り取りです。  妄想重視なので、まったく正誤は気にしておりませんが、 本編と一致する場合もあるかもしれません。  本編に出て来た伏線を回収してみたいなと思います。  石動純は登場しますが、比呂美に振られます。  明るい展開を心掛けているので、良識のある登場人物ばかりになりました。  true tears  SS第十三弾 第十一話の妄想 前編 ttp //www7.axfc.net/uploader/93/so/File_4598.txt.html 「会わないか?」「あなたが好きなのは私じゃない」 「絶対、わざとよ、ひどいよ」  最後には第十一話の予想...
  • ある日の比呂美・番外編2-7
    前:ある日の比呂美・番外編2-6 ……眞一郎に想いが届いた…… 凄まじい速度で浴びせられる子宮へのキスを受けながら、比呂美はそう考えた。 しかし、「眞一郎くん」と恋しい名を連呼する自分の声に、全く反応が無い。 (…………違う…………違う…んだ……) 眞一郎の施す激しい抽挿の意味が、自分の求めている物ではないことを、比呂美はすぐに悟った。 荒々しい中にも優しく弱点を刺激してくる腰使いは、確かに眞一郎のモノなのだが……何かが足りない。 いつもは感じられる……何かが…… (私だけ……イカせようとして…る?……) 中出し行為を避け、妊娠を回避し、迷い込んでしまった異常な状況を終わらせる。 触れ合っている粘膜から伝わる眞一郎の意図を理解したとき、比呂美の心に暗い靄が掛かった。     …………女の私が覚悟を決めたのに……逃げるの?………… ...
  • はじめての外泊-3
                                     前回 はじめての外泊=2   《 三 あせっちゃった……》   (やっぱり、わたしたち……。まだまだ、子供だ……)  台所を通って、脱衣所のドアを閉めた比呂美は、いつのまにかに少しずつ溜まった心のもやを 一気に吐き出すようにため息をついた。ため息をついた直後、比呂美自身も驚いてしまう。こん なにも緊張していて、ストレスを溜めていたことに。 (どうして、こんなに、疲れてるんだろう)  自問する比呂美。知らず知らずのうちに必死になっている自分がいる。確かに、眞一郎への想 いは真剣だし、嘘偽りない。眞一郎のことがいつも心の真ん中にある。だからといって、いまさ ら眞一郎によく思われたいなどと思って自分を作ったりはしない。そうする必要はないし、それ 以前にそんなことをするのは嫌いだ。でも、なにか、なにか心の奥底に引っかかるものがある。...
  • ファーストキス-4
    ▲ファーストキス-3 ――第四幕『わたしをおもちゃにしないで』――  そのあと、家に戻った眞一郎は、鞄と『ニワトリくん』が入った紙袋を廊下に放り投げ、 比呂美の部屋へ直行した。比呂美の部屋の灯りは点いていたので、比呂美は部屋にいるよ うだ。部屋の前で、眞一郎は、軽く握った拳をドアへ伸ばしかけたが、いったん胸の前で 止めてしまった。これから自分のもたらすことに、覚悟をしなければならなかったのだ。 ……おれは、また、比呂美を泣かしてしまうのか……  それを思うと眞一郎の胸はぎゅっと締めつけられたが、乃絵とのキスのことは、比呂美 に話さないわけにはいかなかった。浮気心がなかったとはいえ、比呂美と交際中の出来事 なのだ――愛子の場合とは状況が違った。だから、たとえ、比呂美を怒らせてしまっても、 泣かせてしまっても、早くその事実を過去の過ちとして葬ってしま...
  • ファーストキス-7
    ▲ファーストキス-6 ――第七幕『やっぱり、こわいんだと思うの』―― ――桜の花びらが舞う中、比呂美が先に階段を上がっていく。  比呂美の腰まで伸びた髪が、時折、眞一郎の顔まで届きそうになる。まるで、眞一郎を からかうように……。その度に、眞一郎は、体の芯にむず痒さを感じ、目の前で揺れてい るスカートに飛びつきたくなる衝動に駆られた。  目の前のふたつの柔らかな膨らみが、スカートを交互に跳ね上げる。その衝撃によって 生まれた波が、スカートの裾まで伝わり、比呂美の引き締まった足の露出を手助けした。 紺色のハイソックスの上の素肌の部分を断続的に開放したのだ。 ……こんな女の子がそばにいて、おれはよく耐えてこられたよな……  眞一郎は、比呂美に対する性的欲求の我慢の継続を褒めてあげたい気持ちになった。比 呂美と気持ちを通じ合わせてから約二ヶ月間、比呂...
