羽根あり道化師
4章 俺サマと愉快な仲間たちと青春探し
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北の魔女を避けるように、俺たちは西の魔女に会った後、南へ向かった。四大魔法使いはそれぞれ強力な力こそもってはいるものの、北の魔女なら赤道より南側に力を影響させることはできないし、西の魔女ならば本初子午線より東側に力を影響させることは出来ない。全ての魔法使いが西の魔女のように良心的ならいいものの、現実はそうではないし、さらに不幸なことに俺たちの目指すサガルマータという場所は、世界の中心にある。つまるところ、全ての魔法使いの力が影響する。サガルマータに到達すればその高度ゆえに魔法の力なんて影響しえないだろうが、問題はその到達するまでの過程。北の魔女が邪魔をしないとも限らない。さーて、どうしたものか・・・。そう(俺だけが、もしかしたらプリアラも多少)悩んでいるうちに、俺たちは南の音楽の町、ロリスヴァルに辿り着いた。この世界における珍しい観光都市で、かつ音楽都市。名のある音楽家はここでリサイタルを開くのが定例となっている。町全体をドームに覆い、あらゆる機械を導入しているという、機械廃絶のこのご時世には珍しい場所だ。この音楽都市を、俺たちは本来一泊してさっさと通り過ぎる筈だった・・・。
4章 俺サマと愉快な仲間たちと青春探し
「この宿でいいかな。」
「うん、そうね。なかなかいいじゃない。問題は、部屋が二つ空いているかどうか、だけど。」
「うん、そうね。なかなかいいじゃない。問題は、部屋が二つ空いているかどうか、だけど。」
観光都市だから、やはり宿はたくさんある。だけれど、それだけ人も来るというわけで・・・プリアラと相部屋にするわけにもいかなくて、俺たちは宿を探すのに手間取っていた。そんななか、群衆にまみれてぼーっと突っ立っている男が約一名。鮮やかな金髪が目立ってはいるものの、その正体が王族なんてことは誰も気づいてすらいない。だが、やっぱり持ってるものは高価なものが多いから、こんなに一通りの多いところではカモにされやすいにきまってる。警戒心をもて、警戒心をー!
「あいつ、またぼんやり立って・・・スリとかいたらどーすんだ。」
俺が愚痴をこぼすと、プリアラはにっこりと笑い可憐なしぐさでレオンのもとへ駆け寄っていった。走っている様子だけみれば、美少女が待ち合わせの彼の元へ急いでいるようにも見えるんだけどその笑みの真実を知っている俺には恐怖にしか思えない。案の定、プリアラはレオンの背後に立つと、強烈な爆発を伴った左ストレートをぶちかました。これでも死なないレオンって、やっぱり強い人間なのかもしれない。とりあえず、瀕死状態に陥ったレオンをずるずると引きずり、回りの人間から変な視線を浴びせられる中、俺たちは宿を取ることに成功した。
「治療魔法、私使えないのよ。ヴァイス治しておいてあげてね♪」
プリアラ・・・お前は鬼か。ぼーっと突っ立っていたこいつもこいつだが、なんだかかわいそうにすら見えてきた。
さっさと治療魔法をかけてやると、レオンは苦笑しながら起き上がった。まるで寝坊しちゃった、と言わんばかりのような表情だ。さっきまで瀕死だったくせに。
さっさと治療魔法をかけてやると、レオンは苦笑しながら起き上がった。まるで寝坊しちゃった、と言わんばかりのような表情だ。さっきまで瀕死だったくせに。
「いやー、ちょっと気になるチラシがあって見ていたんです。」
「気になるチラシぃ?何?」
「なんでも、1週間後にミュージックフェスティバルがあるらしくて・・・それに僕の好きなアーティストが出るんですよ。」
「へー。」
「あっ、興味なしって顔してますね?!ひどいなあ、すごく綺麗な歌声で・・・」
「興味なしっ!俺出かけてくるな!」
「気になるチラシぃ?何?」
「なんでも、1週間後にミュージックフェスティバルがあるらしくて・・・それに僕の好きなアーティストが出るんですよ。」
「へー。」
「あっ、興味なしって顔してますね?!ひどいなあ、すごく綺麗な歌声で・・・」
「興味なしっ!俺出かけてくるな!」
レオンは一度話しだすと超長い。それだったら、この街でストリートライブやってるやつらの演奏を聞いたり、アクセでも買ったりしてるほうが楽しいに決まってる。この街は夜になっても店は閉まったりしないし、どこにいっても音楽がなってるから、外を歩くのは本当に楽しい。ついつい俺もずらずらと立ち並ぶ、ぼんやりとした光を放った露店でシルバーアクセ買ったりして、ちょっとだけ旅の目的を忘れたりもした。そのときだった。
「もう今回は代わりを探そう!最悪、出場を辞退するしか・・・」
「ダメよ。出場辞退はできないわ。私たちの曲を楽しみにしてる人がいるもの。それに、あの人はきっと戻ってきます。」
「・・・しかしっ」
「!」
「ダメよ。出場辞退はできないわ。私たちの曲を楽しみにしてる人がいるもの。それに、あの人はきっと戻ってきます。」
「・・・しかしっ」
「!」
揉め事の声がするなと思って路地裏を覗いたら、その声の主と思しき長身の男と巻き毛のかわいい女の子がいるのが見えた。別に女の子が危険な目に晒されているわけでもないし、何か重要な話し合いをしているらしい。関わらないほうがいいかなと思ったら女の子と眼があっちゃって、マズイなーと思ってこっそりと引き返そうとしたが
「アクセル!!ほら、やっぱり帰ってきてくれた!」
「・・・は?」
「ロレーヌ、この人は・・・」
「ふふっ、早く練習するよ!あと一週間しかないんだから!ヴォルティ!みんなをスタジオに集めておいて!」
「・・・・・・わかったよ、ロレーヌもすぐに来てくれ。」
「・・・は?」
「ロレーヌ、この人は・・・」
「ふふっ、早く練習するよ!あと一週間しかないんだから!ヴォルティ!みんなをスタジオに集めておいて!」
「・・・・・・わかったよ、ロレーヌもすぐに来てくれ。」
え?アクセル?俺ヴァイスですけど???何この子俺の腕つかんで引っ張っちゃってるの?そっくりさん?そっくりさんか?
