羽根あり道化師

最終章 俺サマと王様と聖女サマのその後

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vice2rain

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かくして 三人の若者はサガルマータに辿り着き、願いをかなえたのでありました。

きっと いつか 歴史の教科書にこんな言葉が乗る日が来るのだろう。

だけど、本に書かれる数行の文字の下には数々の苦難が省略されている。

そう、そして重要なこと、その後のことが全く触れられない。ドラマ抜きに事実だけを淡々と伝えられているのみ。

だから、俺はあえて伝えたい。

無駄なことばっかり、今回は話そうか。

俺たちの冒険の、その後の話だ。



最終章 俺サマと王様と聖女サマのその後



まず、レオンのその後からお話しよう。
あいつはあの後宿敵だった兄、カームに(かなり回りくどい意地を張ったような言い方ではあったのだが)初めて認めてもらうことが出来、王様の涙を誘った。どうやら王様はこの兄弟の仲の悪さを常々嘆いていたという。長い旅を経て徐々にあるべき姿へと戻りつつある兄弟にミルディアン国民たちは惜しみない祝福を送った。ちなみに、レオンはすぐに即位するわけではなく、(まだ成人の儀を終えていないので)2年後に即位することになった。
即位式にはぜひ、と声をかけられた俺とプリアラは肩をすくめ、苦笑しつつうなづいたのだった。

「それにしても…二人とも無事に戻ってきて安心したぞ。」

現ミルディアン国王はかなり厳格そうな人だが、話をしてみると結構温厚な方だ。最初顔を合わせたときはプリアラともどもビビったりもしたんだけどね。

「ありがとうございます、でもヴァイスやプリアラがいなかったら僕はきっと死んでしまっていたでしょう。」
「そうだな、お前たちに無茶な問題を出してしまって…ワシとしても不本意だったのだがな。」
「王様、どうやって試練を決められたのですか。」

俺の質問に王様は一瞬黙った。こういうのは国家機密だったりするんだろうか?雰囲気壊しちまったなと思って前言撤回しようとしたとき、王様は観念したように口を開く。

「む…いや、そのだな…試練を決めるときにレオンの誕生日が重なってな…ジパグニルから焼酎とかいう美味い酒が送られて…」

おいおいおいおい。

「つ、つまりは…祝いの席で酒によって…?」
「しかも、レオナルドが煽るのでな…」
「オイイィィィィ!レオンッ!やっぱりお前か!」
「だって夢だったんですよ~~~~、てへへ」

てへへ、じゃねぇ!お前のお守りにどんだけ苦労したかわかってんのか!全く、こいつはなんて能天気な。それにカームもかわいそうな…いや、もう何も言うまい。


さて、次にプリアラだが彼女は北の魔女がいなくなった雪の都フロートシティに帰って、魔法を使い雪国でも栽培できる野菜や花を研究し始めて多くの人の信頼を得た。
最近では氷の花を開発したとかで、かなりの人気を博している。
それを求めて俺もフロートシティに向かったんだが…

「寒いッ!それに長いッ!この列!長いッ!」
「あら、ヴァイス。あなたも来てくれたのね。花なんて買うようなガラでもないでしょうに。」
「い…妹の墓参りに……買おうかと思ってさ…つか寒い…」
「だらしないわねー。ほら、待ち時間あと45分まってちょうだいね!前のほうの列でレオンも鼻水凍らせながら待っているんだから。」
「レオンがあぁぁ?!あいつ王子様だろ?!家来に買いにいかせりゃいいものを…」
「私に会いたいんじゃないの。」
「…あのさー、プリアラお前さー」

…だめだ、言ったら殺されそうな視線を投げかけられた。
思っても殺されそうな視線を投げかけられた。
だが、そろそろ時効かな、俺が続けたかった言葉はこうだった。
「もしかして気づいてた?」

そう、二人の微妙な関係もなんとなく遠回りをしつつ、近づいてきているようだ。春はいつだ。もどかしいヤツらだな…。


最後にあの後の俺だけど、俺は世界を旅して回った。
この物語は終わったけれど、まだ物語りはたくさんあるんだ。
俺にはやることがいっぱいあるからね。
旅が終わってしばらくはミルディアン城下町にいたんだけどその時に南西にあるサルサっていう国のコンガ村が奇病に襲われているっていううわさを聞いてそこへ向かった。一応これでも僧侶なんでね、その村を助けに行って何とか成功。コンガの村の壁画に『黒衣の大僧侶』を刻み付けてそこを去った。
フロートシティにも行った。ロレーヌのライブも見に行った(もちろん強制参加をさせられた)。サーガといっしょにサーフィンをしたり、マルラに編み物をどっさり渡されたりもした。
一通り世界をめぐった後、また俺はサガルマータに登るのだった。

どうして?って。

そりゃお前、山と物語が俺を呼んでいるからだ。

限りなく続く俺の物語に終止符を打つために
そして次の物語を始めるために

あの時見かけた あいつにすべてをゆだねたい。

「…ちっさい……」

神の力の大陸から見る世界はすごく狭かった。

『そうですね
ですが 神はこの世界をとても愛しておられますよ』

「ふーん、そうなんだ。」

『それにしても、よろしいのですか?
あなたは永遠に生きることができるのですよ。
多くの人類は永遠を望むそうです。
あなたのしようとしている事は…』

「いいんだよ、俺は。…こうなる運命だ。」

『………そうですね
なぜでしょう とてもあなたの願いをかなえたくないのです』

「そーゆーのを悲しい、っていう感情って言うんだぜ。仮にも神様の分身のお前がそんなこと思っちゃいけねーよ。黙って俺を竜の世界へ連れていきな。そっから先は覚えているから。」

『…わかりました。』


物語は まだ続く。
姿を変えて 流れを変えて 時を越えて つながっていく。

だけど、今日のところはここまで。
長い話を聞いてくれてありがとうな。

じゃあ、またそのうちに。



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