このSSは東方projectの二次創作です。
原作との相違点、幼稚な表現などが多々ありますので、御了承下さい。
「早苗っ! 大変なんだよ、大変だ! あれ、早苗はどこ?」
「ん、諏訪子じゃないか。早苗だったら里にいる時間だけど」
ある寒々とした春の日。
山の上、守谷神社では一人の神様が神社の中をあっちへこっちへと慌しく動いていた。
それを机に肘をつきながら見ている神、神奈子は尋ねる。
「何なんだい諏訪子。朝から落ち着かないというか、何か焦ってるように見えるけど」
「それがさ、トラブルが起こって地獄からの熱エネルギーが供給されなくなったんだよ!」
「ははぁ、そうだったの。でも、ウチ大してエネルギーになるようなもの使ってないよ。蓄えてある予備電源でも賄えるし。そんな焦ることはないんじゃないか」
「焦るに決まってるでしょこのタツタ神!」
「私は鳥の神じゃない、そしてなんか揚げ物っぽく言うな」
諏訪子はそれから一息入れて、どこから取り出したのかも分からない図を使って今の状況を説明し始めた。
「コホン。まず、この神社のエネルギーは地底からの供給によって電気を得てるのね。それで私達は外の生活と同じようにわりと不便なく暮らしてる。
でもこの供給がストップすると、勿論電気は止まる。それでもしばらくは予備の電気が蓄電してあるからその辺は大丈夫。
でも、唯一の問題がある。予備電源で賄いきれる電気の量にも限界があって、大量に電気を使うものは動かせない」
「成る程。それで今朝、冷蔵庫が動いてなかったのか。
しかし、冷蔵庫には今買い置きしてあるものは何もないが?」
「あぁもう鈍いなこのフィレオ神は!」
「思ったんだけど、あんたさっきから私をどっかのファーストフード店の神と間違えてない?」
「五月蝿いダブルチーズ!」
「……神ですらなくなったね。教祖様が怒るよ」
「ともかく、私が気にしてるのは冷蔵庫なんてチンケなもんじゃないんだよ!」
「じゃあ何よ、もったいぶらずに教えてよ」
荒ぶっている諏訪子は一息つくと、真剣な眼差しで神奈子を見つめながら言葉を放った。
「いい、神奈子? それはね」
「……それは?」
神奈子は息を飲む。
「風呂よ」
「ふ、風呂?
……ああ。そうか……そういうことだったのね」
「やっと気付いたようね」
「ということなんだ早苗」
「は、はいぃ?」
その日早苗は朝から呼び出された。朝から諏訪子はいないし、神奈子がいつもと違って思いつめた顔をしていたから、不安でしかなかったのだが、あまりの拍子抜けに声も裏返ったというさまだった。
「だからどうすれば良いかと諏訪子と考えていたんだ。早苗には辛いかもしれないけど、我慢してくれ……」
「スミマセン、どこをどうしたらそんなにシリアスになれるのか理解する時間を下さい」
「そうか……一大事だからな、早苗には少し重過ぎたかもしれない。悪かった」
「いや、そうじゃなくて!
何でお風呂位でそんなにあまりにも深刻な顔してるんですか。確かにお風呂に入れないのは嫌ですが、だからと言ってそこまで深く考えるのは……」
すると、どこからか聞き覚えのある声がした。
「馬鹿早苗ぇっ!」
「え、諏訪子様? どちらに」
早苗がその姿を探そうとした瞬間、その頭上に降ってくる一つの影があった。
ガツン
「ぶべっ!?」
諏訪子の足は見事に早苗の後頭部を捉える。
それだけならば非想天則でのデジャビュに過ぎなかったが、諏訪子が後頭部を踏みつけた衝撃で早苗の前頭部は鈍い音を立てて机の角に強く打ち付けられた。
「あ」
見ていた神奈子が思わず口を開く。
「あれー? 早苗はどこ?」
早苗に気付かずキョロキョロする諏訪子。神奈子は諏訪子が踏みつけたままの、机に突っ伏したまま腕を力なく垂らしている早苗を指差す。どうやら気絶しているようだ。
恐らく数十程(敢えて単位は表記しない)陥没したであろう額を押さえる早苗。本来なら死んでもおかしくない一撃だったが、そこは流石現人神といったところだろう。
「諏訪子様、ここは室内なのにどこから降って来たんですか……いたた」
頭を押さえている早苗に対し、諏訪子は語尾を強めながら早苗にずいずい近付く。
「あのね早苗! 神が! 巫女が! ちょっとでも汚れたら! 清潔で高貴なイメージが悪くなって! 信仰はどんどんどんどんどんどこどんどこ減ってく一方なの! そしたら私達消えちゃう! ウチの風呂はただの風呂じゃない! 私達と信仰を繋ぐ風呂なんだよ!」
「……か、顔が近いです諏訪子様。そして『!』が非常に邪魔です。今の台詞だけで九つもありましたよ」
「そこで! 私は考えた! ダブルチーズ、説明してやって!」
「……え、それ私のことか?」
「そうよダブチー! 他に誰がいんのさ!」
「略すんじゃないよ。えーと、早苗、じゃあコレを見て」
神奈子が机の上に広げたのは、一枚の地図だった。
「これ、幻想郷の暫定地図ですよね。で、このポツポツ打ってある赤い点は?」
「温泉だよ。今回風呂が使えなくなった以上、ここを使うしかない」
「成る程、それなら大丈夫ですね」
そう安心する早苗だったが、諏訪子が待ったをかける。
「いいや早苗! ところがどっこいさ! 温泉の殆どが人間や妖怪の私物化されてるって河童からの情報なんだよ!
あれれ! 『!』が外れなくなっちゃったよ早苗!」
「初期のSS主みたいに調子に乗って使いすぎたからですよ。怖いんですよ、あんまり使いすぎるとそれが普通になったりしたり」
「何の話よ早苗」
「ともかく、にわかには信じ難いことなのですが、とりあえず神社の存続の危機というのならこの早苗、黙っておけませんね」
「よっ! 早苗! 流石私達の巫女!」
胸元を叩き自信ありげな早苗を、諏訪子が子供のように囃し立てる。
「でも、私は何をすれば」
「なぁに、簡単さ。私達の代わりに温泉の場所を取りに行ってきてくれればいい。
私達は神。参拝客のためにも離れる訳にはいかないからね」
「成る程、いつでも人々のことを忘れないということですね。
分かりました、それでは参ります!」
神に一礼をして、意気揚々と地図を片手に出発する早苗。
その後ろ姿を二人は見送りながら、ぶつぶつ呟いていた。
「ダブチーさ、離れられないって言ったけど、アレただ単に先客とかいたら頭下げに行くのが嫌なだけだよね!」
「……悪いかい」
「いやぁ! 悪くないよ! 神だからイメージ保つためにプライド高いのはしょうがないもんね!」
「すっごい皮肉たっぷりの嫌味の気がするんだけど」
「『!』が外れないから仕方ないんだよ!
ところで、神はいいとして、早苗がいない間巫女は誰がやるのさ!」
「……あ」
最終更新:2011年07月06日 20:41