「ちょ・・・悪いけど、人違いじゃないのか?俺はアクセルじゃない。ヴァイスだ。」
「ふーん、ヴァイス君って言うんだ?私はロレーヌ、よろしくね。あなたアクセルにすっごく似てるの。」
「似てるからってなー、俺ツレも待たせてるし・・・」
「お願い、ちょっとだけ付き合って!今私のバンドがピンチなの。アクセルって、ギタリストなんだけど1年前居なくなってしまって・・・」
「ふーん、ヴァイス君って言うんだ?私はロレーヌ、よろしくね。あなたアクセルにすっごく似てるの。」
「似てるからってなー、俺ツレも待たせてるし・・・」
「お願い、ちょっとだけ付き合って!今私のバンドがピンチなの。アクセルって、ギタリストなんだけど1年前居なくなってしまって・・・」
おいおいおい、俺にそのアクセルとか言う奴の代わりをやれってか。この女、正気か?あと一週間、とか出場、とかいう単語を聞けばミュージックフェスの出場者だってことがわかる。つまり、プロのバンドだ。世間でも有名にちがいない。それに俺が入れってか?しかも一週間しか練習できないのに?!
「無茶言うな!」
「大丈夫よ。」
「お前、俺楽器弾けるとでも思うわけ?」
「あなた、ギター弾けるでしょう。」
「大丈夫よ。」
「お前、俺楽器弾けるとでも思うわけ?」
「あなた、ギター弾けるでしょう。」
!・・・正直言うと、俺はほとんどの楽器を演奏することができる。長く生きてきた所為かもしれないけれど、音楽との相性がいいのか、今まで弾きこなせないものはなかった。ギターも勿論例外じゃない。
「それに、他にもいろいろ弾けるみたいだし。音楽的センスをすごく感じるわ。・・・私にはわかるの。スタジオに行けばアクセルのギターがあるんだ!とりあえず音合わせするよ!」
・・・超強引だな、こいつ。女ってやっぱり怖い。ぐいぐいと俺は引っ張られていく。人ごみをスルリスルリと抜けるロレーヌとかいう女は細身のわりに、かなりの力をもっているらしかった。
「ヴァイス??街に来てたの?」
げっ、ここでプリアラかよ!最悪の取り合わせだ・・・
「あ、ああーなんかレオンと一緒に話すのもつまんないと思ってー」
「ちょ・・・あなたもしかしてナンパ・・・」
「ちょ・・・あなたもしかしてナンパ・・・」
してねえよ!どっちかっていうと逆ナンだよ!むしろ拉致連行!激しく人権を無視したスカウトをされたよ!!