  • 銀色の雪
    10作目SS今回は誕生日ネタ          銀色の雪 「今日が眞一郎くんが言ってた日か」 比呂美は登校の支度を終え部屋にあるカレンダーを見ながら呟いた 約二週間前の日曜のデートの帰りの時だった 眞一郎は『明日から二週間ほど一緒に帰れなる』と比呂美に告げたのだ 比呂美は初めは驚いたが、ただ一言『わかったわ、二週間ね』と眞一郎に答えた 初めは何故かわからなかったがデートから帰った後、二週間後の日付を見て気付いた その日は比呂美の誕生日を示していた 部屋に鍵を掛け朝錬に向かう比呂美の心は嬉しさでいっぱいだった (どんな風に祝ってくれるのかな?) 学校に着く間に色々と思い考え比呂美は一つの結論が出てきた 【眞一郎くんが私を待たせる時は必ず嬉しい事がある】 その結論が出た時、自然と安堵が比呂美を包む (うん、これで大丈夫。どれだけでも待てる)...
  • ある日の比呂美・豪雪編2
    前:ある日の比呂美・豪雪編1 「『お前のこと、なんか可愛いって言ってたぞ』……」 あの夜、眞一郎が言い放った言葉を、比呂美はそのまま再現してみせた。 《あの時の仲上眞一郎》になりきって、忘れることの出来ない単語の羅列を突きつける。 「『……嬉しくないのかよ……』」 鬼気迫る様子で間隔を詰めてくる比呂美に、眞一郎は完全に気圧されていた。 「ど、どうしたんだよ」 言葉と態度で古傷を抉られ、眞一郎の顔が歪む。 逃げ出したい、という気持ちが内心を満たしたが、寄りかかっている机が邪魔をして退くことも出来ない。 そんな眞一郎に構うことなく比呂美は前進を続け、遂に肌と肌が触れ合う寸前の位置まで、二人の距離は接近した。 貫くように見上げてくる、比呂美の真剣な眼差し。 「『……嬉しくないなら……ちゃんと言えよ』」 「…………え?」 ……そんなこと……...
  • はじめての外泊-4
                                     前回 はじめての外泊-3   《 四 ふるえちゃった……》    比呂美にはその三文字が、太古で使われた記号のように見えた。視覚で捉えていても、無数に 枝分かれした脳の回路が、千年前の記憶を辿っていくみたいにすぐには繋がらず、ちっとも解析 が進まない感じなのだ。それほどに意表をつかれた三文字だった。  携帯電話のディスプレイには、次のように表示されていた。ト、モ、ヨ、と。 ┏━━━━━┓ ┃ トモヨ ┃ ┃ 0:29┃ ┗━━━━━┛  でも、その混乱はほんの一瞬のことで、比呂美はすぐに自分の大失敗に気づき、胸のど真ん中 に風穴ができるのを感じた。比呂美は携帯電話の筺体(きょうたい)を開いて、まっさきに「ご めんなさい」と謝ろうとしたが、そうする前に、相手の音声が小型スピーカーから飛び出してき た。樹木をなぎ倒す雪崩のような...
  • 私と絵本、どっちなの?
    学校からの帰り道。二人は手を繋いで歩いていた。 「今日、どうする?」 比呂美は少し頬を染めながら俯き加減で囁く。実は今更な質問で、アパートは近い。 「行く…。今日は、泊まるつもりだから…」 眞一郎は、きっぱりと言う。 「うん…」 耳まで赤くなってしまったが、嬉しいので"ふわっ"と握っていた手に力を入れた。 きゅ…。眞一郎も握り返す。きゅ…。 「…」 「…」 お互いに意識して、無言になる二人。 (今日は大丈夫な日だし…、嬉しいな…) 比呂美は期待しているが、眞一郎には"秘策"があった… アパートに着いてから、二人で夕飯の材料の買出しをして、帰ってからはいつもの会話。 比呂美が準備をしている間は、眞一郎が絵本の下書きをしていた。 (な、何かこれって、ふ、ふ、ふう…、きゃ♪) 上機嫌でち...
