僕の旅は、僕に何をくれたんだろう。
二人の親友は、勿論のこと。僕は強くなれたと思うかい?
国を治めるだけの力は、あると思うかい?
第一章 始まりに戻すための鏡
ミルディアン王国。気高い騎士道を持ち、腕の立つ剣士たちの多くがこの王国出身であるという、剣士の国。それゆえに国王は相当な腕をもつことが要求され、厳しい試練を乗り越える必要がある。その試練の一環として、元第二王子レオナルドは世界をめぐる旅に出たのは、もう2年も前のことである。自らの兄、闇の魔導師、氷の魔導師との決着、そしてサガルマータの制覇を終焉に彼は即位した。今は王子ではなく、王として国に君臨している。
それからというもの、平穏な、退屈な日々を過ごしていたレオナルドだが、ある日のこと、旧友からの届け物を受け取ったのを契機にまた戦乱へと巻き込まれるのであった。
「国王、魔導師イシュナードが国王に申し上げることがあると…」
「そうですか。こちらに…」
「失礼します。」
「そうですか。こちらに…」
「失礼します。」
魔術師イシュナード。強力な炎の魔導師であった彼はその腕を買われ、宮廷魔導師として城に仕えるようになった。その働きは高く、それでも慎み深く振る舞い、平和を愛する静かなその性格はレオナルドも深く信頼している。
「国王様。ヴァイス様より、この包みが…」
「ヴァイスから?相変わらずいきなりだね…。なんだろう?僕の誕生日でもないし、国に特別なことがあるわけでもないし…。手紙も無かったんですか?」
「はい…」
「そう…ですか。わかりました。後から、開けてみましょう。」
「ヴァイスから?相変わらずいきなりだね…。なんだろう?僕の誕生日でもないし、国に特別なことがあるわけでもないし…。手紙も無かったんですか?」
「はい…」
「そう…ですか。わかりました。後から、開けてみましょう。」
イシュナードは法衣を翻し、一礼をしてその場を去った。王の間に静寂が訪れる。
机の上へ少し疲れた瞳を向けると、開いたままの本のページが風に吹かれてめくられていた。肩を落としつつ椅子へ腰掛けようと足を踏み出した時、カラスが一羽ギャア、と鳴いた。大きな音にビクっと肩を震わせマントを翻すと瞳が赤く光るカラスが、片言の言葉を切れ切れに伝えた。
机の上へ少し疲れた瞳を向けると、開いたままの本のページが風に吹かれてめくられていた。肩を落としつつ椅子へ腰掛けようと足を踏み出した時、カラスが一羽ギャア、と鳴いた。大きな音にビクっと肩を震わせマントを翻すと瞳が赤く光るカラスが、片言の言葉を切れ切れに伝えた。
「れ、れお、ん。れお、ん。いやな、いやなよかん、が、する、ぜ!ばかな、ことは、れお、ん!やめたほう、が!が!みの、ためさ!すっとぼけた、すっとぼけた!すっとぼ、けた!おま、え!は、どう、せひ、ひひひ!ひっかかるだろ、だろうから!お、れさまがすっと、んでって、やるるるる、ぜ!」
「…何を言っているのか聞きづらいけれど、侮辱の言葉が一杯入っているねえ…すっとぼけただけなんで3回も言うんだろ…。これは、絶対ヴァイスだね。でも、一体…嫌な予感って…?あ、もしかしてこの届け物は、ヴァイスが僕に助けを…?」
「…何を言っているのか聞きづらいけれど、侮辱の言葉が一杯入っているねえ…すっとぼけただけなんで3回も言うんだろ…。これは、絶対ヴァイスだね。でも、一体…嫌な予感って…?あ、もしかしてこの届け物は、ヴァイスが僕に助けを…?」
レオナルドは包みへ目をやった。あまり大きくは無い包みだ。重さもあまりない。魔術に関する知識などほとんどないレオナルドにはこれがいったいなんなのかは全く見当も付かないが、賢いヴァイスのことだ。レオナルドにとって有用なものにちがいない。
そう考えて、レオナルドは包みを破る。姿を現したのは水晶の鏡だった。青白い光を放つ水晶に鏡が埋め込まれ、光が乱反射していた。一瞬その光景に目を奪われたが、改めてレオナルドは首をかしげた。これが一体、何の役にたつというのだろう?
