最初は、何かと思った。
だって、そうじゃないですか?森の中で突然現れた男の子が、よくわからないけど暴漢っぽい人に突然蹴りをいれて、「だいじょうぶか?」
それはこっちのせりふだよ!と思うのも無理はないでしょう。
だって、そうじゃないですか?森の中で突然現れた男の子が、よくわからないけど暴漢っぽい人に突然蹴りをいれて、「だいじょうぶか?」
それはこっちのせりふだよ!と思うのも無理はないでしょう。
外伝2章 僕とヘンな修道士と女の子について
始まりはあの時、僕が城を出て聖騎士の一人に道を尋ねた時でした。
いま考えてみれば、あれはどうやら兄の差し金だったようなのですが、僕は本来行くべき場所とは反対方向への道を教えられ、それにしたがって森へ入っていったのです。初めての旅、いいえ、一人での外出といってもいいほどですから、浮き足立っていた僕は不覚にも注意深く、後ろから迫るアサシンには気づくこともできませんでした。地図を眺めていたのも重なって、僕の後ろで振りかざされる刃物。
だけどそれは僕を切り裂くことはありませんでした。
ヴァイスが、思い切り蹴りを食らわせて動きを封じてくれたようだったのです。これについては後にヴァイスから散々小言と武勇との、半ば文句とも自慢ともつかない言葉によって知った事実だったのですが―とにかく、彼には感謝しています。これでもう少し謙虚だったら、彼も修道士らしく見えるのですが。
いま考えてみれば、あれはどうやら兄の差し金だったようなのですが、僕は本来行くべき場所とは反対方向への道を教えられ、それにしたがって森へ入っていったのです。初めての旅、いいえ、一人での外出といってもいいほどですから、浮き足立っていた僕は不覚にも注意深く、後ろから迫るアサシンには気づくこともできませんでした。地図を眺めていたのも重なって、僕の後ろで振りかざされる刃物。
だけどそれは僕を切り裂くことはありませんでした。
ヴァイスが、思い切り蹴りを食らわせて動きを封じてくれたようだったのです。これについては後にヴァイスから散々小言と武勇との、半ば文句とも自慢ともつかない言葉によって知った事実だったのですが―とにかく、彼には感謝しています。これでもう少し謙虚だったら、彼も修道士らしく見えるのですが。
さて、その時僕は彼のことをただの子供としか思っていなかったので、口に思わず出した言葉は
「君、大丈夫?」
何も答えないものですから、僕はきっと人身売買かなにかで闇市にでもつれていかれるところだったのでは、と勘ぐります。本人は17歳と主張しますが、僕はどことなく、年齢詐称だな、と思っていました。
僕の予想とは反して彼は大幅に年上であることが後に判明しますが、このときの僕はせいぜい14,5歳じゃないのとか、さめた目線で思っていたことは口に出さないほうが賢明でしょう。以前、若作りだねぇ、と冗談半分にいわれた彼が光魔法を相手にあびせ、殴打していたのを目撃したことがありますから。
僕の予想とは反して彼は大幅に年上であることが後に判明しますが、このときの僕はせいぜい14,5歳じゃないのとか、さめた目線で思っていたことは口に出さないほうが賢明でしょう。以前、若作りだねぇ、と冗談半分にいわれた彼が光魔法を相手にあびせ、殴打していたのを目撃したことがありますから。
なんやかんやで仲間になったヴァイスは僕に町に戻るように提案します。実の所、旅の準備なんてよくわからなかったので彼に任せたほうがいいなというのも本音でした。だから何もいわずに彼に従ったのですが、彼の頼りになること!びっくりしました。人は見た目が9割。ですが1割の印象がまたのこりの9割を変えることも事実だったようです。
旅に必要な物資を買い込んだ僕らは空き地へ。何をするのかと思いきや、ヴァイスは買ったものを全て消してしまったじゃありませんか。なにするんだ!と一喝しようかとも思いましたが、それよりも魔道の力を間近で見た興奮が勝り、僕は少しその状況を楽しんでいたようにも思えます。そう、手品のあれ、「イリュージョン!」みたいな…。
ここで大切なことがひとつ。何を隠そう、この空き地こそ僕の思い出の場所でした。
この場所で、僕が生涯大切に思い続けたひとりの少女が―プリアラが現れ、運命ともいえるような成り行きで仲間になったのです。
初めて見た時の彼女の印象は、そう…