「ちげーよ!」
「お連れさんって・・・この方なの?はじめまして、ロレーヌ・ジェフリーといいます。ちょっとヴァイス君を一週間ほど借りてもいいですか?」
「おい、ロレーヌっ!」
「お連れさんって・・・この方なの?はじめまして、ロレーヌ・ジェフリーといいます。ちょっとヴァイス君を一週間ほど借りてもいいですか?」
「おい、ロレーヌっ!」
プリアラに半分助けを求めるように視線を俺は送った。が、肝心のプリアラはクスッと笑うと、俺に意味ありげな視線を送り、ロレーヌに言う。
「ご自由にどうぞ。ヴァイス、あなたも隅に置けないのね。」
「だーーかーーらーーちがうってーーー!」
「ありがとう、ほらほらヴァイス君!はやくスタジオに行くよ!」
「だーーかーーらーーちがうってーーー!」
「ありがとう、ほらほらヴァイス君!はやくスタジオに行くよ!」
ロレーヌは、普通に見ると大人しそうな、お嬢様系の女の子だ。だのに、この強引さはなんだ?!只者じゃねえ!世間知らずがこうさせるのか、どうなのか、上流階級なんぞに携われやしない俺には果てしなく謎だ。プリアラの姿が小さくなっていくのを見ながら引っ張られていた俺だったが、ロレーヌが急ブレーキをかけたことで、俺も止まった。大きなガラス張りの建物の中にロレーヌはずんずんと入っていく―ガードマンたちも深深と頭を下げていた―そして
「ここ、第三スタジオをメインに使っているの。一番大きいスタジオなのよ。とりあえず、楽譜渡すからちょっと練習しておいて。私はヴォイストレーニングしてくるわ!あっ、そうだ。さっき見た背の高い男の人、いるでしょう?あの人はヴォルティ。マネージャーよ。困ったことがあったら彼に言って。ベースはイノザート、ドラムスはカディス。仲良くしてあげてね!」
ロレーヌに第三スタジオに押し込められ、こけそうになった俺だったが、なんとか持ちこたえた。後ろでドアが閉まる音を聞いた後あたりを見回すとイノザート、カディス、ヴォルティが笑っているのが見えた。ちくしょう、俺のことか。俺のこと笑ってるのか。
「いや、すまないね・・・君、名前は?」
「・・・ヴァイス。っていうかあの子なんなんですか?いきなり・・・」
「・・・ヴァイス。っていうかあの子なんなんですか?いきなり・・・」
俺が文句をたれると、緑色の瞳をした、細身の男―イノザートが困ったように笑いながら説明をしてくれた。
「君は、アクセルに似ているんだよ。すごくね。」
「それ、ロレーヌにも言われました。」
「それ、ロレーヌにも言われました。」
今度は少し太っている優しそうな風貌の男、カディスが言う。
「ロレーヌがつれてきたからにはヴァイス君、君は楽器が得意なんだろ?困るのもわかるんだけど、人助けだと思って参加してくれないかな?」
カディスの説明に補足をつけるようにヴォルティが続けた。
「これでも、このバンド・・・BPMはかなりの人気を博しているんだ。それが出場辞退するっていうことは今更できないしね。それに、今回ロレーヌは引退するつもりなんだよ・・・。だから成功させてあげたいんだ。」
「引退?どうしてですか?ロレーヌってまだ若い。これからも歌をうたっていけるじゃないですか。」
「引退?どうしてですか?ロレーヌってまだ若い。これからも歌をうたっていけるじゃないですか。」
俺の言葉に重い空気が流れてしまった。もしかして、俺は言ってはいけないことを言ったのか?しかし、いったい何が?
その空気をぶっこわすように、ドアが開く。そしてロレーヌが明るい笑みを浮かべながら入ってきた。
その空気をぶっこわすように、ドアが開く。そしてロレーヌが明るい笑みを浮かべながら入ってきた。
「お待たせー!ヴァイス君、ちゃんと練習した?」
「っ?あ、・・・」
「っ?あ、・・・」
楽譜をちらっと見ただけで練習なんて当然していない。ていうか、ロレーヌ。ヴォイストレーニング早すぎじゃないのか?
「まあ・・・練習はしてないけど楽譜は見た。なんとか合わせるよ。みんなのを聞いたらたぶんあわせやすいから。」
「おお~、素人にしては凄い発言だ。じゃああわせてみようか。」
「おお~、素人にしては凄い発言だ。じゃああわせてみようか。」
楽譜を見たが、随分ロレーヌのイメージには合わないパンクテイストな曲だな。このお嬢様とパンクっつうギャップがいいんだろうか?それにしてもパンクのギターって難しいんだよな。今更ながら、ちょっとだけ不安になってきた。
「♪~♪♪~・・・OK!ここまでにしよう!ヴァイス君、やっぱりあなた凄いのね。」
「あ?そうか・・・?まぁこれでも楽器は得意だけど。」
「ふふ、ミュージックフェスまでの一週間、ここに通ってもらうわ。あなたたちの宿の経費はウチでもつから♪ね?」
「・・・んー、仕方ねえな。」
「あ?そうか・・・?まぁこれでも楽器は得意だけど。」
「ふふ、ミュージックフェスまでの一週間、ここに通ってもらうわ。あなたたちの宿の経費はウチでもつから♪ね?」
「・・・んー、仕方ねえな。」