ドアをノックする音が聞こえる。入るように指示をすると、現れたのはイシュナードだった。
そう考えて、レオナルドは包みを破る。姿を現したのは水晶の鏡だった。青白い光を放つ水晶に鏡が埋め込まれ、光が乱反射していた。一瞬その光景に目を奪われたが、改めてレオナルドは首をかしげた。これが一体、何の役にたつというのだろう?
ドアをノックする音が聞こえる。入るように指示をすると、現れたのはイシュナードだった。
「レオナルド王―…それは、ヴァイス様からの…」
「そうです。イシュナード、この鏡がなんなのか、どんな力をもっているのかわかりいませんか?さっき、ヴァイスから伝言があって、僕になにか嫌なことがあるんじゃないかって…。きっと彼のことだから、それに立ち向かうのにきっと役に立つものをくれたんじゃないかと思ってね。」
「私が見ましたところ…、日にかざして力が発揮されるものかと。ただ、効力はわかりません…。」
「日に?そうか、それがわかっただけでもありがたいよ。」
「もったいなきお言葉。」
「じゃあ、僕は試してみるよ。」
「そうです。イシュナード、この鏡がなんなのか、どんな力をもっているのかわかりいませんか?さっき、ヴァイスから伝言があって、僕になにか嫌なことがあるんじゃないかって…。きっと彼のことだから、それに立ち向かうのにきっと役に立つものをくれたんじゃないかと思ってね。」
「私が見ましたところ…、日にかざして力が発揮されるものかと。ただ、効力はわかりません…。」
「日に?そうか、それがわかっただけでもありがたいよ。」
「もったいなきお言葉。」
「じゃあ、僕は試してみるよ。」
レオナルドは、テラスに出て、空に輝く陽に向かって鏡をかざした。
上空の蒼へ白い光が飛び立つ。その光が収束し、そして破裂する。その光がミルディアン城へ雨のように降り注ぎ、レオナルドにむかってくる。
上空の蒼へ白い光が飛び立つ。その光が収束し、そして破裂する。その光がミルディアン城へ雨のように降り注ぎ、レオナルドにむかってくる。
時を同じくして、湖の上に佇んでいたヴァイスは目を開いた。紅の瞳がギラギラと光っている。これは、彼が魔術の類を使う時に見せる姿だが、すぐに光は消えた。ため息をつき、そして、そのまま湖の上を走り出す。水面付近で雫が散るが、波紋が浮かぶだけで水は大きな音を立てなかった。
「…クソッ!今からでも間に合うか?レオンのそばにはイシュナードのヤツが…ああもう!」
空間がねじれて、金髪の子供が現れる―ベルセルクだ。
「ヴァイス様!まずいです!アレですけど…ヴァイス様からのものと勘違いされているみたいです!」
「いや、そう仕組んでるんだろ。ここからミルディアンまで、かっとばしてもざっと8日か…ダメだな、間に合う気がしない…」
「砕くことは?」
「ダメだ。下手をすると―いや、ごちゃごちゃしゃべる暇はない!ベルク!全速力でいく。封印をとけ!」
「いや、そう仕組んでるんだろ。ここからミルディアンまで、かっとばしてもざっと8日か…ダメだな、間に合う気がしない…」
「砕くことは?」
「ダメだ。下手をすると―いや、ごちゃごちゃしゃべる暇はない!ベルク!全速力でいく。封印をとけ!」
こくりとうなずいたベルセルクの姿が徐々に変わっていく。
すっかり青年の姿になったベルセルクはヴァイスを肩に担ぎ上げ、今までとは比べ物にならない速さで空間を駆け出したのだった。
すっかり青年の姿になったベルセルクはヴァイスを肩に担ぎ上げ、今までとは比べ物にならない速さで空間を駆け出したのだった。