この場所で、僕が生涯大切に思い続けたひとりの少女が―プリアラが現れ、運命ともいえるような成り行きで仲間になったのです。
初めて見た時の彼女の印象は、そう…
真っ黒な猫だなぁ。
後からヴァイスに言われたのですが、黒猫は旅の不吉な出来事を暗示するそうです。だからって、そんな疎遠に扱わなくてもいいのに。僕はいってやりました。
「でも大変なことがあってもヴァイスがいてくれるなら上手く回避できるんじゃないかなあ。」
冗談3割、押し付け7割ほどの言葉で、どうツッコミが入るか見ものでしたが意外な反応を示してきます。
「まっ、まーねっ!俺サマがいれば地震がこようが津波がこようが、指一本でとめちゃうしィ!?」
照れてる…全く迷うことなく照れている…。こっちのほうが反応に困りました。
さて、プリアラですが、彼女は言葉はおいておくとしてとても可憐な少女なのです。旅のなかでこんなこともありました。
偶然通りかかった花畑。彼女は嬉しそうに走り出しました。すこし旅に疲れを覚えていた僕達もここで休憩しよう、と決めてその場に座ります。
楽しげに花を摘むプリアラはまるで妖精のよう、僕の顔が赤かったことは言うまでもないでしょう。
偶然通りかかった花畑。彼女は嬉しそうに走り出しました。すこし旅に疲れを覚えていた僕達もここで休憩しよう、と決めてその場に座ります。
楽しげに花を摘むプリアラはまるで妖精のよう、僕の顔が赤かったことは言うまでもないでしょう。
「…あ。」
こちらへ走ってきたプリアラが僕の頭に花の冠をのせてくれたのです!そして、笑顔でこういいます。
「とっても似合ってるわよ、王様!」
嬉しくて僕はもう、言葉もありませんでした。だから、ヴァイスが後ろで何を言っていたかは考えもしないことにします―
「オイ、レオン!それ茨の冠じゃねーか!3日で国が滅んだ王様の象徴だぞ!」
また、こんなこともありました。
ヴァイスがアクセサリーの店を見たいから別行動してくれ、と言ったあの時。僕はプリアラとお店を見て回ったのです。道端で知らない女性がウィンドウに張り付いていっています。
ヴァイスがアクセサリーの店を見たいから別行動してくれ、と言ったあの時。僕はプリアラとお店を見て回ったのです。道端で知らない女性がウィンドウに張り付いていっています。
「きゃあ、このドレスかわいい!ねぇ、コレかってぇv」
連れの男性は朗らかに笑うと、手を取り合い店内へ入っていきました。ああ、憧れるなあ、そう思ったその時です。
「きゃあ、これかわいい!レオン、見て!」
なんだろう、アクセサリー?ドレス?そう思いつつ僕はプリアラに近づきます。そこにあったのはきらびやかな光沢を放つ小刀でした。淡いピンク色の刃の色。書いてある言葉はこう。「魔剣 血桜 桜の木のもとで命を絶つことを名誉の死とする国において作られた剣。鋭い切れ味を持ちますが、大変危険です。」
危険なら飾るなよ、とか、魔剣かよ、などというツッコミなどもうなしです。
僕もあの男性のように手をとりあえるなら、だけど淡い夢はすぐに終わりました。人の夢とかいて、夢というものは常に儚いのです。
後ろから猛ダッシュで走ってきたヴァイスと彼の愛用するハリセンによって僕のささやかな夢はたたれてしまいました。
僕もあの男性のように手をとりあえるなら、だけど淡い夢はすぐに終わりました。人の夢とかいて、夢というものは常に儚いのです。
後ろから猛ダッシュで走ってきたヴァイスと彼の愛用するハリセンによって僕のささやかな夢はたたれてしまいました。
「バカ!目を覚ませ!魔剣を買ってどうする!」
思えば充実した旅でした。変わった少年との出会い、可憐で芯の強い大切な人との出会い―僕を大人にしてくれたのは、数多の戦いではなく、彼らのおかげ。
僕は王としてこれからもミルディアンを守ります。
この思い出が、きっと支えてくれるでしょう―
僕は王としてこれからもミルディアンを守ります。
この思い出が、きっと支えてくれるでしょう―
空の彼方が光りました。夜空をかける流星?いえ、あれは―
ドスッ!
矢文?!な、なんでしょう。これは…
書き殴った、あまり上手とはいえない字がそこに記されていました。
「えっと…『どこからつっこめばいいかわからんが、とりあえずまとめておく。なんでやねん。』」
この手紙を書いている友の姿が容易に想像できて、僕は苦笑しました。
「ねぇ、プリアラ。懐かしい人から手紙が届いたよ。」