強引とはいえ、引退を控えたロレーヌを見捨てることはできない。こいつらのことを待ってるファンもいるみたいだし。とりあえずの今日のところは宿に引き返すことにした。もう深夜遅くだ。プリアラもレオンもぐっすり眠ってるだろうな、と思いながら正面の入り口を通ろうとしたそのときだった。イノザートが俺を呼び止める。その表情は少し深刻そうだった。
「どうしたんですか?」
「さっきの話の続きなんだけれど、すぐ終わらせるから時間いいかな?」
「かまいません。いったい、なぜロレーヌは歌手をやめるんですか。」
「ロレーヌは・・・あと半年の命なんだ・・・。喉に肉腫が出来ていてね、治せるような凄腕の法術師も見つかっていない。一年前にその病気のことがわかって、アクセルはそれに効く万能薬か、法術師を探しに行ったんだ。だが・・・途中で命を落としてしまった。」
「!?アクセルが・・・死んでる?そのこと、ロレーヌには言ったんですか?」
「伝えていない。彼女はアクセルの恋人だったから、きっと体に影響が出て悪くすればショック死してしまうだろう。あのとおり、感情の起伏が激しい子だからね。だが、自分の病気のことは静かに受け入れているようなんだ・・・。できれば、アクセルの悲報を知らせずにおきたい。彼女はきっと自分を責めてしまうだろうから・・・。」
「・・・そうか・・・、そうだったんですか・・・。わかりました・・・、俺もできる限り協力します。」
「ヴァイス君、ありがとう。君のギターの音までも、アクセルにソックリなんだ。もしかしたらロレーヌはそのことも見抜いていたのかもしれない。くれぐれも、よろしくたのむよ。」
「さっきの話の続きなんだけれど、すぐ終わらせるから時間いいかな?」
「かまいません。いったい、なぜロレーヌは歌手をやめるんですか。」
「ロレーヌは・・・あと半年の命なんだ・・・。喉に肉腫が出来ていてね、治せるような凄腕の法術師も見つかっていない。一年前にその病気のことがわかって、アクセルはそれに効く万能薬か、法術師を探しに行ったんだ。だが・・・途中で命を落としてしまった。」
「!?アクセルが・・・死んでる?そのこと、ロレーヌには言ったんですか?」
「伝えていない。彼女はアクセルの恋人だったから、きっと体に影響が出て悪くすればショック死してしまうだろう。あのとおり、感情の起伏が激しい子だからね。だが、自分の病気のことは静かに受け入れているようなんだ・・・。できれば、アクセルの悲報を知らせずにおきたい。彼女はきっと自分を責めてしまうだろうから・・・。」
「・・・そうか・・・、そうだったんですか・・・。わかりました・・・、俺もできる限り協力します。」
「ヴァイス君、ありがとう。君のギターの音までも、アクセルにソックリなんだ。もしかしたらロレーヌはそのことも見抜いていたのかもしれない。くれぐれも、よろしくたのむよ。」
暗い気持ちになりながら、俺は人ごみの中を歩いた。ロレーヌを励ますことなんて、絶対にできない。ロレーヌが本当に元気になるには、アクセルをつれてくるしか。・・・待てよ、俺の力を持ってすればもしかしたら病気を治すこともできるかもしれない。ロレーヌに相談したほうがいいかもしれないな。問題はアクセルのこと、それだけだけど。そう決心して、俺は宿の戸を開けた。戸を開けるとすぐに酒場があって、外同様かなり煩いのだが、そんなことはもう気にならない。っていうか気にする気にもなれなかった。筈だった。
「・・・って何してんだお前らァァァァァァァ!」
「あーら、ヴァイス!ロレーヌのことはほったらかしィ~?」
「あひゃひゃひゃひゃ、はのひょのほとを~、ほっはらはしにするらんてぇ~、ひろいれすねぇ~」
「プリアラ!席の隣にある樽はなんだよ!?ついでにレオン!なにいってるか全ッ然わかんねえ!」
「あーら、ヴァイス!ロレーヌのことはほったらかしィ~?」
「あひゃひゃひゃひゃ、はのひょのほとを~、ほっはらはしにするらんてぇ~、ひろいれすねぇ~」
「プリアラ!席の隣にある樽はなんだよ!?ついでにレオン!なにいってるか全ッ然わかんねえ!」
プリアラとレオンは完全に酔っ払っていた。レオンはともかく、プリアラ。あいつは外見上未成年のはずだ。だが、椅子の隣にある樽を見ると、それはプリアラが飲み干したワインの残骸だということがわかる。ロレーヌが宿代持ってくれて本当によかった、あ、いや悪かったな。こんな経費、さすがのロレーヌは許しても、ヴォルティは許さないに決まってる。仕方ナシにレオンとプリアラを引きずって階段をゆくー途中でカウンターのおっちゃんが何か言ったようだが耳に入らない。やっとの気持ちで辿り着いた3階の部屋に2人をぶち込むと、俺もさっさとベッドの中にもぐりこんだ。隣でレオンが寝言を言っている。煩くて眠れそうになかった。本当は、考え事をしていたから眠れそうにもなかったのかもしれないが。
翌朝、ロレーヌが宿にやってきた。二日酔いに苦しむレオンと、ちょっとだけ寝ぼけ気味だったプリアラは彼女を見るなり眼がさえたらしい。別にさえなくてもよかった、いや、さえないほうがよかったのに。
