アットウィキロゴ

前書き


このSSは東方projectの二次創作です。
原作との相違点、二次創作点が多々ありますので、苦手な方はれっつごーばっく。






「……今日も今日で暇だね」
彼は手元の本から、ちらと窓に目を移してそう呟く。
特に目新しい物がないから、自慢のタネにもならないのだ。
どうしたものかと何となく外を見続けていると、一人の妙な男が歩いていたのを見つけた。
「……てな訳で幻想郷です。いやぁ、文章だけならどこにでも行けますねww
ってゆーか、ブログ移転して真っ発の作品がコレっていうのも、なんか感慨深いものがありますよねぇ。ブログに載せた初めてのSSでしたっけ、コレ」
見ると、何やらブツブツ呟きながらこちらをキョロキョロしているようだった。
「はいはい、そんな訳でしてね、第一回はここ、森近さんの住む香霖堂にやって来ましたよ。
つってもねぇ、SSに自分出したのコレが最初で最後だったんだけどさぁ」
彼は思った。
内容からして、もしかすると霊夢辺りが妙ちくりんなツアーでもやって金を稼ごうってことだろうか。
第一、自分の名前を知っている時点で『この店の常連絡み』なのは明白。そのうえ普通の人間ならここに近付きもしないはずである。
しかし、彼に分からないのは男が誰に話しかけているのかということだった。とりあえずは河童の仲間ということにしたが、それが本当なら是非話をしてみたいものだと思っていた。
そう彼が心中をめぐらしていた時、男のすぐ後ろに見覚えのある裂け目が出現する。
だが、男はまだ気がついていない。
「さて、それじゃ店のな……か……へ?」
スキマに気がついた様子の男は、あまりに仰天したのか腰を抜かしてしまった。
その時点で、男の辿る運命は誰から見てもはっきりしていた。
「ひっ……ちょ、まだ話は終わっちゃいなあぁあ……」
男はスキマに引き込まれ、その断末魔は次第に遠く小さいものになる。
「やれやれ、紫もあんな人間どうするつもりなんだか」
男が引き込まれたスキマが閉じるのを見ると、また彼は本に目を移す。
だが、読み始めようとしたその時、突然の来客があった。
「オイ香霖! いるんだろー!」
いつもなら騒がしい箒の風を切る音がするその少女の登場は、特に驚くでもないことだった。
「鍵はかかって無いよ、店だからね。
それにいつも勝手に入って来てるだろう? 急に改まるなんて何かあったのかい」
声を聞いて少女は店内へと扉を開けて入ってくる。
「仮にもココが店なのかどうか確かめたかっただけだ。私は泥棒なんかじゃないからな、それくらいマナーってものだぜ!」
「君は遠慮と言うマナーを第一に身につけた方がいいと思うよ。それで、今日は何しに来たんだ? ようやく品物を買う気になったのかい?」
彼は本に目を落としたまま、皮肉を混ぜて少女に言う。
「生憎だが、今日は別件。このミニ八卦炉が壊れたからな、修理してくれないか?」
少女は店主の開いている本の上にミニ八卦炉を堂々と置く。
「拒否権はないみたいだね。分かった、毛頭拒否するつもりもないから引き受けるよ」
「流石香霖だな。それじゃ頼むぜ」
彼は本を閉じ、ミニ八卦炉を手に取って状況を見始める。
すると、普段なら既に外で時間を潰す少女が、まだ店内でやたらとキョロキョロしているのに気付く。
「……まだ何か用かい」
「ふぇっ!? い、いや、いちゃ悪いのか?」
声をかけられ不自然に声を上げる少女。彼はそんな彼女を不思議に思いながらも再び手元に視線を移した。
ミニ八卦炉の状態は、何回も使った形跡があり、所々が割れていて、お世辞にも使えそうも無い。そんな状態であった。
「あれほど何回も負担をかけるなと言ったのにな。
そもそも、コレは攻撃に使う物じゃ無いんだけどね」
「型に囚われた使い方ばかりじゃ成長しないだろ?」
「壊れちゃ本末転倒だよ?
……ほら、元通り、直ったよ」
「おっ! さすが香霖だぜ!」
店主はよく分からない道具をいくつか取り出したと思うと、僅か数十秒でミニ八卦炉を元の姿へと戻し、少女に渡した。
勿論、こんなに速く修理の出来る代物では無いのだが、店主が何回も壊れたミニ八卦炉を修理している『慣れ』、そしてまた壊れる事を想定してそこまで完全に直している訳では無いからであった。
もっとも、少女は店主の器用さのおかげだと思っているようではあったが。
店主はまた椅子に座り、本を開く。
するとまだ何か用があるのか、少女が口を開いた。
「なぁ……香霖?」
何か躊躇っているようなその少女の声は、いつも元気で遠慮の無いその姿から聞くのは初めてだった。
店主は何かを感じ、視線を少女に移すが、帽子のつばが遮っていて顔が見えなかった。
「魔理沙?」
「……あの、あのさ。香霖、その……」
なおも歯切れの悪い彼女は、ぶつぶつ言った後、口を閉じてしまう。
そして顔を上げる頃には、いつもの雰囲気が彼女を纏っていた。
「いや、やっぱ何でも無いぜ! 修理ありがとな!」
まるで逃げるかのように外に出る彼女。
店主は不思議そうにその後ろ姿を見送っていた。
「今日の魔理沙……何か変だったな」
しばらくその入口を見ていた店主は、店の入口近くに何かが落ちているのに気がつく。
魔理沙の落し物だろう。そう思った店主は、それに近づいて拾ってみた。
それは、何ともシンプルな一枚の封筒に入った便箋だった。
裏返すと、そこには宛先が書かれている。
「森近 霖之助様、だって?」
紛れもなく、店主宛であった。
彼は勝手に見るのも悪いと思ったが、自分宛ということもありその手紙を読んでみることにした。
そこには、店主にとって見覚えのある、昔からのクセのある文字が並んでいた。
「えーと……何だ。
あまり上手い字では無いな。
香霖へ。いつもいつもミニ八卦炉の修理ありがとな。ホントに……」
ホントに感謝してるんだぜ?
香霖は私なんかが手紙書くとは思わなかっただろうな。そうだろ?
……はは! 私だって、本は書くけど手紙を書くなんて思っちゃいなかった。
こんなことなら稗田のトコに手紙の書き方でも教えてもらえば良かったよ。