  • ファーストキス-6
    ▲ファーストキス-5 ――第六幕『ひとりにしといてくれ』――  比呂美は、部活を終え、六時半ごろ帰宅した。  比呂美が学校を出た頃、雨はいったん治まっていたが、仲上家に着いた途端に激しくな り、雷を伴いだした。勝手口には、タオルと足拭きの雑巾が用意してあった。比呂美の靴 もかなりしとっていた。土間には、眞一郎のずぶ濡れの靴が、壁に立てかけてあった。 (眞一郎くん、帰ってるんだ)  比呂美が板張りに上がって靴下を脱いでいると、理恵子が近寄ってきた。 「おかえり」 「ただいま」 「比呂美……」 とちょっと浮かない顔の理恵子。 「……はい」  比呂美は、今朝のことをなにか言われる思うと、理恵子とできるだけ目を合わせないよ うにするため、濡れた足を入念に拭きだした。 「学校で、何かあったの? また、喧嘩したとか……」 「は?」  思いもよらない理恵子の...
  • ある日の比呂美・番外編2-4
    前:ある日の比呂美・番外編2-3 「ごめん……俺、調子に乗って…」 許されない行為をしようとした罪悪感からか、眞一郎は視線を逸らしたまま比呂美に謝罪した。 「ううん。 私が悪いの」 始める前にちゃんと言うべきだったと、比呂美も目を泳がせながら呟く。 そして眞一郎が平静を取り戻したことを確認すると、比呂美は壁際から背を離し、眞一郎に近づいた。 「…………」 黙り込んでしまった眞一郎の瞳を覗き込み、怒っているわけじゃない、と目で訴える比呂美。 その気遣いが眞一郎の心を軽くし、表情に笑みを呼び戻した。 「もう……出るか。 何か冷えてきたし」 緊迫した空気を洗い流そうとする眞一郎の言葉に、比呂美も「うん」と曖昧に答えて、再びシャワーへと手を伸ばす。 眞一郎をその場に立たせたまま、比呂美は先に自分の身体に張り付いたボディシャンプーを流しはじめた。 ...
  • すこしだけ… 甘えてもいい?
    負けるな比呂美たんっ! 応援SS第34弾 『すこしだけ… 甘えてもいい?』 「久しぶり」 どう声を掛けていいかわからず そんな事しか言えなかった 横になった比呂美は こちらに視線をくれてから 「ごめんね」 そう答えてくれた 比呂美の声は鼻声だ 普段の透明感のある比呂美の声とは程遠い 3日ぶりに聞く比呂美の声 たった3日ぶりだというのに その声が こんなにも懐かしい 「傍に寄ってもいいか?」 確認する 「…うん」 枕元までそっと近寄り腰を下ろした 比呂美は不安そうな顔で俺を見上げる 顔は熱のためだろう 朱が差している ところどころ髪が額に張り付いている 痛々しい少女を前に 俺は自信はなかったが 口元に笑みを浮かべた 「やっと逢えた」 それだけ言えた 額から落ちかけてい...
  • ある日の比呂美9
    前:ある日の比呂美8 (危ないところだった) 比呂美が行為を中断してくれなかったら…… その先を考えるとゾッとする。 どこまで堪え性が無いんだ、と自分を内心で罵倒しつつ、眞一郎は比呂美を刺激することに意識を集中させた。 比呂美から見て右側に身体を横臥させ、指の腹で陶磁器のような肌の感触を味わう。 「……ん……んん……」 瞼を硬く閉じたまま、右へ左へと顔を動かして身悶える比呂美を観察する。 鎖骨や腰骨のような『飛び出た部分』に触れると、彼女の身体は強く反応するようだ。 逆に腰より下、まだショーツに覆われている局部に刺激が近づくと、恥ずかしさからか理性が回復するらしい。 太腿の前面から内側に手をスライドさせると、比呂美はパチッと眼を開き、自分を見つめてくる。 怒っているとも懇願しているとも取れる眼差し…… 眞一郎はそれを、「順番が違うでしょ」と...
