第四章・菫
何だか、雲行きが怪しくなって来た。黒い雨雲がじわりじわりと空を侵食する。天気予報では一日晴れると言っていたのに。……ウソ吐き。
まぁ良いや。とにかく早く帰ろう。公園を突っ切っていけば近道になる。僕は薄暗く影を落とす雨雲を見上げ、急がないと濡れてしまうなと歩を進めた。平凡な顔立ちの僕が濡れたところで色男になりはしない。
――あれ?
公園に入ってすぐ、ふと目に着いたものに驚き僕は足を止めた。
「君、ねぇ、ちょっと」
公園の隅で丸くなり、すやすやと気持ちよさそうに寝息を立てている女の子。すぐ横には、菫がささやかに咲いていた。
くるんと外にはねた髪にくりくりとした団栗眼の可愛らしい女の子。女の子は一度かすかに目を開いたが、すぐにまた目を閉じてしまった。
「ねぇ、起きなよ。雨降りそうだし、風邪ひくよ」
「…ん、んー。まだ、眠いよー?ねむ…いー。ねる」
「いや、眠いじゃなくてさ。家まで送ってあげるから、立って」
少し体をゆすってみると、女の子は眉間に盛大なしわを寄せ、迷惑そうな唸り声をだした。
「んもー、ウルサイなぁー!あたしはここにいるのっ。ここがあたしのお家なんだからぁ!」
僕の足をぺちぺち叩き、ころりと寝返りを打った。…ここが家?まさかホームレスじゃあるまいな。…こんな十にも満たないような子がホームレス?まさか。ていうか親はどうした。この子の親はどこにいる。
「ここが家ってどういうこと?あまり人の事からかっちゃダメだよ」
「めーんーどーくーさーいー!!もうっ、鬱陶しいなぁ!」
…何が何でも動かないつもりなのかこの子は。
ぽつりと、雨が頬を濡らした。空はどんよりと暗い。本降りになるまでそう時間は掛からないだろう。困ったな、と僕は空を見上げた。
「あたしはこーやって隅っこで丸まっているのが楽チンで幸せなのっ!もー、ねーむーたいーのー!」
ごろごろごろ。
転がる。これでもかと転がりまくる。服が汚れるとか髪が乱れるとか、そういったことは一切考えていないらしい。
「…だからさ、天気が悪いからってさっきから言ってるだろ?風邪ひくし、下手したら肺炎とかになるかもしれないし。家まで送るからさ、君、名前は?」
女の子はつんと唇を尖らせ僕を睨んだ。
まぁ良いや。とにかく早く帰ろう。公園を突っ切っていけば近道になる。僕は薄暗く影を落とす雨雲を見上げ、急がないと濡れてしまうなと歩を進めた。平凡な顔立ちの僕が濡れたところで色男になりはしない。
――あれ?
公園に入ってすぐ、ふと目に着いたものに驚き僕は足を止めた。
「君、ねぇ、ちょっと」
公園の隅で丸くなり、すやすやと気持ちよさそうに寝息を立てている女の子。すぐ横には、菫がささやかに咲いていた。
くるんと外にはねた髪にくりくりとした団栗眼の可愛らしい女の子。女の子は一度かすかに目を開いたが、すぐにまた目を閉じてしまった。
「ねぇ、起きなよ。雨降りそうだし、風邪ひくよ」
「…ん、んー。まだ、眠いよー?ねむ…いー。ねる」
「いや、眠いじゃなくてさ。家まで送ってあげるから、立って」
少し体をゆすってみると、女の子は眉間に盛大なしわを寄せ、迷惑そうな唸り声をだした。
「んもー、ウルサイなぁー!あたしはここにいるのっ。ここがあたしのお家なんだからぁ!」
僕の足をぺちぺち叩き、ころりと寝返りを打った。…ここが家?まさかホームレスじゃあるまいな。…こんな十にも満たないような子がホームレス?まさか。ていうか親はどうした。この子の親はどこにいる。
「ここが家ってどういうこと?あまり人の事からかっちゃダメだよ」
「めーんーどーくーさーいー!!もうっ、鬱陶しいなぁ!」
…何が何でも動かないつもりなのかこの子は。
ぽつりと、雨が頬を濡らした。空はどんよりと暗い。本降りになるまでそう時間は掛からないだろう。困ったな、と僕は空を見上げた。
「あたしはこーやって隅っこで丸まっているのが楽チンで幸せなのっ!もー、ねーむーたいーのー!」
ごろごろごろ。
転がる。これでもかと転がりまくる。服が汚れるとか髪が乱れるとか、そういったことは一切考えていないらしい。
「…だからさ、天気が悪いからってさっきから言ってるだろ?風邪ひくし、下手したら肺炎とかになるかもしれないし。家まで送るからさ、君、名前は?」
女の子はつんと唇を尖らせ僕を睨んだ。
「あたしはスミレ」
鬱陶しそうに言って、姿を消した。
「……またか」
僕はかすかに笑う。
「全く、何が本物なのか分からなくなりそうだ」
菫の花言葉は、『思慮』だというのに。
「……またか」
僕はかすかに笑う。
「全く、何が本物なのか分からなくなりそうだ」
菫の花言葉は、『思慮』だというのに。