もう、私が聞きたい事を率直に書く事にするぜ。

香霖はさ、私の事どう思ってるんだ。
はっきり言って迷惑なのか?

いや、そりゃ迷惑だよな。いつもいつも押しかけて来て、それで毎回毎回修理しろって言われてさ。
おまけに、毎回毎回勝手に借りてったり、な。

本当、迷惑だよな。

自分でも分かってる。物を借りても返さないだろうと思われてる事位はさ。私だってバカじゃない。

でも、でもな、「借りる」ってのは、一種の契約……契りのような物だと私は思ってるんだ。

「借りる」ってのはな、私が思うに、相手から物を取って、一時的に自分の物にする訳じゃない。
たとえ自分の手の中に持っていたとしても、それはいつどんな時でも相手の物なんだ。

当たり前の事かもしれないけど、私はそれが1番大切な事だと思ってる。

その物を使う時に相手の影を自然と重ね合わせるんだよ。

だから、私は借りた物はいつまでも大切にしてるんだぜ?
返す事の出来るその日までな。

多分、私は怖いんだ。なんか、香霖達との関係性っていうのが、時間によって風化してくんじゃないかって。

だから常に貸し借りの関係性を作っておく。すると、他人との絆っていうのかな、心が何かで満たされるような気分になるんだ。
……すまん、こんなのただのワガママだよな。

ああ、自分でも何書いてるか分からなくなってきたぜ。

とにかくさ。

私の事、ただの泥棒だと思わないでくれよ?
図々しいかもしれないけど……香霖は私と一番関係の深いの人物なんだからな。

じゃないと、香霖の心も盗んじまうぜ?
なんてな。慣れない事は書くもんじゃないな。

私は盗みなんかしない。
借りるだけだからな。

さっきの冗談だって同じ事だ。
いつまでも、いつまでも大切にしておきたいからな!
「私が伝えたいのはそれだけだぜ。じゃあな! 普通の魔法使い 霧雨 魔理沙」
店主は、読み終えてからもしばらくその文面に目を向けていた。
「……やれやれだよ、全く」
彼はその便箋を戻すと、いつもいる机の引き出しの中に入れ、何もなかったかのようにまた本を開いた。
その時、今度はよく聞き覚えのある風を切る箒の音が聞こえる。二度目のお出ましのようだった。
「お、おい香霖! 小さい封筒をどこかに見なかったか!?」
慌てふためく少女に、店主はいつものように本に視線を落としたまま呟く。
「落ちてなかったよ。
それより、品物を買う気になったかい?」
皮肉たっぷりのその口元は、僅かに笑みが浮かんでいたように見えた
最終更新:2012年03月28日 22:55