  • 眞一郎父の愛娘 比呂美逃避行番外編
     true tears  SS第五弾 眞一郎父の愛娘 比呂美逃避行番外編 「それ、俺だけがやらねばならないのか?」  乃絵を送り届けた眞一郎は帰宅する。  玄関の前には眞一郎父がいて話をする。  比呂美と眞一郎母は家の中にいるらしい。  第九話の内容を予測するものではありません。  本編で不明瞭な仲上湯浅両家の設定を追加しております。  比呂美母は比呂美の幼い夏祭り前に病死。  父子家庭であった比呂美父は一年前の夏に病死。  比呂美が仲上家に引き取られた理由は比呂美父の遺言。  true tears SS第三弾 純の真心の想像力 比呂美逃避行前編 「あんた、愛されているぜ、かなり」 ttp //www7.axfc.net/uploader/93/so/File_4286.txt.html  true tears SS第四弾 ...
  • 「言っちゃった…」
    「ほんと、冗談みたいだよね…。おばさんに言われたの。 眞一郎君のお父さんが、私の本当のお父さんかもしれないって。」 誰にも顔を合わせたくなく、自分の部屋のベッドの中で布団を頭からかぶっている のに、比呂美の言葉が頭の中で繰り返し、逃れることはできない。 なぜ、こんなことを母さんが比呂美に? 父さんはみんなを裏切ったのか? 比呂美はこんな思いをずっと一人で抱えていたのか? もし、比呂美が妹だったら…。俺は、まずどんな顔をしたらいいんだろう。 あの言葉を放った比呂美の顔は…。すべてを弾き返すかのようで、月明かりの下とは 思えない輝きをたたえていた。 比呂美と一緒に住むようになってから一年、俺たちはまだぎこちなく生活していた。 比呂美の境遇は、その一つの理由だ。しかし、それだけではないことを明確に悟った。 時として比呂美が放つ、はっとする美...
  • お留守番
    負けるな比呂美たんっ! 応援SS第41弾 『お留守番』 「お留守番お願いね」 ついさっき そう言い残して比呂美は部屋を後にした 今日は休日、お昼時 午後からはふたりで見頃の筈の桜を見に 近所の公園に行く予定 本当はお弁当持参でお花見と行きたいところだが 人出の多さを予想してお散歩のみに計画変更 その代わりに比呂美の部屋での昼食会 何でもヒミツの新メニューのお披露目という事だった のだが… どんな顔をして比呂美を迎えよう? しばらくの間時間が稼げた 「眞一郎くんは座ってて」 そんな比呂美の言葉を守らずに 何か手伝おうとしたのがまずかった 狭い流しに立つ比呂美 背後からフライパンの中を覗き込もうとした 「あー、見ちゃダメー」 おふざけ声で抗議しながら 比呂美が振り返った 心の準備のな...
  • 第十二話の妄想 前編
     true tears  SS第十六弾 第十二話の妄想 前編 「きれいよ、あなたの涙」「何も見てない私の瞳から…」 「キスしてもいいか?」   第十二話の予告と映像を踏まえたささやかな登場人物たちの遣り取りです。  妄想重視なので、まったく正誤は気にしておりませんが、 本編と一致する場合もあるかもしれません。  本編に出て来た伏線を回収してみたいなと思います。  石動純は登場しますが、乃絵にキス発言をします。  明るい展開を心掛けているので、良識のある登場人物ばかりになりました。  最後に今回の絵本である『雷轟丸と地べたの物語』の解釈を記述しておきました。  眞一郎は乃絵を見つける。  いつも『雷轟丸と地べたの物語』という絵本を読んでもらっている岬であり、 乃絵に別れの言葉のようなものがあった場所だ。 『あなたが飛ぶところはここじゃない』 ...
  • @wiki全体から「比呂美のバイト その9」で調べる

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