「おはよう、ヴァイス君!今日も練習するよ!」
「あー、はいはい。朝飯食ったらな。」
「あら、連れの人って2人いたのね。まあでも大丈夫かな。一週間の宿代としてこのお宿に500万払っておいたし。」
「あー、はいはい。朝飯食ったらな。」
「あら、連れの人って2人いたのね。まあでも大丈夫かな。一週間の宿代としてこのお宿に500万払っておいたし。」
500万?!ちょっとまて、昨日の2人の酒代はざっと見積もって8万ってとこだろう。そして通常止まるだけなら一泊3食付で一人12,000だ。何が哀しくて500万も払う必要がある?!そういえば、昨日俺が2人を引きずってたときにカウンター越しに店主に言われた気がする。「お客様、お部屋の準備は整っております。最上階へおこしください。」あれか!でも、俺は2人を引きずってたわけだから、めんどくさくて聞き流して、もと居た部屋に行ったんだ。くそー、失敗したなー。
「ちょ・・・ヴァイス!この人ッ!BPMのロレーヌさんじゃないですかッ!なんで?!なんで彼女と・・・?ぼ、僕ファンなんですッ!特にHEAVENLY WORLDが好きで好きで好きで!」
「わあ、ありがとう!ステージに是非是非来てくださいね。招待しちゃいますから!あ、あなたたちのお名前は?」
「私はプリアラ。で、こっちはレオンよ。」
「プリアラさんにレオンさんですね!特等席とっておきます!ほらー、ヴァイス君!はやく朝ご飯詰め込んで!」
「わ、わかってるよ!じゃあレオン、プリアラ!俺練習行ってくるから。あ、荷物を最上階の部屋に移しておいてくれ。ロレーヌがとってくれた。」
「あら、悪いわね、ロレーヌ。ありがとう。」
「全然! ヴァイス君をお借りするんですしね。」
「わあ、ありがとう!ステージに是非是非来てくださいね。招待しちゃいますから!あ、あなたたちのお名前は?」
「私はプリアラ。で、こっちはレオンよ。」
「プリアラさんにレオンさんですね!特等席とっておきます!ほらー、ヴァイス君!はやく朝ご飯詰め込んで!」
「わ、わかってるよ!じゃあレオン、プリアラ!俺練習行ってくるから。あ、荷物を最上階の部屋に移しておいてくれ。ロレーヌがとってくれた。」
「あら、悪いわね、ロレーヌ。ありがとう。」
「全然! ヴァイス君をお借りするんですしね。」
またしてもロレーヌに引きずられながら街を行く。相変わらずひどい人ごみをロレーヌはするすると抜けていく。俺もだいぶこの人ごみになれたらしく、最初はまったく雑踏にまみれて何を話しているか聞こえなかった筈だったが周囲の人間の好奇の目線とささやきが少しだけ聞こえた。
「あれ、ロレーヌとアクセル?」
「え、アクセルってあんなんだっけ?」
「でもあれアクセルだろ・・・?」
「帰ってきたのか!」
「いっつもおアツイねえ」
「え、アクセルってあんなんだっけ?」
「でもあれアクセルだろ・・・?」
「帰ってきたのか!」
「いっつもおアツイねえ」
どいつもこいつもアクセルアクセル言いやがって!俺はアクセルじゃねーっつーの!ただのそっくりさんだっての!と、んなことよりもロレーヌと2人の今が言うチャンスか。とりあえず切り出してみよう。
「なあ、ロレーヌ。」
「なーに?」
「俺、冒険者なんだけど」
「うん、そんな感じだよね。観光にきたって感じじゃないもん。」
「で、パーティでは法術師兼格闘家なんだけど。」
「へぇ。」
「病気、俺なら治せる。」
「・・・論外ね。アクセルを待つの!だって、アクセルが帰ってきたとき、私の病気が治ってたら、アクセルきっとガッカリしちゃうよ。」
「・・・・・・そーか。」
「なーに?」
「俺、冒険者なんだけど」
「うん、そんな感じだよね。観光にきたって感じじゃないもん。」
「で、パーティでは法術師兼格闘家なんだけど。」
「へぇ。」
「病気、俺なら治せる。」
「・・・論外ね。アクセルを待つの!だって、アクセルが帰ってきたとき、私の病気が治ってたら、アクセルきっとガッカリしちゃうよ。」
「・・・・・・そーか。」
そんなこったろうとは思ったけど。こいつ、本気でアクセルのこと待ってるんだ。死ぬことなんか全然怖くないのかもしれない。アクセルにがっかりされるほうが、死ぬよりも嫌なんだ。その日も一日中練習は続いた。かなりの量をロレーヌは歌ったし、俺たちもかなりの量演奏した。ロレーヌは休憩の時いつも俺たちの前から姿を消す。自室に戻っているらしいが、薬を飲んだり、血を吐いたりしているという。そんなになってまで、ロレーヌは歌っていた。なんで、と俺は思っている。おかしいじゃないか。命を削ってまで、歌うなんて。それをカディスに聞いてみた。
「このバンドのリーダー、もともとはアクセルだったんだ。今はイノザートだけどね。で、アクセルとロレーヌが2人で作った。いわば思い出のバンドなんだ。それを守りたくて歌ってるんだよ・・・ロレーヌは。本当にあの子はアクセルが好きだったんだろうね。」
歌の歌詞に気になっている部分がいくつかあったんだ。それが一気に解ける言葉だった。彼女の歌う歌は結構哀しい歌詞が多い。哀しいだけじゃなく、苦しい、切ない、そして自虐要素を含んでいるのではとすら思えるものもある。それは全部アクセルに届けたい言葉だったのかもしれない。もしかしたら・・・ロレーヌは。休憩時間はまだ後15分ある。俺はロレーヌの部屋へ急いだ。ノックすることもなくドアを開けると、血まみれのティッシュがゴミ箱から飛び出して、薬が散らばっている部屋の中心にロレーヌはいた。何か紙に向かって呟いている。俺には気づいていないらしかった。
「アクセル。・・・アクセルに似てる人が、いるの。だけど、彼はあなたじゃない。ちょっとだけ・・・生きたいって思ったけど、いいの。アクセルは、私のこと待っててくれるから。」
「・・・ロレーヌ!」
「・・・ロレーヌ!」
嫌な予想は、やっぱりあたるもんだった。
「ヴァイス君?!ごめん、気づかなかった!どうしたの?」
「今、後ろに隠したものを・・・見せてくれ。」
「やだな・・・私の恋人の写真なの!恥ずかしいからダメだよ~。」
「違うだろ。」
「・・・。」
「・・・違う、そうだろ。」
「今、後ろに隠したものを・・・見せてくれ。」
「やだな・・・私の恋人の写真なの!恥ずかしいからダメだよ~。」
「違うだろ。」
「・・・。」
「・・・違う、そうだろ。」
ロレーヌはゆっくりと頷く。俺はドアを閉めるとロレーヌの前に座った。
「俺の動体視力を侮るなよ。あれは・・・新聞じゃないのか?ヴォルティは必死にお前に見せないようにしていたらしいが、お前は見つけたんだな。」
『人気バンドのギタリスト、アクセル・フォルツァ 冒険者の墓場といわれるヴェンヴォトン渓谷にて死亡が確認』
「・・・私の、所為なの。」
「お前な、お前が殺したんじゃない。」
「違う。私が殺したようなものよ。喉の病気を知ったアクセルは・・・私を助けるために旅に出たんだから。もうアクセルは戻ってこない・・・。だけど、私は歌わなきゃ。アクセルの為に。アクセルの好きだった歌を。バンドを・・・アクセルの作ったバンドを守らなきゃいけないの!そして、私の喉は・・・アクセルが治すの!他の人になおされちゃいけない。私・・・死にたいとは思わない。だけど、死んでしまってもかまわないの。だって、アクセルは私のことを待っていてくれる」
「違うな。そんなの独り善がりだ。アクセルが本気でロレーヌを好きだったなら、お前が死ぬことを望むわけ、ないだろ。恋人が死ぬのを待つわけなんかないだろ。」
「けどッ・・・!」
「そーだな・・・、じゃあこう考えてみねぇ?アクセルは、たしかにヴェンヴォトン渓谷で命を落とした。だけど・・・死んだ後のアクセルの魂はまだ旅を続けていた。そしたら、自分に似てるハーフエルフの僧が歩いてるのを見っけたんだ。なんだか、魔力もありそうじゃん。こいつならもしかしたら・・・ロレーヌを助けてくれるかもしれない。・・・わかるか?死者の思念は・・・時として生きている者に影響する。だから。」
「・・・ヴァイス君がここにきたのは・・・アクセルが連れてきたから・・・?」
「良く出来ました。」
「・・・・・・。少しだけ時間を・・・くれる?」
「お前が死ぬ前までならいくらでも待つぜ。第二スタジオで練習してるから。じゃあな。」
「お前な、お前が殺したんじゃない。」
「違う。私が殺したようなものよ。喉の病気を知ったアクセルは・・・私を助けるために旅に出たんだから。もうアクセルは戻ってこない・・・。だけど、私は歌わなきゃ。アクセルの為に。アクセルの好きだった歌を。バンドを・・・アクセルの作ったバンドを守らなきゃいけないの!そして、私の喉は・・・アクセルが治すの!他の人になおされちゃいけない。私・・・死にたいとは思わない。だけど、死んでしまってもかまわないの。だって、アクセルは私のことを待っていてくれる」
「違うな。そんなの独り善がりだ。アクセルが本気でロレーヌを好きだったなら、お前が死ぬことを望むわけ、ないだろ。恋人が死ぬのを待つわけなんかないだろ。」
「けどッ・・・!」
「そーだな・・・、じゃあこう考えてみねぇ?アクセルは、たしかにヴェンヴォトン渓谷で命を落とした。だけど・・・死んだ後のアクセルの魂はまだ旅を続けていた。そしたら、自分に似てるハーフエルフの僧が歩いてるのを見っけたんだ。なんだか、魔力もありそうじゃん。こいつならもしかしたら・・・ロレーヌを助けてくれるかもしれない。・・・わかるか?死者の思念は・・・時として生きている者に影響する。だから。」
「・・・ヴァイス君がここにきたのは・・・アクセルが連れてきたから・・・?」
「良く出来ました。」
「・・・・・・。少しだけ時間を・・・くれる?」
「お前が死ぬ前までならいくらでも待つぜ。第二スタジオで練習してるから。じゃあな。」
言うべきことは全部言った。後はロレーヌ次第だ。俺は嘘をつくのが嫌いだから、ロレーヌに言った事も、結構本気で考えている。事実、死人の魂は人間に影響するっていう証明は過去にしたことがあったし。アクセルと俺。皮肉なことに似ている同士考えることもなんとなくわかっちゃうしな。ギターを手に取ると、なんとなく感謝の気持ちが伝わってくるような気がした。弦をはじくと、いつもよりもクリアな音が響き渡る。ライブで歌う12曲を俺はほぼ頭に入れていたが、ラストの1曲を今日中に仕上げなきゃならない。その曲を練習するつもりだ。
「ヴァイス君、いつもよりもはっきりした音出すなあ。何かあったの?」
「別に、何もないです。ちょっと調子上がってきただけじゃないですか。」
「そう?本番もこの調子で頼むよ。」
「別に、何もないです。ちょっと調子上がってきただけじゃないですか。」
「そう?本番もこの調子で頼むよ。」
5時間後の次の休み時間、ロレーヌが俺のことを呼んだ。ロレーヌの表情は晴れやかだ。
「ヴァイス君。」
「ん?」
「・・・喉、治して!やっぱり、私・・・バンドを守っていきたい。アクセルは遠い死の世界で待っているんじゃなくて・・・そばにいる、ってわかったから。」
「・・・了解!」
「ん?」
「・・・喉、治して!やっぱり、私・・・バンドを守っていきたい。アクセルは遠い死の世界で待っているんじゃなくて・・・そばにいる、ってわかったから。」
「・・・了解!」
確かに、ロレーヌの喉の病気はかなり進行していた。普通の法術師なら、お手上げ状態。だけど、俺なら自信はある。白い光がロレーヌの喉に集中した。少しずつ少しずつ光が強くなり、そして、消えた。
「ハイ、終ー了ー。これで大丈夫だ。もう、いくらでも歌っていける。」
「・・・!すごい、全然息が苦しくない。ヴァイス君ってなんでも出来るんだね。」
「白魔術にかけては、な。喉も治ったんだし、ちゃんとヴォイトレしとけよー!」
「わかってるっ!・・・ヴァイス君、ありがと!」
「どーいたしまして。」
「・・・!すごい、全然息が苦しくない。ヴァイス君ってなんでも出来るんだね。」
「白魔術にかけては、な。喉も治ったんだし、ちゃんとヴォイトレしとけよー!」
「わかってるっ!・・・ヴァイス君、ありがと!」
「どーいたしまして。」
それから4日、練習した後ついに俺たちは本番を迎えた。ステージ衣装はアクセルのを借りる。かなりのパンクテイストなつくりだが、案外サイズが合うのでしっくりきた。その姿を見たバンドの皆は「やっぱりそっくりだよ」と言う。もう聞き飽きた俺はそれを適当に流していたが、ロレーヌは何か言いたそうな瞳でじっと見つめたまま、黙っていた。そして、他のみんなの衣装だが、やぱり全員パンクテイストだった。ロレーヌもゴスパンクの服を着ていて、それが似合うからやっぱり凄い。ロレーヌって案外何着ても似合うタイプらしい。そして、やっぱり本番となるとド素人の俺にはかなりの緊張を伴っているがそれで失敗しちゃいけない。むしろこの状況を楽しまないといけないと俺は自分に言い聞かせて、幕の内側で待機していた。今ごろ、プリアラとレオンは特等席で俺の失敗を想像してはニヤニヤしてることだろう。くっそー、失敗してたまるか!
「パンクファンの皆様お待たせしました!人気バンドBPMのソウルフルステージ!Here! We!Go!」
序盤から派手にゴリゴリギターの演奏から始まる。普段優しそうなカディスがぶっ壊れるのはこういう激しいドラムを叩いているときだが、やっぱり今日もぶっ壊れていた。そして、ロレーヌが歌い始める。
いくつもの言葉 僕ら
空に向けて 君に放った
だけど 届かない
君は そこにいない
僕は ここにいない いない、よね
それなら 青い空を切り裂いて
緑の大地 突き飛ばして
赤い夕日に 飛び込んで
僕ら 尽き果てても
空に向けて 君に放った
だけど 届かない
君は そこにいない
僕は ここにいない いない、よね
それなら 青い空を切り裂いて
緑の大地 突き飛ばして
赤い夕日に 飛び込んで
僕ら 尽き果てても
いくつもの言葉 君は
僕らにきっと 言っただろう
だけど 届かない
君は ここにいない
僕ら 振り向くこともせず だから
君は 青い空光らせ
緑の大地 駆け抜けて
赤い夕日 染め上げて
きっと 叫んだんだ
僕らにきっと 言っただろう
だけど 届かない
君は ここにいない
僕ら 振り向くこともせず だから
君は 青い空光らせ
緑の大地 駆け抜けて
赤い夕日 染め上げて
きっと 叫んだんだ
壊れかけた時計を見て
僕ら 気が付いた
君は そこにいた
僕は ここにいた
そう、僕らは そばに居た
僕ら 気が付いた
君は そこにいた
僕は ここにいた
そう、僕らは そばに居た
So listen to you listen to me
大切な思い出 メロディーにのせ
listen to me listen to you
歩いていけるよ きっと
悲しい現実<いま>乗り越えて
あの青い空越えて
白い羽根 羽ばたいて
大切な思い出 メロディーにのせ
listen to me listen to you
歩いていけるよ きっと
悲しい現実<いま>乗り越えて
あの青い空越えて
白い羽根 羽ばたいて
So listen to me
So listen to you...
So listen to you...
ロレーヌ・・・歌詞代えやがったな。いつの間に。昨日の練習の時にはまだ歌詞を代えてなかったのに。
その後歌った曲も全て歌詞をロレーヌが即興で作り上げたが、ライブは大成功。全て無事に歌い上げ、会場はスタンディングオベーション。拍手と大歓声の中、俺たちは楽屋に戻る。そしてヴォルティが泣きながら走ってきた。
その後歌った曲も全て歌詞をロレーヌが即興で作り上げたが、ライブは大成功。全て無事に歌い上げ、会場はスタンディングオベーション。拍手と大歓声の中、俺たちは楽屋に戻る。そしてヴォルティが泣きながら走ってきた。
「ロレーヌッ!もう一時はどうなることかと・・・!」
「大丈夫だよ。私の詩、なかなか上手くできてたでしょ?」
「もう僕も本当にびっくりした。ドラム叩きながらヤバイヤバイって思ってたんだよ。」
「流石だな、ロレーヌ。これならもうバンドは大丈夫だろ。俺の役割も、終わり。」
「大丈夫だよ。私の詩、なかなか上手くできてたでしょ?」
「もう僕も本当にびっくりした。ドラム叩きながらヤバイヤバイって思ってたんだよ。」
「流石だな、ロレーヌ。これならもうバンドは大丈夫だろ。俺の役割も、終わり。」
笑いかけてやると、バンドのみんなは静ってしまった。ここで言うべきじゃなかったか?だけど、あまり長引いてプリアラやレオンを待たせるのも悪い。我ながら空気読んでねぇなとは思ったけどね。
「ヴァイス君・・・このバンドに入る気は」
「あ、ないから。俺冒険者だし。それに、俺はアクセルじゃない。そうだろ、ロレーヌ。」
「・・・そうね。あなた、やっぱりアクセルに全然似てない。アクセルはもっと優しいもん。・・・ヴァイス君、本当にこの一週間ありがとう。それに、私の喉のことも。すっごく感謝してるよ。これ・・・お礼だから。持っていって。」
「ロレーヌ!それは・・・」
「いいのよ。」
「短剣?」
「あ、ないから。俺冒険者だし。それに、俺はアクセルじゃない。そうだろ、ロレーヌ。」
「・・・そうね。あなた、やっぱりアクセルに全然似てない。アクセルはもっと優しいもん。・・・ヴァイス君、本当にこの一週間ありがとう。それに、私の喉のことも。すっごく感謝してるよ。これ・・・お礼だから。持っていって。」
「ロレーヌ!それは・・・」
「いいのよ。」
「短剣?」
それは青白く光る小ぶりなナイフだった。見たところ何か魔力が篭っているように思える。が、それがどんな力なのかは俺にもわからない。ただ、このナイフにはアクセルの思いが詰まっているように思えた。
「うん。格闘家ならあまり使わないかもしれないけど、いざというときに便利でしょ。」
「・・・んだよ、しっかり記名してやがる。『アクセル・フォルツァ』・・・。いいのかよ?」
「いいよ。アクセルもきっとヴァイス君に持っていて欲しいだろうから。これ、本当はアクセル・・・旅に出るときに忘れていったものなの。だから旅に出られなくてこのナイフもがっかりしてるんじゃないかなー、って私思ってたんだ。」
「お前マジ変わってるよなー。・・・さんきゅ、大切にする。じゃ、俺行くから!皆頑張れよ。」
「たまにライブ見にくるんだよ!」
「勿論!」
「・・・んだよ、しっかり記名してやがる。『アクセル・フォルツァ』・・・。いいのかよ?」
「いいよ。アクセルもきっとヴァイス君に持っていて欲しいだろうから。これ、本当はアクセル・・・旅に出るときに忘れていったものなの。だから旅に出られなくてこのナイフもがっかりしてるんじゃないかなー、って私思ってたんだ。」
「お前マジ変わってるよなー。・・・さんきゅ、大切にする。じゃ、俺行くから!皆頑張れよ。」
「たまにライブ見にくるんだよ!」
「勿論!」
楽屋を後にして俺は走った。周りにいる人たちに何度か声をかけられたけど、無関係を装って人ごみの中からレオン、プリアラを探す―いた。あいつらは目立つからすぐにわかる。
「で?もう出発してもいいのかしら?」
「ロレーヌさんやっぱり歌ステキだなあ。歌詞、今回変えてたんですねっ!」
「ん。心境の変化だってよ。じゃ、行こうぜ。」
「ロレーヌさんやっぱり歌ステキだなあ。歌詞、今回変えてたんですねっ!」
「ん。心境の変化だってよ。じゃ、行こうぜ。」
俺たちは音楽の町を出た。一時の休息を存分に楽しんだ後は、いつもの冒険が待っている。